10月の消費税率引き上げを経て今年度末くらいまでの短期経済見通しやいかに?
先日8月9日に内閣府から公表された本年4~6月期GDP統計速報1次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから2020年度末くらいまでの短期経済見通しがいっせいに明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、本年度2019年度末まで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 2019/4-6 | 2019/7-9 | 2019/10-12 | 2020/1-3 | FY2019 |
actual | forecast | ||||
日本経済研究センター | +0.4 (+1.8) | +0.1 (+0.3) | ▲0.8 (▲3.3) | +0.0 (+0.1) | +0.7 |
日本総研 | (+0.6) | (▲2.9) | (+1.5) | +0.8 | |
大和総研 | +0.0 (+0.1) | ▲0.4 (▲1.7) | +0.3 (+1.0) | +0.9 | |
みずほ総研 | +0.0 (+0.2) | ▲0.9 (▲3.4) | +0.1 (+0.3) | +0.7 | |
ニッセイ基礎研 | +0.2 (+0.7) | ▲0.6 (▲2.5) | +0.1 (+0.4) | +0.4 | |
第一生命経済研 | +0.1 (+0.3) | ▲0.5 (▲2.1) | +0.2 (+0.6) | +0.9 | |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.2 (+0.6) | ▲0.6 (▲2.4) | +0.2 (+0.7) | +0.9 | |
三菱総研 | +0.1 (+0.2) | ▲0.6 (▲2.5) | +0.1 (+0.5) | +0.7 | |
SMBC日興証券 | ▲0.6 (▲2.3) | +0.5 (+1.8) | +0.0 (+0.1) | +0.9 | |
農林中金総研 | +0.0 (+0.0) | ▲0.5 (▲2.0) | ▲0.4 (▲1.5) | +0.7 | |
明治安田生命 | +0.0 (+0.1) | ▲0.6 (▲2.2) | +0.1 (+0.4) | +0.8 |
一番右の列の2019年度成長率は前年度比そのままですが、四半期成長率については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。2019年4~6月期までは実績値、7~9月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、日本総研のリポートでは前期比年率の成長率しか利用可能ではありませんでした。ということで、見れば明らかなんですが、10月からの消費税率の引き上げの前後の動向については、かなり多くの機関で足元の7~9月期の駆け込み需要はそれほど大きくなく、年率成長率でも潜在成長率水準の+1%に達しない一方で、10~12月期には消費税率引き上げによる成長率の落ち込み、マイナス成長を見込む結果となっています。唯一の例外はSMBC日興証券であり、実は、私はこのSMBC日興証券の「ハウスビュー」の経済見通しの詳細バージョンのニューズレターをメールでもらっているんですが、それを参照するまでもなく、キャッシュレス決済を対象とする5%ポイント還元などの駆け込み需要と反動減をスムージングする政府対策などにより、逆に、7~9月期に買い控えが起こり、増税後の10~12月期にその反動増が生ずる、と見込んでいるようです。官庁エコノミストの経験ある私の目から見て、とても大きな疑問符がつきますし、上のテーブルを見ても、かなりの少数意見のような気がします。
もうひとつの観点は、消費税率引き上げのショックがどの程度長引くかで、これも、多くの機関はマイナス成長は1四半期だけで、来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰すると見込んでいます。逆にいえば、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要がそれほど大きくない、ということの裏返しなのであろうと私は受け止めています。この点の少数意見は農林中金総研であり、2020年1~3月期までマイナス成長が2四半期連続で継続すると見込んでいます。ただ、上のテーブルでは省略していますが、農林中金総研のリポートでも2020年4~6月期にはプラス成長に回帰すると予測しています。もしも、農林中金総研の見通しが正しければ、世間では2四半期連続のマイナス成長でテクニカルな景気後退局面入りのシグナルと受け取る可能性がないでもありませんが、まあ、2020年に入れば、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果などもあって、それほど長くマイナス成長は続かないんでしょうね。
下のグラフは日本経済研究センターのサイトから短期経済見通しの前期比と寄与度のグラフを引用しています。
最後に、私が知る限り、浜銀総研と富国生命が年度半期の上半期と下半期のベースの見通しを、また、信金中金地域・中小企業研が年度の見通しを、それぞれプレスリリースしています。四半期ベースの見通しが利用可能ではなかったので上のテーブルには含めていません。ほかにもあるのかもしれませんが、取りあえず、これら3機関をどうしても見たい方は、下にリンクだけ置いておきます。
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