前年同月比で4か月連続のマイナスを示した輸出に見る貿易統計の今後やいかに?
本日、財務省から3月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲2.4%減の7兆2013億円、輸入額は+1.1%増の6兆6728億円、差引き貿易収支は+5285億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
3月の貿易収支、2カ月連続で黒字 5285億円 中国向け輸出は9.4%減と低迷
財務省が17日発表した3月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5285億円の黒字だった。黒字は2カ月連続。中国向け輸出は前年同月比9.4%減と低迷し、米中貿易戦争などを背景とした中国経済減速の影響がまだ尾を引いていることを浮かび上がらせたかたちだ。
全体の輸出額は前年同月比2.4%減の7兆2013億円だった。減少は4カ月連続。中国向けに、鉄鋼や、液晶デバイスなどの科学光学機器が減少したことが影響した。
中国向けの輸出額は1兆3046億円で2カ月ぶりに減少した。みずほ証券の稲垣真太郎マーケットエコノミストは「春節の影響がなくなったものの数字としては弱い印象。中国経済減速の影響が出ているようだ」と指摘する。
全体の輸入額は前年同月比1.1%増の6兆6728億円と、3カ月ぶりに増加した。金額ベースではフランスからの航空機輸入が大きかったことに加え、中国からの衣類関連の輸入も増えた。一方、石油製品や原粗油の輸入は減少した。
対米国の貿易収支は6836億円の黒字で、黒字額は9.8%増加した。増加は2カ月ぶり。自動車や建設用・鉱山用機械、半導体等製造装置の輸出が増えた。
3月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=111円16銭。前年同月に比べ4.3%の円安・ドル高だった。
併せて発表した2018年度の貿易収支は1兆5854億円の赤字と、3年ぶりの赤字となった。中国向けの鉱物性燃料や自動車の輸出が増えたものの、原油高の影響で原粗油や液化天然ガスの輸入が金額ベースでは大きく増えたことで、差し引きでは赤字となった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

まず、貿易収支については、季節調整していない原系列の統計を見ると、先月2月統計から黒字に転じ京発表の3月統計も黒字ですから、2か月連続で黒字を計上しています。しかし、傾向を見る季節調整済みの系列では、上のグラフを見ても明らかな通り、昨年2018年年央からほぼ赤字が継続しており、2018年5月から直近の2019年3月までの11か月のうち、黒字を計上したのは、わずかに2018年6月と先月の2019年2月の2か月しかありません。さらに、その2か月のうちの公社の2019年2月は中華圏の春節の影響が大きいと考えるべきですので、1年近くの間でほぼほぼ毎月のように貿易赤字を続けているに近いと私は考えています。輸入サイドの要因として、国際商品市況における石油価格の動向に左右されるとはいうものの、基本的には、輸出サイドの原因であり、すなわち、米中間の貿易摩擦の影響などから世界経済が停滞を示し、我が国輸出に対する需要が低迷しているのが大きな要因です。特に、中国経済の停滞から中国向け輸出が伸びないわけです。

その輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、先進国たるOECD諸国の先行指数と中国の先行指数が向かっている方向に違いが見られるのがグラフから読み取れます。もっとも、前年同月比でOECDも中国もまだマイナスが続いていますので、我が国の輸出数量指数がマイナスを続けている一因となっています。しかも、私が見る限り、まだ輸出数量の底打ちの兆しは見えません。しばらく年央くらいまでは輸出数量は緩やかに減少を続ける可能性が高い、と私は予想しています。加えて、石油価格が再上昇を始めています。昨年ほどの水準に達するペースではありませんが、我が国の貿易収支は簡単には黒字にならないんではないか、と私は考えています。
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