7月統計で下落幅が拡大した企業物価(PPI)の今後の方向感やいかに?
本日、日銀から7月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.6%の下落と、先月統計からマイナスに転じて、今月はマイナス幅が拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の企業物価指数、前年比0.6%下落 16年12月以来の下げ幅
日銀が13日発表した7月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.2で前年同月比で0.6%下落した。下落幅は2016年12月以来2年7カ月ぶりの大きさ。6月に2年6カ月ぶりのマイナスとなったが、7月は2カ月連続での下落となった。
前月比でみると横ばいだった。米中貿易摩擦によるリスク警戒感の高まりで原油相場が下落し、「石油・石炭製品」「化学製品」「プラスチック製品」などが低下した。一方で夏季電力料金の適用期間に入ったことから「電力・都市ガス・水道」が上昇した。夏季電力料金の影響を除くと前月比0.2%のマイナスとなっている。
円ベースでの輸出物価は前年比で4.7%下落し、3カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%下落した。輸入物価は前年比8.1%下落し、3カ月連続のマイナスとなった。前月比では1.8%の下落となった。中国経済の先行き不透明感の強まりで「化学製品」などが低下した。軟調な原油相場も下落に影響した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは373品目、下落したのは280品目だった。上昇と下落の品目差は93と6月の確報値(122品目)から29品目減った。
日銀の調査統計局は「米中貿易摩擦の影響で商品市況が悪化しており、これが物価下落の要因となっている。今後も注視が必要だ」との見通しを示した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
企業物価指数(PPI)のうちのヘッドラインとなる国内物価は、前年同月比で見て先月公表の6月統計が2016年12月以来の1年半振りにマイナスに転じて▲0.1%を示した後、7月にはさらにマイナス幅を拡大して▲0.6%となりました。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、前年同月比で▲0.5%の下落ということでしたので、ほぼジャストミートしました。国際商品市況における石油価格の低迷により、国内物価のうちの石油・石炭製品が前年同月比で見て▲8.7%と下落幅を拡大し、輸入物価では石油・石炭・天然ガスが▲13.8%を記録しています。加えて、米中貿易摩擦に起因する中国経済の停滞などにより、同じく非鉄金属が▲6.7%、化学製品が▲3.7%、などと下落を続けています。上のグラフを見ても明らかな通り、ヘッドラインとなる国内物価も、輸出物価も輸入物価も、需要段階別で見て、素原材料も中間財も最終財も、すべて7月統計では前年同月比でマイナスを付けました。
人手不足の中で人件費比率の高い企業向けサービス価格指数(SPPI)を除けば、企業物価(PPI)が下落し始め、消費者物価(CPI)も上昇幅が縮小しています。先行きについても、本日公表のPPIでは国際商品市況や中国経済の影響を受け弱含みの動きが見込まれます。特に、円ベースの輸入物価の前年同月比上昇率は、昨年2018年8月にピークの+12.3%を付けていますので、来月統計までさらに下落幅を拡大する可能性があります。CPIも、10月から消費税率が引き上げられますが、その影響を除けば、幼児教育無償化のインパクトなどによりさらに上昇幅が縮小すると予想されています。ますます物価目標から遠ざかるような気がします。特に、気がかりなのは為替相場です。従来から、私は日本経済の先行き最大のリスクは為替相場であると強く主張してきていますが、東京市場におけるドル・円為替のスポット中心相場の月中平均の前年同月比で見て、今年2019年6月は▲1.8%、7月は▲2.8%の、それぞれ円高となっています。この6~7月の円ドル相場は108円台だったんですが、今週は105円台で推移していたりもします。広く報じられている通り、米国の連邦準備制度理事会(FED)が利下げに転じています。日銀はどういった動きを示すんでしょうか?
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