下がり続ける消費者態度指数と景気ウォッチャーのマインド指標をどう考えるべきか?
本日、内閣府から消費者マインドを代表する指標である消費者態度指数と景気ウォッチャーが、また、財務省から経常収支が、それぞれ公表されています。消費者態度指数と景気ウォッチャーはともに3月の統計で、経常収支だけ2月の統計です。消費者態度指数は前月から▲1.0ポイント低下して40.5を記録し、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲2.7ポイント低下の44.8を記録した一方で、先行き判断DIも▲0.3ポイント低下の48.6となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆6768億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
3月の消費者態度指数、3年1カ月ぶり低水準 食品値上げ響く
内閣府が8日発表した3月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.0ポイント低下の40.5と6カ月連続で低下した。身近な食料品の値上げや世界経済への先行き不安が重荷となった。指数は2016年2月以来、3年1カ月ぶりの低水準だった。内閣府は基調判断を「弱まっている」で据え置いた。
指数を構成する4つの意識指標のすべてが低下した。「暮らし向き」は1.5ポイント低下の37.7と7カ月連続で低下。15年1月(35.9)以来4年2カ月ぶりの低水準だった。乳製品や塩、麺類などの値上げが予定されることが消費者の暮らし向きに響いたという。「海外経済の減速や輸出の減少に伴う先行き不安」(内閣府)も影響した。
「収入の増え方」は0.6ポイント低下の40.6、「雇用環境」は1.1ポイント低下の43.7だった。
消費者態度指数に含まれない「資産価値」の意識指標は、0.7ポイント低下し40.3となった。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.4ポイント上昇し86.4%となった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えればゼロになる。
調査基準日は3月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は6493世帯、回答率は77.3%だった。
3月の街角景気、現状判断指数は2カ月ぶり悪化 世界経済の先行き懸念で
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は44.8と、前の月から2.7ポイント低下(悪化)した。悪化は2カ月ぶり。指数は2016年7月以来、2年8カ月ぶりの低水準となった。世界経済の先行き懸念や人件費・資材費などの増加による業績圧迫が響いた。
現状指数の大幅な低下を受け、内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」から「回復に弱さが見られる」に下方修正した。下方修正は2018年12月以来3カ月ぶり。
家計動向関連が2.9ポイント低下し44.2となった。3月から食品の値上げが相次いだことを受け「対象となった商品の伸びは非常に鈍化しており、消費者の動きは節約志向に大きくかじを切っている」(東北のスーパー)という声があった。
企業動向関連は2.0ポイント低下し44.9だった。「原材料費の高騰により収益が悪化している。先行きにも明るい兆しは感じられない」(東海の食料品製造業)などの声が聞かれた。世界経済の成長鈍化の影響も複数の景気ウオッチャーが指摘した。雇用関連も2.3ポイント低下し48.4となった。製造業などでの求人減少が観測されるという。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は48.6と、前の月から0.3ポイント低下した。先行き判断指数の部門別では企業動向関連が1.0ポイント低下し47.7となった。製造業は2.1ポイント低下と低下幅が大きく「(中国経済の減速の影響で)輸出ウエートの高い取引先を中心に減産による生産調整の動きがあり、今後減収減益が見込まれる」(中国地方の化学工業)といった声が聞かれた。化学、一般機械、電気機械産業などで悪化の意見が多くみられた。雇用関連も低下した。
一方、家計動向関連は0.1ポイントと小幅に上昇した。大型連休や消費増税前の駆け込み需要への期待が聞かれた。
内閣府は基調判断で先行きについて「海外情勢等に対する懸念もある一方、改元や大型連休等への期待がみられる」とまとめた。
2月の経常黒字、25%増 原油価格下落で輸入減
財務省が8日発表した2月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆6768億円の黒字だった。黒字は56カ月連続。黒字額は前年同月に比べて25.3%拡大した。貿易収支の黒字幅が拡大した。海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支の黒字も増えた。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は前年同月に比べ2.4倍の4892円の黒字だった。輸出額は自動車や鉄鋼などが落ち込み1.9%の減少となった。原油価格の下落を反映し、輸入額が6.6%減った。
第1次所得収支は2兆145億円の黒字だった。海外子会社から受け取る配当金など直接投資の収益が伸び、黒字額は3.2%拡大した。一方、配当金の受取額は減少。証券投資収益の黒字幅が縮小した。
第2次所得収支は635億円の赤字(前年同期は1835億円の赤字)だった。2018年後半に国内で発生した自然災害にかかる再保険金の受け取りが増え、赤字幅が縮小した。
輸送や旅行などのサービス収支は前年同期に比べ1.4倍の2366億円の黒字だった。訪日外国人の消費を映す旅行収支は2274億円の黒字と、2月として過去最高だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、いくつもの統計の記事を並べるとやたらと長くなってしまいました。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

どこまで落ちるのか判りませんが、引用した記事にもある通り、消費者態度指数は前月から▲1.0ポイント低下して40.5と、昨年2018年10月から始まった低下が止まらずに6か月連続となり、方向性だけでなくレベルとしても2016年2月以来3年1か月振りの低水準を記録しています。3月の結果をコンポーネントごとに前月差で少し詳しく見ると、「暮らし向き」が▲1.5ポイント低下し37.7、「雇用環境」が▲1.1ポイント低下し43.7、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.0ポイント低下し39.9、「収入の増え方」が▲0.6ポイント低下しています。加えて、「資産価値」に関する意識指標も前月差から▲0.7ポイント低下し40.3となっています。統計作成官庁の内閣府では、先月の2月統計公表時にそれまでの「弱い動きがみられる」から、「弱まっている」に下方修正していて、今月も同じ表現で据え置いています。次に取り上げる景気ウォッチャーもそうなんですが、こういったマインド指標は実態景気に先行すると考えるべきであり、ここまでマインドが悪化すると実体経済にも一定の影響を及ぼすことは明らかです。

続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。景気ウォッチャーは「家計関連」、「企業関連」、「雇用関連」の3つの項目から構成されていて、最後の「雇用関連」以外の「家計関連」と「企業関連」についてはさらにもう少し細かい項目があったりするんですが、これらの3項目の中で3月統計の現状判断DIで前月から低下幅が大きい方から並べると、「家計関連」▲2.9ポイント、「雇用関連」▲2.3ポイント、「企業関連」▲2.0ポイントの順となります。「企業関連」では非製造業よりも製造業の落ち方が大きく、海外経済減速の影響による輸出不振がうかがえます。また、「家計関連」の中でもっとも低下幅が大きかったのが「サービス関連」であり、逆に、もっとも低下幅が小さかったのが「小売り関連」です。さらに、先行き判断DIを見ると、「小売り関連」は+1.4を示しており、改元やGW10連休などに小売り売上げを増加させようとする商機を見出そうとする期待が見られるんではないかと私は考えています。

最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。月次の季節調整済の系列で見て、安定的に1~2兆円の黒字を計上してます。特に、2月の経常収支が大きな黒字になっているのは、引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の下落の影響と考えるべきです。少し前の昨年2018年9~11月の3か月は貿易収支が赤字を記録していましたが、石油価格もほぼほぼピークを超えて、2018年12月には貿易黒字に回帰しています。ただ、またしても石油価格の動向が不透明ですので、先行きは何とも予想がつきません。
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