やや増産となり景気後退懸念に和らぐ鉱工業生産指数(IIP)と伸びが縮小する商業販売統計と完全雇用に近い雇用統計!
本日、経済産業省から2月の鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+1.4%の増産を示しており、また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.4%増の11兆240億円、季節調整済み指数の前月比は+0.2%増を記録しています。失業率は前月から▲0.2%ポイント低下して2.3%となった一方で、有効求人倍率は前月と同水準の1.63倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
2月の鉱工業生産、1.4%上昇 1-3月期ではマイナス見通し
経済産業省が29日発表した2月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比1.4%上昇の102.5だった。上昇は4カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中心値(1.0%上昇)を上回った。自動車などの一部業種で1月に大きく低下した反動が全体を押し上げた。
同時に発表した製造工業生産予測調査によると、3月は1.3%上昇だった。仮にこの予測通りに3月の生産が推移しても、「1~3月期の生産指数は18年10~12月期比でマイナスとなる見通し」(経産省)。なお、4月の製造工業生産予測調査は1.1%の上昇だった。
経産省は2月の生産指数の上昇を「大きな回復ではない」として、生産の基調判断は「生産は足踏みをしている」に据え置いた。
2月の生産指数の業種別では、15業種中10業種で上昇した。1月に一部自動車メーカーが生産を停止した反動で、自動車工業は前月比7.5%増加した。半導体製造装置などを含む生産用機械工業は中国向け輸出の回復で5.6%増加した。電気・情報通信機械工業、汎用・業務用機械工業なども上昇した。
一方、半導体メモリーやスマートフォン(スマホ)向け液晶パネルなどを含む電子部品・デバイス工業は3.7%減と4カ月連続で減少した。自動車工業を除く輸送機械工業も大幅に減少した。
出荷指数は1.8%上昇の101.6と4カ月ぶりに上昇した。自動車工業、生産用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業など10業種で増加した。
在庫指数は0.5%上昇の102.2だった。生産・出荷が減少した電子部品・デバイス工業など9業種で増加した
2月の小売販売額0.4%増 自動車の売れ行き好調
経済産業省が29日発表した商業動態統計(速報)によると、2月の小売販売額は前年同月比0.4%増の11兆240億円だった。経産省は小売業の基調判断を「一進一退の小売業販売」に据え置いた。
業種別では自動車小売業が6.1%増だった。普通乗用車の販売が好調だった。医薬品・化粧品小売業は1.8%増で、花粉症対策のマスクや薬の販売が増えた。機械器具小売業は冷蔵庫や洗濯機の販売が伸び、1.7%増だった。一方、各種商品小売業(百貨店など)は3.2%減となった。気温の高い日が多く冬物需要が伸び悩んだ。
大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計は1.5%減の1兆4345億円で、既存店ベースでは1.8%減だった。コンビニエンスストアの販売額は3.8%増の9003億円だった
2月の失業率2.3%、人手不足で9カ月ぶりの低水準
総務省が29日に発表した2月の完全失業率(季節調整値)は前月から0.2ポイント改善し、2.3%だった。9カ月ぶりの低水準となった。厚生労働省が同日発表した2月の有効求人倍率は4カ月連続で横ばいの1.63倍で、人手不足を背景に、良好な雇用環境が続いている。
完全失業者数(実数)は前年同月に比べ10万人減り、156万人だった。1月に季節要因で一時的に増えたが、再び減少に転じた。就業者数は同78万人増の6656万人で、6年2カ月連続で増加した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対して、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は0.01ポイント上昇し、1.15倍だった。雇用の先行指標となる新規求人倍率は2.50倍で、前月を0.02ポイント上回った。新規求人倍率は5カ月連続で上昇した。
2月の新規求人数(実数)は前年同月比2.1%増の103万6945人だった。教育・学習支援業が10.7%増と最も増えており、建設業(5.8%増)、医療・福祉(4.2%増)などが続いた。一方、製造業は3.4%減だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、さすがに、数多くの統計を並べるとやたらと長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。
上のグラフを見る限り、2月の増産は1月の生産の落ち込みをカバーするにはまったく力不足と考えるべきです。しかし、他方で、製造工業生産予測調査に従えば、上振れバイアスを考慮しても3~4月がわずかながら増産となる可能性が高く、年度明け4月以降の景気後退懸念は、依然として払しょくされたわけではないものの、やや和らいだと私は受け止めています。特に、1月生産の急落が自動車産業に起因し、実に我が国の基幹産業ですから、懸念は小さくなかったんですが、1月減産の後の2月は反発しましたし、基調としては2018年半ばから上昇傾向ですから、自動車の在庫調整は2018年前半で終了し、足下では生産増の局面に入っているという見方が多くなっています。もちろん、外需の動向に左右される部分は小さくないですし、4月の増産はゴールデンウィーク10連休に備えた在庫積み増しの割合も含まれていると考えるべきですから、どこまで額面通りに受け取るかはエコノミストの見方によるかもしれません。ただ、サステイナビリティはないものの、7~9月期は10月からの消費税率引き上げ直前の駆け込み需要があると考えるべきですので、ここ半年くらいの先行き景気動向はかなり複雑です。
続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は消費者態度指数のグラフと同じく景気後退期です。ということで、小売販売額については、ヘッドラインの前年同月比もかなりゼロに近づきましたし、季節調整済の系列についても、生産と同じで戻りが物足りないと私は受け止めています。引用した記事にある通り、自動車販売が小売業販売をけん引しており、季節調整していない原系列の販売額で見て、昨年2018年年央から前年同月比比プラスに転じ、昨年10月からは+5~6%の伸びを示す場合もあります。今年9月までこのペースが続くとは思いませんし、消費増税の10月以降は反動減で落ち込むことは容易に想像されますが、現状では消費を支えていることは確かです。
続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は再び2.3%まで低下し、有効求人倍率も1.63倍と高い水準にあり、加えて、グラフにはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月から上昇して1.15倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ1年半余りに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。
| 固定リンク
コメント