増産を示す鉱工業生産指数(IIP)と伸びが縮小する商業販売統計と引き続き堅調な雇用統計と下がり続ける消費者態度指数!
本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から5月の消費者態度指数が表されています。消費者態度指数の三5月の統計ですが、ほかはいずれも4月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+0.6%の増産を示し、また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.5%増の12兆540億円、季節調整済み指数は前月から横ばいを記録しています。失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.4%と低い水準にあり、有効求人倍率も前月と同じ1.63倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。ただ、消費者態度指数は前月から▲1.0ポイント低下して39.4となり、8か月連続で前月を下回っています。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産4月0.6%増 電子部品低調、回復鈍く
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整値)は102.8と、前月に比べて0.6%上昇した。増産は2カ月ぶり。自動車や生産用機械などの生産が増えた。一方で電子部品・デバイスなど輸出関連の品目は低調だった。中国経済の減速を受けて減産が続いた業種も目立ち、1~3月の停滞からの回復は鈍い。
QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.2%上昇)は上回った。業種別では15業種中、10業種が上昇した。最も上昇に寄与したのは自動車で、前月比3.2%上昇した。国内向けに普通乗用車などが増産となった。前月に大きく落ち込んだ生産用機械はアジア向けのディスプレー製造装置などが回復し、5.3%上昇した。
経産省は「5月の大型連休を前に、生産を4月に前倒しした可能性がある」と指摘した。一方で出荷指数も1.7%上昇の102.6と2カ月ぶりに前月を上回ったことから「需要が良かったことが生産に寄与した面もある」と分析した。
もっとも、業種別の生産では汎用・業務用機械は7.1%低下、電子部品・デバイスは7.7%低下だった。中国向け輸出がけん引役となってきた品目は引き続き減産基調が続いた。
先行きは強弱入り交じっている。メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、5月は前月比5.6%の上昇、6月は4.2%の低下となる。経産省はこうした見通しをもとに生産の基調判断を「一進一退」とし、前月の「このところ弱含み」から上方修正した。経産省は「このところの米中貿易摩擦などの影響はまだ織り込まれていない」と指摘した。
4月の在庫指数は103.8で、前月比横ばいだった。
4月の小売販売額、0.5%増 18カ月連続の増加
経済産業省が31日発表した4月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比0.5%増の12兆540億円だった。18カ月連続の増加。経産省は小売業の基調判断を4カ月連続で「一進一退の小売業販売」に据え置いた。
業種別で見ると、皇位継承に伴う10連休の前に調剤医薬品を買う動きが広がり、医薬品・化粧品小売業が5.8%増となった。花見で総菜や弁当などの販売も好調で飲食料品小売業は1.7%増となった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が1.4%減の1兆5351億円だった。既存店ベースでは1.8%減だった。コンビニエンスストアの販売額は2.6%増の9977億円だった。
4月の失業率は2.4% 2カ月ぶり改善
総務省が31日に発表した4月の完全失業率(季節調整値)は前月から0.1ポイント低下し、2.4%だった。改善は2カ月ぶり。厚生労働省が同日発表した4月の有効求人倍率(同)は1.63倍で、昨年11月から横ばいとなっている。求職者が減り、売り手市場が続いているのを背景に、堅調な雇用情勢が続いている。
完全失業者数は前年同月比4万人減り、176万人だった。男女別の失業率は男性が0.3ポイント低下し2.5%、女性が0.1ポイント上昇し2.3%。転職など自己都合で離職する女性が一時的に増えたが、男性の失業者が大幅に減り全体でも減少した。就業者数は前年同月比37万人増の6708万人で、6年4カ月連続で増加した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は1.16倍と横ばいだった。雇用の先行指標となる新規求人倍率は0.06ポイント上昇の2.48倍で、2カ月ぶりに改善した。
新規求人数は前年同月比0.3%減の96万3317人だった。人手不足が続く建設業や医療・福祉業などで求人が増える一方、生活関連サービス・娯楽業や教育・学習支援業、製造業などの求人が減った。
消費者態度指数、8カ月連続で悪化 内閣府
内閣府が31日に発表した5月の消費動向調査で、消費者心理を表す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整済み)は前月比1.0ポイント低い39.4と8カ月連続で前月を下回った。2015年1月以来となる4年4カ月ぶりの低い水準だった。
調査は全国8400世帯を対象に毎月、今後の暮らし向きなどについて聞いている。消費者態度指数を構成する4つの個別項目はすべて前月の水準を下回った。
個別項目のうち「収入の増え方」は3年3カ月ぶり、「雇用環境」は2年6カ月ぶりの低い水準だった。所得や雇用の悪化を懸念する世帯が徐々に増えている。今後半年間に耐久消費財が今より買い時になるかを問う「耐久消費財の買い時判断」も、4年5カ月ぶりの低い水準だった。
内閣府は調査を踏まえた消費者心理の基調判断を、4カ月連続で「弱まっている」とした
さすがに、4つの統計を並べると、とてつもなく長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。
まず、鉱工業生産については、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比で+0.2%の増産でしたので、ややこれを上回っています。加えて、製造工業生産予測指数では5月+5.6%の増産の後、6月▲4.2%の減産と見込まれており、この統計の上振れバイアスを考慮しても、5月は+1.5%の増産との補正値の試算が示されています。単月の統計を見る限りでは、4月の増産はゴールデンウィークの大型連休前の前倒し生産の可能性もあるものの、15業種の中の10業種が増産を示して、幅広い分野の増産となったことに加えて、5月補正値でもそこそこのプラスが見込まれたことなどから、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を前月の「このところ弱含み」から「一進一退」に上方修正しています。基調判断は生産についてなんですが、出荷も生産以上の増加を示しており、堅調な需要が垣間見えます。もっとも、別の観点ながら、生産の基調判断は先月の統計公表の際に「足踏み」から「このところ弱含み」に下方修正されたばかりですので、毎月のように頻繁に変更すべきかどうかは疑問です。加えて、上のグラフを見れば明らかな通り、「一進一退」とはいえ、今年2019年1月に▲2.5%の大きな低下を記録した後の2~4月は、減産トレンドはストップしたかもしれませんが、以前よりやや低い生産水準での横ばいないし一進一退という点も忘れるべきではありません。
続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は鉱工業生産指数(IIP)のグラフと同じく景気後退期です。ということで、小売業販売額の季節調整していない原系列の前年同月比で見て、引用した記事にもある通り、18か月連続のプラスを記録しているんですが、徐々に伸び率は縮小を示しており、今年2019年に入ってから1月+0.6%増、2月+1.0%増、3月0.6%増、そして、直近で利用可能な4月が+0.5%増と、かなりゼロに近づいていたりします。季節調整済の系列では、とうとう4月の伸びはゼロになっています。前年同月比でゼロパーセント台半ばということになれば、消費者物価(CPI)上昇率がほぼほぼ+1%の水準ですから、名目はプラスでも実質消費はマイナスに落ちている可能性が大きい、と考えるべきです。ただ、ゴールデンウィーク10連休を前に、買い置きのためを含むと見られる医薬品・化粧品小売業が前年同月比で+5.8%の増加を示しています。
続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2%台半ばを記録し、有効求人倍率も1.63倍と高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.16倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年近くに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却にも影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。
最後に、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、消費者態度指数のコンポーネントについて、季節調整済の系列の前月差で見ると、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.6ポイント低下、「雇用環境」が▲1.1ポイント低下、「収入の増え方」が▲0.7ポイント低下、「暮らし向き」が▲0.6ポイント低下、と、軒並み悪化を示しています。引用した記事にも見られる通り、「収入の増え方」が3年3か月振り、「雇用環境」も2年6か月振りの低い水準まで低下を示しており、人手不足から完全雇用に近い労働市場が消費者マインドを下支えしてきたんですが、雇用や収入に関するマインドが大きく悪化を示しており、消費者マインドの基礎となる部分が悪化しているようです。米国のトランプ大統領が次々に打ち出す関税率引き上げによる貿易制限的通商政策が、企業活動に先立って消費者マインドを悪化させているのではないか、とすら思えてしまいます。基本的に、10月の消費税率引き上げ直前の駆け込み需要の時期まで景気後退局面入りはない、と、私は考えてきたんですが、景気動向指数が示すように、すでに景気転換点を過ぎている、というご託宣もひょっとしたらあり得るのか、という気すらしています。
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