春節の影響で対中国輸出が大幅減となり貿易統計は4か月連続の赤字!
本日、財務省から1月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲8.4%減の5兆5742億円、輸入額は▲0.6%減の6兆9895億円、差引き貿易収支は▱兆4152億円の赤字を計上しています。原系列の貿易統計での赤字は4か月連続です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1月の貿易統計、対中輸出17%減 電機・半導体関連落ち込む
財務省が20日発表した1月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆4152億円の赤字だった。赤字は4カ月連続。輸出入ともに減少したが、中国向けの低迷などを背景に輸出減の影響が上回った。中国向け輸出は電気機器や半導体関連が落ち込み前年同月比17.4%減少した。
輸出額は前年同月比8.4%減の5兆5742億円だった。減少は2カ月連続。パナマ向け船舶や韓国向け半導体等製造装置、中国向け鉄鋼が全体を押し下げた。
国・地域別では、中国向け輸出額が9581億円と17.4%減少した。減少は2カ月連続で、2017年1月以来の低水準となった。電気回路等の機器やプラスチック、半導体等製造装置といった品目が減少した。財務省関税局は「中国向け輸出は春節(旧正月)日程の影響がでた」と説明した。
輸入額は0.6%減の6兆9895億円。10カ月ぶりに減少した。原油安を背景に原粗油や石油製品が落ち込んだ。1月の原粗油の円建て輸入単価は5.6%下落した。
対米国の貿易収支は3674億円の黒字で、黒字額は5.1%増加した。増加は7カ月ぶり。自動車や医薬品がけん引し、米国向け輸出は全体で6.8%増加した。輸入は原粗油などの増加で7.7%増となった。
1月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=109円47銭。前年同月に比べて2.7%円高・ドル安に振れた。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲1兆109億円の貿易赤字でしたので、4か月連続の貿易赤字も、▲1兆円超えの赤字額も、どちらも大きなサプライズではありません。国際商品市況における石油価格が、ピークを過ぎたとはいえ、まだ高い状況が続いていますし、2月上旬の中華圏の春節に合わせて、1月の生産調整が実施された結果です。また、原系列の統計では4か月連続の貿易赤字ですが、トレンドを見た季節調整済の系列では昨年2018年年央の7月から半年余りの間貿易赤字が続いています。ただ、上のグラフにも見える通り、輸出入ともに減少しての貿易赤字が続いています。なお、輸入額のピークは国際商品市況の動向にほぼ対応して、昨年2018年10月でした。
輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、現時点での輸出を見る際の注意点は、中国の景気が上向いているにもかかわらず、まだOECD先行指数が前年同月比でマイナスのままですので、我が国からの輸出が減少を続けていて、先進国加盟国の集合体であるOECDの先行指数は前年同月比マイナス、かつ、下り坂でマイナス幅が拡大していますので、我が国の輸出にとっては中国向けと先進国向けのいずれも需要サイドで減少要因となっており、さらに、引用した記事にもある通り、為替がやや円高に触れていますので、価格サイドも減少要因となっていて、どちらも輸出には逆風です。3月統計を見て、中華圏の春節が終了した後の世界経済を見据える必要があるかもしれません。
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