3か月連続で減産が続く鉱工業生産指数(IIP)と小売業販売額の伸びが物価上昇に追いつかない商業販売統計!
本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が公表されています。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲3.7%の減産を示しており、また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.6%増の11兆8280億円、季節調整済み指数の前月比は▲2.3%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
1月の鉱工業生産、3.7%低下 輸出減が響く、基調判断引き下げ
経済産業省が28日発表した1月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比3.7%低下の100.8だった。低下は3カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中心値(2.5%低下)を大幅に下回った。中国向けの輸出の減少などが響いた。2018年1月(100.8)と並び、1年ぶりの低水準だった。
生産の基調判断は「緩やかな持ち直し」から「生産は足踏みをしている」に下方修正した。経産省は「3カ月連続で低下し、事前の想定より大幅な低下となったため」と説明している。
業種別では、15業種中12業種で低下した。自動車工業は8.6%減となった。一部自動車メーカーが生産を一時停止した影響や、年始に工場稼働日数を例年より少なくしたメーカーがあったことが影響した。輸出減が重荷となり、生産用機械工業は9.8%減だった。半導体メモリーなど含む電子部品・デバイス工業は8.4%減だった。中国の景気減速の影響が出た。
出荷指数は4.0%低下の99.2と、2カ月ぶりに低下した。自動車工業、生産用機械工業など13業種が低下した。
在庫指数は1.5%低下の101.6と、3カ月ぶりに低下した。電気・情報通信機械工業など8業種が低下した。
製造工業生産予測調査によると、2月は5.0%上昇、3月は1.6%の低下だった。ただ、経産省が予測誤差を除去した先行きの試算では、2月は0.4%上昇にとどまっている。
経産省は「3月まで大幅な上昇は見込みにくい」との見通しを説明した。
1月の小売販売額、0.6%増 基調判断は下方修正
経済産業省が28日発表した商業動態統計(速報)によると、1月の小売販売額は前年同月比0.6%増の11兆8280億円だった。一方、季節調整済みの前月比は2.3%減だったことを踏まえ、経産省は小売業の基調判断を「一進一退の小売業販売」と、前月までの「緩やかに持ち直している」から下方修正した。
業種別では自動車小売業が6.0%増だった。新型の普通車や輸入車の販売が好調だった。医薬品・化粧品小売業は2.6%増で、風邪対策のマスクの販売が増えた。燃料小売業は2.0%増だった。一方、各種商品小売業(百貨店など)は5.1%減となった。
大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計は3.0%減の1兆6322億円で、既存店ベースでは3.3%減だった。コンビニエンスストアの販売額は2.6%増の9564億円だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。
まず、1月の鉱工業生産は、昨年2018年11月から3か月連続の減産を示しました。中華圏の春節が2月上旬に控えていたとはいえ、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲2.5%の減産を見込んでいましたので、これをさらに下回ったことになります。しかも、3か月連続の減産ですから、これも引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「緩やかな持ち直し」から「足踏み」に明確に1ノッチ下方修正しています。1月の生産を業種別に少し詳しく見ると、輸送機械工業(除く自動車工業)、無機・有機化学工業、石油・石炭製品工業で増産した一方で、まさに我が国のリーディング・インダストリーである自動車工業、電気・情報通信機械工業、生産用機械工業などで減産を記録しています。特に、自動車工業や電気・情報通信機械工業の2業種は1月に急落しており、外需に起因すると私は受け止めています。また、製造工業生産予測調査に従えば2月は前月比+5.0%の増産、3月は▲1.6%の減産が示されていますが、調査のバイアスを考慮すると、2月の増産幅は+0.4%であり、レンジでは▲0.6~+1.4とゼロをまたぐ試算結果ですので、減産もあり得るという意味で、目先の短期については、基調判断通りに鉱工業生産は足踏みないし停滞が続くものと覚悟すべきです。ただし、その先の春先や年央以降については、東京オリンピック・パラリンピックに向けた公共事業や中国の景気回復に伴う輸出増などから、景気と連動性高い鉱工業生産ですが、このまま景気後退局面に入る可能性は高くないと私は考えています。
続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は消費者態度指数のグラフと同じく景気後退期です。ということで、小売販売額については、ヘッドラインの季節調整していない原系列の統計での前年同月比ではプラスを1年超で続けているものの、これは名目の売り上げであり、1月統計で+0.8%に達しているコア消費者物価(CPI)上昇率を考え合わせれば、1月統計で+0.6%の小売業販売額の伸びは物価上昇に追いついていない、という感じがしなくもなく、加えて、今後、国際商品市況における石油価格の低下とともに物価上昇率がさらに低下し始めると、小売売上額も同時に増加率が減速しそうな気もします。だから、というわけでもないんでしょうが、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では小売業販売の基調判断について、前月までの「緩やかに持ち直している」から「一進一退」と鉱工業生産と同様にこれも明確に1ノッチ下方修正しています。経済産業省のサイトにアップされている「小売業販売額の基調判断」を私が見る限り、季節調整済の系列で見た小売業販売の3か月後方移動平均がかなりのマイナスに低下したのがひとつの判断材料だったのか、という気がします。
| 固定リンク
コメント