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2020年2月 8日 (土)

米国雇用統計は人手不足でも雇用者が前月から+225千人増加!!!

日本時間の昨夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+225千人増と人手不足にもかかわらず、まだ伸びを示し、失業率は先月から0.1%ポイント悪化したものの、それでも3.6%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、超コンパクトに Bloomberg のサイトから記事を最初の2パラだけ引用すると以下の通りです。

U.S. Jobs Top Estimates With 225,000 Gain, Wages Accelerate
U.S. employers ramped up hiring in January and wage gains rebounded, providing fresh evidence of a durable jobs market that backs the Federal Reserve's decision to stop cutting interest rates and hands President Donald Trump an early election-year boost.
Payrolls increased by 225,000 after an upwardly revised 147,000 gain in December, according to a Labor Department data Friday that topped all estimates of economists. The jobless rate edged up to 3.6%, still near a half-century low, while average hourly earnings climbed 3.1% from a year earlier.

まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、大きな影響は見られないと私は受け止めていますが、今回の2020年1月統計から雇用者のベンチマークがアップデートされています。それにしても、+225千人増という数字は、先月12月の+147千人増や昨年2019年の月平均+175千人増を大きく上回っていますし、Bloombergによる市場の事前コンセンサスの+165千人増もはるかに超えています。米国雇用がこれだけ堅調な背景には、米中間の貿易摩擦の休戦で米国の企業家心理が向上している点が上げられます。例えば、米国サプライチェーン・マネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数(PMI)は1月に50.9まで上昇し、半年ぶりに50を超えています。ただ、金融政策の方向感覚がやや不透明です。下のグラフに見られるように、賃金上昇は落ち着きを取り戻しつつあるとはいえ、まだ+3%台をキープしていますし、雇用は堅調ですから引締めの方向を示唆する可能性があります。他方で、中国の新型コロナウィルスというとんでもない特殊要因から、いったんは2020年中は利下げストップといわれながら、この中国発の先行き景気不安から、FED内でも利下げの必要性をめぐる議論が高まりそうです。私なんぞから見ると、やや方向感のない金融政策動向になりつつある気がしないでもありません。

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ということで、物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、一昨年2018年8月以来、賃金上昇率も3%台の水準が続いており、1月も前年同月比で+3.1%の上昇とインフレ目標を上回る高い伸びを示しています。ただ、上のグラフに見られるように、+3%を超えるとはいえ賃金の伸びが鈍化しているのは、米中間の貿易摩擦の影響もあって、雇用増が製造業ではなく賃金水準の低いサービス業、例えば、Leisure and hospitality や Health care and social assistance などで発生している点もひとつの要因です。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別としても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困対策や格差是正の観点を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。

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