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2019年2月21日 (木)

帝国データバンク「2019年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果やいかに?

少し旧聞に属する話題ながら、先週木曜日の2月14日に帝国データバンクから「2019年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果が明らかにされています。もちろん、サイトにはpdfの全文リポートもアップされています。景気局面と人で不足の現状、また、デフレ脱却とも併せて賃金動向は気にかかるところです。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を4点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2019年度の賃金改善が「ある」と見込む企業は55.5%と、3年連続で5割を超えた。賃金改善について「ある」が「ない」を9年連続で上回ると同時に、その差も36.4ポイントと非常に大きな状態が続いており、2019年度の賃金動向は概ね改善傾向にある
  2. 賃金改善の具体的内容は、ベースアップが45.6%(前年度比0.2ポイント増)、賞与(一時金)が30.3%(同1.5ポイント減)。ベアは3年連続で4割台の高水準、賞与(一時金)も前年に続き3割台で推移
  3. 賃金を改善する理由は「労働力の定着・確保」が初の8割台となる80.4%で過去最高を更新。人材の定着・確保のために賃上げを実施する傾向は一段と強まっている。「自社の業績拡大」(40.9%)が前年から大きく下回った一方、「消費税率引き上げ」は7.0ポイント上回った。改善しない理由は、「自社の業績低迷」(52.6%)が4年連続で低下。「人的投資の増強」(22.0%)が過去最高を更新し、「消費税率引き上げ」(17.5%)が8.0ポイント増
  4. 2019年度の総人件費は平均3.02%増加すると見込まれ、人件費伸び率は前年度よりやや上昇すると予想される。そのうち、従業員の給与や賞与は総額で約4.1兆円(平均2.82%)増加すると試算される

調査概要というよりも、かなりの程度に網羅的な報告だという気がします。私は元々が雇用をとても重視するエコノミストですし、大学教員に出向して学生諸君の就活にも接して、その思いがますます大きくなり、しかも、繰り返しになりますが、最近ではデフレとの関係で賃金動向はとりわけ重要です。ということで、リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、2019年度の企業の賃金動向についての質問の回答は、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引上げ)が「ある」と見込む 企業は55.5%と、3年連続で5割を超えています。ただし、前回調査(2018年1月)における2018年度見込み(56.5%)と比較すると、賃金改善を見込む企業は1.0%ポイント減少しています。2019年度の賃金動向は概ね改善傾向にあるといえますが、昨年ほどではないかもしれません。これは、いわゆる「官製春闘」の終了と何か関係があるのでしょうか、ないのでしょうか。そして、その2019年度の正社員における賃金改善の具体的内容をリポートから引用すると、上のグラフの通りです。「ベースアップ」が45.6%、「賞与(一時金)」は30.3%に上っています。前回調査(2018年度 見込み)と比べると、「賞与 (一時金)」は1.5%ポイント減少した一方で、「ベースアップ」はほぼ横ばいとなっています。

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企業にとって賃金はコストかもしれませんが、その賃金を改善する具体的理由につき、今年度の賃金改善が「ある」と回答した企業に複数回答で問うた結果をリポートから引用すると、上のグラフの通りです。「労働力の定着・確保」(80.4%)が初めて8割台となり、過去最高を更新し た(複数回答、以下同)。人手不足を半数超の企業で感じるなど深刻度が増すなか、人材の定着・確保のために賃上げを実施する傾向は一段と強まっており、2015年度以降5年連続で 前年を上回っています。

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2019年度の自社の総人件費は、2018年度と比較してどの程度変動すると見込んでいるか問うた結果をリポートから引用すると、上のグラフの通りです。2019年度の総人件費は前年度比で平均3.02%増加すると見込まれ、金額では総額約5.2兆円、そのうち、従業員への給与や賞与は約4.1兆円(平均2.82%)増加すると帝国データバンクでは試算しています。「増加」と回答した企業は70.5%と2年連続で7割を超えた一方で、「減少」は6.7%にとどまり、総じて企業は人件費が増加すると見込んでいることが伺われます。企業にはコストでも、従業員のサイドから見れば購買力であり、個人消費を押し上げる原資でもあります。

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