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2020年2月 6日 (木)

新型コロナウィルスの経済への影響はどうなのか?

まったく私の専門外ながら、中国で新型のコロナウィルスによる肺炎などが拡大し、WHOで緊急事態宣言が出されたことは広く報じられている通りなんですが、もちろん、経済に及ぼす影響についてもいくつかリポートが明らかにされています。「いくつか」というよりも、余りにもいっぱいあり過ぎるんですが、取りあえず、私の印象に残った以下の2つのリポートをかんたんに取り上げておきたいと思います。

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当然ながら、2003年のSARSとの比較が中心になり、まず、感染拡大なんですが、今回の新型コロナウィルスの感染は極めて大規模でありSARSとは比較になりません。上のグラフは、日本総研のリポートから ウイルス感染者数(累計) を引用しています。グラフの注にある通り、SARSについては、感染者8,422人、うち死者916人でしたから、感染の拡大はそれほどではなかったものの、致死率がほぼ10%に上り、かなりの強毒性という印象でした。今回の新型コロナウィルスについては、現時点ではSARSほどの致死率は見られず、日本経済研究センターのリポートが引用している恒大研究院の情報によれば、2.2%ということらしいんですが、それはそれで高い致死率ですし、何よりも、大幅な感染拡大というのも厄介です。もっとも、前回2003年のSARSについては、中国が情報を隠蔽していたために感染者数などが過小に報告された一方で、死者数はごまかしが効かなかった、という根強い中国政府への不信感もチラホラと見かけないでもありません。そのあたりは、私には何とも判断がつきかねます。

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上のテーブルは、日本経済研究センターのリポートから引用していますが、もともとは、恒大研究院の情報ということのようです。上のテーブルを見れば明らかなんですが、流行が3~4月までに収束するシナリオ1でも、足元1~3月の成長率は直前の2019年10~12月の+6.0%を大きく下回って+4%程度となる可能性もあり、通年でも+5%台半ばの成長にとどまりますし、さらに収束が遅れるシナリオ2~3では経済へのダメージがより大きいのはいうまでもありません。

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最後に、上のグラフは、大和総研のリポートから引用しています、スペインのバンコ・デ・エスパーニャの研究成果 "Global Impact of a Slowdown in China" からの応用で、中国人観光客にスポットを当て、団体旅行禁止令に伴う中国人の海外旅行客数の減少に関して、リスクシナリオ①では新型肺炎の流行期間が3か月で済み、日本への中国人観光客が▲100万人(2019年比で約▲10%)減少と想定し、リスクシナリオ②では流行が1年続くことから団体旅行禁止令の実施期間も1年程度延長されると想定し、インパクトはほぼほぼ4倍です。2020年の世界経済の成長率は▲0.2~▲0.7%ポイント押し下げられ、我が国の成長率もリスクシナリオ②に、円高の影響などを加えると、▲0.9%の押し下げになることから、2020年の日本経済はマイナス成長の可能性すらある、と結論しています。

SARSが発生した2003年の4~6月期は、台湾と香港でマイナス成長を記録しましたし、アジア、ひいては日本への経済的な影響は決して無視できません。さらに、収束の時期にも依存しますが、今回の新型コロナウィルスの経済への影響は2003年SARSの際よりも大きいことは覚悟した方がよさそうです。

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