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2019年4月 1日 (月)

大きく景況感が低下した日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から3月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは12月調査から大きく低下して+12を示した一方で、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比▲2.8%の減少からスタートしてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業・製造業の景況感 大幅悪化 日銀短観
日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス12だった。前回2018年12月調査のプラス19から7ポイント悪化した。悪化は2四半期ぶりとなる。7ポイントの悪化は12年12月(9ポイントの悪化)以来、6年3カ月ぶりの大幅な悪化となる。米中の貿易摩擦や海外経済の減速が景況感の悪化につながった。非鉄金属やはん用機械などの悪化が目立った。石油・石炭製品や電気機械も悪化した。
3月の大企業・製造業DIは17年3月(プラス12)以来、2年ぶりの低い水準となる。業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。3月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス14を下回った。回答期間は2月25日~3月29日で、回収基準日は3月11日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス8と悪化する見通し。市場予想の中央値(プラス12)を下回った。海外経済の不透明感などを背景に、先行きも慎重姿勢が強い。
19年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=108円87銭と、実勢レートより円高・ドル安だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス21と前回を3ポイント下回った。業況感の悪化は2四半期ぶり。人手不足による人件費の高騰などコスト上昇圧力が逆風となった。卸売などの悪化が目立った。3カ月先のDIは1ポイント悪化のプラス20だった。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス23となり、前回と同じだった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
19年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比1.2%増と、市場予想の中央値(0.7%減)を上回った。人手不足を背景にした省力化投資の需要が追い風となったようだ。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIで見て+14でしたから、ややこれを下回りました。加えて、先行きは+12の予想に対して、実績は+8でしたから、だんだんと乖離幅が大きくなる不安はあります。DIですので方向感覚を見るべき指標であって、水準はそれほど大きな重要性はないながら、低下テンポはそれなりに重要です。水準という意味では、企業規模や製造業・非製造業別で見て、業況判断DIがマイナスに突っ込むのは先行きの中小企業製造業だけであり、足元ではまだプラスをキープしているのも事実です。もちろん、先行きでもっと悪化する可能性もありますし、先行指標である企業マインドが悪化すれば、実体経済においてもラグを伴って景気が下降するのは目に見えています。景況感の悪化の大きな要因は、米中間の貿易摩擦の激化などを受けた世界経済の減速の影響に加えて、石油価格の再上昇も影響しているように私は感じています。少なくとも先行きの石油価格動向は不明ですが、やや懸念の残ることは間違いありません。ですから、中国経済との関係も含めて、紙・パルプ、化学、石油・石炭製品、非鉄金属といった素材産業をはじめとする製造業が先行して景況感の低下を見ているわけで、他方、非製造業は底堅い動きを示しています。すなわち、全規模の業況判断DIで見て、製造業が12月調査+16、3月調査の足元+7、先行き+2と、かなり急速な低下を示しているのにたいして、非製造業は12月調査+15から3月調査の足元も+15、そして先行き+9と、低下のテンポはかなり緩やかです。でも、経験的に製造業が先行指標と考えられますので、非製造業の底支えがどこまで続くのかも不安であることは確かです。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。ただ、このところ、設備投資と雇用に関しては少し異なった動きを見せているのも事実です。上のグラフを見ても判るように、設備についてはやや不足感が薄らいでいるように見え、逆に、雇用についてはさらに不足感が広がっています。極めて大雑把な印象論ながら、設備は製造業だけを対象にした調査であり、世界経済の減速の影響が強く、設備不足感がやや和らいでいる一方で、雇用については非製造業を中心に不足感がひいろがっている、というように、同じ生産要素ながら設備と雇用とで業種間の跛行性が存在するような気がします。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2019年度の全規模全産業の設備投資計画は▲2.8%減という水準で始まっています。これを、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで示された大企業全産業の▲0.7%減とベースを合わせると、短観の調査結果では+1.2%増ですから、設備不足感はやや和らいだとはいえ、設備投資意欲はそれほど低下していないと考えられます。言い古された短観の統計としてのクセですが、3月調査の時点では設備投資計画が固まっておらず、どうしても低めに出るのは例年の通りと解釈すべきであろうと私は受け止めています。

本日正午前の記者会見で官房長官から新元号は「令和」と公表されています。いきなり、景気後退で新しい時代が始まるのは避けたいのは誰しも同じだと思います。

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