OECD「経済見通し」は米中貿易摩擦で経済成長率を下方修正!
日本時間の昨夜、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し 2018年11月」OECD Economic Outlook November 2018 が公表されています。このブログでは、こういった国際機関のリポートを取り上げるのをひとつの特徴としていますので、プレスリリース資料からグラフなどをいくつか引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います
まず、上の画像はプレスリリース資料から p.25 Key messages を引用しています。見れば明らかなんですが、世界経済の成長が減速しており、米中の貿易摩擦に伴う関税率の引き上げが先行きリスクを高めていることから、自由貿易の維持強化を図る必要を主張しています。まあ、各種のメディア報道もそうですし、多くのビジネスマン・エコノミストの共通認識ではないかと私は思います。
次に、上の画像はプレスリリース資料から p.4 Real GDP growth revised down のグラフを引用しています。要するに、世界経済の成長率が下方修正されているわけです。今年2018年の世界経済の成長率は5月の前回の「経済見通し」では+3.8%、9月の「中間経済見通し」では+3.7%に下方修正された後、昨日公表の「経済見通し」では+3.5%にさらに下方修正されました。来年2019年についてもご同様で、5月の前回の「経済見通し」では+3.9%、9月の「中間経済見通し」では+3.7%に下方修正された後、昨日公表の「経済見通し」では+3.5%にさらに下方修正されています。我が国の成長率についてもまったく同じような傾向を示しており、今年2018年は5月の前回の「経済見通し」と9月の「中間経済見通し」ではともに+1.2%と見込まれていましたが、昨日公表の「経済見通し」では+0.9%に下方修正されています。少なくとも我が国の成長率については、先週公表されたGDP統計1次QEで自然災害などの影響により7~9月期の成長率がマイナスとなった発射台の成長率の低下が大きな要因なんでしょうが、来年2019年についても、5月の前回の「経済見通し」と9月の「中間経済見通し」ではともに+1.2%と見込まれていましたが、昨日公表の「経済見通し」では+1.0%に下方修正されています。ただし、東京オリンピック・パラリンピックの開催されるさ来年2020年の成長率は+1.9%と高まると見込まれています。
次に、上の画像はプレスリリース資料から p.13 Tariff hikes act as a brake on GDP growth のグラフを引用しています。世界経済の成長率の下方修正を招いた最大の要因のひとつである米中間の貿易摩擦に起因する関税率の引き上げが成長率に及ぼす影響を試算した結果がプロットされています。凡例にあるように、第1段階の青の部分は2018年9月までの追加関税引き上げの影響、第2段階の紫の部分が、米国が中国からの2,000億ドルの輸入に対して追加関税を現行の10%から25%に引き上げ、加えて、中国が米国からの600億ドルの輸入に対して報復措置を取った場合、第3段階のオレンジの部分が、加えて、一次産品を除くすべての米中二国間貿易に対し、2019年7月以降に25%の追加関税が課された場合、さらに、第4段階として、投資リスクプレミアムが不確実性の高まりに応じて上昇する場合、などを前提した試算結果です。ただし、この分析では、関税引上げによる負担の大部分は物価上昇を通じ米国の消費者に転嫁されると想定されているようなんですが、中国側の価格設定行動次第で中国の輸出業者及び生産者が負担をこうむる結果になる場合もある、と指摘されています。我が国への影響は明示されていないんですが、私のこのブログでは、今年2018年7月24日付けの記事で大和総研のリポート2本、「米中通商戦争はそんなに悪い話なのか?」と「続・米中通商戦争のインパクト試算」を引用して、結論としては、日本経済へのマイナスの影響は決して大きくない、との見方も紹介しています。
次に、上の画像はプレスリリース資料から p.15 A slowdown in China would weigh on growth across the world のグラフを引用しています。関税率の引き上げの影響に関しては、我が国は明示的にグラフに取り込まれていなかったんですが、さすがに上のグラフに見る通り、中国経済の減速の影響については、米欧よりも我が国成長率へのマイナスの影響が方が大きい、すなわち、2%ポイントの中国の需要減少のショックに対して、我が国の成長率は▲0.2%を超える影響を受ける、と分析されています。
最後に、目を国内経済に転じると、本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月と同じ+1.0%を示しています。国際商品市況における石油価格などのエネルギーの値上がりに起因する物価上昇と私は受け止めています。いつものグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。
| 固定リンク
コメント