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2019年2月14日 (木)

2018年10-12月期GDP統計1次QEは潜在成長率近傍で力強さに欠ける成長!

本日、内閣府から昨年2018年10~12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.3%、年率では+1.4%を記録しました。マイナス成長だった7~9月期から2四半期振りのプラス成長でしたが、リバウンドの高成長ではなく潜在成長率近傍の成長率でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP実質1.4%増、10-12月年率 2期ぶりプラス
内閣府が14日発表した2018年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%増だった。年率換算では1.4%増。年率2.6%減だった7~9月期から、2四半期ぶりのプラスとなった。18年夏の自然災害による個人消費の落ち込みが解消され、内需が全体の成長率押し上げに寄与した。
前期比0.3%増の成長率のうち、0.6%分は国内需要を表す内需が寄与した。内訳をみると、GDPの5割超を占める個人消費が前期比0.6%増と、7~9月期の0.2%減から回復。飲食や宿泊、航空などレジャー関連の回復が目立った。自然災害が個人消費を下押ししていたが10~12月期は回復。自動車販売も堅調だった。
住宅投資は1.1%増。2四半期連続でプラスを確保した。住宅投資は工事の進捗状況に応じてGDPに計上しており、4~6月期以降の着工の伸びが寄与した。民間の設備投資も2.4%増と全体を押し上げた。生産用機械の伸びが寄与した。
一方、外需は0.3%分、成長率を押し下げた。中国経済の鈍化により情報関連財の輸出が伸びず、輸出全体の伸びを抑えた。輸入は堅調な内需を背景に増加。外需の寄与度は、輸出の寄与度から輸入の寄与度を引いて算出する。前期からの伸び率は輸入が輸出を上回り、全体に対する外需の寄与度はマイナスとなった。
18年10~12月期のGDP成長率は名目で見ると0.3%増。年率換算では1.1%増だった。名目値は実質値に物価分を上乗せして算出するため、物価が上がれば名目値は上がる仕組みだ。10~12月期は物価上昇率が鈍く、名目の成長率が実質を下回った。
収入の動きを示す雇用者報酬は名目の前年同期比で3.2%増。7~9月期の2.6%増から伸び率が拡大した。
18年暦年の成長率は実質0.7%増、名目で0.6%増。いずれも12年以降、7年連続のプラス成長となった。成長率はともに17年を下回った。18年の名目GDPは548兆円と17年の545兆円を上回り、過去最高を更新した。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2017/10-122018/1-32018/4-62018/7-92018/10-12
国内総生産GDP+0.5▲0.2+0.6▲0.7+0.3
民間消費+0.5▲0.2+0.6▲0.2+0.6
民間住宅▲3.2▲2.0▲2.0+0.5+1.1
民間設備+0.8+1.0+2.5▲2.7+2.4
民間在庫 *(+0.2)(▲0.3)(+0.0)(+0.1)(▲0.2)
公的需要▲0.0+0.0▲0.1▲0.3+0.4
内需寄与度 *(+0.5)(▲0.3)(+0.7)(▲0.5)(+0.7)
外需寄与度 *(+0.0)(+0.1)(▲0.1)(▲0.1)(▲0.3)
輸出+2.2+0.4+0.4▲1.4+0.9
輸入+2.3+0.0+1.3▲0.7+2.7
国内総所得 (GDI)+0.1▲0.5+0.5▲0.9+0.2
国民総所得 (GNI)+0.1▲0.7+0.8▲1.0+0.3
名目GDP+0.3▲0.4+0.5▲0.6+0.3
雇用者報酬 (実質)▲0.0+0.7+1.5▲0.4+0.7
GDPデフレータ+0.1+0.5▲0.1▲0.4▲0.3
内需デフレータ+0.6+0.9+0.5+0.6+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2018年10~12月期の最新データでは、前期比成長率がプラスに回帰し、赤い消費と水色の設備投資がプラスの寄与を示している一方で、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がマイナス寄与となっているのが見て取れます。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも前期比年率による予想レンジは+0.3~+1.2%となっており、予測のレンジ上限を超えたとはいえ、ほぼほぼ上限という印象です。ただし、季節調整済の前期比で見て、2018年7~9月期の▲0.7%のマイナス成長に比べて、10~12月期の+0.3%は+1%強と見なされている潜在成長率近傍とはいえ、自然災害による個人消費の落ち込みが解消されたリバウンドを含めれば、やや物足りない数字と受け取る向きエコノミストも多そうです。他方、仕上がりの数字は前期比+0.3%、前期比年率+1.4%ながら、前期比の内外需別内訳は内需寄与度+0.7%、外需(純輸出)▲0.3%ですから、内需主導型の成長であったことは確かです。ただ、先行きリスクとしては、米中間の貿易戦争に代表されるような通商摩擦が筆頭に上げられる場合が多く、我が国輸出の今後の行方が懸念されますが、貿易摩擦の我が国への影響は大きくなく限定的、という分析結果もチラホラと目にします。

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上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。内需主導の成長を裏付けているのは設備投資とともに消費が上げられるわけですが、上のグラフに見られる通り、その背景には順調な増加を続ける雇用者報酬があります。1人当たり雇用者所得と雇用者数の掛け算で増えています。インバウンド消費も順調な拡大を続けており、まだまだ拡大の余地はあると考えられるものの、かつて「爆買い」と称されたほどの爆発的な拡大はそろそろ安定化に向かっている印象ですし、国内労働市場の人手不足に伴う正規雇用の増加や賃金上昇により、毎月勤労統計などの統計が信頼性低い恐れはあるものの、雇用者報酬が順調な伸びを示しています。まだ、景気ウォッチャーや消費者態度指数といった消費者マインドは改善の兆しを見せないものの、人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加圧力となっており、内需主導の成長をバックアップしていると考えるべきです。

最後に、いくつかのシンクタンクから、この1次QEのリポートが出されていて、私が見た以下の3機関の範囲では、足元から目先の日本経済について、「力強さに欠ける」とか「低空飛行」といったフレーズが並んでいた気がします。順不同で、ご参考まで。

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