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2019年6月26日 (水)

6月調査の日銀短観でどこまで業況判断は悪化すると予想されているのか?

来週月曜日7月1日の公表を控えて、シンクタンクから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画はもちろん今年度2019年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、足元から先行きの景況感に着目しています。一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
3月調査 (最近)+12
+21
<▲2.8>
n.a.
日本総研+11
+19
<+5.6%>
先行き(9月調査)は、全規模・全産業で6月調査対比▲2%ポイントの悪化を予想。雇用・所得環境の改善や消費増税を見据えた駆け込み需要が業況見通しのプラスに作用する一方、米国の保護主義的な通商政策など、海外情勢の先行き不透明感が景況感を下押しする見込み。
大和総研+7
+20
<+2.0%>
先行きの日本経済は、引き続き潜在成長率を下回る低空飛行を続けるだろう。まず、外需の低空飛行は当面続く公算が大きい。そうした中で内需の重要性が相対的に増してくるが、前述したように、雇用者報酬の増加ペース鈍化と消費マインドの悪化、そして今後発生する消費増税の影響などを受け、家計消費が本格的な回復・拡大に回帰するには時間を要するだろう。そして内外需が振るわない中で積み上がった在庫の調整圧力が当面は残存する。
こうした事情を勘案し、6月日銀短観では、製造業と非製造業の業況判断DI(先行き)が、いずれも引き続き悪化すると見込む。
みずほ総研+10
+20
<+4.9%>
先行きの製造業・業況判断DIは横ばいを予測する。
当面は米中間の貿易摩擦などを受けて中国経済やIT関連需要の持ち直しが期待しがたいことから、先行きの景況感は改善しないだろう。通商分野や不確実性に関する用語を含む記事件数を指数化した通商政策不確実性指数をみると、ファーウェイへの制裁措置が報じられたことなどを受けて足元で大幅に上昇している。また今後の米中貿易交渉の行方も不透明だ。さらに物品貿易協定(TAG)を巡る日米交渉も今後本格化することが予想される。仮に自動車に追加関税が課された場合、自動車だけでなくそれ以外の幅広い業種に影響が出る恐れがある。こうした対外的な不確実性が残存している中では、海外環境の影響を受けやすい製造業の業況感の改善は見込み難いと考えられる。
先行きの非製造業については、横ばいを見込む。根強いインバウンド需要などが引き続き押し上げ要因となる一方で、労働需給のひっ迫に伴う人件費上昇や人手不足による供給制約は、引き続き多くの業種の下押し要因となる だろう。
小売業やサービス業については、消費増税前の駆け込み需要の顕在化が期待される一方で、消費増税を控えて家計の節約志向が高まることへの懸念もあり、景況感の改善幅は限定的なものとなるだろう。非製造業全体としては横ばいに留まるとみている。
ニッセイ基礎研+8
+19
<+3.9%>
先行きの景況感もさらなる悪化が見込まれる。米中通商交渉は合意の目処が立っておらず、今後は米国による追加関税第4弾(3000億ドル相当分)発動が懸念される。また、参議院選挙後は日米通商交渉が本格化し、自動車輸出規制や為替条項導入の要求といった米政権からの対日圧力の高まりが懸念されるほか、英国のEU離脱問題についても引き続き難航が予想される。先行きの不透明感が強く、製造業は事業環境のさらなる悪化を想定せざるを得ない。非製造業も、インバウンドを通じて世界経済との繋がりが強まっただけに海外情勢への懸念が現れやすいほか、消費税率引き上げを控えた消費者マインド悪化や人手不足への懸念も重荷になりそうだ。
一方、消費税率引き上げを控えた駆け込み需要や、中国政府が相次いで打ち出している景気対策などへの期待が一定の下支えになることで、先行きの景況感が底割れする事態は避けられると見ている。
第一生命経済研+10
+20
<大企業製造業+15.9%>
7月初に発表される日銀短観は、業況判断DIが前回比△2ポイントの悪化になると予想する。前回の△7ポイントに比べると、悪化ペースに歯止めがかかるだろう。この結果は、10月の消費増税を前に、増税を実行するうえで、追加経済対策がどうなりそうかを考えるための試金石となりそうだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+10
+22
<大企業全産業+8.9%>
日銀短観(2019年6月調査)の業況判断DI(最近)は、大企業製造業では、前回調査(2019年3月調査)から2ポイント悪化の10と、2四半期連続で悪化すると予測する。中でも海外経済減速の影響を強く受ける加工業種の悪化が大きいだろう。先行きについては、3ポイント悪化の7と、海外情勢の不透明さを懸念して慎重な見方が示されよう。
三菱総研+8
+20
<+3.8%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業が+5%ポイント、非製造業が+19%ポイントと、いずれも業況悪化を予測する。消費税増税前の駆け込み需要も見込まれることから内需は2019年9月にかけて拡大が予想されるものの、米中貿易摩擦の一段の激化、中国をはじめとする海外経済の減速、金融市場のリスク回避姿勢の強まりによる株安や円高、日米物品協定(tag)交渉の行方などには警戒が必要な局面であり、企業マインドの重しとなるであろう。
ということで、上のテーブルに見られるように、ほぼすべてのシンクタンクで大企業製造業・非製造業とも6月調査の業況判断DIは低下=悪化すると見込まれています。唯一の例外は三菱リサーチ&コンサルティングが予想する大企業非製造業であり、3月調査から+1ポイント改善すると見込まれています。リポートからそのまま引用すると、「良好な雇用・所得情勢、令和への改元効果により、特に小売や宿泊・飲食サービスへの需要が強いことがプラスに作用」しているんではないか、と分析しています。他のシンクタンクでは押しなべて、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速の影響から製造業・非製造業ともに業況判断DIは悪化する、特に製造業ではその悪化幅が大きい、と見込んでいます。まあ、順当なところかもしれません。さらに、上のテーブルでは「ヘッドライン」として取りまとめている先行きについては、9月調査でも基本として引き続き悪化を見込むシンクタンクが多いものの、10月からの消費税率引き上げ直前の駆け込み需要や中国における景気下支え対策への期待などから、少なくとも大きな悪化を示すとの予想は少なく、横ばいないし改善を見込む機関すらあります。ただし、今回の予想のスコープには入っていませんが、消費税率引き上げ以降の年度後半の景気については決して予断を許さないというのは多くのエコノミストの共通認識ではないか、と私は考えています。 下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。
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