景気動向指数は7月統計の戻りが小さく来月公表の8月統計で再び「悪化」に基調判断が下方修正される可能性も!!!
本日、内閣府から7月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から横ばいで93.6を、CI一致指数は+0.3ポイント上昇して99.8を、それぞれ記録し、基調判断は「下げ止まり」に据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の景気一致指数、0.3ポイント上昇 基調判断「下げ止まり」で据え置き
内閣府が6日発表した7月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.3ポイント上昇の99.8と2カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「下げ止まりを示している」に据え置いた。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5系列が指数のプラスに寄与した。車載用蓄電池など自動車関連の生産が伸びたことで「生産指数(鉱工業)」「鉱工業用生産財出荷指数」が堅調だった。半導体製造装置や掘削用機械を含む「投資財出荷指数(除輸送機械)」も伸びた。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比横ばいの93.6だった。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比0.2ポイント上昇の104.8と4カ月ぶりに上昇した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。
従来から、このブログでも指摘している通り、CI一致指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が極めて高いんですが、本日公表の7月統計でもその通りでした。すなわち、6月のCI一致指数は前月から▲2.9ポイントの下降でドカンと落ちた後、7月の戻りはわずかに+0.3ポイントの上昇にとどまり限定的でした。それでも、有効求人倍率(除学卒)と商業販売額(小売業)(前年同月比)が下降に寄与した以外、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)といった幅広いコンポーネントがプラスに寄与しています。「下げ止まり」に据え置かれ、メディアで注目の基調判断なんですが、「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、「下げ止まり」と「悪化」の違いは3か月後方移動平均と前月差でかなり機械的に決められており、「原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降」かつ「当月の前月差の符号がマイナス」の2つの条件で「悪化」が定義されています。先月の6月統計の3か月後方移動平均は▲0.50の下降、7月統計でも▲0.60の下降ですから、すでに2か月連続での下降となっており、繰り返しになりますが、先ほど「ドカン」と表現した6月統計の前月差▲2.9ポイントの落ち方に比べて、その後の7月統計の戻りが+0.3ポイントと小さく、さらに来月の8月統計で前月差がマイナスだと、またまた基調判断が「悪化」に下方修正される可能性があります。そうすると、来月の景気動向指数の公表日は10月7日であり、消費税率引き上げ直後のタイミングも相まって、メディアが基調判断の「悪化」を大きく取り上げる、ということにもなりかねません。まあ、エコノミストの中には、どこまで本質的な意味があるか疑問に受け止める向きがあるかもしれませんが、私自身はそれなりに象徴的な意味があり、マインドへの影響が小さいながらも無視できない可能性がある、と考えています。
実は、このブログでは先週8月30日付けで7月統計の鉱工業生産指数(IIP)ほかを取り上げており、製造工業生産予測指数について先行き見通しの予測誤差の加工を行った補正値で8月は▲0.7%の減産と試算されていたりします。もしも、これが正しいと仮定すれば、景気動向指数の基調判断はふたたび「悪化」に下方修正される可能性が高いと考えられます。いずれにせよ、月末公表の鉱工業生産指数(IIP)8月統計を注視したいと思います。
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