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2019年9月10日 (火)

厚生労働省による2017年「所得再分配調

先週金曜日9月6日に、厚生労働省から2017年実施の「所得再分配調査」の結果が公表されています。いつも注目されるのは格差の尺度のひとつであるジニ係数なんですが、3年前の調査と比べて大きな変化は観察されていません。

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上のグラフは再分配前後のジニ係数の推移をプロットしています。上のパネルは世帯ベースで世帯人員数を考慮していません。他方、下のパネルは世帯人員数を考慮に入れた等価所得ベースです。等価所得ベースは2002年調査以降しかデータがありませんが、大雑把な印象として、今世紀に入ってから、再分配前の当初所得の格差は拡大しているものの、社会保障や税制により格差は抑えられており、再分配後の所得格差についてはむしろ縮小している、ということになろうかと思います。世間一般の共通認識としては、何となくの印象として、2000年からの小泉政権の下で規制緩和などの新自由主義的な経済政策が進められた結果、特に、非正規雇用の比率が高まり、所得格差が拡大した、と受け止められているんではないかという気がしますが、前半の非正規雇用比率の増加は、その通りと考えられる一方で、後半の所得格差拡大については、この「所得再分配調査」の結果からは支持されません。私のひとつの解釈なんですが、格差拡大というよりは賃金や所得の伸び悩みが貧困層の増加につながった点を強調すべきではないか、と考えています。もちろん、実態上の貧困と印象上の格差拡大の背景には、高齢化の進展もひとつの要因として存在することは間違いありません。それとも、ウルトラCの解釈ですが、ジニ係数が格差指標として適当ではないとか、あるいは、この「所得再分配調査」が間違っている、という統計処理、あるいは、統計そのものの問題も可能性としてはゼロではないかもしれません。いずれにせよ、「所得再分配調査」の結果から、所得格差はここ20年でそれほど拡大していない、というファクトは読み取れるんではないでしょうか。

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