消費税率引き上げ前の駆け込み需要はどうなっているのか?
もう1か月を割って、10月1日に消費税率が現行の8%から10%に引き上げられる予定となっています。以前の税率引き上げ時にはかなりのボリュームの駆け込み需要が発生し、同時に、税率引き上げ後の反動減もそれなりに大きかったわけで、特に、2014年4月の8%への引き上げの際にはデフレ脱却に影響を及ぼしたように私は記憶していますが、私自身の生活実感としても、また、経済指標の統計を見ていても、今回は駆け込み需要が大きくないように感じているところ、『第一生命経済研レポート』2019年9月号において、「今回の駆け込み需要の規模はどうして小さい?」と題するコラムが明らかにされています。グラフを引用して、簡単に取り上げておきたいと思います。
上のグラフはリポートから引用しており、上から順に、消費税率引上げ前後の民間最終消費支出の推移、消費税率引上げ前後の住宅着工戸数の推移、政府による消費税対策がそれぞれプロットされています。見れば明らかなんですが、現在までに利用可能な統計で見る限り、消費や住宅投資は前々回1997年4月の3%から5%への引上げ、また、前回2014年4月の5%から8%への引上げと比較して、駆け込み需要が大きく抑制されています。まら、リポートでは住宅ほどではないものの大型耐久消費財の典型として自動車販売についても同様である旨が報告されています。
その大きな理由として、リポートでは、3番目のパネルのテーブルに上げられている、政府による駆け込み需要対策による影響が大きい、と指摘しています。同時に、家具・家電などではホントに直前の駆け込み需要の発生の可能性も指摘しています。私は日用品もご同様だと思います。加えて、消費税率引き上げに伴う物価上昇による実質所得の低下は逃れることができません。他方で、軽減税率のように期限のない対策もあれば、キャッシュレス決済に対するポイント還元のように9か月間の起源で来年2020年6月に終了するものもあり、プレミアム付き商品券もいつかは使い終わるわけで、その終了の際に駆け込み需要が一定の大きさで生じる可能性も否定できません。
もちろん、駆け込み需要が小さいものに終われば、その反動減も小さくなる可能性が高く、景気変動の振れが抑制されるとすれば、マクロ経済安定化政策は成功と考えるべきではないかという気がします。
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