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2019年11月 7日 (木)

三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートによる消費税率引き上げ前後の個人消費の動向やいかに?

一昨日11月5日に、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「消費税率引き上げ前後の個人消費の動向」と題するリポートが明らかにされており、前回214年の税率引き上げ時よりも駆け込み需要とその後の反動減が小幅にとどまったと報告しています。もちろん、pfdの全文リポートもアップされています。いくつかの論点があるとは思いますが、リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートでは経済産業省の「商業販売統計」のデータを基に、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要について分析しており、上のグラフはリポートから 図表2.スーパー販売額の推移 を引用しています。単純に、増税前最終月とそれまでの直近1年間の販売額の平均値との差を駆け込み需要の規模と見なすと、2014年の増税時は1280億円程度だったのに対し、2019年は935億円程度と約27%、345億円程度小さくなっており、同様に、百貨店でも約10%小さくなっています。スーパーでは百貨店よりも、駆け込み需要に一定の割合を占めるトイレットペーパーや洗剤などの日用品の購入が多いと思うんですが、むしろ、軽減材率の適用される食料品の効果が上回り、駆け込み需要の大きさはスーパーの方が百貨店よりも大きく縮小したのではないかと分析されています。また、自動車については9月の売り上げ増が大きかったんですが、増税直前まで駆け込み需要はほとんどみられず、このため、増税直前に需要が集中し、単月での大きな伸びにつながっただけであり、駆け込みの期間が短かった分、トータルで見れば今回の駆け込み需要は前回よりも小さかったと指摘しています。この駆け込み需要の期間が短かったという指摘は、一昨日11月5日に取り上げた日本総研のリポートと同じ結論と私は受け止めています。

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次に、増税後の反動減について見るため、リポートから 図表8. クレジットカード情報に基づく消費動向 (JCB消費NOW) を引用すると上のグラフの通りです。リポートでは、個人の消費支出額は9月上旬に前年比+4.6%、下旬に+11.9%と伸びを高めた後、10月上旬には▲6.7%と減少しているんですが、落ち込み幅は駆け込みの規模と比べても相応の水準であり、駆け込み以上に落ち込んでいる様子は見て取れないと結論しています。

他方、第一生命経済研のリポートのように、自動車と百貨店について分析した結果として、「基調が見極め難く、評価は持ち越し」と評価している例もあります。私が大学出向時などに研究者として統計的計量的な分析をしたのと違って、シンクタンクのリポートは速報性を重視して厳密な数量分析までは手が伸びていないわけで、まあ、速報性と正確性のトレードオフを考えれば、こんなもんか、という気もします。

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