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2019年1月23日 (水)

貿易赤字続く貿易統計とまたまた物価見通しを引き下げた日銀「展望リポート」

本日、財務省から昨年2018年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲3.8%減の7兆240億円、輸入額は+1.9%増の7兆793億円、差引き貿易収支は▲553億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

18年12月の貿易収支、3カ月連続赤字 中国向け輸出が大幅減
財務省が23日発表した2018年12月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は553億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。中国向け輸出が大幅に落ち込んだうえ、液化天然ガス(LNG)などの輸入が増加した。
輸出額は前年同月比3.8%減の7兆240億円だった。減少は3カ月ぶり。減少率は16年10月(10.3%減)以来の大きさだった。中国向け半導体等製造装置や通信機が大幅減となり、中国向け輸出は7.0%減と3カ月ぶりに減少した。
輸入額は1.9%増の7兆793億円。9カ月連続で増加した。オーストラリアからのLNGや米国からの航空機類が伸びた。一方、中国からの輸入は6.4%減と6カ月ぶりに減少した。
対米国の貿易収支は5678億円の黒字で黒字額は6カ月連続で減少した。輸出は1.6%増、輸入は23.9%増だった。
18年12月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=113円12銭。前年同月に比べて0.6%円安・ドル高に振れた。
併せて発表した2018年の貿易収支は1兆2033億円の赤字だった。通年ベースの貿易赤字は3年ぶり。輸出入ともに増加したが、原油価格の上昇を背景に輸入の増加が上回った。輸出入ともに比較可能な1979年以降で過去2番目の高水準だった。
輸出額は前年比4.1%増の81兆4866億円だった。増加は2年連続。アラブ首長国連邦(UAE)向け自動車や中国向け原動機が伸びた。輸入額は9.7%増の82兆6899億円と2年連続で増加した。サウジアラビアからの原粗油やオーストラリアからのLNGが増加した。
対米国の貿易収支は6兆4548億円の黒字だった。黒字額は8.1%減と2年ぶりに減少した。輸出額は2.3%増、輸入額は11.4%増加した。
対アジアの貿易収支は5兆5446億円の黒字で黒字額は5.9%減少した。輸出額と輸入額はともに過去最大だった。対中国の貿易収支は3兆2843億円の赤字で、3年連続で赤字幅を縮小した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲295億円の貿易赤字でしたので、3か月連続の貿易赤字そのものは大きなサプライズではありません。輸入のサイドでピークは過ぎたとはいえ、国際商品市況における石油価格の動向から原油や天然ガスなどの輸入額が大きく膨らんでいることは確かです。他方で、現下の景気情勢とは少し齟齬あるながら、景気が停滞に向かっている先進国への輸出が厳守し、他方で、景気が上向いている中国への輸出が減少を示しています。このあたりはマイクロに分析する必要あるものの、現時点ではマクロ・エコノミストにはパズルですが、エコノミストの間ではアジア向けで半導体製造装置などの輸出減少が全体を下押ししたとの見方もあります。また、メディアの報道では季節調整していない原系列の統計で見ていますから、3か月連続の貿易赤字ということになっていますが、上のグラフにも見られるように、よりトレンドに沿った季節調整済の系列では昨年2018年は後半7月から12月まで6か月連続の赤字を示しています。国際商品市況における石油価格の動向に整合的に、10月のピークまで輸入額が増加を続けた一方で、輸出が横ばい傾向を示しています。昨日の国際通貨基金(IMF)のリポートにも示されている通り、これは傾向としては世界的な景気動向にほぼ整合的だと私は受け止めています。

photo

輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、現時点での謎は中国の景気が上向いているにもかかわらず、我が国からの輸出が減少を続けている点です。上野グラフにも見られる通り、OECDの先行指数から見て、中国の景気は上昇に転じつつあるように見えるんですが、我が国の輸出は一向に上向く気配もありません。年が明けて、1~2月には中華圏の春節が2月5日ですから、貿易統計は大きく撹乱される可能性があり、さらに先行きトレンドが見えにくくなるような気もします。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2018年度+0.9~+1.0
<+0.9>
+0.8~+0.9
<+0.8>
 10月時点の見通し+1.3~+1.5
<+1.4>
+0.9~+1.0
<+0.9>
 2019年度+0.7~+1.0
<+0.9>
+1.0~+1.3
<+1.1>
+0.8~+1.1
<+0.9>
 10月時点の見通し+0.8~+0.9
<+0.8>
+1.5~+1.7
<+1.6>
+1.3~+1.5
<+1.4>
 2020年度+0.7~+1.0
<+1.0>
+1.3~+1.5
<+1.5>
+1.2~+1.4
<+1.4>
 10月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.8>
+1.5~+1.7
<+1.6>
+1.4~+1.6
<+1.5>

昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合が終了し、「展望リポート」で政策委員の大勢見通しが公表されています。来年度2019年度の生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)上昇率見通しは、原油価格下落の影響が主因ながら、消費税率引き上げと今回から加えた教育無償化政策の影響を除き+0.9%と前回2018年10月時点から▲0.5%ポイント引き下げられている上に、「リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい」と指摘し、もう一段の下振れの可能性も示唆しています。

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