ようやくプラスに転じた企業物価(PPI)と大きくマイナスに落ち込んだ法人企業景気予測調査!
本日、日銀から11月の企業物価 (PPI) が、また、財務省から10~12月期の法人企業景気予測調査が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.1%と、今年6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、6か月振りのプラスを記録しました。ただし、10月からの消費税率引上げの影響を除くベースでは▲1.5%の下落と試算されています。続いて、法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は7~9月期+1.1の後、足元の10~12月期は▲6.2と、消費税率の引上げや台風の影響などからマイナスに転じたものの、来年2020年1~3月期には+2.0、さらに4~6月期は+1.1と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
11月の企業物価指数、前年比0.1%上昇 消費税率引き上げで
日銀が11日発表した11月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.2と、前年同月比で0.1%上昇した。上昇は6カ月ぶり。消費税率の引き上げが押し上げに寄与する一方、石油・石炭製品の下落などが響き、伸びは小幅にとどまった。前月比でみると、0.2%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年比で5.9%下落し、7カ月連続のマイナスだった。前月比は0.2%上昇した。輸入物価は前年同月比11.2%下落し、前月比は0.2%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。10月の消費増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は前年同月比で1.5%下落した。6カ月連続で前年を下回った。前月比では0.1%上昇だった。
日銀の調査統計局は11月の企業物価について「消費税率引き上げの前後で企業の価格設定スタンスに大きな変化が生じていないことが改めて確認された」としている。
大企業景況感マイナスに 10-12月、米中摩擦など響く
内閣府と財務省が11日発表した10▲12月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス6.2だった。マイナスは2四半期ぶり。自動車などで中国を中心とする海外需要が低調だったほか、小売業で消費税率の引き上げや台風の影響もあった。
BSIは前四半期と比べた景況判断で「上昇」と答えた企業の割合から「下降」と答えた企業の割合を引いた値で、7▲9月期はプラス1.1だった。
今回の調査時点は11月15日。大企業のうち製造業はマイナス7.8となり、4四半期連続で「下降」の割合が大きかった。7▲9月期のマイナス0.2からマイナス幅も拡大した。米国との貿易戦争が続く中国で自動車部品や工作機械の需要が落ち込んでいる影響が大きい。10月の台風19号で工場が被災したといった声も聞かれた。
非製造業は2四半期ぶりに「下降」が上回り、マイナス5.3となった。卸売業で中国向けの機械出荷が減った。小売業では家電や百貨店で増税前の駆け込み需要の反動が出た。
全体として大企業の景況感の落ち込みは前回の消費増税後の2014年4▲6月期(マイナス14.6)よりは小幅にとどまった。内閣府と財務省は高水準の企業収益や堅調な設備投資などを理由に「内需を支えるファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)はこれまで同様にしっかりしている。今回の結果は、緩やかに回復している経済全体の傾向を反映している」との見方を示した。
ただ、外需の縮小で製造業を中心に逆風はなお続いている。先行きの20年1▲3月期に大企業の景況感はプラスへと回復する一方、中堅企業や中小企業はマイナス圏から脱せない見通しだ。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

先月10月統計の国内物価の前年同月比上昇率は消費税を含めても▲0.4%の下落、消費税の影響を除けば▲1.9%と、私は軽いショックを受けたんですが、さすがに、11月統計では消費税を含めればプラスに転じたものの、消費税を別にすればまだ▲1.5%の下落と大きなマイナスを続けていることに変わりはありません。特に、11月統計からは、いわゆる経過措置、すなわち、税率引上げ日の10月1日をまたぐ役務などの料金、例えば、旅客運賃、電気料金、請負工事などについての経過措置が縮小しますから、それだけでも物価押し上げ効果がある点は留意する必要があります。また、前年同月比上昇率を項目別に見ると、相変わらず、石油・石炭製品が▲8.3%の下落、非鉄金属が▲4.3%の下落、化学製品も▲3.5%の下落など、国際商品市況の動向や中国経済の停滞に起因する品目の下落が続いています。なお、先月のブログでも書きましたが、企業物価指数(PPI)のうちの輸入物価の円建て原油価格指数は、昨年2018年のピークが11月の142.5でしたから、本日公表された11月統計でPPI輸入物価に現れる原油価格の前年同月比への影響は底を打つ可能性が高いんではないか、と私は期待しています。来月の統計発表がチョッピリ楽しみです。

続いて、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。消費税率が引き上げられたばかりの足元の10~12月期が大きく悪化しているのは、台風もありましたし、ある程度までは想定内の気がします。ただ、グラフはありませんが、私がやや気がかりなのは設備投資計画の下方修正です。すなわち、ソフトウェアを含み土地購入額を除くベースの今年度2019年度の設備投資計画が、前回調査の+8.3%増から+7.8%に下方修正されています。設備判断DIはまだ不足超ながら、その不足幅が徐々に縮小してきているのも事実で、明後日公表予定の日銀短観でも設備投資計画は確認したいと思います。
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