« 阪神タイガース2020年シーズンのチームスローガンは「It's 勝笑 Time! オレがヤル」 | トップページ | SMBCコンサルティングによる「2019年ヒット商品番付」やいかに? »

2019年12月 2日 (月)

ほぼ3年ぶりに減収減益となった法人企業統計をどう見るか?

本日、財務省から4~6月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高はほぼ3年ぶりの減収で前年同期比▲2.6%減の349兆4974億円、経常利益は2四半期連続の減益で▲5.3%減の17兆3232億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで+7.1%増の12兆826億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比+1.5%増となっています。なお、設備投資については、前回からソフトウェアを含むベースに変更されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。


設備投資7.1%増 7-9月法人企業統計、売上高は減
財務省が2日発表した2019年7~9月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の売上高は前年同期比2.6%減の349兆4974億円と、12四半期ぶりの減収となった。米中貿易摩擦やそれに起因した中国経済の減速などを背景に、半導体関連製品などの売り上げが落ち込んだ。
製造業の売上高は1.5%減だった。中国向けなどが振るわず、スマートフォン向け部品など「情報通信機械」が18.9%減、半導体製造機械など「金属製品」が15.4%減となった。
非製造業の売上高は3.1%減と、12四半期ぶりの減収となった。消費増税を控えた耐久消費財への駆け込み需要で小売業は増収だったが、原油安を背景とした石油製品などの価格下落で卸売業が減収となったため「卸売業、小売業」は4.0%減となった。賃貸住宅の建設減や前年の大型案件の反動減から「建設業」は8.6%減だった。
全産業の設備投資は前年同期比7.1%増の12兆826億円で、12四半期連続の増加となった。
製造業の設備投資は6.4%増だった。次世代通信規格の5G関連技術や自動車・通信機械向けの電子部品への投資が活発だった「情報通信機械」が18.9%増となった。新工場の増設のあった「生産用機械」は18.6%増だった。
非製造業の設備投資は7.6%増だった。都市部を中心にオフィスビルの取得が多かった「不動産業」や、物流施設の新設が目立った「卸売業」の増加が寄与した。財務省の担当者は「増税前に設備投資に影響が出たとは考えていない」と説明した。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、前年同期比で7.7%増、季節調整した前期比で1.2%増だった。
全産業ベースの経常利益は5.3%減の17兆3232億円と2四半期連続の減益となった。海外での建設機械・半導体製造業の落ち込みを受けて製造業が15.1%減となったことが影響した。非製造業は0.5%増だった。
財務省は「緩やかに回復している景気の動向を反映している」と説明した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や投資動向を集計した。今回の19年7~9月期の結果は、内閣府が9日発表する同期間のGDP改定値に反映される。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo

上のグラフを見る限り、足元の我が国企業の動向は、かなりの程度に最近のマクロ経済動向とも一致して、製造業を中心に停滞色を強めています。季節調整していない原系列の前年同期比で見て、売上高こそ、非製造業の▲3.1%減の方が製造業の▲1.5%減よりも大きな落ち込みを見せましたが、営業利益と経常利益では非製造業が前年同期比プラスでしのいでいるのに対して、製造業はいずれもマイナスに落ち込んでいます。経常利益に至っては、製造業は統計の分類11業種すべてで前年比マイナスとなっています。ただ、設備投資については製造業・非製造業とも増加を続けています。特に、7~9月期には資本金10億円以上の大企業が前年同期比+10.0%と2桁のプラスを記録しています。業況が伸びない中で人手不足などに対応した合理化投資・省力化投資が下支えしているものと私は想像しています。ただ、後に見るように、ストックの利益剰余金こそ積み上がっているものの、フローの企業収益がかなり悪化しているので、設備投資の先行きについては楽観すべきではないと考えています。

photo

続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、相変わらず、太線のトレンドで見て労働分配率は60%前後で底這い状態から脱することなく低空飛行を続けています。他方、設備投資のキャッシュフロー比率はじわじわと上昇して60%台半ばに達しています。もちろん、一番元気よく右肩上がりの上昇を続けているのは利益剰余金です。ストックですから、積み上がる傾向にあるとはいえ、これを賃金や設備投資にもっと回すような政策はないものでしょうか?

本日の法人企業統計を受けて、来週月曜日の12月9日に7~9月期GDP統計2次QEが公表される予定となっています。基本的に、上方改定されるものと私は考えていますが、日を改めて2次QE予想として取り上げたいと思います。

|

« 阪神タイガース2020年シーズンのチームスローガンは「It's 勝笑 Time! オレがヤル」 | トップページ | SMBCコンサルティングによる「2019年ヒット商品番付」やいかに? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 阪神タイガース2020年シーズンのチームスローガンは「It's 勝笑 Time! オレがヤル」 | トップページ | SMBCコンサルティングによる「2019年ヒット商品番付」やいかに? »