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2019年7月23日 (火)

本日公表されたばかりの「経済財政白書」をザッとながめる!!!

本日の閣議で、本年度の「経済財政白書」が報告されています。400ページを軽く超えるボリュームですので、細かなポイントまでは目が届いていないことと思いますが、公表当日に取り上げる意味はあると思いますので、雇用に関して賃金と多様化だけながら、グラフを2点引用して簡単に見ておきたいと思います。

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まず、「経済財政白書」 p.80 第1-3-9図 人手不足と賃金 を引用すると上の通りです。(1) が賃金フィリップス曲線であり、(2) は賃金上昇率の回帰分析結果です。上のパネルを見ると、青の1990年代から緑の2000年代、そして、赤の2010年代と、最近になるほどフィリップス曲線がフラットになっており、因果関係ではない相関関係ながら、人手不足の代理変数である失業率に対して賃金の反応が鈍くなっていることが見て取れます。そして、下のパネルから、パラメータの大きさはそれほど差がないものの、人手不足よりも労働生産性向上の方が賃金上昇との相関が強い、ということが明らかにされています。

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次に、「経済財政白書」 p.204 第2-3-2図 多様な人材と生産性 を引用すると上の通りです。生産性が賃金上昇をもたらすわけですから、その生産性の向上に結び付く要因を探って、従来の日本型雇用慣行のような青年・壮年・中年の男性雇用一点張りではなく、女性の活躍を促し高齢者も参加できる雇用という意味で、雇用の多様性という結論に達するものの、単に多様性があればそれでOKというわけでもないようで、雇用の多様性に加えて、計画やビジョン、あるいは、柔軟な働き方を組み合わせると生産性がさらにアップする一方で、そういった取組なしの多様性はかえって生産性を低下させる、という結論を導いています。なお、生産性は最近5年間の全要素生産性(TFP)で代理しています。ただ、私の目には疑問と映る分析結果が2点あり、第1に、正規雇用に加えて非正規雇用の増加による雇用形態の多様化は、生産性向上をもたらす雇用多様化なのでしょうか。第2に、雇用の補完関係と代替関係について、「高齢者雇用の増加が若年層の賃金や雇用(採用)を抑制するとの関係性はみられておらず、若年層が抱えていた高齢者の増加に対する懸念は必ずしも正しくない」(p.208)、また、「産業等をコントロールした簡単な回帰分析を行ったところ、外国人従業員の伸びと日本人従業員の伸びには有意に正の関係があるとの結果が得られた」(p.211) などと結論されており、高齢者雇用が若年層の賃金や雇用に負の影響を及ぼすことはなく、外国人雇用と日本人雇用にはむしろ補完関係が見られる、ということになっています。分析手法についてはともかく、結論については直感的に疑問が残ります。繰り返しになりますが、分析手法などについて詳細に見ているわけではないものの、平たくいえば、単に景気のいい会社が、高齢者も雇えば若年層の賃金も上げて、外国人雇用を増やせば日本人の雇用も増加させる、逆に、景気の悪い会社は高齢者も若年層も関係なく雇用を減少させ、外国人も日本人もどちらも雇わない、ということなのではないか、という気がします。直感的な私の理解であり、根拠はありません。

繰り返しになりますが、極めて限定的な範囲でしか目が届いておらず、従って、もっと重要な点を見逃がしている可能性が大いにあるんですが、「経済財政白書」の公表当日に取り上げるのもひとつの値打ち、と考えています。

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