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2019年10月31日 (木)

弱い動きの続く鉱工業生産指数(IIP)と2年振りに前月を上回った消費者態度指数と見通しの下方修正続く日銀「展望リポート」!!!

本日、経済産業省から9月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。季節調整済みの系列で前月から+1.4%の増産を示しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

9月鉱工業生産、1.4%上昇 半導体製造装置が好調
消費増税前の駆け込み生産、影響みられず

経済産業省が31日発表した9月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比1.4%上昇の102.9だった。上昇は2カ月ぶりで、QUICKがまとめた民間予測の中央値(0.4%上昇)を上回った。中国・台湾などアジア向けに輸出する半導体製造装置の生産が好調だった。汎用・業務用機械工業や電気・情報通信機械工業で国内向け大型案件があったことも全体の上昇に寄与した。
業種別では、15業種中7業種が上昇した。生産用機械工業は前月比7.9%の上昇。なかでも、半導体製造装置の上昇が目立った。経産省は「10月の生産計画でも半導体製造装置は伸びるとみられており、需要が高まっているようだ」とした。世界的に半導体市況に底打ち感が出てきたことが背景にありそうだ。
汎用・業務用機械工業は9.4%の上昇、電気・情報通信機械工業は4%の上昇だった。それぞれ、運搬用クレーンや超音波応用装置で大型案件があったことが上昇に寄与した。電気・情報通信機械工業では、セパレート形エアコンも大きく生産が伸びた。「8月の猛暑の影響で、エアコンの店頭在庫が少なくなり、それを補うために企業が増産に動いた」(経産省)という。
もっとも、経産省は生産の基調判断を「生産はこのところ弱含み」に据え置いた。「上昇した業種が多くなく、一部の業種の大型案件や天候など一時的な要因で上昇幅がやや大きくなった面が大きい。8月までの低下から抜け出たとは考えにくい」と判断した。
また、消費増税前の駆け込み生産については「消費財の生産が9月は1.6%の低下となっており、増税前の駆け込み需要を受けた増産の影響は特にみられなかった」とした。
出荷指数は1.3%上昇の102.5と2カ月ぶりに上昇した。在庫指数は1.6%低下の102.7と3カ月連続の低下だった。在庫指数の前月比の低下幅は、同じく1.6%低下だった2016年11月に並ぶ水準だった。「四半期でみた場合も在庫調整局面に入った可能性が高い」という。そのうえで経産省の担当者は「高止まりしていた在庫が減っており、今後も在庫調整が進んでいくことを期待したい」と述べた。在庫の出荷に対する比率を表す在庫率指数は2.4%低下の107.9となった。
製造工業生産予測調査によると、10月は0.6%上昇、11月は1.2%の低下を見込む。鉱工業生産の先行きについて経産省は「9月は上昇したが、先行きは慎重にみている」とした。同時に発表した7~9月期の鉱工業生産指数速報値は前期比0.6%低下の102.4だった。低下は2期ぶりとなる。

やや長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、中央値で+0.4%の増産、レンジでは▲0.1%~+1.3%の幅でしたので、実績の+1.4%の増産はほぼほぼ上限に近くなっていますが、引用した記事にもある通り、経済産業省の情報では消費税率引上げ前の駆込み需要の可能性は否定されています。ということで、産業別に季節調整済み系列の前月比をみると、ぞうさんはばの大きい順に、汎用・業務用機械工業+9.4%増、生産用機械工業+7.9%増、輸送機械工業(除.自動車工業)+6.9%増、などとなっており、産業別をさらに細かく品目で見ると、生産用機械工業の半導体製造装置はいいとしても、汎用・業務用機械工業のコンベヤ、運搬用クレーンなどについては、大型案件の受注に起因しており、基調的な回復とは見なしにくい気もします。先行きを占う製造工業生産予測指数も足元10月はバイアスを補正すれば▲1.6%の減産と試算されており、統計作成官庁である経済産業省の方で基調判断を「このところ弱含み」に据え置いたのは、昨日の商業販売統計の上方修正と違って、まあ、正解なのかもしれないと私は受け止めています。ただし、10月の減産予想は、消費税率引上げによる反動減だけでなく、相次ぐ台風や大雨などの自然災害による減産の影響もあり、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速を超えるような弱いトレンドというわけではないと私は考えています。

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9月の統計が公表され、四半期でいえば7~9月期のデータが利用可能となりましたので、久し振りに、在庫循環図を書いてみました。横軸は在庫の前年比、縦軸は出荷の前年比です。ピンクの矢印の2013年1~3月期から始まって、直近2019年7~9月期まで、6年半のデータをプロットしています。すでに景気循環局面も回復・拡大の後半に入っていることは明らかであり、かなり複雑な軌跡を描いています。「月例経済報告」(2002年12月) の閣僚会議配布資料にある「鉱工業の在庫循環図と概念図」、また、ほぼほぼ同じものが「JFM 経済ニュースレター」 p.9 にもありますが、これらに従えば、在庫循環はすでに景気の山を越えて景気局面が転換していると解釈してもおかしくないわけながら、さすがに、景気判断はそこまで機械的だったり単純に決められたりはしません。ただ、7~9月期の生産は前期比で▲0.6%の減産、出荷も▲0.1%の減を記録しています。

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鉱工業生産指数(IIP)以外にも、本日、内閣府から10月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、10月は+0.6ポイント上昇して36.2となり、23か月ぶりに前月を上回りました。統計作成官庁である内閣府では、10月の消費者マインドの基調判断は、「弱まっている」に据え置いています。消費者態度指数を構成する4指標のうち、「耐久消費財の買い時判断」が消費税率の引上げ直後の10月調査にもかかわらず大きく上昇しており、何か錯誤を生じているのではないか、と疑問にすら思わなくもありません。今後半年間の見通しを調査しているとはいえ、ホントに10月に調査しているんでしょうか。なお、いつものグラフは上の通りです。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2019年度+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.6~+0.8
<+0.7>
+0.4~+0.6
<+0.5>
 7月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.1
<+1.0>
+0.6~+0.9
<+0.8>
 2020年度+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.2
<+1.1>
+0.7~+1.1
<+1.0>
 7月時点の見通し+0.8~+1.0
<+0.9>
+1.1~+1.4
<+1.3>
+1.0~+1.3
<+1.2>
 2021年度+0.9~+1.2
<+1.0>
+1.2~+1.7
<+1.5>
 7月時点の見通し+0.9~+1.2
<+1.1>
+1.3~+1.7
<+1.6>

最後の最後に、本日、日銀「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しに注目した結果、上のテーブルの通りです。データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」のサイトからお願いします。制作委員の大勢見通し、特に物価の見通しは下方修正が続いています。

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