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2019年11月19日 (火)

上場企業の株式持ち合い比率が10年ぶりに上昇したのはどうしてか?

野村証券の「野村資本市場クォータリー」2019秋号の研究リポートで2018年度の「我が国上場企業の株式持ち合い状況」について報告されていて、2018年度は上場企業の株式持ち合いが10年ぶりに上昇している、と指摘しています。リポートから 図表 1 「株式持ち合い比率」の時系列推移 を引用すると下の通りです。

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上場銀行と非金融の事業法人上場会社の株式保有比率を示す青いラインの「持ち合い比率」は2017年度に比べ+0.6%ポイント上昇して10.1%を記録し、また、これに生命保険会社と損害保険会社の株式保有比率を加えた赤いラインの「広義持ち合い比率」も前年度に比べ+0.4ポイント%上昇して14.5%となっています。わずかな上昇幅とはいえ、10年ぶりの上昇です。直感的に上のグラフを読み解けば、長期のトレンドとして株式持ち合い比率は低下を続けている一方で、短期的、というか、循環的には、00年代後半でやや持ち合い比率が上昇しているのは景気拡大により企業利益が、いわゆる「増収増益」で資金的な余裕が出来て、私の目から見て疑問あるものの、賃金で従業員に還元するのではなく、株式持ち合いに走った、ということなのではないか、という見方も成り立つかと考えていました。リーマン証券の破綻などの金融危機からほぼ10年を経て、ふたたび、賃金よりも株式持ち合いか、との疑問を持ちましたが、リポートの解釈は違うようです。すなわち、、有価証券報告書における政策保有株式関連の開示が拡充され、「企業内容等の開示に関する内閣府令」が一部改定された結果、2019年3月期決算に関する有価証券報告書から、純投資と政策投資の区分の基準や考え方や、個別の政策保有株式の保有目的・効果について、提出会社の戦略、事業内容及びセグメントとの関連付け、定量的な効果を含めたより具体的な説明、などが求められたことに加えて、個別開示の対象となる保有銘柄の数が、原則、従来の30銘柄から60銘柄に拡大され、今回の開示拡充により把握できる銘柄数が増加したことが、上場事業法人の株式保有比率の上昇、そして「株式持ち合い比率」の上昇につながった、と結論しています。そして、開示拡充の影響を控除した時の2018年度の持ち合い比率は前年度から▲0.3%ポイント低下して9.2%、広義持ち合い比率も同じく▲0.5%ポイント低下し13.6%となる、との試算結果を明らかにしています。リポートでは、今後とも、コーポレートガバナンスの観点から保有株式圧縮の流れが続く中で、緩やかな持ち合い解消を促す動きが大きく変わるとは考えにくく、今後も、持ち合いの解消は継続すると予想し、他方で、政策保有株式と議決権行使を関連付ける動きに注目、と締めくくっています。

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