1月統計で上昇幅を拡大した消費者物価(CPI)の今後の見通しやいかに?
本日、総務省統計局から1月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から上昇幅をやや拡大して+0.8%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1月の全国消費者物価、0.8%上昇 宿泊料など押し上げ
総務省が22日発表した1月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が101.2と前年同月比0.8%上昇した。上昇は25カ月連続。伸び率は18年12月(0.7%上昇)に比べて拡大した。電気代や都市ガス代などエネルギー関連が押し上げた。宿泊料や自動車保険料も上昇に寄与した。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.8%上昇だった。生鮮食品を除く総合では全体の52%にあたる272品目が上昇した。下落は185品目、横ばいは66品目だった。総務省は「緩やかな上昇傾向で推移している」との見方を示した。
生鮮食品を除く総合を季節調整して前月と比べると0.2%上昇した。エネルギー構成品目の寄与度はガソリンや灯油価格の伸び悩みを背景に前月に比べて縮小した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合は101.1と前年同月比0.4%上昇した。正月休みの延長で休暇をとる人が多く、宿泊料が高かった。値上げの影響で自動車保険料(任意)や新聞代も上昇した。
生鮮食品を含む総合は101.5と0.2%上昇した。伸び率は前月(0.3%)に比べて縮小した。キャベツやレタスなど葉物野菜が昨年に高騰した反動で下落した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。
前年同月比上昇率で見て、生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)の+0.8%の上昇に比べて、ヘッドラインCPIは+0.2%の上昇にとどまりましたので、額は小さいながらも購入頻度も必需度も高い生鮮食品の上昇率が低かった、というか、下落しているわけです。その分、国民が感じる物価上昇のインパクトは小さかったかもしれません。そして、注目すべきは国際商品市況における石油価格との連動性であり、2月13日に取り上げた企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の上昇幅の大きな縮小と比較して、消費者物価(CPI)はそれほどの縮小を見せていません。もちろん、石油価格変化の波及のラグはPPIよりのCPIの方が長いでしょうから、これからその影響が表れると考えるべきなのかもしれませんが、より川下の消費者に近いところで需給がひっ迫しているという見方を示すエコノミストも少なくありません。1月統計では、引用した記事にもある通り、宿泊料などが上げられていますが、一般的に、人手不足の影響などから、品目別に詳しく見て、パック旅行費、テーマパーク入場料、運送料、外食、介護料などのサービス料金の上昇が指摘されています。ただ、今後のCPI上昇率については、このまま1%前後で推移するとは私は見込んでいません。まず、石油価格の動向です。石油価格が足元のの現状を維持するとしても、今年年央くらいにはCPI上昇率はかなり低下する見込みです。年央から年後半にかけて、コアCPI上昇率はゼロ近傍まで落ちる可能性が高いと私は考えています。加えて、政策的な要請も含めて、携帯電話通信料が引き下げられる可能性が高く、さらに、幼児教育などの教育無償化の影響も無視できません。当然ながら、CPIの引き下げ要因となります。もちろん、日銀の物価目標の達成は別の観点ですし、デフレを悪化させないという見込みを基に、こういった要請がなされたり、政策措置が講じられるわけですから、この点は忘れるべきではありません。また、10月から消費税率が2%ポイント引き上げられますので、単純に+1%ポイントくらいの物価上昇圧力になるものと考えられ、消費増税の影響を除くベースで物価動向を見る必要がありそうです。
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