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2019年6月28日 (金)

鉱工業生産指数(IIP)も一進一退が続き雇用統計はタイトな労働市場を示す!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+2.3%の増産を示し、また、失業率は前月同じ横ばいの2.4%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント低下したものの1.62倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産5月2.3%上昇、先行きは「一進一退」
経済産業省が28日発表した5月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整値)は105.2だった。前月比2.3%上昇と大幅に伸び、2カ月連続で上昇した。国内需要が強く、自動車や自動車部品の生産が好調だった。6月には反動減が見込まれるため、経産省は「生産は一進一退」との基調判断を維持した。
15業種のうち、13業種で上昇した。自動車の伸び幅が大きく、前月から5.2%上昇した。5月に国内で新モデル車の発売が多く、生産が増えた。海外向けも需要が回復しているという。電気・情報通信機械工業は4.4%上昇だった。国内でデスクトップ型パソコンや開閉制御装置などの大型受注が相次いだ。
5月は大型連休の影響で企業の生産活動は一定程度の停滞が見込まれていた。実際には国内需要に対応するため、連休中も稼働したり、一日の生産量を増やしたりする動きが広がった。
もっとも先行きは強くない。メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、6月は前月比1.2%低下、7月は0.3%上昇となる。経産省は「今後生産は上昇基調にあるとまでは言えない」とした。同省の聞き取り調査では、中国経済の先行きを懸念する声が企業から出たという。
5月の在庫指数は104.4で、前月比0.6%上昇した。上昇は2カ月ぶり。化学工業で日焼け止めなど季節商品の在庫が増えた。
5月の有効求人倍率1.62倍、0.01ポイント低下 失業率2.4%
厚生労働省が28日に発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.01ポイント低下し1.62倍だった。低下は7カ月ぶりで、10連休明けに一時的に求職者が増えたことなどが影響した。総務省が同日発表した5月の完全失業率(同)は2.4%と前月から横ばいで推移した。「雇用環境は着実に改善が続いている」(総務省)という。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は前月から0.01ポイント低下し、1.15倍だった。雇用の先行指標とされる新規求人倍率は0.05ポイント低下し2.43倍だった。
新規の求人数は前年同月比2.5%減の93万8680人。米中貿易摩擦の影響で業績悪化の懸念がある製造業は8.8%減と4カ月連続で前年同期を下回った。一方、人手不足が続く宿泊業・飲食サービス業や運輸業・郵便業などでは前年を上回る状況が続いた。
完全失業者数は前年同月比7万人増の165万人で、2カ月ぶりに増加した。転職など自己都合で離職する人が増えたという。就業者数は6年5カ月連続で増え、34万人増の6732万人だった。このうち正社員は24万人増、パートなど非正規で働く社員は27万人増だった。

2つの統計を並べると、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは季節調整済の系列で前月比+0.7%の増産でしたから、+2.3%増という実績は確かに大きく見えるんですが、製造工業生産予測指数で見て6月▲1.2%の減産に続いて、7月も+0.3%の増産にとどまるとの見込みですので、決して先行きが増産に向かうわけではありません。しかも、製造工業生産予測指数には上振れバイアスがあるため、6月▲1.2%の減産という調査結果は、補正した最頻値で▲1.7%のマイナス、幅をもって見れば▲2.7%~▲0.7%のレンジと試算されています。ですから、5月の増産は単月の統計でもあり、そのまま基調が変化したとは受け取れません。5月統計を少し詳しく業種別に見ると、引用した記事にもある通り、生産・出荷とも自動車工業と電気・情報通信機械工業の伸びが大きくなっています。まさに、我が国のリーディング・インダストリーであり、とても望ましい姿に見えなくもないんですが、昨日、商業販売統計の小売業販売額で見たように、自動車やデスクトップ・パソコンといった高額な耐久消費財の需要の高まりは、10月からの消費税率引き上げ前の駆け込み需要に起因する可能性が否定できません。駆け込み需要が既に始まっているかどうか、また、どれくらいの規模になるか、現時点では何とも判断がつきかねますが、政府がキャッシュレス決済に対してポイント還元により補助して、駆け込み需要とその反動をならす政策を決定していますが、駆け込み需要と反動減がゼロになると考えているエコノミストはいないと思いますし、一定の需要のかく乱は生じる可能性が高いと私も考えています。

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続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2%台半ばを記録し、有効求人倍率も1.63倍と高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.16倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年近くに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却にも影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

最後に、エコノミストの間で5月鉱工業生産指数(IIP)の大幅な伸びは季節調整の何かのイタズラ、というか、ひょっとしたら不具合ではないか、という見方が示されていますが、私はCENSUS局法のアルゴリズムからして、取りあえずは、考慮する必要はないんではないか、と考えています。確かに10連休はありましたが、パラメータの設定を間違えているとは考えられず、かつての、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻の際のように、とてつもない急激で不連続な変化が生じていたわけではありません。増産や景気拡大に対するネガティブな見方を示しがちな証券会社の債券営業サポートのエコノミストやアナリストのポジショントークかどうかを見極める必要があるかもしれません。逆に、証券会社でも株式営業サポートのエコノミストやアナリストがこういった主張をしているのであれば、あるいは、耳を傾けるべきだという気がしないでもありません。

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