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2019年5月20日 (月)

1-3月期GDP統計1次QEから先行きの景気動向を考える!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.5%、年率では+2.1%を記録しました。2四半期連続のプラス成長で、1~3月期は前期よりも成長が加速しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月GDP、年率2.1%増 個人消費は0.1%減
内閣府が20日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%増、年率換算では2.1%増だった。2四半期連続のプラス成長となった。10~12月期は年率換算で1.6%増だった。住宅投資や公共投資の増加がプラス成長に寄与した。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.1%減で、年率では0.3%減だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%増、年率では3.3%増だった。名目でも2四半期連続のプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が0.1%分のプラス、外需の寄与度は0.4%分のプラスだった。
項目別にみると、住宅投資は1.1%増で、3四半期連続でプラスだった。持ち家を中心に持ち直しの傾向がみられた。公共投資は1.5%のプラスだった。
輸出は2.4%減だった。中国を中心として海外経済の減速が影響した。輸入は内需の弱さを反映して4.6%減となった。輸入の減少幅が輸出の減少幅を上回ったため、GDPにはプラスに寄与している。
個人消費は0.1%減と、2四半期ぶりのマイナスだった。暖冬の影響で衣料品の販売が不調だったことや、食品の値上げを受け消費意欲が冷え込んだことが寄与した。
設備投資は0.3%減で、2四半期ぶりのマイナス。米中貿易摩擦などによる中国経済の減速懸念で、電気機械などの製造業を中心に設備投資を手控える動きがみられた。民間在庫の寄与度は0.1%のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.2%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のプラスだった。
同時に発表した2018年度のGDPは実質で前年比0.6%増、生活実感に近い名目で0.5%増だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/1-32018/4-62018/7-92018/10-122019/1-3
国内総生産GDP▲0.1+0.5▲0.6+0.4+0.5
民間消費▲0.1+0.6▲0.3+0.2▲0.1
民間住宅▲2.4▲2.1+0.8+1.4+1.1
民間設備+1.2+2.4▲2.5+2.5▲0.3
民間在庫 *(▲0.2)(▲0.0)(+0.1)(+0.1(+0.1)
公的需要▲0.1▲0.1▲0.2+0.3+0.2
内需寄与度 *(▲0.1)(+0.6)(▲0.4)(+0.7)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.1)(▲0.1)(▲0.2)(▲0.3)(+0.4)
輸出+1.0+0.7▲2.0+1.2▲2.4
輸入+0.7+1.0▲1.0+3.0▲4.6
国内総所得 (GDI)▲0.3+0.4▲0.9+0.4+0.9
国民総所得 (GNI)▲0.4+0.6▲1.1+0.5+0.7
名目GDP▲0.2+0.3▲0.6+0.5+0.8
雇用者報酬 (実質)+1.0+1.4▲0.5+0.2+0.1
GDPデフレータ+0.5▲0.1▲0.4▲0.3+0.2
内需デフレータ+0.9+0.5+0.6+0.5+0.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

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まず、潜在成長率を上回るという意味で、1~3月期GDP成長率は1次QE段階ではかなり大きなプラス成長となっています。別の観点からは、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比で▲0.3%のマイナス成長、レンジでも▲0.4%~+0.4%でしたから、上限を上回る大きなプラス成長ということになります。内外需ともにプラス寄与なんですが、内需では消費も設備投資もマイナスで在庫がプラスですし、外需のプラス寄与については輸出が伸びたからではなく、国内需要の減速を受けて輸入が減ったことに起因している点などを考慮に入れて、成長率の数字の量的な面ではなく、成長の質のようなものを考え合わせると、それほど評価できる成長の姿ではないのかもしれません。ただし、景気動向指数の基調判断などから、景気後退局面が近い、ないし、すでに入っている、といった景気後退に対する懸念は大きく和らいだと私は受け止めています。少なくとも、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルな景気後退観測が成り立ちにくくなったことは確かです。もちろん、米中間の貿易摩擦の影響やそれに起因する中国経済の低迷などから、おそらく、5~6月統計あたりから輸出をはじめとして鉱工業生産など、我が国景気に密接に関連する各種統計にも停滞感が出始める可能性があることは覚悟すべきです。しかし、もう少し先を考えると、ポイント還元などで、かなりの緩和措置が講じられる予定とはいえ、10月の消費税率の引き上げ直前には一定の駆け込み需要はあると想定され、1~3月期の住宅投資にはすでにそれが現れているとの見方もありますので、年度前半くらいまでの景気後退局面入りは可能性として低い気がしています。ただ、年度後半には駆け込み需要の後の反動減はありえますので、決してサステイナブルではなく、景気局面の進み方はやかなり複雑な気がしています。

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上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。1~3月期の消費はわずかながらマイナスとなっていますが、雇用者報酬が伸び悩んでいるのが見て取れます。インバウンド消費も順調な拡大を続けており、まだまだ拡大の余地はあると考えられるものの、かつて「爆買い」と称されたほどの爆発的な拡大はそろそろ安定化に向かっている印象です。まだ、消費者マインドは改善の兆しすら見えませんが、現在の人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加の方向の影響を及ぼすことが考えられますし、加えて、賃金が上昇して消費者マインドが上向けば、内需主導の成長がサポートされるものと考えます。もちろん、賃金上昇はデフレ脱却に向けて有効であることは明らかです。

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