ご寄贈いただいた『アベノミクスの真価』を読む!
原田泰・増島稔[編著]『アベノミクスの真価』(中央経済社) をご寄贈いただきました。各チャプターのご著者の方々は、ほぼほぼリフレ派のエコノミストであり、束ねているのは日銀審議委員の原田さんと内閣府統括官の増島さんです。
日本経済の現状は、デフレとの関係で考えると、ほぼデフレからは脱却したものの、日銀の物価目標である+2%にはほど遠い、ということであろうかと思います。そして、本書はこれらにまつわる諸問題について回答を与えようと試みていて、一部に失敗しているものもありますが、ほぼ私も同じ結論に達しそうな気がします。例えば、+2%の物価目標未達については、2014年4月からの消費税率引き上げのショック、国際商品市況における石油価格の動向、そして、欧米では+1%から+2%近辺でアンカーされている物価上昇期待が、我が国では0%近傍でアンカーされていること、の3点を上げています。私なんぞは粗雑にも、国際商品市況の石油価格を上げてしまうことが多いんですが、そうなら日本以外の先進各国でも物価上昇率が低迷するわけで、そうなっていないのは、石油価格以外の我が国独自の要因があるというわけです。また、労働市場の現状についても、賃金が本格的に上昇していないわけですから、完全雇用には達していない、というのが私の結論なわけで、本書もまったく同じ分析結果を示しています。また、旧来の日銀理論から、低金利の副作用として債券価格形成の問題や金融機関の経営の問題などが指摘されていますが、少なくとも後者については、本書では預貸率の低さを原因として上げています。ただ、前者の債券価格形成の問題については、日銀が国債のかなりの部分を購入することにより、いわゆる市場の厚みが失われ、債券価格のボラティリティが高くなる問題はあるんだろうと思います。このボラティリティの高まりという点につき、本書では見逃している可能性があります。また、出口論についても一定の前提を置いたシミュレーションを示して、日銀が債務超過に陥る可能性に言及したのは興味深い点です。ただ、日銀が債務超過に陥るのを回避するために、すなわち、日銀自身の財務状況のために、日本経済を犠牲にするというのは本末転倒であり、我が国経済における日銀が果たすべき役割の放棄であるというのはその通りであろうと思います。
ご寄贈いただいた書籍などは、このように、律儀に取り上げることとしております。個人のブログなんぞという、誠に貧弱なメディアではありますが、図書や論文のご寄贈は幅広く受け付けております。
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コメント
いつもブログを楽しみに読ませていただいております。
特に書評は毎週楽しみにしております。
私は愛知県の東三河地方に在住しているのですが、地域の歴史、自然といった独自の文脈から観光を通じて地域おこしができないかと考えており、その立場から経営、そして地域通貨を通じて経済にも新しい見方をもたらすことができないか、と実務的取組をすると同時に何本か文章を記しております。是非お目を通して頂き、コメントを頂ければと思い、ご連絡させていただきました。
お忙しいとは思いますが、なにとぞよろしくおねがいたします。
投稿: 尾嵜悌之 | 2019年4月29日 (月) 12時07分