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2019年10月21日 (月)

貿易統計は3か月連続で赤字を記録し7-9月期の外需はマイナス寄与か?

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲5.2%減の6兆3685億円、輸入額も▲1.5%減の6兆4915億円、差引き貿易収支は▲1230億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の貿易収支、3カ月連続赤字 中国向け輸出7カ月連続減
4-9月期は8480億円の貿易赤字
財務省が21日発表した9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1230億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。中国向けの自動車部品や韓国向けの半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。同時に発表した4~9月期の貿易収支も中国向け輸出の低迷で8480億円の赤字と、2期連続の赤字となった。財務省は「中国経済が緩やかに減速している影響を受けた可能性がある」と分析している。
9月の全体の輸出額は前年同月比5.2%減の6兆3685億円だった。減少は10カ月連続。輸入額は1.5%減の6兆4915億円と、5カ月連続の減少となった。サウジアラビアからの原粗油や韓国からのナフサなどの輸入が減った。
中国向けの輸出額は6.7%減の1兆1771億円と、7カ月連続で減少した。自動車部品に加え、半導体等製造装置の輸出が減少した。輸入額は1.0%減の1兆6181億円と、2カ月連続の減少。携帯電話などの輸入が減った。対韓国の輸出額は15.9%減の4027億円と、11カ月連続で減少した。食料品が前年同月比62.1%減の大幅減となった。日韓関係の悪化を受け、日本製品の不買運動の影響が出た可能性がある。
対米国の輸出額は7.9%減の1兆1874億円と2カ月連続で減少した。自動車や航空機エンジン部品などの輸出が減少した。輸入額は11.6%減の6233億円。差し引きの貿易収支は5641億円の黒字だった。対欧州連合(EU)の貿易収支は1273億円の赤字だった。
9月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=106円69銭。前年同月に比べ4.0%円高・ドル安に振れた。
同時に発表した2019年度上半期(19年4~9月)の全体の輸出額は前年同期比5.3%減の38兆2332億円、輸入は2.6%減の39兆812億円だった。中国向けの自動車部品や半導体等製造装置の輸出が減った。一方、アラブ首長国連邦(UAE)からの液化天然ガスやサウジアラビアからの原粗油の輸入が減少した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲811億円の赤字ということでしたので、やや赤字幅が大きいと感じられなくもないんですが、予測レンジがとても広いので赤字側の下限を突破したということではありません。ただ、季節調整していない原系列の統計による貿易収支は、引用した記事のタイトルにもある通り、まだ3か月連続の赤字なんですが、季節調整済みの系列でトレンドを見ると、中華圏の春節明けの今年2019年3月から半年余りの7か月連続での貿易赤字となっている点は忘れるべきではありません。8月から9月への輸出入の動きを、季節調整していない原系列の統計の前年同月比で見ると、輸出は8月▲8.2%減から9月▲5.2%減へ、輸入も8月▲11.9%減から9月▲1.5%減に、それぞれ減少幅を縮小させています。輸出入で減少幅に違いがあるのは、輸出については米中貿易摩擦の影響から世界経済が大きく減速している一方で、一時的な要因である可能性は否定できないものの、9月の輸入が消費税率引き上げ直前の駆け込み需要にサポートされている部分が一定の割合ながら含まれているんではないか、と考えられる点です。他方で、季節調整済みの系列の貿易収支は▲972億円と7か月連続の赤字ながら、7月▲1,340億円、8月▲1,167億円から徐々に赤字幅を縮小させているのも事実です。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、ジグザグした動きながら、輸出数量はそろそろ下げ止まるタイミングに差しかかっているように私は見ています。上のグラフのうちの2番めと3番めのグラフにプロットしたOECD加盟国全体と中国のそれぞれの先行指数も、前年同月比で見ればほぼほぼ反転したように感じています。ただし、下げ止まりの兆しある一方で、力強いV字回復の予感はない、と私は考えています。多くのエコノミストの実感でも、しばらく、底這いが続いて持ち直しや回復に至るには今少し時間がかかる、というのが大雑把なコンセンサスではないかという気がします。先週金曜日の10月18日に閣僚会議が開催された10月の月例経済報告においても、景気判断について「緩やかに回復」の前段の形容詞を「輸出を中心に弱さが続いているものの」から「輸出を中心に弱さが長引いているものの」に改め、総合的に見て下方修正と受け止められており、今後、輸出動向が注目されるところです。逆から見て、輸出が本格的に回復すれば景気後退のリスクは軽減される可能性が十分ある、ということも出来ると私は考えています。

引用した記事にもある通り、今年度上半期で見て、輸出額の減少幅は輸入額の2倍となり、上半期貿易収支も赤字を計上しています。7~9月期GDP統計1次QEは11月14日の公表予定ですが、4~6月期の外需寄与度▲0.3%に続いて、7~9月期も外需の寄与度はマイナスを記録しそうです。

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