自然災害により大きく減少した9月の機械受注と回復に転じた10月の景気ウォッチャーと貿易収支が赤字になった経常収支!
本日、内閣府から機械受注と景気ウォッチャーが、また、財務省から経常収支が、それぞれ公表されています。機械受注と経常収支は9月の統計であり、景気ウォッチャーだけ10月の統計です。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比▲18.3%減の8022億円を示しています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.9ポイント上昇して49.5を記録した一方で、先行き判断DIは全角黒三角 ▲0.7ポイント下降して50.6となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆8216億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
9月の機械受注、前月比18.3%減 市場予想10.1%減
内閣府が8日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比18.3%減の8022億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は10.1%減だった。
うち製造業は17.3%減、非製造業は17.1%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は7.0%減だった。
内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられるものの、9月の実績は大きく減少した」とした。
7~9月期の四半期ベースは前期比0.9%増だった。10~12月期は3.6%増の見通し。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
10月の街角景気、現状判断指数は2カ月ぶり改善
内閣府が8日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は49.5で、前の月に比べて0.9ポイント上昇(改善)した。改善は2カ月ぶり。家計動向が改善した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は50.6で0.7ポイント低下した。低下は2カ月連続。企業動向、雇用が悪化した。
内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」に据え置いた。
9月の経常収支、1兆8216億円の黒字 51カ月連続黒字
財務省が8日発表した9月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆8216億円の黒字だった。黒字は51カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆7860億円の黒字だった。
貿易収支は3233億円の黒字、第1次所得収支は1兆6945億円の黒字だった。
なるべく短めの記事を選んだつもりなんですが、それでも3つの統計を並べるとやたらと長くなりました。いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比▲10%ほどの減、レンジでも▲15.0~▲6.4%でしたので下限を突き抜けて、これも引用した記事にあるように、統計作成官庁である内閣府による基調判断を「持ち直しの動きがみられるものの、9月の実績は大きく減少した」と、単月ながらただし書きをつける必要が感じられるほどの落ち込みでした。業種別でも、製造業・非製造業ともに2ケタ減を記録しています。ただ、四半期でならして見ると、7~9月期の前期比+0.9%増とやや減速した後、10~12月期は+3.6%増と増加率を拡大する見込みとなっています。2017年7~9月期から、見通しの2017年10~12月期まで無理やりにカウントすれば、四半期ベースでは6四半期連続で前期比プラスということになりそうです。9月統計の大きな前期比マイナスについては、このところ、判で押したように自然災害の影響といえます。供給面の制約に加えて、関空などの流通面からも生産が停滞したと考えるべきです。ですから、10月以降の統計を見れば、需要が想定される通りに緩やかに増加している限り、この機械受注をはじめとして各種の経済指標はそれなりの回復を示すと私は期待しています。機械受注のような生産サイドの統計は、さらに、いわゆる「挽回生産」によって短期的には上振れすることもめずらしくありません。ですから、大型案件の受注に伴って、機械受注はもともと単月での振れの激しい指標ですし、少なくとも、9月統計だけでは趨勢的な判断は難しい気がします。他方で、これだけ落ち込みが大きく、市場のコンセンサスを大きく超えれば、基調判断にも何らかの反映が必要、ということなのかもしれません。私も統計局出向の経験がありますので、こういった役所の対応はそれなりに理解は出来ます。
続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。同じ内閣府の統計ながら、消費者態度指数が需要サイドの消費者マインドを代表しているのに対して、この景気ウォッチャーは供給サイドの消費者マインドを色濃く反映しています。ですから、季節調整済みの系列の現状判断DIの前月差で見て、9月は自然災害の影響などで、わずかながら▲0.1ポイントの下降を示したものの、直近の10月には+0.9ポイントの上昇を記録しました。特に家計動向関連、さらのその中の住宅関連と飲食関連などが大きな前月差プラスとなっています。ですから、9月の自然災害に起因するマインド低下は10月には回復している可能性が高いと私は受け止めています。もっとも、これも季節調整済みの先行き判断DIについては、9月10月と2か月連続で下降を示しました。特に、9月は家計動向関連がほぼほぼ横ばいだったのに対して、企業動向関連が製造業関連・非製造業関連ともに大きな前月差マイナスを記録しています。やや複雑な動きながら、統計作成官庁の内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」に据え置いています。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。まず、9月の貿易収支は赤字を計上しています。すなわち、節調整済みの統計で見て、震災後の貿易赤字から黒字に転換したのが2013年10月であり、その後、一貫して貿易黒字を計上していたところ、今年2018年2月は、おそらく、中華圏の春節効果で久し振りに赤字となりましたが、2018年9月統計ではそれ以来の貿易赤字となっています。季節調整していない原系列の統計ではまだ貿易収支は黒字ですので、メディアなどではそれほど注目されていないものの、自然災害に伴う供給制約の国内要因に加えて、先進国経済の減速という海外要因に伴う我が国からの輸出の停滞が大きかったと私は考えていますが、さらに、国際商品市況における石油価格の上昇による輸入額の増加もあり、この先も、貿易収支は赤字を計上する月が増えそうな気がします。もちろん、上のグラフでは赤い積み上げ棒グラフで示されている1次所得収支の黒字が大きいことから、刑事う収支が赤字になることは、少なくとも現時点では考えにくいものの、米中間の貿易摩擦も含めて貿易動向は注意が必要かもしれません。
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