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2019年10月31日 (木)

弱い動きの続く鉱工業生産指数(IIP)と2年振りに前月を上回った消費者態度指数と見通しの下方修正続く日銀「展望リポート」!!!

本日、経済産業省から9月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。季節調整済みの系列で前月から+1.4%の増産を示しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

9月鉱工業生産、1.4%上昇 半導体製造装置が好調
消費増税前の駆け込み生産、影響みられず

経済産業省が31日発表した9月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比1.4%上昇の102.9だった。上昇は2カ月ぶりで、QUICKがまとめた民間予測の中央値(0.4%上昇)を上回った。中国・台湾などアジア向けに輸出する半導体製造装置の生産が好調だった。汎用・業務用機械工業や電気・情報通信機械工業で国内向け大型案件があったことも全体の上昇に寄与した。
業種別では、15業種中7業種が上昇した。生産用機械工業は前月比7.9%の上昇。なかでも、半導体製造装置の上昇が目立った。経産省は「10月の生産計画でも半導体製造装置は伸びるとみられており、需要が高まっているようだ」とした。世界的に半導体市況に底打ち感が出てきたことが背景にありそうだ。
汎用・業務用機械工業は9.4%の上昇、電気・情報通信機械工業は4%の上昇だった。それぞれ、運搬用クレーンや超音波応用装置で大型案件があったことが上昇に寄与した。電気・情報通信機械工業では、セパレート形エアコンも大きく生産が伸びた。「8月の猛暑の影響で、エアコンの店頭在庫が少なくなり、それを補うために企業が増産に動いた」(経産省)という。
もっとも、経産省は生産の基調判断を「生産はこのところ弱含み」に据え置いた。「上昇した業種が多くなく、一部の業種の大型案件や天候など一時的な要因で上昇幅がやや大きくなった面が大きい。8月までの低下から抜け出たとは考えにくい」と判断した。
また、消費増税前の駆け込み生産については「消費財の生産が9月は1.6%の低下となっており、増税前の駆け込み需要を受けた増産の影響は特にみられなかった」とした。
出荷指数は1.3%上昇の102.5と2カ月ぶりに上昇した。在庫指数は1.6%低下の102.7と3カ月連続の低下だった。在庫指数の前月比の低下幅は、同じく1.6%低下だった2016年11月に並ぶ水準だった。「四半期でみた場合も在庫調整局面に入った可能性が高い」という。そのうえで経産省の担当者は「高止まりしていた在庫が減っており、今後も在庫調整が進んでいくことを期待したい」と述べた。在庫の出荷に対する比率を表す在庫率指数は2.4%低下の107.9となった。
製造工業生産予測調査によると、10月は0.6%上昇、11月は1.2%の低下を見込む。鉱工業生産の先行きについて経産省は「9月は上昇したが、先行きは慎重にみている」とした。同時に発表した7~9月期の鉱工業生産指数速報値は前期比0.6%低下の102.4だった。低下は2期ぶりとなる。

やや長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、中央値で+0.4%の増産、レンジでは▲0.1%~+1.3%の幅でしたので、実績の+1.4%の増産はほぼほぼ上限に近くなっていますが、引用した記事にもある通り、経済産業省の情報では消費税率引上げ前の駆込み需要の可能性は否定されています。ということで、産業別に季節調整済み系列の前月比をみると、ぞうさんはばの大きい順に、汎用・業務用機械工業+9.4%増、生産用機械工業+7.9%増、輸送機械工業(除.自動車工業)+6.9%増、などとなっており、産業別をさらに細かく品目で見ると、生産用機械工業の半導体製造装置はいいとしても、汎用・業務用機械工業のコンベヤ、運搬用クレーンなどについては、大型案件の受注に起因しており、基調的な回復とは見なしにくい気もします。先行きを占う製造工業生産予測指数も足元10月はバイアスを補正すれば▲1.6%の減産と試算されており、統計作成官庁である経済産業省の方で基調判断を「このところ弱含み」に据え置いたのは、昨日の商業販売統計の上方修正と違って、まあ、正解なのかもしれないと私は受け止めています。ただし、10月の減産予想は、消費税率引上げによる反動減だけでなく、相次ぐ台風や大雨などの自然災害による減産の影響もあり、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速を超えるような弱いトレンドというわけではないと私は考えています。

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9月の統計が公表され、四半期でいえば7~9月期のデータが利用可能となりましたので、久し振りに、在庫循環図を書いてみました。横軸は在庫の前年比、縦軸は出荷の前年比です。ピンクの矢印の2013年1~3月期から始まって、直近2019年7~9月期まで、6年半のデータをプロットしています。すでに景気循環局面も回復・拡大の後半に入っていることは明らかであり、かなり複雑な軌跡を描いています。「月例経済報告」(2002年12月) の閣僚会議配布資料にある「鉱工業の在庫循環図と概念図」、また、ほぼほぼ同じものが「JFM 経済ニュースレター」 p.9 にもありますが、これらに従えば、在庫循環はすでに景気の山を越えて景気局面が転換していると解釈してもおかしくないわけながら、さすがに、景気判断はそこまで機械的だったり単純に決められたりはしません。ただ、7~9月期の生産は前期比で▲0.6%の減産、出荷も▲0.1%の減を記録しています。

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鉱工業生産指数(IIP)以外にも、本日、内閣府から10月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、10月は+0.6ポイント上昇して36.2となり、23か月ぶりに前月を上回りました。統計作成官庁である内閣府では、10月の消費者マインドの基調判断は、「弱まっている」に据え置いています。消費者態度指数を構成する4指標のうち、「耐久消費財の買い時判断」が消費税率の引上げ直後の10月調査にもかかわらず大きく上昇しており、何か錯誤を生じているのではないか、と疑問にすら思わなくもありません。今後半年間の見通しを調査しているとはいえ、ホントに10月に調査しているんでしょうか。なお、いつものグラフは上の通りです。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2019年度+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.6~+0.8
<+0.7>
+0.4~+0.6
<+0.5>
 7月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.1
<+1.0>
+0.6~+0.9
<+0.8>
 2020年度+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.2
<+1.1>
+0.7~+1.1
<+1.0>
 7月時点の見通し+0.8~+1.0
<+0.9>
+1.1~+1.4
<+1.3>
+1.0~+1.3
<+1.2>
 2021年度+0.9~+1.2
<+1.0>
+1.2~+1.7
<+1.5>
 7月時点の見通し+0.9~+1.2
<+1.1>
+1.3~+1.7
<+1.6>

最後の最後に、本日、日銀「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しに注目した結果、上のテーブルの通りです。データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」のサイトからお願いします。制作委員の大勢見通し、特に物価の見通しは下方修正が続いています。

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2019年10月30日 (水)

消費税率引上げ前の駆込み需要で大幅増となった9月の商業販売統計!!!

本日、経済産業省から9月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+9.1%増の12兆5890億円、季節調整済み指数も前月から+7.1%増を記録しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

9月の小売販売額、9.1%増 14年3月以来の高い伸び率
経済産業省が30日発表した9月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比9.1%増の12兆5890億円と、2カ月連続で増加した。前回の消費増税直前の2014年3月以来の高い伸び率で、経産省は小売業の基調判断を「増加している小売業販売」に上方修正した。
業種別で見ると、9業種のうち8業種でプラスとなった。冷蔵庫やパソコンなどの家電を含む「機械器具小売業」が37.9%増と10年11月以来の伸び率となった。中古車など「自動車小売業」は16.9%増と14年1月以来の伸び率だった。経産省の担当者は今回の大幅な上昇について、パソコンの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」の20年1月のサポート終了など要因は様々あるとしたうえで「業界によっては消費増税に伴う駆け込み需要が出たとの声もあった」と説明した。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が10.4%増の1兆6717億円だった。既存店ベースでは10.0%増だった。コンビニエンスストアの販売額は0.2%減の1兆203億円だった。

いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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少し前まで、今回の消費税率引上げに際しての駆込み需要は小さいと感じていたんですが、商業販売統計の9月の結果を見ると、要するに、大きな伸びは消費税率引上げ直前の駆込み需要なんでしょうね。それ以外に受け止めようがないんですが、それでも、小売業の基調判断を上方修正するのは、私にはまったく理解できません。10月統計で大きな反動減が見られたら、基調判断は下方修正するんでしょうか。よく判りません。小売業販売学を季節調整していない原系列の統計で見て、前年同月比伸び率が高いのは、家電などを含む機械器具小売業の+37.9%増、自動車小売業+16.9%増、日用品などの医薬品・化粧品小売業+16.4%増などとなっています。業態別に見ると、コンビニが▲0.2%の減となった一方で、百貨店が+22.1%増、スーパーが+5.4%増、また、家電大型専門店が+52.4%増、ドラッグストアも+21.8%増ですから、これも駆込み需要をうかがわせる結果となっています。来月統計に注目しつつ、そこまで待たなくても、明日公表予定の消費者態度指数に見られる消費者マインドにも注目したいと思います。

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2019年10月29日 (火)

リクルートジョブズによる9月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日11月1日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる9月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の9月度平均時給は前年同月より+2.6%、+27円増加の1,063円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+32円、増減率+3.0%)、「フード系」(+29円、+2.9%)、「製造・物流・清掃系」(+28円、+2.7%)、「販売・サービス系」(+21円、+2.0%)など、全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年3~5月はマイナスを示した後、6月統計では一瞬だけ水面上に顔を出して前年同月より+0.2%、+3円増加の1,641円となった後、7~9月統計では。ふたたびマイナスとなり、7月▲10円減、▲0.6%減、8月▲7円減、▲0.4%減の後、9月も▲7円減、▲0.4%減の1,633円を記録しました。職種別では、「IT・技術系」(前年同月比増減額+90円、増減率+4.5%)、「クリエイティブ系」(+67円、+3.9%)、「オフィスワーク系」(+27円、+1.8%)の3職種がプラスなんですが、、「医療介護・教育系」(▲4円、▲0.3%)「営業・販売・サービス系」(▲17円減、▲1.2%減)の2職種がマイナスとなっています。また、地域別でも、関西がプラスとなった一方で、東海・関東はマイナスを記録しています。派遣スタッフのうち、「IT・技術系」と「クリエイティブ系」で高い伸びを示しているのは、キャッシュレス決済開発の関係ではないか、と私は想像しています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトでは人手不足の影響がまだ強い一方で、「IT・技術系」などを除いて派遣スタッフ賃金は伸びが鈍化しつつある、と私は受け止めています。もちろん、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用にはいっそうの注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。特に、派遣スタッフについては、昨年2018年前半から半ばにかけて、いったん直近のピークを付けた可能性があります。ただ、2016年年央にも同じようにピークを過ぎた後、2017年後半からもう一度上昇したこともあり、人手不足をはじめとする労働需給に敏感なだけに、注意が必要そうな気がします。

最後に、何度でも繰り返しますが、決して人手不足が景気をけん引しているのではありません。雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると労働需要が一気に冷え込む可能性は否定できないわけで、この点は絶対に忘れるべきではありません。

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2019年10月28日 (月)

消費税率引き上げ直前の9月の企業向けサービス物価(SPPI)の動向やいかに?

本日、日銀から9月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.5%を示しています。前月と同じ上昇率となっていて、引き続きプラスの伸びを続けています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率は+0.6%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の企業向けサービス価格、前年比0.5%上昇 キャッシュレス決済開発費膨らむ
日銀が28日発表した9月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は102.8で、前年同月比で0.5%上昇した。前年同月比での上昇は2013年7月以来75カ月連続。消費増税に伴い、キャッシュレス決済開発関連の大型案件があったことや人手不足による人件費の高騰が寄与した。
前月比の上昇率は横ばいだった。人手不足で人件費が高止まりする一方で駆け込み需要を見越して企業の広告出稿が低調だった。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の146品目のうち価格(消費税の影響を含む)が前年比で上昇したのは85品目、下落は36品目、上昇から下落の品目を引いた差は49品目と、8月の確報値(53品目)より4品目減少した。
日銀の調査統計局の担当者は「プラス幅が徐々に縮小し伸び率には一服感があるものの、緩やかに上昇していく基調は続いていきそうだ」と指摘した。

いつものように、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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先月統計と大きな違いはないんですが、前年同月比で見ても、8~9月はヘッドラインSPPIが+0.5%の上昇、国際運輸を除くコアSPPIも8月+0.5%、9月+0.6%の上昇と仕上がりの数字に大きな変化は見られません。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率+0.5%のうち、寄与度で見て、土木建築サービスや労働者派遣サービス、あるいは、警備などを含む諸サービスの寄与度が+0.41%、同素貨物輸送などを含む運輸・郵便が+0.16%を占めています。ただ、景気に敏感な広告の寄与は▲0.06%とマイナスを示しており、テレビ広告・新聞広告とも前年同月比マイナスでした。引用した記事にある「駆け込み需要を見越して」という理由が、私にはイマイチ不明でした。宣伝広告により売り上げを増加させようというインセンティブに乏しい時期である、ということなのかもしれません。もうひとつ特徴的なのが運輸・郵便であり、国際商品市況における石油価格の動向に一定連動して、外航貨物輸送が前年同月比で見て8月▲4.3%、9月も▲0.7%と下落を示しているのに対して、国内の人手不足による人件費アップを反映して、道路貨物輸送は8月+2.6%、9月も+2.7%と堅調に推移しています。引用した記事にもある通り、2013年7月以来SPPI上昇率は75か月に渡って連続でプラスを記録し続けています。総じて粘着的な動きを示す物価なんですが、10月からの消費税率の上昇をどのように織り込むことになるのか、本日公表のSPPIだけでなく、金融政策のターゲットとなっている消費者物価(CPI)はもちろん、企業物価(PPI)の動向なども10月統計は注目かもしれません。

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2019年10月27日 (日)

日本気象協会による「2019年紅葉見ごろ予想 (第2回)」やいかに?

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10月23日に日本気象協会から「2019年紅葉見ごろ予想 (第2回)」が明らかにされています。
この秋の気温は全国的に平年より高く経過しており、今後も11月にかけて平年より高い見込みであり、このため、朝晩冷え込む時期も遅くなると予想され、観光名所の紅葉見ごろ時期は全国的に平年並みか遅くなると予想されています。例えば、東京の見ごろは平年であれば11月下旬頃なんですが、今年は12月上旬に遅れるようです。

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2019年10月26日 (土)

今週の読書は共感できる移民に関する開発経済学の経済書から話題の芥川賞受賞作品まで計6冊!!!

今週の読書は専門分野に近い開発経済学の経済書をはじめとして、以下の通りの計6冊です。ちょうど1週間前の先週土曜日の段階では、4冊かせいぜい5冊くらいと予定していたんですが、今村夏子の芥川賞受賞直前作の『父と私の桜尾通り商店街』をムリに入れたりして、6冊に増えてしまいました。なお、来週の読書については、すでに図書館回りを終えており、借りてきたのはかなり多数に上るんですが、今月から来月にかけては、勉強会などでお近くの大学などに行く機会が多くて、読書家ではなくエコノミストとして週末を過ごすパターンが増えそうで、今までのように、借りられた本から手当たり次第に乱読するのではなく、少し計画的な読書を心がけようかと考えています。

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まず、ポール・コリアー『エクソダス』(みすず書房) です。著者は、英国オックスフォード大学の開発経済学の研究者であり、本書は著者が展開するもっとも貧しい社会、すなわち、「最底辺の10億人」に関する研究の一環であり、英語の原題は EXODUS です。2013年の出版です。本書では移民をテーマに取り上げており、結論を先取りすると、リベラルなエコノミストの主流をなす見解を批判するものとなっており、「移住がよいか悪か」という問いは間違っており、緩やかな移民=移住は利益をもたらし、逆に、大量移民=移住は損失をもたらす可能性が高く、重要なのは「どのくらいが最適か」を問うことである、ということになります。過大な移民=移住が不利益となる大きな理由は、国民的アイデンティティの喪失、あるいは、社会が脱国家的になる、というものです。ただ、このこりあー教授の見方には強力な反論もあります。私が知る限りでは、世銀ブログ Worldbank Blog "Reckless Recommendations" がもっとも目につきます。この世銀ブログの批判では、コリアー教授の移民=移住の出し手国が国民すべてを先進国である移住=移民の受入れ国に移住させて、国が空になる可能性を指摘しているのは非現実的であり、コリアー教授が大きな価値を置いている国民的アイデンティティはナショナリスト的な暴力や戦争をもたらす可能性もある、と指摘しています。従来からこのブログでも指摘している通り、私は圧倒的にコリアー教授の見方を支持します。すなわち、移民=移住は無制限に認めるべきものではなく、経済学によくある見方ですが、逆U字型の効用関数をしており、何らかの最適点があると考えています。特に、我が国の場合は海を挟んで隣国に人口大国が控えており、我が国の人口であり1億人強に匹敵する人数を送り込むことすら可能な人口規模を持っているからです。ですから、1億人を我が国に向けて送り出したところで、コリアー教授が懸念する送り手国の国民的アイデンティティはほとんど何の影響も受けない一方で、我が国の人口が2億人になって日本人は半分しかいない、というのでは、控えめにいっても、我が国の国民的アイデンティティが大きく変容する可能性が大きいといわざるを得ません。繰り返しになりますが、コリアー教授の国民的アイデンティティの議論は、大雑把な感触として、例えば、カリブの小国から北米への移住=移民により、送り出し国が空になる可能性であるのに対して、私の懸念はまったく逆であり、日本が人口大国の隣国から余りに大量の移住=移民を受け入れると、受け入れ国である日本の国民的アイデンティティが、場合によっては、よろしくない方向に変化する可能性がある、というものです。もちろん、世銀ブログの反論を紹介したように、そもそも、国民的アイデンティティに価値を置く議論を疑問視する向きもあるかもしれませんが、そこは価値判断だろうという気がします。

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次に、田辺俊介[編著]『日本人は右傾化したのか』(勁草書房) です。編著者は、早稲田大学の社会学の研究者であり、チャプターごとに社会学関係の著者が執筆を分担して担当しています。なお、ビジネスパーソンにも判りやすく表現されてはいますが、基本的には学術書と考えて、それなりの覚悟を持って本書の読書に取り組むべきです。ということで、印象論としては、自公連立の安倍政権がこれだけ継続していて、その背景にはもちろん選挙で連戦連勝という事実があるわけですから、政治的に、というか、投票行動として日本人が右傾化しているのは、動かしようのない事実だと私自身は考えていますが、他方で、このブログでも何度か主張しているように、現在の政権の経済政策は極めてリベラルで左派的な景気拡張的政策を実行しているのも事実です。ですから、財政的にこの10月1日から消費税率の引き上げを実施し、かなり緊縮的な運営になったわけですが、それでも、米中貿易摩擦に起因する世界経済の減速がなければ、かなり日本経済は順調であった可能性が高いと私は判断しています。ですから、改憲を目指す側面を支持する投票行動なのか、あるいは、景気拡大的な経済政策を支持する投票行動なのか、私には判断が難しいと感じていたところです。ただ、メディアなどで報道される限り、露骨なヘイトスピーチに至らないまでも嫌韓や嫌中の雰囲気は盛り上がっていますし、その昔にはなかったような「日本スゴイ」系のテレビ番組をよく見かけるのも事実です。そういった問題意識もあって、本書では、ナショナリズムとその下位概念である純化主義、愛国主義、排外主義などの観点から、2009年、2013年、2017年に実施された社会調査のデータを用いて定量的な分析を試みています。私が特に興味を持ったのは、いわゆる世代論であり、本書では第10章の若者論に当たります。半年余り前までキャリアの国家公務員として霞が関や永田町近辺に勤務し、総理大臣官邸や国会議事堂の周辺における意見表明活動を目の前で見ている限り、あくまで私の実感からではありますが、団塊の世代とかの引退高齢世代が左派的で、より若い世代が右派的、という印象を持っていました。本書の結論ではそれは否定されている、というか、半分否定されており、ナショナリズムに関しては今でも年長者ほど右派的・保守的であり、平成生まれなどの若者世代は決して右派的とか保守的というのではなく、権威に従属的な権威主義である、と本書では分析されており、「右傾化なき保守化」とか、「イデオロギーなき保守化」などと表言しています。加えて、私自身は手厚すぎる高齢者への社会保障給付にも一因あると考えている世代間の格差について、ナショナリズムや権威によって隠蔽されている可能性を示唆しており、さすがに、学術書のレベルの高さを見た気がします。

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次に、石川九楊『石川九楊自伝図録』(左右社) です。著者は書家であり、私の母校京都大学の卒業生でもあります。私自身も、20世紀まではピアノや書道のたしなみあったんですが、前世紀末に男の子2人が相次いで誕生した後、痕跡に入ってからまったく手が伸びなくなりました。特に、著者はかなり前衛的な書家であり、私の書道の先生とはかなり違った考えであったような気がします。もっとも、私の書道の先生はすでに亡くなっているので確認しようはありませんが、基本的に読売展への出展でしたから伝統派であり、前衛派の毎日展とは距離があったような気がします。本書で著者は、文として書道に取り組んでいて、細かな点や撥ねなどに重きを置かない理由を展開していますが、私の書道の先生は逆で文字に重きを置いていて、私が今でも記憶いているところでは、「大」と「太」と「犬」は点があるかないか、あるいは、どこにあるか、に従って異なる文字であり、その文字として識別されないと意味がない、とのご意見でした。このご意見は数回聞いた記憶があり、別件ながら、ドイツに日本文化紹介で訪問した際の現地市長からの感謝状はドイツ語がほとんど理解できないながらも10回近く拝見した記憶があります。そういった私の書道の先生の目から見れば、「デザイン的」と自称されている本書の著者の作品はカギカッコ付きながら「水墨画」に近い印象ではなかったか、という気がしないでもありません。例えば、上の表紙画像には著者の氏名が見えますが、かろうじて漢字として読めはするものの、本書に収録された120点余りの作品は、誠に残念ながら、私には読みこなせません。ただ、私が感銘したのは、著者の文を書くという姿勢とともに、何を書くかによって自らの初の作品を分類しているのは目を開かせるものがありました。本書の目次を拝見して、古典への回帰、とか、時代を書く、とかあるのは、読む前はもっぱら書法のことだと勘違いし、現代的な前衛的書法と古典的な書法だと思っていましたが、よくよく考えれば、私のつたない記憶でも、著者が古典的な草書や楷書や隷書や行書などで書いた書の作品は見たことがなく、題材が古典だったり、時代を反映したものだったり、ということだと理解し直しました。書道とは筆蝕の芸術という著者の見方は理解できないわけではないものの、単なる言葉遊びに堕していないのは著者の書家としての実力のなせるところであり、文字や文字の集合体としての文として認識されない場合、その筆蝕とは何なんだろうか、という気もします。王義之を持ち出すまでもなく、1000年を経てまだ評価され続けるのが書という芸術ではないかと私は考えています。1000年先まで生を永らえさせることが出来ないのはとても残念です。

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次に、今村夏子『むらさきのスカートの女』(朝日新聞出版) とその前作の『父と私の桜尾通り商店街』(角川書店) です。作者は新々の純文学作家であり、『むらさきスカートの女』は第161回芥川賞受賞作です。私は『文藝春秋』9月号にて選評などとともに読みました。鮮烈なデビューを飾ってから、長らく芥川賞受賞が望まれていた、というか、私が望んでいただけに、さすがの水準の作品に仕上がっています。私はこの作者のデビュー作で三島由紀夫賞受賞の『こちらあみ子』、芥川賞候補となった「あひる」を収録した短篇集『あひる』は第5回河合隼雄物語賞受賞し、第3作の『星の子』でも芥川賞候補となり、第4作『父と私の桜尾通り商店街』も、今週バタバタと読みましたが、この第5作にして芥川賞受賞です。この作者の大きな魅力は、私はある意味での異常性だと考えています。「あひる」は子供達を引きつけるためにアヒルを取っかけ引っかけ飼い続ける物語ですし、芥川賞受賞の『むらさきのスカートの女』にいたっては、ストーカーとして破綻していく「黄色いカーディガンの女」とタイトルになっている「むらさきのスカートの女」との何ともいえない同一性と違和感が極めて超越的なバランスを保っています。最近では、まるっきりラノベのような非現実的な癒やしのストーリーが広く受け入れられているように、私には感じられるんですが、現実逃避的な癒やし系で明るく希望に満ちたラノベは。私にはものすごく物足りないように感じられていました。もっとキチンと事実を取材して表現も整理すると、まさに池井戸潤作品のような仕上がりになるわけですが、そうでなく表面的な上滑りの作品に終わっている例がいっぱいあります。そういった中身のないラノベ小説を読むくらいであれば、今村作品のような何ともいえない不気味さを内包した作品の方が私はインパクトを感じてしまいます。最後に、どうでもいいことながら、芥川賞の選評を読んでいて、古市憲寿作品「百の夜は跳ねて」と村友祐作「天空の絵描きたち」の関係に大いなる興味を感じました。剽窃や盗作ではなく、オマージュですらないといい切っているのは山田詠美だけで、川上弘美や吉田修一は明確に嫌悪感を表明しています。私はどちらも読んでいないので何ともいえませんが、とても野次馬的な興味をそそられます。

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最後に、朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(中央公論新社) です。小説すばる新人賞を受賞したデビュー作『桐島、部活やめるってよ』いら、人気小説家の道を歩んでいる著者ですが、私も直木賞受賞作の『何者』こそ読んでいませんが、デビュー作を含めて世間に遅れつつ何冊か読んでいます。それから、この作品は、このブログの読書感想文でもいくつか取り上げた中央公論新社創業130年記念の「螺旋」プロジェクトのうちの1冊となります。ですから、青い目の海族とそうでない山族の対立構造を基本としています。本書はシリーズ唯一の平成編となります。ほかに、このブログの読書感想文で取り上げた、ということは、私が読んだのは、以下順不同で、伊坂幸太郎による近未来編の『スピンモンスター』と昭和後期編の『シーソーモンスター』、薬丸岳による明治編の『蒼色の大地』、乾ルカによる昭和前期編の『コイコワレ』、澤田瞳子による古代編の『月人壮士』となっています。ということで、本書は平成時代の青春物語であり、海族の南水智也が頭を強く打って意識不明の植物状態となり、山族の友人である堀北雄介が入院先の病院を毎日見舞う、というスタートから一気にさかのぼって、小学生時代、中学校ないし高校時代、大学時代の、それぞれのころの南水智也と堀北雄介と関係する周囲の人物を主人公にした章立てでストーリーが進みます。タイトルほどアバンギャルドではありませんが、自分以外の人のためになる生きがいを持った人生、自分を対象にした生きがいある人生、そして、生きがいのない人生の3分類をモチーフとし、生きがいややりがいについて、せいぜい20歳前後の目から考える、ということになります。物静かな海族の南水智也に対して、競争や勝負を好む活動的な山族の堀北雄介を配し、札幌を中心的な舞台に物語は展開しますが、私の直感では、おそらく、若い世代は山族の堀北雄介の要素がかなりあり、私のような引退世代に近づくに従って海族の南水智也の要素が増えるような気がします。でも、人生最末期には、何ごとによらず自分の意図通りに出来ないことが増えるそうで、その意味で、イライラが募る、と聞いたこともあります。お題を与えられた制約のせいかもしれませんが、この作者の実力にしては、やや物足りない読後感でした。もう1冊最新刊の『どうしても生きてる』(幻冬舎) の予約をしています。これも楽しみです。

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2019年10月25日 (金)

「労働市場に変化の兆し」は見られるか?

昨日、10月24日付けの三井住友信託銀行「調査月報」2019年11月号No.91において、「労働市場に変化の兆し」と題する記事を見受けました。一部業種で雇用拡大姿勢は慎重化しつつあり、求人数が減少し始めていると指摘しています。まず、リポートから<要旨>を引用すると以下の通りです。

<要旨>
労働市場では、失業率が2.2%まで低下し需給逼迫の状況が続いているが、求人倍率は2019 年4月にピークアウトし、ギャップが生じている。求人数の減少が求人倍率低下の主因であり、一部業種で雇用拡大姿勢が慎重化し始めた兆しがある。背景には、製造業を中心とした景況感の弱まりと、同一労働同一賃金の導入と最低賃金引上げという制度要因が労働需給逼迫と重なり、人件費負担が高まってきたことがあると見る。
今後は、景気減速が足元の状況で踏み止まり雇用者数の減少にまで至らなければ、これまで労働力人口を増加させてきた女性と高齢者の労働参加圧力も弱まり始めており、求人数が減少しても失業率は低水準に留まることになろう。

ということで、グラフをいくつか引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから、図表4 新規求人数(19年6~8月平均) 前年同期比▲2.6%に対する産業別寄与度 を引用しています。本リポートの分析に従えば、頭打ちもしくは低下に転じた有効求人倍率の動向は、求職者数の増加ではなく求人数の減少に起因する、とされており、上のグラフを見れば明らかな通り、米中貿易摩擦により世界経済が減速し、輸出などの大きな影響を受けている製造業もマイナス寄与がもっとも大きくなっています。そして、意外なことに派遣業も次いでマイナス寄与が大きくなっており、雇用動向の先行きを敏感に読み切っているのかもしれません。小売と卸売が冴えないのは所得が伸び悩んで消費が停滞しているからで、逆に、医療・福祉が最大のプラス寄与を示しています。

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次に、上のグラフはリポートから、図表11 産業別の時給と最低賃金 を引用しています。労働市場に変化の兆しをもたらした求人数の減少は。最初に引用した<要旨>にある通り、景況感の弱まりとともに、制度的な要因として同一労働同一賃金と最低賃金の引上げが人件費負担を高めている可能性を示唆しているところ、製造や卸小売のパート時給がかなり最低賃金に近い結果を示しており、伝統的な経済学の理論から、限界生産性との比較という文脈で高過ぎる最低賃金が雇用を抑制している可能性を示唆しています。

私自身は、生産の派生需要としての雇用の特質から、量的な産業サイドの労働需要が労働市場への影響力が大きく、制度的な質的要因として最低賃金などの価格としての賃金規制の影響はそれほど大きくない、と直感的に理解していますが、両方の要因あることに異論はありません。ただ、何度もこのブログで強調している通り、景気局面が転換すれば、一気に産業サイドからの量的な労働需要が冷え込む可能性がある点だけは忘れるべきではありません。

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2019年10月24日 (木)

東洋経済オンラインによる「ボランティア休暇利用者が多い」トップ100社やいかに?

今年は特に台風などの自然災害により甚大な被害が発生していますが、10月20日付けで東洋経済オンラインにて「ボランティア休暇利用者が多い」トップ100社が明らかにされています。以下の通りです。

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ランキングトップ1位のオムロンが飛び抜けているのが見て取れます。オムロン以外にも、2位大和ハウス工業では1年間最大20日、通算100日間の失効年次有給休暇の積立制度をボランティア活動として利用できるそうで、また、4位のイオンではボランティアの活動費がほぼ全額支給されるボランティア派遣制度があるようです。こういった企業ごとの文化や制度に支えられているボランティア活動なんですが、誤解ないように付け加えておくと、このランキングはすべてが災害ボランティアというわけではなく、スポーツ・イベントや地域活動へのボランティア参加も含まれています。

昨今の自然災害、特に、自身は別にしても台風や大雨については、海水温の上昇がひとつの原因といわれており、気候変動や地球温暖化の影響のひとつの帰結と私は考えています。政府債務残高なんぞよりも、CO2排出の方がずっと次世代への影響が大きいわけですので、もっと真剣な取り組みが必要です。

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2019年10月23日 (水)

長期経済予測はやっぱり不正確か?

先週、国際通貨基金(IMF)の短期見通しである「世界経済見通し」World Economic Outlook を、また、ニッセイ基礎研による「中期経済見通し (2019-2029年度)」を、それぞれ連続で取り上げましたが、経済産業研究所から「長期経済予測の不確実性」と題した学術論文が公表されています。森川副所長のご執筆となっています。サマリは以下の通りです。

概要
本稿は、経済学者・エコノミストの長期的なマクロ経済予測の精度を事後評価する。分析結果によれば、①経済成長率や物価上昇率の長期予測には上方バイアスが存在し、特に名目GDP成長率予測で顕著である。②TFP上昇率と実質GDP成長率の予測値の間、CPI上昇率と名目GDP成長率の予測値の間には密接な正の関係があり、結果として各変数の予測誤差相互間にも同様の関係がある。③民間エコノミストに比べて経済学者の長期的なGDP成長率予測は上方バイアスが小さい。しかし、マクロ経済学や経済成長論を専門分野とする人の成長率予測は、他の分野を専門とする人に比べて上方バイアスが大きい。経済分析の専門家にとっても、長期経済予測には大きな不確実性があることを示している。

私自身も、経済の見方については自分でも「楽観的」だと自覚しているんですが、多くのエコノミストが楽観バイアスを持っているようです。昨日のラグビーと同じで、私は代表的なバイアスを持つエコノミストだったのかもしれません。下のグラフは「長期経済予測の不確実性」の論文 p.15 から、 図1 GDP成長率の予測誤差の分布 と 図2 物価上昇率の予測誤差の分布 を引用しています。明記はしていないんですが、カーネル密度関数の推計結果ではないかと思います。楽観バイアスがよく理解できるんではないでしょうか。なお、ピークは複数あるのは、これは明記してある通り、1%とか、0.5%刻みくらいのキリのいい数字を回答した人が多いことを反映している可能性があります。

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2019年10月22日 (火)

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)による「ラグビーに関するアンケート調査」の結果やいかに?

私はほとんど興味なかったんですが、ラグビーのワールドカップが我が国で開催されており、先日、日本チームは南アに敗れてベスト8で敗退しましたが、社会的には大きな盛り上がりを見せていました。ということで、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が「ラグビーに関するアンケート調査」の結果を10月17日に明らかにしています。もちろん、pdfのリポートもアップされています。いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、ラグビーを含めて、スポーツの中で好きな球技を複数選択で聞いた結果のグラフをCCCのサイトから引用すると上の通りです。1位は「野球」(40.2%)、2位は「サッカー」(31.1%)、3位は「テニス」(27.2%)、4位は「バレーボール」(23.8%)、5位は「バスケットボール」(17.3%)となり、「ラグビー」は6位(15.5%)に入りました。まあ、やっぱりそうなんですよね。私のように、ワールドカップで盛り上がっていながら、読書に取り入れるくらいで、それほどラグビーに興味を示さない人は、決して多くなく、それなりに興味を示す一方で、好きなのはやっぱり野球でラグビーはそれほどではない、ということなんだろうと思います。また、球技に限っていますから、私はこれまた興味ないんですが、男性の中には一定の格闘技ファンがいるんではないかと想像します。

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まず、ラグビーワールドカップを具体的に観戦したり、見聞きしたりしたかを複数選択で聞いた結果のグラフをCCCのサイトから引用すると上の通りです。このアンケートの調査期間が10月2日までで、第1週のロシア戦と第2週のアイルランド戦は終了していた可能性がある一方で、予選リーグ戦最後のスコットランド戦や決勝トーナメントの日本チーム最終戦であるあ南ア戦の前で締め切られていますので、もっと直近ではテレビで試合を見た向きはさらにパーセンテージが高まっている可能性はある一方で、同時に、ニュースで見聞きした割合も高まっているんでしょうし、結局のところ、私のようにニュースで見聞きした、という人が多いのは理解できる気がします。まあ、新聞の1面トップに記事が掲載されていれば見聞きしないわけにもいかないような気がします。

引用したグラフ以外にも、男女別年齢別のラグビーへの興味度合い、あるいは、注目の日本選手などについても質問しています。注目選手のトップは、もちろんキャプテンのリーチ・マイケル選手でした。最後の最後に、ラグビーという球技に関しては、私は割合と代表的な日本人であることが確認できた気がします。

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2019年10月21日 (月)

貿易統計は3か月連続で赤字を記録し7-9月期の外需はマイナス寄与か?

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲5.2%減の6兆3685億円、輸入額も▲1.5%減の6兆4915億円、差引き貿易収支は▲1230億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の貿易収支、3カ月連続赤字 中国向け輸出7カ月連続減
4-9月期は8480億円の貿易赤字
財務省が21日発表した9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1230億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。中国向けの自動車部品や韓国向けの半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。同時に発表した4~9月期の貿易収支も中国向け輸出の低迷で8480億円の赤字と、2期連続の赤字となった。財務省は「中国経済が緩やかに減速している影響を受けた可能性がある」と分析している。
9月の全体の輸出額は前年同月比5.2%減の6兆3685億円だった。減少は10カ月連続。輸入額は1.5%減の6兆4915億円と、5カ月連続の減少となった。サウジアラビアからの原粗油や韓国からのナフサなどの輸入が減った。
中国向けの輸出額は6.7%減の1兆1771億円と、7カ月連続で減少した。自動車部品に加え、半導体等製造装置の輸出が減少した。輸入額は1.0%減の1兆6181億円と、2カ月連続の減少。携帯電話などの輸入が減った。対韓国の輸出額は15.9%減の4027億円と、11カ月連続で減少した。食料品が前年同月比62.1%減の大幅減となった。日韓関係の悪化を受け、日本製品の不買運動の影響が出た可能性がある。
対米国の輸出額は7.9%減の1兆1874億円と2カ月連続で減少した。自動車や航空機エンジン部品などの輸出が減少した。輸入額は11.6%減の6233億円。差し引きの貿易収支は5641億円の黒字だった。対欧州連合(EU)の貿易収支は1273億円の赤字だった。
9月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=106円69銭。前年同月に比べ4.0%円高・ドル安に振れた。
同時に発表した2019年度上半期(19年4~9月)の全体の輸出額は前年同期比5.3%減の38兆2332億円、輸入は2.6%減の39兆812億円だった。中国向けの自動車部品や半導体等製造装置の輸出が減った。一方、アラブ首長国連邦(UAE)からの液化天然ガスやサウジアラビアからの原粗油の輸入が減少した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲811億円の赤字ということでしたので、やや赤字幅が大きいと感じられなくもないんですが、予測レンジがとても広いので赤字側の下限を突破したということではありません。ただ、季節調整していない原系列の統計による貿易収支は、引用した記事のタイトルにもある通り、まだ3か月連続の赤字なんですが、季節調整済みの系列でトレンドを見ると、中華圏の春節明けの今年2019年3月から半年余りの7か月連続での貿易赤字となっている点は忘れるべきではありません。8月から9月への輸出入の動きを、季節調整していない原系列の統計の前年同月比で見ると、輸出は8月▲8.2%減から9月▲5.2%減へ、輸入も8月▲11.9%減から9月▲1.5%減に、それぞれ減少幅を縮小させています。輸出入で減少幅に違いがあるのは、輸出については米中貿易摩擦の影響から世界経済が大きく減速している一方で、一時的な要因である可能性は否定できないものの、9月の輸入が消費税率引き上げ直前の駆け込み需要にサポートされている部分が一定の割合ながら含まれているんではないか、と考えられる点です。他方で、季節調整済みの系列の貿易収支は▲972億円と7か月連続の赤字ながら、7月▲1,340億円、8月▲1,167億円から徐々に赤字幅を縮小させているのも事実です。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、ジグザグした動きながら、輸出数量はそろそろ下げ止まるタイミングに差しかかっているように私は見ています。上のグラフのうちの2番めと3番めのグラフにプロットしたOECD加盟国全体と中国のそれぞれの先行指数も、前年同月比で見ればほぼほぼ反転したように感じています。ただし、下げ止まりの兆しある一方で、力強いV字回復の予感はない、と私は考えています。多くのエコノミストの実感でも、しばらく、底這いが続いて持ち直しや回復に至るには今少し時間がかかる、というのが大雑把なコンセンサスではないかという気がします。先週金曜日の10月18日に閣僚会議が開催された10月の月例経済報告においても、景気判断について「緩やかに回復」の前段の形容詞を「輸出を中心に弱さが続いているものの」から「輸出を中心に弱さが長引いているものの」に改め、総合的に見て下方修正と受け止められており、今後、輸出動向が注目されるところです。逆から見て、輸出が本格的に回復すれば景気後退のリスクは軽減される可能性が十分ある、ということも出来ると私は考えています。

引用した記事にもある通り、今年度上半期で見て、輸出額の減少幅は輸入額の2倍となり、上半期貿易収支も赤字を計上しています。7~9月期GDP統計1次QEは11月14日の公表予定ですが、4~6月期の外需寄与度▲0.3%に続いて、7~9月期も外需の寄与度はマイナスを記録しそうです。

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2019年10月20日 (日)

年初来やや低下のトレンドにあったBMIは22くらいで7月以降安定したか?

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今年2019年の正月が明けて。、23を超えていたボディ・マス指数(BMI)は、その後下がり続けていたんですが、最近時点で少し前から振り返ると、年央6~7月ころから標準的な22近傍で安定しているようです。もう60歳を超えましたし、まあ、いいセンではないかという気がします。

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2019年10月19日 (土)

今週の読書はいろんな分野の経済書など計4冊!!!

今週と来週の読書はかなりペースダウンします。今週は短編ミステリのアンソロジーも含めて計4冊。来週は同じくらいか、もっと少なくなるかもしれません。でも、週3~4冊というのは、私の従来ペースからすればやや少ない気がするものの、日本人の平均的な読書ペースからすると、まずまず読んでいる方なのかもしれません。

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まず、アレックス・ローゼンブラット『ウーバーランド』(青土社) です。著者は、テクノロシジー・エスノグラファーであり、データ・アントド・ソサエティ研究所の研究者、とあるんですが、これだけでは何のことやら、私にはサッパリ判りません。英語の原題も Uberland であり、2018年の出版です。少し前のCEOのスキャンダルで揺れたウーバーなんですが、Airbnbなどと並んで、シェアリング・エコノミーとか、ギグ・エコノミーをけん引する大企業であることは間違いありません。そのウーバーについて、本書では主としてサービスを提供するドライバーの立場から企業運営などについて批判的な議論を展開しています。スマ^トフォンのアプリで簡単に予約出来たりするサービスなんですが、逆のサービス提供サイドについては、ある意味で、アルゴリズムによって最適化されたプラットフォームからの情報に基づいてサービス提供をするとはいえ、ウーバー側の情報に踊らされたり、あるいは、締め付けが厳しかったりして、「最適化」されたアルゴリズムの意味が、誰に対する「最適化」なのか、慎重に問われるべき段階に達しているように私も考えています。日本では、白タク規制があって人を運ぶウーバーのビジネスは出来ていませんが、それなら、というわけで、ウーバー・イーツの大きなボックスを背負った自転車をよく見かけます。私の知り合いのジャーナリストは都心3区で共同運用している赤いシェア自転車は、ほとんどウーバー・イーツに思える、といっていたりもしましたが、先日、ウーバー・イーツの自転車が事故で大ケガをした保障の問題の報道なども見かけました。基本は、同じ問題ではないかと私は考えていますが、確かに、一般的な工場勤務やオフィスワークなどと違って、締め付けが個別バラバラの各個撃破になっていますので、さらに激しさの程度が高い気もします。ただ、アルゴリズムによる最適化のギグ・エコノミーの問題ではなく、あくまで、利潤最大化を目指す企業活動の問題と考えるべきです。すなわち、ギグ・エコノミーのウーバーだけではなく、多かれ少なかれ、アナログなタクシー業界でも同じ問題があるんではないか、と私は推測しています。もっとも、こういった新しげなギグ・エコノミーでの問題点を指摘すると話題になりやすいのも事実であり、こういった突破口から雇用や労働について、本来的な問題を考える起点になればいいのではないか、と私は考えています。本来的な視点を忘れるべきではないものの、社会的な注目度の向上にも配慮したいのは理解できます。

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次に、アダム・オルター『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社) です。著者は、米国ニューヨーク大学の准教授ですから若手研究者なんだろうと思います。専門は、行動経済学やマーケティング論だそうです。上の表紙画像に見える通り、英語の原題は Irresistible であり、2017年の出版です。邦訳タイトルの副題が「依存症ビジネス」のつくらかた、と和っていて、まざに、そのものズバリです。経済学的には、マイクロな経済学の観点から、シカゴ大学のベッカー教授なんかが「合理的な依存症の経済学」A Theory of Rational Addiction なんぞを検討していますが、本書の著者や私なんぞのように依存症ビジネスなんて合理的でもなんでもなく、健全な経済発展のためにはむしろ排除すべき対象のように考えているエコノミストとしては、受け入れられるもんではありません。本書でも、冒頭に、iPadのタブレットを考案してアップルから売り出したジョブズは、むしろ、自分の子供達にはタブレットを使わせなかった、という印象的なエピソードから始めています。インターネットに誰でもが気軽かつ安価にアクセスできるようになり、タブレットやスマートフォンなどの携帯できる端末によって、主として、ゲームとして楽しめるようになり、依存性の症状が広まり始めたと考えられます。第1章では、アルコールやドラッグなどのモノへの依存症から、今では行動嗜癖と呼ばれるアクションへの依存症が広まっていることが明らかにされ、第2章では、新しい依存症が人を操る6つのテクニックとして、数値設定などの目標依存症、SNSの「いいね!」やフォロワーを集めようとするフィードバック、射幸心を煽るガシャポンなどをはじめとする進歩の実感、ゲームだけでなく仕事も含めた難易度のエスカレート、ネットフリックスが生んだビンジ・ウォッチングをはじめとする行動経済学のナッジを悪用したクリフハンガー、インスタが刺激する他人と比較したい欲求を煽る社会的相互作用、の6点を上げています。ただ、これらのビジネス側のテクニックに対して、第3部で展開される3つの解決法はいかにも脆弱というそしりは免れず、さらに、エピローグでは、今後もこういった依存症ビジネスが予期せぬ形で現れる可能性を示唆しているだけに、むしろ、アナログの世界に閉じこもったほうがマシ、とすら考えてしまいます。私は自分自身を、特に意志が強かったり、精神が健全なるがゆえに、こういった依存症からは無縁、と考えているわけではなく、いついかなる場合でも陥る危険があると警戒心を怠らない必要があると考えていますが、個人的な病気という処理ではなく、社会全体としてあるいはシステムとして、こういった依存症から毒室した人格形成を目指すべきであり、そのためには市場万能ではなく、適切に市場の失敗を回避する方法を模索する必要があると考えています。そのためには、社会的な生産様式をさらに進化させる必要があるかもしれません。

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次に、レイ・ダリオ『PRINCIPLES』(日本経済新聞出版社) です。著者はヘッジファンドのウォーターブリッジ・アソシエイツの創業者であり、投資業界の著名人です。英語の原題も PRINCIPLES であり、2017年の出版です。第1部の著者の生い立ちは別にして、第2部の人生の原則と第3部の仕事の原則が中心をなしています。もちろん、年配の成功した実業家の本ですから、上から目線の自慢話ばかりなんですが、まあ、そういった本だと覚悟して読み進めばいいんではないかと思います。私の知り合いで、もともとエンジニアなんだと記憶していますが、業界の常なのかどうか、パナソニック創業者の松下幸之助を大いに尊敬して、その著書も読んでいる人がいます。まあ、そんな感じで軽く考えてヒマ潰しの読書と割り切るのが吉かもしれません。ただ、かなりの大判の本で600ページ近いボリュームです。邦訳がいいのでスラスラと読めますが、大きさで気後れする人がいるかもしれません。内容は人それぞれの受け止めなんだろうと思いますが、私には3点ほど目につきました。まず、人生と仕事の原則に共通して、いろんな局面でオープンであることの重要性は私も大いに同意するところです。政府機関に長らく勤務した経験から、いわゆる「よらしむべし、知らしむべからず」という裏ワザが身についてしまっている気もしますが、私もオープンでありたいと思います。次に、もうひとつ気にかかったのは、これも人生と仕事の両方に共通して苦楽に対する考え方で、とても循環的というか、「苦」がなければ「楽」が来ないような体験が多いのかもしれません。我が国の政権でも、「痛みを伴う改革」を強調する場合がありますが、私は「苦」や「痛み」は否定的です。避けられれば避けた方がいいに決まっています。キリスト教的には自らに苦痛を与える宗派があって、『ダビンチ・コード』でも出てきたように記憶していますが、仏教の浄土真宗の門徒である私としては、楽な方がいいに決まっています。最後に、仕事だけの原則ではなかったかと思いますが、「誰」の方が「何」よりも重要という原則がありました。生産の場ばかりではありませんが、企業活動においては人的資本の方が物的しほにょりも重要であるというのは、多くの経営者が同意しているようですが、なかなか実践している場合は少ないような気がします。モノである資本よりも労働・雇用の方が重要です。いうまでもありません。

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最後に、日本推理作家協会[編]『ザ・ベストミステリーズ 2019』(講談社) です。タイトルから明らかに理解される通り、ミステリの短編を集めたアンソロジーです。収録作品は、澤村伊智「学校は死の匂い」、芦沢央「埋め合わせ」、有栖川有栖「ホームに佇む」、逸木裕「イミテーション・ガールズ」、宇佐美まこと「クレイジーキルト」、大倉崇裕「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」、佐藤究「くぎ」、曽根圭介「母の務め」、長岡弘樹「緋色の残響」の9作であり、もともとの短編の出版元も本書の講談社に限定されていません。上の要旨画像に見られる宣伝文句は「耽読必至! ようこそ、日本最高水準のミステリーの世界へ」ということなんですが、決して大げさではありません。とても水準の高いミステリ短編ばかりです。世の中には長編ミステリを有り難がる人も少なくないですし、私も理解するんですが、こういった水準の高い短編集も見逃せません。

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2019年10月18日 (金)

上昇率が縮小した9月の消費者物価(CPI)について考える!

本日、総務省統計局から9月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し縮小して+0.3%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、9月0.3%上昇 2年5カ月ぶり低水準
総務省が18日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比0.3%上昇した。プラスは33カ月連続だが、上昇率は同じく0.3%上昇だった2017年4月以来、2年5カ月ぶりの低水準だった。菓子類など生鮮を除く食料品の値上げが指数を押し上げた一方、ガソリン価格や携帯電話通信料の下落が物価の下げ圧力となった。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は同じく0.3%上昇だった。人件費などが上昇している外食が、物価上昇に寄与した。電気掃除機など家庭用耐久財も上昇した。
伸び率は前月(0.5%上昇)よりも鈍化した。ガソリンや都市ガス代などエネルギー構成品目の下落幅が拡大したことが物価にマイナスに寄与した。携帯電話の通信料も6月に大手各社が値下げした影響が引き続き表れた。
生鮮食品を除く総合では297品目が上昇した。下落は168品目、横ばいは58品目だった。総務省は「2年5カ月ぶりの低水準となったものの、プラスで推移している」と指摘し「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。今後については「10月の消費増税の影響や原油価格の動向を注視したい」(総務省)と話した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.7と前年同月比0.5%上昇、生鮮食品を含む総合は101.9と0.2%上昇した。生鮮食品は、天候不順などの影響でぶどうや梨などの生鮮果物が上昇した一方、トマトやネギなどの生鮮野菜は値下がりした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。さらに、なぜか、最近時点でコアコアCPIは従来の「食料とエネルギーを除く総合」から「生鮮食品とエネルギーを除く総合」に変更されています。ですから、従来のコアコアCPIには生鮮食品以外の食料が含まれていない欧米流のコアコアCPIだったんですが、現時点では生鮮食品は含まれていないものの、生鮮食品以外の食料は含まれている日本独自のコアコアCPIだということが出来ます。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.2~+0.3%のレンジで中心値が+0.3%でしたので、ジャストミートしたといえます。上のグラフから明らかなように、紺色の折れ線で示したコアCPI上昇率、すなわち、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は今年2019年上半期の4月の前年同月比上昇率+0.9%をピークに、ジワジワと上昇幅を縮小させ、8月には+0.5%に、そして、9月にはとうとう+0.3%まで縮小したわけですが、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率、上のグラフで赤い折れ線については、同じように4月の+0.6%が高いといえば高いんですが、5月から直近統計が利用可能な9月まで+0.5~0.6%の上昇が続いており、コアCPIの▲0.6%ポイントの縮小幅に比較して、ほとんど上昇幅は縮小していません。要するに、9月統計までのコアCPI上昇率の縮小はエネルギー価格の影響が大きい、ということになります。ですから、先々月月7月統計ではエネルギーの前年同月比上昇率は+0.6%とギリギリながらプラスだったんですが、先月の8月統計では▲0.3%の下落と、とうとうマイナスに転じ、本日公表の9月統計では▲1.9%の下落と下落幅を拡大させています。9月統計の品目別の前年同月比で見ても、ガソリンの▲6.9%下落、灯油の▲2.6%下落などが目につきます。エネルギー全体では、繰り返しになりますが、9月統計の前年同月比で▲1.9%の下落、寄与度でも▲0.15%の大きさとなっています。
エネルギー価格の動向については、国際商品市況における石油価格の影響が大きく、私ごとき定年退職した元エコノミストにはまったく予想もつきません。ですから、利用可能な他の分野の専門家のリポートを読んだりするんですが、みずほ証券による10月17日付けのリポート「マーケット・フォーカス 商品: 原油」では、「当面は1バレル=50ドル台での下値固めを想定する」と結論されているようです。何ら、ご参考まで。

先行きの物価上昇については、当然ながら、10月1日からの消費税率引き上げや幼児教育などの無償化の影響が現れ始めます。今年2019年7月の日銀「展望リポート」では、p.4 の脚注6で、消費税率引上げがフルに転嫁されると、コアCPI上昇率を+1.0%ポイント引き上げ、また、教育無償化政策は、2019年度と2020年度のコアCPI上昇率をそれぞれ▲0.3%ポイント、▲0.4%ポイント押し下げる、と試算しています。

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2019年10月17日 (木)

今年2019年のドラフト会議の結果やいかに?

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本日夕刻、プロ野球のドラフト会議が開催され、阪神タイガース公式サイトから引用した上のテーブルの通り、我が阪神タイガースは計8名の選手を選択しました。私は不勉強にしてよく知らないんですが、大きな期待を持って見守りたいと思います。

若虎を迎えて来季は、
がんばれタイガース!

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ニッセイ基礎研「中期経済見通し (2019-2029年度)」を読む!!!

昨日の記事では、IMFが公表した「世界経済見通し」を取り上げましたが、同じ10月15日には、もっと長く10年間を対象としたニッセイ基礎研「中期経済見通し (2019-2029年度)」が明らかにされています。もちろん、ニッセイ基礎研のサイトにはpdfの全文リポートもアップされています。IMFの短期的な来年までの経済見通しとも、また、私の考えるもう少し長い中期的な経済見通しとも、いずれもとてもよくマッチしています。グラフを引用しつつ概観しておきたいと思います。まず、ニッセイ基礎研のサイトからリポートの要旨を5点引用すると以下の通りです。

要旨
  1. 世界経済は製造業を中心に減速している。2019年の世界の実質GDP成長率は3%程度となり、世界金融危機以降では最も低い伸びにとどまることが見込まれる。
  2. 2020年代初頭にかけては製造業サイクルの好転から世界の成長率は3%台半ばまで高まるが、中国をはじめとした新興国の成長率鈍化を反映し、2020年代半ば以降は3%台前半まで低下することが予想される。
  3. 日本は人口減少、高齢化が進む中でも女性、高齢者を中心に労働力人口が大幅に増加しており、中長期的な経済成長を規定する供給力の低下は顕在化していない。一方、需要面では堅調な企業部門に対し、家計部門は低調な推移が続いており、このことが景気回復の実感が乏しい一因となっている。
  4. 2029年度までの10年間の日本の実質GDP成長率は平均1.0%と予想する。高齢者がより長く働くようになれば、高齢者の雇用者所得の拡大を通じて消費の長期低迷に歯止めがかかる可能性もある。
  5. 消費者物価上昇率は10年間の平均で1.1%(消費税の影響を除く)と予想する。デフレに戻る可能性は低いが、賃金の伸び悩みが続くなかでは、日本銀行が「物価安定の目標」としている2%を達成することは難しいだろう。

最初のポイントでは、IMFの「世界経済見通し」とまったく同じ認識で、2019年の世界経済の成長率が+3%とリーマン・ショックに起因する金融危機後の最低水準との現状判断が示されていますし、多くのエコノミストのコンセンサスと考えられる上に、この要旨でほぼほぼ中期見通しの内外の全容を尽くしているような気もしますが、以下では基本的に日本経済に的を絞って、グラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。なお、我が国では2026年4月から消費税率が12%に引き上げられるとの前提を置いています。

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まず、世界主要国の、というか、日米欧の先進国に中国とインドの1人当たりGDPの推移をリポートから引用すると上の通りです。別途、世界のGDP構成比のグラフもあり、日本はGDP規模ですでに2010年に中国に抜かれているわけですが、さらに、インドのGDPは予測期間末に日本を上回る、との結果も示されています。ただ、1人当たりGDPで見れば、中国やインドといった新興国が追い上げ急ピッチではあるものの、見通し最終年の2029年でも日本の1人当たりGDPは中国の2倍以上の水準を維持する、と見込まれています。ただ、米国やユーロ圏欧州との差は縮まりません。

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次に、我が国の潜在成長率の成長会計的な寄与度分解、すなわち、全要素生産性と労働投入と資本投入に潜在成長率を分解した推移を示すグラフをリポートから引用すると上の通りです。高齢者や女性の労働市場参加により、直近2018年くらいまでは労働投入もプラス寄与なんですが、足元の2019年あたりから労働投入はマイナスとなります。基本的には、人口減少の影響ですが、働き方改革に伴う労働時間短縮の影響も見込んでいるようです。しかし、資本投入がこれをカバーして、+1%程度の潜在成長率が見通し期間中はキープされる、と見込まれています。

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次に、需要項目別の寄与度とともにGDP成長率の推移をプロットしたグラフをリポートから引用すると上の通りです。2026年度の成長率が極端に落ち込んでいるのは、繰り返しになりますが、2026年4月から消費税率が12%に引き上げられるとの前提を置いているからです。ということで、成長率は2017年度の+1.9%から2018年度には+0.7%へと減速し、加えて、足元の2019年度から2021年度までは潜在成長率をやや下回るゼロ%台後半の成長が続くと見込んでいる一方で、2022年度に+1.1%と潜在成長率並みの成長へと回帰した後は、2026年度の消費税率引き上げによる落ち込みを別にすれば、おおむね+1%台前半の潜在成長率水準ないしやや上回る成長が続く、と見込んでいます。従って、予測期間(2020~2029年度)を通した平均の成長率は+1.0%になり、直近の過去10年間と大きな差がない水準の成長を続ける、と予想しています。

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最後に、これも各収支別の寄与を分解した経常収支の推移のグラフをリポートから引用すると上の通りです。おそらく、人口減少による高齢化の影響を最も強く受けるのが経常収支であると私は考えています。高齢化、、さらに、その高齢化に伴う貯蓄率の低下がこれを引き起こす要因となります。このニッセイ基礎研の中期見通しでは、経常収支は予測期間終盤に小幅ながら赤字化する、と予想しています。特に、国際商品市況における石油価格の動向にもよりますが、貿易収支は予測期間末には赤字幅が名目GDP比で▲3%程度まで拡大する、と見込んでいます。ただし、だからどうだというわけではなく、経常収支が赤字になる、というか、国内の貯蓄がマイナスになっても、自国通貨の発行権を持つわけですから国債消化には問題なく、ほかにも、大きな問題あるとは私は考えていません。もっと長期にわたって経常赤字を計上し続けている国はいっぱいあります。

グラフなどは引用しませんが、物価については、生鮮食品を除く消費者物価、すなわち、コアCPIの上昇率で見て、日銀の物価目標である+2%に達することはなく、予測期間(2020~2029年度)の平均で+1.1%にとどまるものの、過去10年間の平均である+0.2%よりは上昇幅が拡大する、と見込んでいます。また、財政の見通しについては、基礎的財政収支は見通し最終年の2029年度でもGDP比▲2.6%の赤字を記録し黒字化は実現せず、国と地方の債務残高は2029年度には約1300兆円まで増加する、と見込んでいる一方で、名目成長率が比較的高い伸びとなるため、債務残高の名目GDP比の上昇には歯止めがかかり、▲200%程度で安定する、と予想しています。細部にわたって隅々まで熟読したわけではありませんが、かなりの程度に私の理解や見通しと一致する部分がとても大きいと感じています。多くのビジネスパーソンや学生さんなんかにオススメです

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2019年10月16日 (水)

IMF による「世界経済見通し」World Economic Outlook 見通し編を読む!

IMF・世銀総会が開催されていますが、日本時間の昨日10月15日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook, October 2019 の見通し編が公表されています。副題が Global Manufacturing Downturn, Rising Trade Barriers ということで、かなり下方リスクを意識した内容となっています。まず、IMF Blog のサイトから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。なお、いつもの通り、テーブル画像をクリックすると、「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook, October 2019 の見通し総括ページである pp.10-11 だけを抜き出したpdfファイルが別タブで開くようにしてあるつもりです。

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米中間の貿易摩擦や関税率引き上げに伴う世界経済の減速の影響がさらに大きく増して、2019年の成長率見通しが下方修正されています。結果として、世界経済の成長率は2019年3.0%、2020年3.4%と、半年前の2019年4月時点の見通しから2019年が▲0.3%ポイント、2020年も▲0.2%ポイントの下方修正となっています。2019年見通しの+3.0%成長というのは、リーマン・ショック後でもっとも低い成長率見通しに仕上がってしまっています。基本は、繰り返しになりますが、米中間の貿易摩擦が世界経済減速の最大の要因なんですが、加えて、ユーロ圏や中国において新排気ガス規制に伴う混乱などにより自動車生産がマイナスの影響を受けたり、また、先進国における生産性の伸び悩みや高齢化といった構造要因によっても、経済成長が下押しされていると指摘しています。2020年には世界経済の成長率は上向くと見込まれていますが、世界経済を牽引するのは新興国や途上国なんですが、そのうちほぼ半分が、アルゼンチン、イランやトルコなど、ストレスを抱えている新興国での景気回復、あるいは、景気後退が軽微であることで説明でき、残りの部分は、2018年と比べて2019年の成長率が大幅に低下した、ブラジルやインド、メキシコ、ロシア、サウジアラビアといった国々のリバウンドという要因ですから、米国、日本、中国といった経済大国が2019年から2020年にかけて成長率が減速するわけですので、不確実性が大きいと指摘しています。さらに、下振れリスクは目白押しで、米中間の貿易摩擦やBREXITの不確実性はいうまでもなく、湾岸地域の地政学要因も不安定です。マインド要因や新興国への資金フローなどがリスクとなる可能性も残されています。このため、金融政策はもちろんなのですが、財政政策も余裕あれば発動すべき、と指摘しています。最後に、世界経済の成長率が+3.0%にとどまるのであれば、まだまだ政策的な下支えが必要、と結論しています。

 【2019年7月判断】前回との比較【2019年10月判断】
北海道緩やかに回復している緩やかに拡大している
東北一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている
北陸緩やかに拡大している緩やかに拡大している
関東甲信越輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している
東海拡大している拡大している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている
中国緩やかに拡大している一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに拡大している
四国回復している回復している
九州・沖縄緩やかに拡大している緩やかに拡大している

最後に、昨日10月15日午後、日銀支店長会議にて「さくらリポート」が公表されています。上の通りで、横ばいないし上向きという結果なんですが、下振れリスクも少し意識され始めているような気もします。

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2019年10月15日 (火)

インテージによる消費税増税の駆け込み需要に関する調査結果やいかに?

ちょうど2週間前の10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられています。その後の災害関係のニュースなどで、私もついつい消費税率引き上げの実感がないんですが、もうひとつは、私はほとんど食べる方面の消費が多くを占めていて、軽減税率のために据え置き感があるんだろうと思います。ということで、駆け込み需要も大きくなかったように感じているところ、調査大手のインテージから消費増税の駆け込み需要に関する調査結果が明らかにされています。まず、調査結果のポイントを4点インテージのサイトから引用すると以下の通りです。

[ポイント]
  • 日用消費財全体では、前回増税時ほどの駆け込み需要は起こらず
  • 軽減税率の対象外となるカテゴリーでは、2014年の増税とほぼ同水準で駆け込み需要が起こる
  • 軽減税率対象が多く含まれる食品・飲料では、購入金額の伸びは限定的で、前回比で大幅減
  • 食品・飲料のカテゴリー内でも、対象外のアルコール飲料は2014年とほぼ同じ伸び

ほぼほぼ、これらのポイントに尽きている気がするんですが、2014年の5%から8%に消費税率が引き上げられた時と、今回を対比させたグラフを以下に引用しつつ概観しておきたいと思います。

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見れば明らかなんですが、14年と19年のそれぞれの消費税率引き上げ前後の購入金額前年比です。上から順に、日用消費財、ということで、食品・飲料・日用雑貨品・化粧品・ヘルスケアの合計です。今回も一定の駆け込み需要は見られますが、前回2014年よりもその規模はやや小さかった可能性が示唆されています。ただ、日用消費財のうちでも、2番めのグラフの日用雑貨品、3番目のグラフの化粧品、4番めはのグラフのヘルルスケア、の3品目については、前回と変わらない規模での駆け込み需要が観察されています。インテージでは、軽減税率の適用外である点を指摘しています。逆に、その次の5番目のグラフの食品・飲料については軽減税率適用であり、明確に駆け込み需要が前回から小さくなっています。ただ、最後のアルコール飲料についてはやっぱり、軽減税率の適用外ですので、今回も前回並みの駆け込み需要が生じています。要するに、前回と比較の上では、軽減税率適用品目の駆け込み需要は前回2014年より小さく、適用外の品目は前回並み、ということになります。順当に常識的な結果かという気がします。消費税率引き上げ後の反動減も、そのうちにインテージがリポートすることと私は予想しています。また、取り上げてみたい気がします。

本日10月15日の米国東海岸時刻の午前9時に国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook の見通し編が公表される予定となっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2019年10月14日 (月)

ノーベル経済学賞は貧困削減と開発経済学の3氏に授与!!!

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今年のノーベル経済学賞 The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 2019 が本日公表されています。世界的な貧困削減の貢献により、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者と米国ハーバード大学の研究者計3氏に授賞されています。以下の通りです。お名前にリンクを張ってあります。

nameaffiliationmotivation
Abhijit Banerjee
Born: 21 February 1961, Mumbai, India
Massachusetts Institute of Technology (MIT), Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty
Esther Duflo
Born: 1972, Paris, France
Massachusetts Institute of Technology (MIT), Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty
Michael Kremer
Born: 1964
Harvard University, Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty

もうおおむかしなんですが、バナジー教授とデュフロ教授の共著である『貧乏人の経済学』(みすず書房) を読んだ読書感想文がこのブログに2012年7月13日付けでアップしてあります。「ランダム化比較実験」と訳されている Randomized Controlled Trial (RCT) を途上国で実施し、より有効な貧困削減や経済開発の方策を探ったりしています。もう少し最近では、2017年5月6日付けの読書感想文でデュフロ教授の『貧困と闘う知』(みすず書房)を取り上げています。
開発経済学の研究者としては、ルイス卿やセン教授などがノーベル経済学賞を授賞されていますが、その昔の私の専門分野に近い研究者だけに、とても感激しました。私も役所を定年退職しましたが、もう一度何らかの形でエコノミストに復帰したいとの希望が芽生え始めています。

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2019年10月13日 (日)

実力の差はいかんともしがたくファイナル・ステージで敗退!!!

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阪  神010000000 120
読  売00001120x 471

まったく勝負にならず、実力の差を見せつけられてファイナル・ステージで敗退でした。投打に何とも差が大きいと感じてしまいましたが、特に打線はあれだけボールに手を出しては得点できないと強く感じました。私の目から見れば、前の金本監督が残した悪い影響だという気がします。そのひとつの帰結が、選球眼のいい鳥谷選手の起用法に影響した気もします。

来季こそ、
がんばれタイガース!

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2019年10月12日 (土)

昨日金曜日はシェアリング・エコノミーのプレゼンほかで関西に行く!!!

実は、昨日は関西方面に日帰りで行って、昨年12月の『季刊国民経済計算』に公表した私の最新のシェアリング・エコノミーに関する研究成果のプレゼンなどをしてきました。
というのがメインの話題ではなく、やっぱり、先ほど我が家の周辺を通過したらしい台風19号の話題です。というのも、昨日こそ金曜日のウィークデーでしたが、今日から3連休が続きますので、大阪の大学に通っている下の倅のアパートに泊めてもらって、京都か大阪の見物をした上で、明日の日曜日には私のばあさんがちょうど10年前の9月に102歳で亡くなっていますので、本家の叔父に連絡を取って下の倅とともに墓参りでも、と予定していたんですが、台風19号のためにすべてご破産になりました。
台風19号、呼称は「ハギビス」であり、大型で強烈な台風です。夕方に伊豆半島に上陸した後、21時ころには川崎市付近にあり、今ごろは我が家の上空を通過しているんではないかと思います。
昨日は、午後から私の最新の研究成果についてプレゼンなどをする予定となっていて、実は、正午前に新幹線で京都に着いたんですが、木曜日の段階で本日土曜日の新幹線は大幅な間引き運転で運休続出、と報じられていたわけですので、泊なしで日帰りに予定を変更し、正午前に京都に着いた時点で帰りの新幹線のチケットを取ろうとしたところ、6時半過ぎに1席だけ空いている、とのことで、それをしっかりと予約しました。その後、午後のプレゼンなどの用務を終えて、5時半ころに京都駅に着き、6時半よりももう少し早い新幹線はないものかとチケット売り場で聞いたところ、昨日中の新幹線の指定席はすべて売り切れで、たとえ1時間待っても私の手持ちのチケットで東京に帰った方がいい、とのアドバイスでした。極めてごもっともと考えて、京都駅の南口に当たる八条口にあるミスター・ドーナツの近鉄京都駅ショップに入って、ドーナツをつまみながらコーヒーをいただいて、読書しつつ時間をつぶした上で、6時半過ぎの新幹線で東京を目指しました。
しかし、小田原駅手前で停車し、新横浜までノロノロ運転となります。車掌さんのアナウンスが入って、新横浜駅の入線待ちに8台止まっていて、その時点から遅れが目立ち始めます。どうも、名古屋や大阪方面のへ乗客が東京駅の自由席1~3号車の大阪寄りのホームにあふれていて、降車と乗車に時間がかかっているとのことでした。私はJR東海のオススメ通りに品川で降車して山手線に乗り換えましたが、品川駅ですら座り込んだ乗客がいっぱいでしたから、東京駅では人があふれかえっているというのも容易に想像できました。
今日はもう、交通機関は運休で、自動車を持たない貧困家計である我が家では、自転車で移動するわけにも行かず、その上、お店も軒並み閉店しており、クライマックス・シリーズの試合も延期ですし、カミさんと2人でじっと家にこもって、テレビやインターネットで災害情報をチェックする以外に時間の潰しようがありませんでした。かといって、なぜか自宅では読書も進まず、音楽を聞いたり、ひたすら停電だけは避けてほしいと神頼みしたりしていました。

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今週の読書は軽めの経済書と重厚な専門書の組み合わせで計6冊!!!

今日は、台風の影響で外出もままならず、ずっと在宅しています。後で、もう少し書こうかと思うんですが、実は、昨日は関西に行ったものの、今日の新幹線が運休になるとのことで、下の倅の大阪のアパートに宿泊する予定を繰り上げて夜遅くに帰京したりしました。今日は図書館も軒並み閉館で、来週の読書向けの本はまだ集まっていません。ということで、前置きが長くなりましたが、今週の読書は新書も含めて軽めの経済書が3冊、ほかに重厚でボリューム十分な専門的教養書が3冊、以下の計6冊です。

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まず、根井雅弘『ものがたりで学ぶ経済学入門』(中央経済社) です。著者は、我が母校の京都大学で経済学史を専門とする研究者です。マンガで科学や経済などを解説する本がありますが、本書もフィクションを取り入れて、アダム・スミス以来の古典派や限界革命、マルクス主義経済学からケインズ経済学まで幅広く鳥瞰しています。フィクションは、経済学の研究者の倅である中学3年生を家庭教師的に勉強を見ている高校3年生が主人公で、中学3年生の父親の経済学の研究者から指導を受けて、英語の原書を含めて経済学の古典を読破するという、まさに、フィクションならではのドラえもんの道具的な荒唐無稽なストーリーです。でも、そのフィクションの高校3年生が経済学の英語の原書の古典を読破するという部分をガマンして読めば、それなりの中身になっている可能性はあります。私はこのフィクションの構成はともかく、スミスのところでsympathy の邦訳語を「同情」を排するのはいいとして、「同感」を取っているのがムリ筋と考えてしまいました。「共感」ではないでしょうか。その後、まあ、それなりの初歩的な内容でしたが、一応の経済学史が鳥瞰されていて、参考にはなると思います。ただ、クロニカルにはケインズ経済学で終わっていて、我々が現に体験している戦後のブレトン・ウッズ体制下の経済の基となる理論的背景についてはお話が及んでいません。戦後の経済学史で、ケインズ経済学から、ブレトン・ウッズ体制末期のインフレの下でマネタリスト経済学や新自由主義的な経済学が米国のレーガン政権や英国のサッチャー政権下で主流となり、21世紀に入ってから、米国のサブプライム・バブル崩壊後に再びケインズ経済学が見直されている現状などにもう少し目が行き届けば、もっといいような気もします。もっとも、著者の意図としては、決して、現在までに至る経済学シすべてのトピックを取り上げるというよりは、本書のボリュームのほぼ半分をスミスないしミルやリカードなども含めた古典に当てていますし、スミスの経済学が「夜警国家」を推奨し、見えざる手なる市場の調整機能への過信に基づく自由放任経済ではない、という点に重点があると考えるべきなのかもしれません。

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次に、清水洋『野生化するイノベーション』(新潮選書) です。著者は、一橋大学出身で現在は早大の経済史の研究者、特に、イノベーションの歴史を専門にしているようです。本書では、かなり通り一遍なのですが、イノベーション、特に、破壊的で従来の技術を無効化するようなイノベーションについて、歴史と理論を概観した後、現在の経済の停滞の一員たるイノベーションの不活発さについて著者の見方を示しています。従来の技術を無効化するような破壊的なイノベーションとは、例えば、自動車がウマを駆逐したようなものだと指摘し、現在のイノベーションが流動性が高い中で、ついつい手近な、あるいは、低いところにある果実をもぐことに専念し、より高いところにありリターンの大きなイノベーションに手が伸びていない可能性を指摘しています。私の目から見て、歴史的な資本リターンの低下傾向が続く中で、いくら金融政策で低金利を続けても、その低金利すら超えないリターンしかもたらさないイノベーションは採用されないわけであって、さらに、流動性が高まれば、安定した研究体制は構築しにくくなる、というか、ハイリスク・ハイリターンの「冒険主義的」な研究開発を必要とするイノベーションが遠ざかるのは事実です。安定した研究体制を構築して、多少のムダは覚悟の上でハイリスク・ハイリターンのイノベーションを支えるためには流動性が低くて安定した研究体制を必要とします。ただ、大筋で、私は手近な果実は取り尽くされたというのは事実であり、「冒険主義的な」研究開発で大胆なイノベーションが実現されるようなサポート体制が必要になる、という意味で、イノベーションが野生化したというのは事実なんだろうと考えています。

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次に、ヴィルヘルム・フォン-フンボルト『フンボルト 国家活動の限界』(京都大学学術出版会) です。著者は、どういえばいいのか、18世紀末から19世紀初頭にかけて活躍したドイツの行政官、外交官、政治家、政治学者といったところなんですが、ベルリン大学の創設者ですし、「国家は教育に介入するな」という超有名な金言も人口に会社しているものですから、私なんぞの専門外のエコノミストは教育の分野の歴史的人物、と考えていたんですが、本書の解説では、テンポラリーな行政官として大学開設に関わったのであって、教育者でもなければ、教育行政が専門であるわけでもない、と指摘しています。また、本書は検閲やなんやの事情により、著者死後の19世紀なかばに出版されています。ドイツ語の原題は Ideen zu Versuch die Grenzen der Wirksamkeit des zu besitimmen であり、原書は1851年の出版です。英語圏の出版物であるミル『自由論』で高く評価されたことにより世界的な評価を受けるようになったと私は受け止めています。なお、出版社のサイトによれば、本書は「近代社会思想コレクション」のシリーズの一環で第26巻として出版されており、本書に続いて、ヒューム『道徳について』、J.S.ミル『論理学大系4』が出版される運びとなっているようです。前置きが長くなりましたが、タイトル、出版社、そして、何よりも600ページを超えて700ページ近いボリュームなどから、読み始めるにはかなりの覚悟が必要です。でも、おそらく邦訳がいいんだと思いますが、読み始めるとスラスラと読むことが出来ました。ただし、政府機関で活動した人物ですから、ある意味で、私と活動分野が似ていたのかもしれませんから、このあたりは少し割り引いて考えた方がいいかもしれません。ただ、前置きばかりを長くしたのは、古典書ということもありますが、読んだ私がよく理解できなかったわけで、邦訳は判りやすくてスラスラ読めるとしても、内容ば難解であることはいうまでもありません。ただ、私の直感的な受け止めとしては、ドイツの経済学者として有名なリストなどは、ドイツという経済的には後発国において英国やフランスなどに対抗するために保護主義的関税の導入などの国民経済保護の経済学を展開したんですが、本書ではフンボルトは現在でいえばかなりリバタリアンに近い国家の限界に関する考え方、すなわち、国家活動に対するかなり強い懐疑論や、嫌悪感に近い議論が展開されている、と考えています。最初に引用した「国家は教育に介入するな」ではありませんが、教育だけでなく、色んな分野で国家の介入への否定的な議論が見られます。

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次に、テイラー・フレイヴェル『中国の領土紛争』(勁草書房) です。著者は、米国マサチューセッツ工科大学の国際政治学の研究者であり、国際関係論と主として中国に関する比較政治学が専門だそうです。英語の原題は Strong Borders, Secure Nation であり、2008年の出版ですが、その後の尖閣諸島に関する問題などを含めたエピローグが日本語版のために書き下ろされて収録されています。本書も、かなり大判な上に、500ページ近いボリュームがあり、出版社からしてもほぼほぼ専門学術書と考えるべきで、それなりの覚悟を持って読み始める必要を指摘しておきたいと思います。ということで、邦訳タイトルに明らかな通りの内容で、中華人民共和国成立後の1950年以降の歴史的な外観と分類が中心になっていますが、必要に応じて、さらに歴史的にさかのぼって事例がいくつか参照されています。米国の研究者による出版ですが、かなり広範に中国語文献や資料を渉猟しているようで、英語情報だけによる表面的、対外公表な文献の分析だけでなく、かなり内部文書的的な資料の分析も加わっています。ただし、もちろん、米国のような体系的公文書公開の制度が中国にあるわけでもなく、それほど、というか、まったく情報公開には前向きの姿勢がない国家ですので、限界はあるのかもしれません。もちろん、中国は常に武力行使により領土問題を解決してきたわけではない点は、我が国の尖閣諸島問題でも実証されている通りで、領土紛争がエスカレーションして武力行使に至る以外に、どのような場合に引き伸ばしを図り、どのような場合に妥協するか、を極めて多くの歴史的事例に基づいて分析し解説しています。その歴史的事例は、中華人民共和国建国以来のすべてである23例とされています。専門外の私が考えても、本書が出版されて以来の10年間で中国が国力を増したのは紛れもない事実であり、加えてその経済的な発展からして、領土紛争の大きな要因の一つであるエネルギーや資源に対する需要は高まっている点は忘れるべきではありません。加えて、経済学にはウィン-ウィンの関係は広く見られますが、国際政治の場における領土紛争は確実にゼロサムです。ですから、本書が指摘するトーンよりも隣国としては警戒色を高める必要があると考えるのは、私だけではないと思います。

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次に、石橋毅史『本屋がアジアをつなぐ』(ころから) です。著者は、出版業界をホームグラウンドとするジャーナリスト・ライターであり、我が国を含めて、インターナショナルな本屋さんをコンパクトに紹介している、一種の紀行本です。著者が実際に訪問しているんでしょう。なお、本書冒頭では、「書店」はお店というハードウェアであって、「本屋」はその書店を運営管理する経営者、あるいは書店員を指す、と断り書きをしていますが、まったく守られていません。ほとんどの「本屋」は書店というハードウェアとして使われている気がします。私はスペイン語を理解しますので、スペイン語では店を librería、書店員を librero あるいは、女性型なら librera とし表現します。このラインを狙ったんでしょうが、残念ながら失敗しています。本書で取り上げられている書店の中で、私が圧倒的に興味を持ったのが、上海を拠点としていた内山書店です。現地でお尋ね者となってしまった魯迅を匿ったり、書店らしく、いろいろと言論の自由や人権を守るリベラルな活動が歴史に残っています。直接的な政治活動だけでなく、出版や研究といった広く開かれたドメインでより有効性や効率性を増す活動は他にもいっぱいありますし、そういった自由が保証されないとそもそも活動すら出来ない場合も少なくありません。私は割引になるので早大生協で本を買う事が多いんですが、そもそも、買うよりも図書館で借りることのほうが圧倒的に多く、改めて、こういった出版物や印刷物の重要性、そして、それらの流通を担い人々に広める書店の役割をアジアで発見した様な気がします。

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最後に、山口慎太郎『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書) です。著者は、最近カナダから帰国し東大の研究者に就任しています。専門は労働経済学であり、その派生領域として結婚・出産・子育てなどを経済学的な手法で数量分析する家族の経済学に分析を広げています。ということで、本書では、数量分析に基づいて、結婚、出産と乳児の子育て、育児休暇、父親の子育て、保育園の経済分析、そして、最後に、離婚、といった章立てで家族の経済分析をサーベイしています。ご自分の分析結果も含まれていますが、本書で新しい数量分析結果が示されているわけではなく、既存研究のサーベイです。いくつかの例外を除いて、ほぼほぼ常識的な分析結果が取り上げられているんですが、本書でも著者が指摘している通り、こういった常識的な結果を数量分析で跡づけるのは学問的にも、広く常識的にも有益なことである私も考えます。特に、保育園における集団的な子育ての要素は母親の学歴が低いほど、子供にはプラスの影響がある、というのは、直感的に理解していても、なかなかその直感的な理解が主張しにくい場合が多いと思うんですが、それなりのジャーナルに査読付きの論文が掲載されていれば、参照することも抵抗感は低下すると思います。ただ、本書で議論されている常識的ながら、一部に抵抗感が残らないでもない主張ですので、ほぼほぼ海外の数量分析で大きな部分が占められているのは、すでに定年退職した私も含めて、我が国経済学界の一層の奮起を促すものと受け止めるべきなのでしょう。

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2019年10月11日 (金)

IMF「世界経済見通し」分析編を読む!

IMF世銀総会を前に、IMFから「世界経済見通し」分析編がすでに公表されています。章別のタイトルは以下の通りです。

Chapter 2:
Closer Together or Further Apart? Subnational Regional Disparities and Adjustment in Advanced Economies
Chapter 3:
Reigniting Growth in Emerging Market and Low-Income Economies: What Role for Structural Reforms?

第2章では、先進国内における地域間格差について、第3章では、新興国と途上国の成長率の鈍化を、それぞれ着目した分析を行っています。なかなか本文を読み切れないので、IMF blog などから要約を取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは IMF blog のサイトから Slipping behind を引用しています。第2章では、米国の1人あたり実質GDPの平均は、スロバキアの平均値を約90%上回っているが、同時に、米国内で見るとニューヨーク州の1人あたりGDPはミシシッピ州よりも100%高い、と指摘しつつ、同じ国の中であっても地域間で景気動向に大きな差が見られ、特に、1980年代後半以降、特定地域での経済的集中と、それ以外の地域での相対的な停滞を反映して、地域間格差が拡大してきた点に着目しています。すなわち、遅れている地域は、国内の他地域と比べて健康状態が悪く、労働生産性が低く、農業や工業部門における雇用比率が高い、と指摘し、市場の歪みを軽減し、より柔軟で開かれた市場を目指して、しかも強固なセーフティーネットを提供する政策を国レベルで行うような対応を求めています。

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次に、上のグラフは IMF blogのサイト から Slowing pace を引用しています。第3章では、新興市場国と発展途上国は、過去20年にわたって高い経済成長を遂げてきたものの、多くの国々では生活水準が今も先進国に追いつく段階に達しておらず、このままの成長ペースでは、生活水準について、現在の所得ギャップを半分解消するのに、典型的な新興市場国は50年以上、典型的な発展途上国は90年を要することになる、と指摘しつつ、6つの重要分野、すなわち、国内金融、対外資金調達、貿易、労働市場、製品市場、ガバナンスで同時に大規模な改革を行うことにより、平均的な新興市場国・発展途上国の所得が先進国の生活水準に近づくスピードを2倍に加速でき、6年にわたってGDP成長率をを+7%以上に引き上げることができる、と指摘しています。

なお、見通し編は来週早々の10月14日の公表と聞き及んでいますので、また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2019年10月10日 (木)

ジャイアンツに実力の差を見せつけられて一気に王手の崖っぷち!!!

  RHE
阪  神000000000 031
読  売10022001x 6111

まったく勝負にならず、実力の差を見せつけられて一気に王手の崖っぷちに立たされてしまいました。投打に何とも差が大きいと感じてしまいました。少なくとも投手の方はいつもの「9月の失速」が1ト月遅れでやって来た感があります。でも、東京ドームなんですから、打つ方はもう少し何とかならないものなんでしょうか?

明日は何とか1勝目指して、
がんばれタイガース!

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前月比で2か月連続で減少したコア機械受注と国内物価のマイナス幅が1%を超えた企業物価(PPI)!

本日、内閣府から8月の機械受注が、また、日銀から9月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲2.4%減の8753億円を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲1.1%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の9月統計まで4か月連続でマイナスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の機械受注、前月比2.4%減 基調判断は「持ち直し」据え置き
内閣府が10日発表した8月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.4%減の8753億円だった。減少は2カ月連続で、市場予想(1.8%減)も下回った。ただ、内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。「3カ月移動平均で見た場合、足元のトレンドは変わってない」(内閣府)という。
8月の受注額は製造業が1.0%減の3802億円だった。減少は2カ月ぶり。造船業で内燃機関や船舶、その他製造業で火水力原動機などの受注が減った。内閣府は「前月が非常に高い伸びだったため、反動減がみられた」と分析している。非製造業は8.0%減の4773億円だった。減少は2カ月連続。建設業で船舶、建設機械、情報サービス業で電子計算機などの受注が減少した。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は14.5%減だった。
一方、前月比での受注総額は11.8%増だった。電力業で大型案件が3件あり、船舶・電力を含む民需の受注額は15.0%増だった。同じく大型案件があった官公需の受注は36.8%増。鉄道などの大型案件が5件あった外需の受注額は21.3%増と大幅に増加した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
9月の企業物価指数、前年比1.1%低下 16年12月以来の下げ幅
日銀が10日発表した9月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は100.9で前年同月比で1.1%低下した。4カ月連続のマイナスで、2016年12月以来、2年9カ月ぶりの大きな下げ幅だった。前月比でみると横ばいだった。
原油相場の低迷で「石油・石炭製品」や「化学製品」などが低下した。米中貿易摩擦による中国経済の低迷懸念で輸出が落ち込み「スクラップ類」や「非鉄金属」なども低下した。
円ベースでの輸出物価は前年比で6.0%下落し、5カ月連続でマイナスとなった。前月比では0.1%上昇した。輸入物価は前年比9.3%下落し、5カ月連続の低下となった。前月比では0.4%下落した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは355品目、下落したのは291品目だった。上昇と下落の品目差は64と8月の確報値(68品目)から4品目減った。
日銀は「米中貿易摩擦の動向や世界経済の先行きの影響には注意が必要」(調査統計局)としている。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比は▲1.0%の減少を見込んでいましたし、上のグラフを見ても判る通り、6か月後方移動平均によるトレンドとしてはまだ上昇を続けていますので、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いたのにも驚きはありません。また、引用した記事にもある通り、私は計算していませんが、3か月後方移動平均でも足元のトレンドは変わってないようですから、なおさらです。もともとが、毎月の変動が大きな統計ですし、2か月連続の前月比マイナスとはいえ、先々月の6月統計でコア機械受注+13.9%増から、7月▲6.6%減、8月▲2.4%減ですから、7月の大幅増の部分がまだお釣りがくるくらいに残っているのも事実ですから、ならして見れば増加基調に変わりないのは、私もその通りだと思います。ただ、上のグラフの下のパネルを見ても。製造業がこのところ弱い動きを続けているのは事実ですし、米中貿易摩擦に起因した世界経済の減速から、さらに受注を低下させる可能性も否定できません。非製造業も、人手不足に伴う合理化・省力化に伴う設備投資需要が期待されますが、景気が後退局面に入れば人手不足がどこまで続くかは不透明です。景気局面に対して敏感になるべく努力したいと思います。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。繰り返しになりますが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価については、とうとう6月統計から前年同月比上昇率がマイナスに転じ、今日発表の9月統計まで4か月連続のマイナスを記録しています。ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前月同月比は▲1.1%の下落を見込んでいましたので、ジャストミートしました。国内物価のうち前年同月比で見て、石油・石炭製品のマイナスが8月▲9.9%の下落から、本日公表の9月統計では▲11.9%に拡大しています。もっとも判りやすいのが、輸入物価の円建てでの石油・石炭・天然ガスであり、8月▲14.7%下落が、9月統計では▲18.9%に拡大しています。なお、契約通貨ベースでは▲15.6%ですので、円高の進行も物価下落を促進しているのがよく判ります。いずれにせよ、10月からの消費税率引き上げで多少なりとも物価上昇圧力は強まるにしても、金融政策よりも国際商品市況における石油価格のほうが我が国物価への影響が大きいというのは、まったく変化ないようです。なお、私が輸入物価のうちの品目別指数を調べた範囲で、昨年2018年中で原油価格の前年同月比上昇率がもっとも高かったのは2018年7月の+60.3%だったんですが、今年2019年の下落幅は、今のところ、2019年9月の▲19.9%がもっとも大きくなっています。価格水準を表す指数のピークは2018年11月の142.5でしたから、この先、もう少し企業物価の下落は続くのかもしれません。

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2019年10月 9日 (水)

クラリベイト・アナリティクスによる引用栄誉賞やいかに?

今週月曜日からノーベル賞ウィークが始まり、すでに、医学生理学賞、物理学賞が公表されていますし、今夜は化学賞の公表、明日は2年分の文学賞の公表と目白押しです。その中で、経済学賞が来週月曜に公表される運びなんですが、クラリベイト・アナリティクスによる引用栄誉賞 Clarivate Analytics Citation Awards が9月24日付けで明らかにされています。ノーベル賞との連動性が高いといわれており、というか、自称していますが、経済学分野は以下の3分野の4人となっています。

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W. Brian ArthurExternal Professor, Santa Fe Institute, Santa Fe, New Mexico; Fellow, Center for Advanced Study in the Behavioral Sciences, Stanford; and Visiting Researcher, System Sciences Lab, PARC, Palo Alto, California, United States.For research exploring the consequences of increasing returns (or network effects) in economic systems. We recognize Arthur for describing how small events and positive feedback loops act over time to lock an economy into the domination of one player out of several possible. Arthur has also combined the new science of complexity research with economics to show how an economy functions when its players face ill-defined problems and an ever-changing system, and are unable to act with perfect rationality.
Søren JohansenProfessor Emeritus, Department of Economics, University of Copenhagen, Copenhagen, Denmark.For contributions to econometrics and cointegration analysis.
For developing the cointegrated VAR (vector autoregressive) method, which provides a flexible framework to study short- and long-term effects in economic time-series data. The method helps economists avoid confirmation bias in their analyses.
Katarina JuseliusProfessor Emerita, Department of Economics, University of Copenhagen, Copenhagen, Denmark.
Ariel RubinsteinProfessor, School of Economics, Tel Aviv University, Tel Aviv, Israel, and Professor, Department of Economics, New York University, New York, United States.For development of formal theoretical economic models and especially models of bounded rationality, including his model of bargaining, which has had profound influence in Economics.

中断のヨハンセン教授とそのお弟子さんのジューセリウス教授については、時系列変数の共和分に関する検定について、その昔に論文を読んでヨハンセン検定を使った記憶があります。でも、ほかのお二人については、聞いたことがあるような気がしますが、よく判りません。官庁エコノミストを定年退職してはや半年になり、経済とはまだお付き合いがあるものの、経済学との関係は日々に薄くなっていくのかもしれません。さて、来週月曜日の発表ではどうなるんでしょうか?

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2019年10月 8日 (火)

消費税率引き上げで撹乱される景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+3.9ポイント上昇の46.7を、先行き判断DIは▲2.8ポイント低下の36.9を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆1577億円の黒字を計上しています。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の街角景気、先行き指数が5年半ぶり低水準
内閣府が8日発表した9月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数は36.9と前月から2.8ポイント低下した。3カ月連続で悪化し、前回の消費増税の前月にあたる2014年3月(33.5)以来、5年6カ月ぶりの低水準だった。10月の消費増税を前にした駆け込みによる需要の反動減や増税による買い控えへの懸念が高まった。
指数を構成する家計動向、企業動向、雇用関連のいずれもが低下した。小売業を中心に「増税後の売り上げが期待できない」(南関東の一般小売店)と、消費増税前の駆け込み需要の反動減を懸念する声が出ていた。増税前に高額商品が売れたことから消費者の買い控えを見込む声も出ていた。
一方で、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は46.7と同3.9ポイント上昇と、2カ月連続で改善した。家計動向や企業動向の改善が寄与した。消費増税前の駆け込みが特に家電量販店や百貨店などで見られたとの声があった。冷蔵庫や洗濯機、テレビのほか、化粧品や宝飾品などの比較的高額な商品の売れ行きが伸びたという。
今回の調査では消費税や増税に関するコメント数(現状判断)が548件と前回調査(229件)から大きく増えた。駆け込み需要に対するコメント数も前回(117件)から大きく増え、353件にのぼった。
内閣府はウオッチャーの見方について「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。そのうえで「消費増税の駆け込み需要が一部にみられる」とのコメントを加えた。先行きについては「消費税率引き上げや海外情勢などに対する懸念がみられる」とした。
8月の経常黒字、黒字幅が18.3%拡大 貿易収支の黒字転換で
財務省が8日発表した8月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆1577億円の黒字だった。黒字は62カ月連続。黒字幅は前年同月に比べ18.3%拡大した。貿易収支が黒字転換したことが寄与した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は509億円の黒字(前年同月は2556億円の赤字)だった。中国向け半導体等製造装置の輸出減などで輸出額が6兆808億円と前年同月比8.6%減少した一方、輸入額は原粗油などの輸入減で6兆299億円と12.7%減と大幅に減少した。輸入額の減少が輸出額の減少を上回り、貿易収支は黒字に転換した。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は2兆2681億円の黒字だった。黒字幅は0.7%縮小した。配当金の受け取り減などで、証券投資収益の黒字幅が縮小したことが響いた。直接投資収益は9242億円の黒字と、8月として過去最高だった。
輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は233億円の黒字(同218億円の黒字)と、黒字幅がわずかに拡大した。訪日外国人客の消費単価が増えたことなどで旅行収支が1518億円の黒字と、8月として過去最高となったことが寄与した。第2次所得収支は1846億円の赤字(同2267億円の赤字)と赤字幅が縮小した

かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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景気ウォッチャーについては、現状判断DIと先行き判断DIが方向性で大きく分かれました。最初にヘッドラインを引用したように、現状判断DIは大きく上昇し、先行き判断DIは低下しています。そして、この傾向を象徴するのが家計部門の小売関連と企業部門です。明らかに、家計部門の小売関連の動きは消費税率引き上げに対応したものであり、9月の時点では駆け込み需要が発生し売り上げ増が実現され現状判断DIが上昇した一方で、先行きについては駆け込み需要の反動減の予想から先行き判断DIが低下しているとしか考えられません。企業部門についても、先行き判断DIの大きな低下の大きな部分は非製造業で発生しています。製造業でも9月の現状判断DIがプラスで先行き判断DIがマイナスとなっているんですが、先行きマイナスが大きいのは非製造業となっています。少なくとも、こういった消費税率引き上げに伴う攪乱的な要因は従来から十分に予想されていたところであり、驚きはありません。消費者マインドを示す指標のうち、消費者態度指数は需要サイドの消費者のマインドを計測している一方で、景気ウォッチャーは供給サイドの事業者のマインドですから、消費者に比較してリスク中立、かつ、将来についてもそれなりに織り込んだ期待形成がなされているんではないかという気がしますが、それでも、現状は駆け込み需要でプラス、先行きは駆け込み需要の反動でマイナス、という結果になるようです。このあたりはもう少し均して見る必要がありそうです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの8月の経常収支は最近ではやや大きな黒字なっており、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。この8月経常収支の背景について見ると、国際商品市況における石油価格の低下に、我が国への輸入原油額が連動しており、貿易収支が黒字化しているためと考えるべきです。でも、この先、世界経済のいっそうの停滞が予想されるとともに、韓国向け輸出の動向も日韓関係の行方に左右される部分もあって不透明であり、貿易収支が黒字を続けるかどうかは判然としません。

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2019年10月 7日 (月)

クローザー藤川投手が圧巻の2イニング締めでいざ東京ドームのファイナルへ!!!

  RHE
阪  神000001010 291
横  浜000000100 141

クライマックス・シリーズのファーストステージを勝ち抜いた原動力は、藤川投手の圧巻の2イニング締めでした。雨中の悪コンディションで、コントロールが定まらない場面もありましたが、さすがに藤川投手の経験値はとてつもないことを改めて知らされました。3試合とも僅差の競った試合でしたが、これで、東京ドームでのファイナルステージに進出です。ジャイアンツを撃破して日本シリーズに進出して欲しいです。

下剋上目指して、
がんばれタイガース!

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またまた基調判断が「悪化」に引き下げられた8月の景気動向指数やいかに?

本日、内閣府から8月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲2.0ポイント低下してで91.7を、CI一致指数も▲0.4ポイント上昇して99.3を、それぞれ記録し、基調判断は4か月ぶりに「悪化」に引き下げられました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の景気指数、4カ月ぶり「悪化」 増税前に停滞
内閣府が7日発表した8月の景気動向指数(CI、2015年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月より0.4ポイント低下して99.3となった。海外経済の減速で生産が鈍り、指数を押し下げた。指数の推移から機械的に決まる景気の基調判断は4カ月ぶりに「悪化」となった。10月の消費増税を前にした国内景気の停滞感が改めて浮き彫りになった。
一致指数は生産や消費などにかかわる9項目の統計から算出する。この指数の動きを基準に照らし、「改善」「足踏み」などの基調判断を機械的に示す。「悪化」は大きく5段階のうち最も下の区分で、景気後退の可能性が高いことを示す。
景気指数による判断は米中貿易戦争の影響で生産が年明け以降に急減したことから、3~4月に2カ月連続で「悪化」だった。5月以降は好調な新車販売などが寄与して「下げ止まり」となっていた。ただ貿易戦争の長期化で世界経済の減速が鮮明になり、国内景気も製造業を中心に下押し圧力がかかり続けている。
この間、政府は公式の景気認識を示す月例経済報告で「緩やかな回復」との表現を一貫して使っている。一致指数の動きのほか、企業の景況感など多くの指標を総合的に考慮して判断しているためだ。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)として重視する雇用情勢も足元でなお堅調だ。
一方で政府は消費増税を挟んでの景気の腰折れは避けたい考え。経済財政諮問会議の民間議員からは、景気下振れリスクが顕在化する「兆し」の時点で経済対策を打つよう求める声も上がっている。増税前からの停滞を引きずる日本経済をどう下支えするか、経済財政運営は難しさを増している。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、8月のCI一致指数は前月から▲0.3ポイント下降し、3か月後方移動平均でも▲1.03ポイントの下降と、3か月連続の下降となりました。内閣府が示している「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、「3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降」かつ「当月の前月差の符号がマイナス」に該当し、景気動向指数の基調判断が「悪化」に引き下げられました。商業販売額(小売業)(前年同月比)と投資財出荷指数(除輸送機械)はプラスに寄与したものの、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒)などがマイナスに寄与しています。引用した記事にもある通り、景気動向指数の基調判断は、今年2019年に入って、米中貿易戦争の影響による世界経済の減速などを受けて生産が減産に転じたことから、3~4月に2か月連続で「悪化」だった後、5月以降は「下げ止まり」に戻っていましたが、10月からの消費税率引き上げを前に駆け込み需要も小さかったことから、8月にはまたまた「悪化」に下方修正されています。まあ、先月統計の公表の段階で、私も8月統計が前月差マイナスなら景気動向指数の基調判断が「悪化」にふたたび引き下げられるのは判り切っていましたし、8月の鉱工業生産指数(IIP)が減産でしたから、連動性の高い景気動向指数CI一致指数が前月差マイナスとなる可能性がとても高いのも見えていましたので、それほど大きなサプライズではありませんが、内閣改造後の臨時国会が始まった冒頭での統計公表ですから、メディア的には囃す可能性が高いと思います。これまた、先月の統計公表時のブログに書きましたが、機械的な景気道央指数に関する基調判断とはいえ、消費税率が引き上げられた直後の景気「悪化」に関するニュースですし、メディアもそれなりに取り上げますし、消費者マインドに対する影響は無視できない可能性があると、私は考えています。

ややボ~ッと生きているうちに、10月に入って、ノーベル賞ウィークを迎えました。来週は経済学賞も発表される予定です。9月25日付けで、いつもの Clarivate Analytics から Citation Awards が明らかにされており、経済学分野でも3名の名前が上がっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2019年10月 6日 (日)

横浜に競り負けて逆王手をかけられる!!!

  RHE
阪  神000021001 4100
横  浜201001002x 6111

クライマックス・シリーズ第2戦は落として逆王手をかけられました。終盤まで競った試合で、9回には福留選手のホームランで追いつきましたが、そのウラに乙坂選手の打球が狭い横浜スタジアムでフェンスを超えて試合終了でした。仕方ありません。

下剋上目指して明日は、
がんばれタイガース!

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日本気象協会による「2019 紅葉見ごろ予想」やいかに?

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今週木曜日の10月3日付けで、日本気象協会から2019 紅葉見ごろ予想が明らかにされています。上の画像の通りです。一般に、紅葉の見ごろは、秋(9~11月)の気温が低いと早まり、高いと遅れるそうなんですが、全国的に気温が11月にかけて平年より高く、朝晩の冷え込みが強まる時期も遅れると予想されており、今年の観光名所の紅葉見ごろ時期は、全国的に平年並みか遅くなると見込まれています。地域的にも関東を含む東日本や西日本とも全国と同じで、平年並みかやや遅くなるようです。

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2019年10月 5日 (土)

北条選手の打棒でクライマックス・シリーズ初戦を大逆転勝ち!!!

  RHE
阪  神000100430 8120
横  浜300040000 7140

レギュラー・シーズン6連勝フィニッシュの勢いもそのままに、クライマックス・シリーズ初戦を大逆転勝ちでした。初回に先発西投手のアクシデントもあって、一時は7-1と大量リードを許しましたが、北条選手のスリーランで追い上げスリーベースで逆転し、終盤は自慢のリリーフ陣で何とか逃げ切りました。ジョンソン投手が奥さまご出産で帰国してしまいましたが、岩崎投手はパーフェクトでしたし、藤川投手もリクエスト成功で思わぬピンチを招きましたが、冷静に抑え切りました。
鳥谷選手の出番はありませんでしたが、チーム内でショートのポジションを競う北条選手や木浪選手の打棒を見ていると、確かに出番が減るのも時の流れのなせるわざか、という気もしてしまいました。

下剋上目指して明日も、
がんばれタイガース!

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今週の読書はついつい読み過ぎて小説2冊を含めて計8冊!!!

今週の読書は、ペースダウンの予定だったのですが、もっとも近い区立図書館が10月いっぱい休館らしく、何の関係もないものの、ついつい読み過ぎてしまいました。来週は後半が忙しくなる予定で、一応、暑い中を図書館回りを終えて数冊借りて来たんですが、さすがに、2~3冊に減るんではないかという気もします。今週の読書は小説2冊も含めて、以下の計8冊です。
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まず、中野剛志『奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ) です。同じ著者によるシリーズ前編【基礎知識編】は8月24日付けの読書感想文で取り上げています。【基礎知識編】では、現代貨幣理論(MMT)に基づくマクロ経済学を展開していて、【戦略編】となる本書の冒頭では簡単にそのおさらいをしてから、MMT理論を普及させるための戦略、また、どうしてMMTが現時点でそれほど受け入れられていないのか、といった議論が展開されています。本書の議論は私はどちらもとてもよく理解できるような気がします。ここで、「どちらも」というのは、MMT理論そのものとMMT理論が学界や政策当局に受け入れられないその両方を指しています。というのは、私はかなりの程度にMMTは正しいと本能的に感じている一方で、どこか頭の中で「怪しげ」と感じる部分もあるからです。今夏にレイ教授によるテキストである『MMT現代貨幣理論入門』の邦訳書が東洋経済から出版されていながら、諸般の事情によりまだ読めていません。本書で引用されているラガルド女史によれば、主流派経済学のように数式をきれいに展開していて、それなりの説得力ある理論である、とのことで、私も直感的かつ本能的ながら、MMTは理論的には十分成り立っているんだろうと理解しています。自国通貨建ての国債であれば、いくら積み上がってもデフォルトに陥るおそれはなく、財政政策をインフレ率で判断するというのは、従来からもある考えです。少なくとも、日銀が物価目標を掲げる前に、旧来理論でハイパーインフレに言及していたようなエコノミストの主張はもうなくなりましたし、岩石理論もご同様です。ただ、現在の日銀の量的緩和と同じで、出口に一抹の不安が残るのも事実です。本書では、インフレ率が一定の水準に達した段階で前年度と同じ財政赤字にすればいい、という主張なんですが、ホントにそれで済むのか、これも私の直感ではそれでOKのように受け止めているんですが、不勉強が原因となって不安を覚えているだけのような気がします。ただ、私が主張したいのは、MMTはインフレというマクロのアグリゲートされたターゲットには有効なんですが、逆から見て、量的なターゲットだけでなく、質的、あるいは、分配面からの格差是正などについて目が行き渡っていないような気がします。すなわち、インフレ、というか、デフレからの脱却については、ある意味、本書で展開するMMT理論で十分なんですが、MMTが政策的に採用されないうちにでも分配政策によって格差や格差に一部ながら起因する成長促進などの課題の改善は可能ではないか、という気がする次第です。本書の議論を否定しようとはまったく思いませんが、MMTの実践だけが解決策ではないという点も忘れるべきではありません。

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次に、山口周『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社) です。著者は、コンサル出身の著述家で、講演などでも見かける方ではないかと思います。本書は、習慣ダイヤモンドで連載されていたコラムを取りまとめて単行本化したもので、ダイヤモンド・オンラインのサイトでも読むことが出来ます。もちろん、本書のタイトルはガンダムのアムロ・レイなどのニュータイプと似てはいますが、少し違います。すなわち、商品生産やサービス供給が十分人々の欲望を満たす水準にまで達し、消費に飽和感がある中で、いくつかの古い思考や行動の様式を新しくする方向について議論しています。例えば、問題がいっぱいあった従来の社会では、その問題の解決方法を探るのが主要な課題であり、オールドタイプのエリートは解決策の提示ができる人だったわけで、実は、本書の著者もその一種ではないかという気がしないでもないんですが、ニュータイプはビジョンを持って望ましい状態と現状との差を「問題」として捉え、その問題発見ができる人、ということになります。また、その実現の一つの形式であるイノベーションについても、こういった解決すべき課題=問題なしにイノベーションそのものにこだわっていると本末転倒である、と指摘し、解決すべき問題がないのに技術的に凝った乗り物を作ってしまったセグウェイの失敗例を引いていたりします。実に、私も感心してしまいました。他方で、私のように、現在の資本制的な生産や分配のシステムをもっと柔軟に改革して、あるいは、もっと過激に資本主義から社会主義に革命を起こす、という方向性は否定されています。私自身はこの方向性をアプリオリに否定するものではありません。ケース・バイ・ケースで考えるべきだと思います。本書のp.28にあるオールドタイプとニュータイプの新旧対照表を、ダイヤモンド・オンラインのサイトから引用すると以下の通りです。私は下の5項目、すなわち、ルールに従う⇨自らの道徳観に従う、一つの組織に留まる⇨組織間を越境する、綿密に計画し実行する⇨とりあえず試す、奪い、独占する⇨与え、共有する、経験に頼る⇨学習能力に頼る、はこの通りだと思います。

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次に、綿野恵太『「差別はいけない」とみんないうけれど。』(平凡社) です。著者についてはよく判りません。本書では、差別について、ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)との関係で、いろんな考察や分析を進めています。ポリコレ的には差別はいけないわけですが、実際にレイシストはいますし、ヘイトスピーチも後を絶ちません。そのあたりの周辺事情、というか、現実的な実態解明と対応につき考えています。特に、本書では、足を踏んだ者には、踏まれた者の痛みはわからない、というフレーズが繰り返し引用され、差別されたサイドの痛みの理解についても思いをいたしている気がします。ポリコレに関してはあまり実践も応用もないように見受けるんですが、私が2016年の米国大統領選挙について、たぶん、このブログの場だと思うんですが、ポリティカル・コレクトネスが行きつくところまで行って、米国に黒人大統領が誕生したのが当時のオバマ米国大統領であり、その振り子が反対側に振れた、との感想を持ちました。ポリティカル・コレクトネスなんて、行きつくところまで行けば反転する可能性もあると私は考えていますし、何よりも、1990年代にいわゆる米ソの冷戦が明確に終了して、ソ連的な共産主義が大きく後退し、中国やベトナムなどに極めて市場経済的な社会主義は残るものの、冷戦が終了した段階で国内的な意思統一が不要になって、いろんな意見が飛び出し始めている、というのも事実です。冷戦時代にソ連に負けないためには、米国内でもそれなりの意思統一が図られて、いわば、一致団結してソ連に対峙する必要があったものの、その必要がなくなったわけです。いまだに、この冷戦型の国内世論統一を図ろうとしているのが韓国の文政権といえます。民主主義が未成熟としか私の目には見えません。まあ、韓国は別としても、実は、米国でもそれほど民主主義が成熟していなかったわけで、対外的な仮想敵国がいなくなった途端に国内で清掃が始まってしまった、と私は解釈しています。加えて米国では、2001年のテロから国内的な統一が一時的に強化されましたが、それも20年近くを経過してテロの実行例も少なくなり、外国に対する緊張感が弛緩して、国内での政争に目が移った、ということなんだろうと思います。欧州もご同様です。本書では、カール・シュミットにならって、アイデンティティを基礎とする民主主義とシチズンシップを基礎とする自由主義を対比して、差別やハラスメントの原因をアイデンティティがシティズンシップをオーバーテイクしたことに求めようと試みていますが、私の目には成功しているとは思えません。

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次に、リチャード・ローズ『エネルギー400年史』(草思社) です。著者は米国のジャーナリスト・作家であり、ピュリツァー賞の受賞経験もあるようです。英語の原題は Energy: A Human History であり、2018年の出版です。動力、照明、新しき火の3部から構成され、軽く600ページを超えるボリュームですが、これも邦訳がいいのか、私の興味分野だからなのか、割合とスラスラと読み進むことが出来ました。でも、私にして読了するのに2日かかりましたので、それ相応に時間はかかると覚悟すべきです。ということで、邦訳タイトルにあるように、薪から始まった400年に及ぶエネルギーの歴史をひも解こうと試みています。ただし、エネルギーだけではなく、外国人ジャーナリストに多い傾向なんですが、周辺事情までていねいに情報を集めた上に、集めた情報はすべて本に詰め込まないと気が済まないようで、ややムダの多い本だという気もします。極めて大雑把にエネルギーの歴史を概観すると、まあ、誰にでも判るところで、薪から石炭に、石炭は石油に、石炭・石油は天然ガスに、さらに原子力に、そしてそして、今からは再生可能エネルギーに、その主役を次々と交代しています。そして、そのエネルギーの利用の目的も、かつては調理と暖房、せいぜいが灯りだったんですが、石炭以降からは大規模に産業や運送で利用されるようになっているのは周知の事実です。エネルギーを動力源として用いる場合、蒸気機関、内燃機関、発電機と歴史的な発展があり、輸送に使う場合は、蒸気車、蒸気機関車、自動車、電車、もちろん、その後の飛行機やロケット、場合によってはドローンまで上げることが出来ます。そのバックグラウンドにはそれぞれをアイデアとして思いつき、製品として世に送り出すために試行錯誤し、製品化した後には応用し普及させた有名無名の人物の存在があった点についても、とても幅広く様々な情報を取りまとめています。またエネルギー利用の普及は人びとの生活の質を上げ経済を活性化する一方で、公害をはじめとする新たな災厄や難題をももたらし、また、生産現場の過酷な労働も必要としました。こういった400年に及ぶエネルギーの歴史を振り返り、現在の地球規模の気候変動や地球温暖化、さらには、中国・インドやをはじめとする新興国・途上国の経済成長に伴って増加し続ける巨大な人口を支えるエネルギー需要への対応、などなど、今までにない難題への答えは、本書のように過去の歴史を詳細に検証することで見出せるのか、どうか。もちろん、ひょっとしたら、何ら解決できない可能性もなくはないながら、少なくとも、解決策を見出せるとすれば、科学に基づく技術革新だけである可能性が高いと考えるべきです。本書は、基本ラインがしっかりしているとともに、ムダとすら見える極めて多数の人々のドラマが盛り込まれており、それはそれでとてもいい読書だった気がします。

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次に、マーク・モラノ『「地球温暖化」の不都合な真実』(日本評論社) です。著者は、米国のジャーナリストであり、英語の原題は The Politically Incorrect Guide to Climate Change であり、The Politically Incorrect Guide シリーズの1冊として2018年に出版されています。ということで、本書では人類による地球温暖化や気候変動について、押しとどめようとする「脅威派」と否定する「懐疑派」に分けた上で、本書は後者の懐疑派として人類に起因する気候変動や温暖化をデータを含めて、あるいは、脅威派の発言の矛盾を突いたりして、徹底的に人為的な気候変動を否定しようと試みています。ここで多くの読者が見逃しそうなポイントなんですが、著者は人的でない、すなわち、太陽活動の変動に伴う気候変動や温暖化を否定しているわけではない、という点を強調しておきたいと思います。著者の主張では温暖化はかなりの程度に観測誤差の範囲であると考えているようなんですが、太陽活動に伴う気候変動、典型的には氷河期と間氷期が交互に来たりするという意味での大きな気候変動は否定していません。ただ、現在の温暖化が人類の人的な行為、すなわち、CO2排出によるものであるかどうかは疑わしい、と主張しているわけです。これについて、私はシロクマが増えているかどうかは知りませんが、例えば、著者の指摘通り、1970年代には地球寒冷化による食料危機が真剣に論じられていたのは事実ですし、その気候変動が大きく逆転して、温暖化に取って代わられたわけです、医学的に健康にいいと悪いが大きく逆転するケースがいくつ私も見て来ましたが、まさに、同じことが気象科学でも生じたわけで、気候科学の信頼性が問われても不思議はないといえます。また、例のゴア元米国副大統領の邸宅が通常の20倍のをエネルギーを使っているとか、温暖化対策を叫ぶハリウッドのスターが自家用ジェット機で温暖化ガスを排出しながら移動しているとかの実態に疑問を感じるのもあり得ることです。もちろん、シロートの私の目から見ても、極めて限られた有識者しか温暖化や気候変動を否定しておらず、著者の主張が科学的に立証されたとはいいがたいと感じますし、十分に人々を納得させる根拠が示されているとはとても考えられませんが、他方で、研究費のために熱心に地球温暖化や気候変動の研究に取り組む科学者が多いだろうという点だけは判りやすいものの、その他の点で、こうした本が米国で一定の支持を得る可能性があり、日本でも出版されるという現実は、地球温暖化や気候変動に対して常識的な考えを持つ社会人として、それなりに反省を持って受け止めねばならないのではないかと考えます。

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次に、ジーヤ・メラリ『ユニバース2.0』(文藝春秋) です。著者は米国のジャーナリストなんですが、米国のアイビーリーグ校であるブラウン大学で、何と、ロバート・ブランデンバーガー教授に支持して宇宙論の博士号を取得している本格派です。英語の原題は A Big Bang in a Little Room であり、2017年の出版です。副題の「実験室で宇宙を創造する」に示されている通り、宇宙論の中でも宇宙の発生に関するベビー・ユニバースについてのリポートです。ざっと相対性理論をおさらいし、ビッグバンによる宇宙の生成からインフレーション理論による拡大宇宙論、そして、ブラックホールからワームホールを通って別の宇宙に行きつく、ということで、その別の宇宙を実験室で作れないか、という試みです。というか、実は、実験室で宇宙を創るために逆算的な思考で、さまざまな理論が紹介されています。私のようなシロートにはサッパリ判らない理論ばっかりなんですが、そこは科学者ではないジャーナリストによる本ですので、それなりに雰囲気が感じられるように工夫されています。でも、それなりの専門的な知識なければ十分な理解はできないと覚悟すべきです。特に、S極かN極しかない「磁気単極子」があれば、それを使って実験室でインフレーション宇宙が作れる、というのはまったく私の理解を越えていました。そしてその「磁気単極子問題」とともに宇宙論の3大問題とされる「平坦性問題」と「地平線問題」についても、私の理解は及びませんでした。宇宙が実験室で作れるとしても、本書に従えば、その人工宇宙と普通のブラックホールとを区別することは、ホーキング放射が観測できなければ、ムリなようですし、出来上がった人口宇宙を取り囲むブラックホールであるベニーユニバースと我々のいる時空を結ぶワームホールは極めて短い時間で消滅する、ということですし、いずれも、エコノミストの目から見て、とても夢のある宇宙なんですが、どれくらいのコストがかかるのかも気にならないわけでもありません。加えて、本書ではかなり片隅に追いやられている印象がありますが、ビッグバン宇宙論に髪を配置しようとするカトリック信者を私も知っていますし、宇宙の生成と神の関係をどう考えるか、そういった神学論争についても何らかの話題になる可能性もあります。エコノミスト的には神学論争はまったく興味なく、「できることはやったらいい」というのが私の感想なんですが、コストはともかく、いろんな視点から宇宙の発生・生成について考えさせられました。専門外の読者には特にオススメしません。

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次に、伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』(NHK出版) です。作者は、私が中途半端な解説を加えるまでもなく、売れっ子のミステリ作家です。この作品のタイトルは、まあ、何と申しましょうかで、この作品のラスボス的な存在である「ハシビロコウ」なる鳥ののラテン語の学術名の日本語訳です。ということで、それなりの規模のお菓子メーカーに勤めるサラリーマンである主人公の岸、作者の応援する楽天イーグルズのエース投手と同じ姓となっていますが、この岸を主人公に、都議会議員の池野内征爾と大人気のダンスグループのメンバーである小沢ヒジリの3人が奇妙な夢でつながって、戦士として社会的な大問題を解決したり、逆に、窮地に陥ったりする、というストーリーです。過去のトピックである金沢旅行の際の火事を3人は共有し、さらに、仙台近海の人工島でのコンサート後のパニック事件に岸と小沢が巻き込まれた際には池野内が救援に駆け付けたりします。そして、さらに、15年後の第2幕でも大事件が発生します。池野内は都議会議員から国会議員に当選して、さらに、有力ポストの大臣を務め、小沢はダンスグループから俳優になり、岸は会社で課長まで出世しています。そこで、猛毒性の鳥インフルエンザがパンデミックに近い広がりを見せ、3人がワクチンをいかに必要とする病人に届けるか、という点で一協力して解決に当たります。もちろん、ハッピーエンドで終わるんですが、さすがに伊坂作品らしく私のような一般ピープルが考え付かないような一筋縄ではいかなイラストが待っています。夢と現実を3人で、あるいは、それぞれ単独で行き来しながら、問題を解決したり、あるいは、大問題で窮地に陥ったりと、ある意味では、ファンタジー的な現実にはあり得ないシチュエーションが展開されるんですが、夢で戦うという点は現実でもあり得ることであり、その点で、少し前の作品である『フーガはユーガ』で双子が瞬間移動で入れ替わるような超常現象といい切るにも勇気が必要で、まあ、荒唐無稽な非現実的展開はない、ともいえます。加えて、3人はいろんな問題、というか、トラブルに遭遇するわけですが、かなり近いとはいえ、犯罪や組織的な陰謀とは違い、まあ、ギリギリあり得るかも、と思わせるものもあります。しかも、いかにもこの作者の作品らしく、いろんな伏線が密接に関連して後々にきれいに回収されます。私のように速いペースで読んだ挙句に、読み返さざるを得なくなる、といった読者も少なくなさそうな気がします。でも、それだけ面白い、ともいえそうです。最近の作品の中では傑作に近く、ひょっとしたら、読者によればこの作者の最高傑作に推す人がいるかもしれません。早大生協で消費生率引き上げ前に買った5冊のうちの最後の読書でした。

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最後に、宮内悠介『遠い他国でひょんと死ぬるや』(祥伝社) です。著者は、私の好きなSF作家です。実は、本書の出版を知って図書館で予約したところ、前作の『偶然の聖地』を読んでいないことに気づいて、近くの図書館で借りて一気に1時間ほどで読んでしまいました。ひょっとしたら、この作者の作品はすべて読んでいるかもしれません。ということで、本書ではフィリピンを舞台に、元テレビ番組制作会社のディレクターが太平洋戦争で戦死したと考えられている詩人の竹内浩三のノートを求めて冒険を始める、というストーリーです。本書のタイトルも、竹内浩三が入営前に書いた詩「骨のうたう」が出典となっています。テレビのディレクターの職を辞してフィリピンに渡ってタガログ語をマスターし、竹内のノートの捜索に入りますが、そこに、山下財宝を狙っているトレジャーハンターを自称する女性とそのお付き、主人公と行動をともにするうちに距離が縮まっていく女性、さらに、その女性の元彼カレで、結婚を申し込んでいる超大金持ちのぼんぼん、さらにさらにで、休戦が成立したにもかかわらず、まだ、ミンダナオ島の分離独立のために戦うムスリムの青年などが急展開の冒険物語を構成します。最後は、かなり荒唐無稽に結婚式を破壊したりして、これが解決なのかどうかは疑わしいと私は考えたりもしましたが、著者の力量が垣間見える気もしました。単純に読めば、冒険譚とはいいつつも、単なる騒がしくて暴力的なドタバタ劇になりかねないところに、詩人である竹内浩三の存在を入り込ませ、その実像に迫ろうと試みるも、竹内の最期は実際のところ不明としかいいようがなく、竹内が実際に何を目にし何を感じ何を想ったのかは、主人公も含めてもはや誰にも判らなくなっているわけで、ただ、戦争の歴史を風化させるわけにはいかないと作品を作り続けてきた主人公だったんですが、ドタバタ劇が進む中で、そういった信念の根元には大したものは何もないことに気付かされていきます。他方で、じいさんの占いとか、旅の中である種のアジア的な神秘と接することによって、何らかの意味で、竹内と似た境地に達することができたのかもしれない、という気もします。基本的に、インドネシアの首都であるジャカルタしか私は住んだことがなく、タイやマレーシア、あるいは、シンガポールには旅行したものの、フィリピンには旅行ですら行ったこともありません。従って、どこまでフィリピン現地の雰囲気が再現されているか、フィリピン人の考えが反映されているか、は判りませんし、フィリピン独立運動の英雄ホセ・リサールについても、私はよく知りませんが、少し前まで中央アジアのムスリム国家に着目していた作者が、本作品で東南アジアを舞台にした小説にチャレンジし、アジアの奥深さに気づいたのかもしれません。

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2019年10月 4日 (金)

9月の米国雇用統計は減速を示し金融政策は利下げを模索中!

日本時間の今夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+136千人増とやや伸びが鈍り物足りない結果に終わったものの、失業率は先月からさらに▲0.2%ポイント低下して3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の8パラを引用すると以下の通りです。

Employers added just 136,000 jobs in September while unemployment hits a new 50-year low
Hiring slowed in September as employers added 136,000 jobs, fueling recession concerns and possibly raising the odds of another Federal Reserve rate cut this month.
The unemployment rate fell from 3.7% to 3.5%, a new 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists expected 145,000 job gains, according to a Bloomberg survey.
Partly offsetting the weak showing: Job gains for July and August were revised up by a total 45,000. July's additions were upgraded from 159,000 to 166,000 and August's from 130,000 168,000.
Average wages, however, fell.
The jobs numbers were released amid mounting concerns that the economy may be heading toward a recession. A manufacturing index this week showed a contraction in activity for a second straight month in September and at the briskest pace in 10 years. Producers cited the toll taken by President Trump's trade war with China and a sluggish global economy.
Of even greater concern is that the much larger service sector is also faltering. An index of activity among services firms revealed expansion last month but at the slowest pace in three years. The service sector makes up 80% of the economy and had been bolstered by steady consumer spending. But U.S. tariffs on Chinese imports are nudging up store prices and dampening retailers' confidence.
Meanwhile, some temporary factors were poised to boost the September jobs numbers. Goldman Sachs expected government hiring for the 2020 census to add 15,000 temporary jobs to the total. And with workers in short supply, the research firm expected businesses to bring on holiday staffers earlier.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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ということで、引用した記事にもある通り、ブルームバーグの調査によれば、市場の事前コンセサスは+145千人増でしたので、やや物足りない結果と受け止められています。前月の雇用増+168千人増から9月の雇用統計は減速し、トランプ米国大統領の重視する製造業は就業者数が減少に転じました。米中間の貿易摩擦が米国雇用を下押しし始めており、米連邦準備理事会(FED)が10月末に3会合連続の利下げを決断する可能性が大きいと私は予想しています。9月の就業者数の伸びが市場の事前コンセンサスを下回っただけでなく、直近3か月の増加幅は月平均157千人にとどまり、2018年通年の+223千人から大きく減速しました。2019年に入ってからの1~9月で見ても、雇用増は平均で+161千人にとどまっており、雇用拡大にはブレーキがかかりつつあると私は受け止めています。目先の焦点は、これらの雇用の伸びの鈍化を受けてのFEDの金融政策運営です。FEDは10月29日~30日に米国連邦公開市場委員会(FOMC)を開く予定となっており、7月のFOMCから2会合連続で利下げを決断しているところですが、次のパラで取り上げる物価上昇の減速も相まって、今月10月末のFOMCでも利下げが決定されるものと私は予想しています。それだけの景気下支えが必要な気がします。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用がやや減速を示し、賃金上昇率も労働市場の動向に合わせるように鈍化し、9月は前年同月比で+2.9%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して以来、久し振りに+3%を割り込みました。でも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いている一方で、雇用に現れた景気動向から利下げが模索されるのも、左派エコノミストを自称する私から見れば、当然と受け止めています。

なお、遅ればせながら、本日気づいたんですが、国際通貨基金(IMF)のサイトに、秋のIMF世銀総会に合わせて「世界経済見通し」World Economic Outlook についてのアナウンスがあり、Analytical Chapters である第2章と第3章が10月9日の米国東部時間の午前に公表される予定とのことです。また、公表後の適当な時期に取り上げたいと思います。

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2019年10月 3日 (木)

ダイヤモンド・オンラインによる「アレルギー性鼻炎薬」処方患者数ランキングやいかに?

私は40代後半で花粉症を発症してから、15年くらいの病歴しかないんですが、花粉症の薬はほとんど市販薬は用いずに処方薬に頼っています。1度だけ医師のおススメに従って薬を切り替えたことがありますが、極めて多種多様な処方薬があるということは知っているものの、実体験としては2種類の処方薬しか飲んだことがありません。ということで、昨日10月2日付けでダイヤモンド・オンラインにて「アレルギー性鼻炎薬」処方患者数ランキングが明らかにされています。ダイヤモンド・オンラインのサイトからテーブルを引用すると以下の通りです。

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私が処方されているのは、上のテーブルのトップ10の2番めにランクインしているザイザルです。何と、1タブレット当たりの単価は最高値となっています。知りませんでした。ただし、トップのアレグラや3番めのアレロックは1日に2タブレット服用する必要があり、服用量も考慮した1日当たりの新発薬ベースの単価ではザイザルの方が安くなっています。もっとも、アレグラやアレロック、あるいは、4番めのアレジオンと違って、ザイザルには後発薬がまだ出ていないので、お安い後発薬と比べると高くなっているのも事実です。私は医師にお任せで薬を処方してもらっているんですが、少なくとも今の段階では価格や効き目や用法用量などに不満はありません。単なる偏見かもしれませんが、一般に、市販薬は処方薬よりも効き目が弱い上に高価であるとのカギカッコ付きの「常識」があるように私は受け止めているところ、効き目はともかく、「処方薬でも市販薬でも、自己負担は大差ない」との試算結果がダイヤモンド・オンライン上で明らかにされています。

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2019年10月 2日 (水)

消費者態度指数はどこまで落ちるか、いつまで落ちるか?

本日、内閣府から9月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、8月はまたまた▲1.5ポイント低下して35.6となり、何と、12か月連続で前月を下回りました。統計作成官庁である内閣府では、9月の消費者マインドの基調判断は、「弱まっている」に据え置いています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

9月の消費者態度指数、1.5ポイント低下の35.6 12カ月連続で前月下回る
内閣府が2日発表した9月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.5ポイント低下の35.6だった。前月を下回るのは12カ月連続で、調査方法を変更した2013年以降では最低水準を更新した。統計としては11年6月(35.2)以来、8年3カ月ぶりの低水準となった。
指数を構成する4指標の「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」はいずれも低下した。なかでも耐久消費財の買い時判断は3.6ポイント低下と大きく下げ、指数は28.1と過去最低を更新した。内閣府は消費者心理の判断を「弱まっている」に8カ月連続で据え置いた。
1年後の物価見通し(2人以上の世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.6ポイント上昇の87.6%だった。「低下する」「変わらない」とみる割合はいずれも低下している。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。
調査基準日は9月15日。調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は6754世帯、回答率は80.4%だった。

いつものように、とてもコンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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季節調整済み指数の前月差で見て、消費者態度指数を構成するコンポーネント4項目すべてがマイナスを示し、「耐久消費財の買い時判断」▲3.6ポイント減が特に大きな落ち込みを見せており、これについては消費税率引き上げ直前でしたので仕方ない面もあります。続いて、マイナス幅の大きい順に、「暮らし向き」が▲0.9ポイント減、「収入の増え方」が▲0.8ポイント減、「雇用環境」も▲0.7ポイント減、となっています。繰り返しになりますが、「耐久消費財の買い時判断」は、指数の水準としても4つのコンポーネントのうちで最も低くなっており、30を割り込んでいます。消費税率引き上げ直前とはいえ、デフレ・マインドがまだ払拭されていないことの表れであろうと私は受け止めています。消費者態度指数を構成するコンポーネントすべてがよくないとはいっても、雇用と収入は相対的には大きな悪化を見せていない一方で、耐久消費財への支出意欲が大きく減退しているのは、将来不安から支出が細っているわけで、家計の懐を温める政策が必要かもしれません。それにしても、消費者マインドの悪化はどこまで続くんでしょうか?

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2019年10月 1日 (火)

3四半期連続で企業マインドが悪化した日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査から▲2ポイント低下して+5を示した一方で、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+2.4%の増加と6月調査の結果に比べて、わずかながら上方修正されてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月日銀短観、大企業・製造業DIはプラス5 3期連続で悪化 非製造業は2期ぶりの悪化
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス5だった。前回6月調査のプラス7から2ポイント悪化した。悪化は3四半期連続となる。
9月の大企業・製造業DIは2013年6月調査(プラス4)以来6年3カ月ぶりの低い水準となった。米中貿易摩擦などを背景にした世界経済の減速傾向が続き、輸出や生産に勢いはみられない。中国の景気減速懸念などを映した、はん用機械や生産用機械の悪化が目立った。原油安などを背景に石油・石炭製品が大幅に悪化した。一方、受注の底入れや消費増税前の駆け込み需要などで電気機械は改善した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。9月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス2を上回った。回答期間は8月27日~9月30日で、回収基準日は9月10日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス2と悪化する見通し。市場予想の中央値(プラス1)は上回った。世界景気の減速や円高進行への警戒感から、先行きに慎重な姿勢が強かった。
19年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=108円68銭と、6月調査(109円35銭)に比べると円高・ドル安だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス21と前回を2ポイント下回った。業況感の悪化は2四半期ぶり。夏場の天候不順や10連休の反動減などが逆風だった。3カ月先のDIは6ポイント悪化のプラス15だった。宿泊・飲食サービスなどで消費増税後の需要減を懸念する雰囲気が出ている。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス21となり、前回(マイナス21)から横ばいだった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
19年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比6.6%増と、市場予想の中央値(6.9%増)を下回った。世界経済の先行き不透明感などから、設備投資の先送りを検討する企業が一部にあったようだ。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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確かに、引用した記事が報じる通り、3四半期連続での業況感の悪化なんですが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲5ポイント低下して+2が予想されていましたから、それなりに底堅いと私は受け止めています。大企業非製造業も同様です。業況判断が悪化した要因は、米中貿易摩擦に起因して中国経済の減速をはじめとする世界経済の低迷です。これに加えて、非製造業では消費税率引き上げ前の駆け込み需要があった一方で、ゴールデンウィークの10連休効果の剥落も景況感の押し下げ要因と考えるべきです。ただ、気がかりなのは先行きであり、一部は短観の統計としてのクセもありますが、私には先行きの悪化幅がかなり大きいと見えなくもありません。この不透明感が設備投資の積み増しも思いとどまらせている可能性があり、しかも、海外要因ですから政府の政策対応や個別の企業努力にも限界があり、いっそうの先行き景況感悪化の懸念につながっている気がします。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。ただ、足元で設備と雇用の生産要素については、不足感が和らぐとまでいわないまでも、不足感の拡大は止まりつつあるようですが、大企業製造業の生産・営業用設備判断DIは6月調査の▲1から9月調査では+1の過剰感に転化し、また、中堅・中小企業製造業でも同様に設備不足感がプラスの過剰感に転ずるところまでいかないにしても、やや和らいでいるのも事実です。ただ、±1~2ポイントの変化はどこまで現実的かは議論あると私は考えています。雇用人員判断DIも本日公表の9月調査では6月調査から製造業では+2~3ポイントほど不足感が和らいでいますが、非製造業で押しなべて不足感が拡大していますし、製造業でも不足感が▲10を軽く超えており、まだまだ人手不足は深刻であると考えるべきです。ただ、何度も繰り返していますが、雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると劇的に労働への需要が減少する可能性は忘れるべきではありません。当たり前ですが、人口減少社会とはいえ、永遠に人手不足が続くわけではありません。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2019年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で▲2.8%減という水準で始まった後、6月調査では+2.3%増に上方修正された後、9月調査でもわずかながら+2.4%に上方修正されています。通常の都市の胆管であれば、3月調査は前年度比マイナスから始まるとしても、6月調査で上方修正され、さらに、9月調査でも上方修正される、という統計としてのクセがあるんですが、設備不足感がやや和らぐ中、さらに、世界経済の不透明感も払拭されず、やや設備投資の伸びが力強さに欠ける気もします。もちろん、基本は、人手不足も視野に入れつつ実行される設備投資なんですが、いずれにせよ、2019年度の設備投資計画は前年度比で増加する見込みながら、それほど力強く上向くという実感はないかもしれません。

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最後に、本日は、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも8月の統計です。失業率は前月と同じ2.2%とバブル経済崩壊直後からほぼ四半世紀ぶりの低い水準にあり、有効求人倍率も前月と同じ1.59倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。いつものグラフだけ、上の通りです。

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