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2019年10月25日 (金)

「労働市場に変化の兆し」は見られるか?

昨日、10月24日付けの三井住友信託銀行「調査月報」2019年11月号No.91において、「労働市場に変化の兆し」と題する記事を見受けました。一部業種で雇用拡大姿勢は慎重化しつつあり、求人数が減少し始めていると指摘しています。まず、リポートから<要旨>を引用すると以下の通りです。

<要旨>
労働市場では、失業率が2.2%まで低下し需給逼迫の状況が続いているが、求人倍率は2019 年4月にピークアウトし、ギャップが生じている。求人数の減少が求人倍率低下の主因であり、一部業種で雇用拡大姿勢が慎重化し始めた兆しがある。背景には、製造業を中心とした景況感の弱まりと、同一労働同一賃金の導入と最低賃金引上げという制度要因が労働需給逼迫と重なり、人件費負担が高まってきたことがあると見る。
今後は、景気減速が足元の状況で踏み止まり雇用者数の減少にまで至らなければ、これまで労働力人口を増加させてきた女性と高齢者の労働参加圧力も弱まり始めており、求人数が減少しても失業率は低水準に留まることになろう。

ということで、グラフをいくつか引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから、図表4 新規求人数(19年6~8月平均) 前年同期比▲2.6%に対する産業別寄与度 を引用しています。本リポートの分析に従えば、頭打ちもしくは低下に転じた有効求人倍率の動向は、求職者数の増加ではなく求人数の減少に起因する、とされており、上のグラフを見れば明らかな通り、米中貿易摩擦により世界経済が減速し、輸出などの大きな影響を受けている製造業もマイナス寄与がもっとも大きくなっています。そして、意外なことに派遣業も次いでマイナス寄与が大きくなっており、雇用動向の先行きを敏感に読み切っているのかもしれません。小売と卸売が冴えないのは所得が伸び悩んで消費が停滞しているからで、逆に、医療・福祉が最大のプラス寄与を示しています。

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次に、上のグラフはリポートから、図表11 産業別の時給と最低賃金 を引用しています。労働市場に変化の兆しをもたらした求人数の減少は。最初に引用した<要旨>にある通り、景況感の弱まりとともに、制度的な要因として同一労働同一賃金と最低賃金の引上げが人件費負担を高めている可能性を示唆しているところ、製造や卸小売のパート時給がかなり最低賃金に近い結果を示しており、伝統的な経済学の理論から、限界生産性との比較という文脈で高過ぎる最低賃金が雇用を抑制している可能性を示唆しています。

私自身は、生産の派生需要としての雇用の特質から、量的な産業サイドの労働需要が労働市場への影響力が大きく、制度的な質的要因として最低賃金などの価格としての賃金規制の影響はそれほど大きくない、と直感的に理解していますが、両方の要因あることに異論はありません。ただ、何度もこのブログで強調している通り、景気局面が転換すれば、一気に産業サイドからの量的な労働需要が冷え込む可能性がある点だけは忘れるべきではありません。

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