基調判断が下方修正された鉱工業生産指数(IIP)と駆け込み需要が始まった商業販売統計!
本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.2%の減産を示した一方で、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.0%増の12兆540億円、季節調整済み指数も前月比+4.8%増を記録しています。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
8月の鉱工業生産、1.2%低下 判断下方修正、在庫率指数は15年基準で最高
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比1.2%低下の101.5だった。低下は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.5%低下)を下回った。米中貿易摩擦を発端とした世界経済の減速を受け、生産も低迷している。
経産省は生産の基調判断を「生産は一進一退」から「生産はこのところ弱含み」に下方修正した。同じ「弱含み」に下方修正した3月以来、5カ月ぶりの下方修正となる。
業種別では、15業種中12業種で低下した。鉄鋼・非鉄金属工業は4.7%減だった。生産設備の定期修繕があったことに加え、台風で生産体制に影響が出た。フラットパネル・ディスプレイ製造装置や半導体製造装置を含む生産用機械工業は、中国向け生産の減少などで2.6%減だった。自動車工業は1.1%減だった。
電子部品・デバイス工業は4.5%増加と、2カ月連続で上昇した。同業種の出荷指数の前年同月比伸び率から在庫指数の前年同月比伸び率を引いた出荷・在庫バランスはプラス10.5とプラスに転じた。同業種は9月の生産予測もプラスとなっており、経産省は「下げ止まりの兆しも見られる」と話した。
出荷指数は1.4%低下の101.1と2カ月ぶりに低下した。「消費増税前の駆け込み需要は特に見られない」(経産省)という。
高水準にある在庫は横ばいの104.5だった。在庫の出荷に対する比率を表す在庫率指数は2.8%上昇の110.5と、2015年基準で最高となった。
製造工業生産予測調査によると、9月は1.9%上昇、10月は0.5%の低下だった。この数値を前提に7~9月期の鉱工業生産指数を計算すると102.5と、4~6月期(103.0)より低い。現状と先行きについて経産省は「生産水準がじりじりと下がる中、在庫も高止まりしており、生産が回復する様子はない」と説明した。
製造工業生産予測は下振れしやすく、経産省が予測誤差を除去した先行きの試算は9月は0.3%上昇だった。
8月の小売販売額、2.0%増 気温上昇でエアコンなど好調
経済産業省が30日発表した8月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比2.0%増の12兆540億円と2カ月ぶりに増加した。天候に恵まれ、夏物関連商品の売り上げが伸びた。経産省は小売業の基調判断を「一進一退の小売業販売」と前月から据え置いた。
業種別で見ると、9業種のうち8業種でプラスとなった。8月は東日本を中心に気温の高い日が続き、エアコンなどの家電を含む「機械器具小売業」が12.1%増、紫外線(UV)対策商品を含む「医薬品・化粧品小売業」が6.3%増と伸びが目立った。夏物衣服も好調で「織物・衣服・身の回り品小売業」は4.9%増だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が0.9%増の1兆5897億円だった。既存店ベースでは0.4%増だった。経産省は「百貨店では、韓国からの訪日客の減少で海外の購買客数が減少しつつあるとの声があった」と明らかにした。
コンビニエンスストアの販売額は1.9%増の1兆950億円。調理品やサラダなど、調理が不要な食品の売り上げが伸びた
これだけの統計を並べると、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、中央値で▲0.5%の減産、レンジの下限でもレンジ▲1.0%でしたので、実績の▲1.2%の減産はかなり大きいと考えるべきです。従って、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を「生産は一進一退」から「生産はこのところ弱含み」に下方修正しています。ただし、先月統計公表時に製造工業生産予測指数に従えば9月の生産は前月比マイナスの減産と予想されていたんですが、本日公表の製造工業生産予測指数では9月は+1.9%の増産、予測誤算を考慮した補正値でも+0.3%の増産と見込まれていますから、消費税率引き上げ以降の消費動向にも大いに左右されるものの、世界経済の低迷とともに一直線に生産も低下する、ということはなさそうです。とはいうものの、世界経済の減速に起因し、特に中国への輸出が生産低迷の原因ですから、少なくとも早期に生産が回復するという見込期は立ちません。加えて、これも引用した記事にある通り、四半期でならしてみて、7~9月期の生産は4~6月期には及ばず、前期比マイナスに帰結しそうな見込みです。10~12月期も消費税率引き上げ直後ですので、決して楽観することはできません。その意味で、年内に景気転換点の議論を始めるのは早いにしても、早晩、エコノミスト業界の景気局面に関する意識が高くなるのは当然です。今年に入ってから、景気動向指数の基調判断との関係で、「景気悪化」が盛んに報じられましたが、メディアも注目度を高めることと私は考えています。
続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。ということで、小売業販売額を消費と読み替えれば、グラフから単純に、7月は渋かったボーナスや天候不順とともに消費税率引き上げ前に備えて消費を抑制した後、8月には猛暑効果に加えて駆け込み需要が始まった、ということになります。ただ、駆け込み需要の規模はそれほど大きくなさそうに私は見ていますが、ひょっとしたら、9月の小売業売上はもっと増えるのかもしれません。
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