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2020年3月 2日 (月)

2019年を通じて企業活動の停滞を示す法人企業統計の先行きをどう見るか?

本日、財務省から昨年2019年10~12月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高はほぼ3年ぶりの減収で前年同期比▲6.4%減の347兆8257億円、経常利益は2四半期連続の減益で▲4.6%減の18兆5759億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで▲3.5%減の11兆6303億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比▲4.2%減となっています。なお、設備投資については、前回からソフトウェアを含むベースに変更されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資、約3年ぶりマイナス 10-12月3.5%減
財務省が2日発表した2019年10~12月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の設備投資は前年同期比3.5%減の11兆6303億円だった。マイナスは16年7~9月期以来13四半期ぶり。世界経済の減速を受け、自動車など製造業で投資が冷え込んだ。これまで設備投資をけん引してきた非製造業も13四半期ぶりにマイナスに転じた。
設備投資の内訳をみると、製造業が9.0%減で2四半期ぶりに減少した。国内外の需要減が鮮明な自動車産業を中心に、生産能力を増強する投資が減った。非製造業は0.1%減で、13四半期ぶりのマイナス。オフィスビルや商業施設への投資が減った不動産業が22.8%減となり、全体を押し下げた。
全産業の売上高は6.4%減と、2期連続で減少した。製造業・非製造業ともに前年を下回った。製造業では自動車や関連部品の販売が低調だった。非製造業では卸売業・小売業が10.2%減り、マイナスに寄与した。
財務省によると、卸売業にあたる商社で石油化学製品などの販売が減少した。小売業だけでは0.5%の増収で「消費増税の影響はこの統計では確認できなかった」(財務省)という。
経常利益は製造業が15.0%減で6期連続の減少。33.7%の減益となった生産用機械では、海外を中心に建設機械の販売が低迷した。大型台風で生産が減った影響もあった。前年より為替相場が円高で推移していたため、自動車などでは為替差損が出た。
新型コロナウイルスの感染が本格的に広がる前の時期に、企業活動が鈍っていた状況が浮かぶ。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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飲用した記事にもある通り、基本的に企業活動は消費税から中立とはいえ、昨年2019年10~12月期は消費需要が大きく低下したわけですので、企業の売上も利益もともに下振れするのは当然ですが、その前の時期から企業活動は鈍化を示しています。すなわち、先の2019年10~12月期の1次QE公表時にも書いた通り、かなり前から、すなわち、「2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか」という見方を示しておきましたが、ひとつの根拠として、この法人企業統計の金融業と保険業を除く全企業の売上が季節調整済みの系列で見て、2018年10~12月期を直近のピークとして、2019年1~3月期から2019年いっぱいの4四半期連続で減少を続けている点が上げられます。上のグラフの通りです。さすがに、リーマン・ショック時の売上や経常利益の落ち方はとても強烈なんですが、その前の時期の落ち方と比較しても、2019年いっぱいの売上や経常利益の落ち方はかなりのもんです。加えて、季節調整済みの系列で見た経常利益については、直近の2019年10~12月期で非製造業がほぼほぼ横ばいの+0.3%増だった一方で、製造業は▲8.6%減を示しており、世界経済の停滞に起因する減益であることは明らかです。設備投資についても2四半期連続のマイナスが続いており、さらに、足元の今年2020年1~3月期には新型コロナウィルスによるダメージが加わる可能性が極めて高く、いっそうの企業活動の停滞につながることは確実です。その先については、私のような凡庸なエコノミストには想像もできません。ただ、短期的な目先の売上や利益や設備投資は新型コロナウィルスにより下振れする可能性がある一方で、感染が収束すれば一気にV字回復する可能性も残されている点は忘れるべきではありません。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、相変わらず、太線のトレンドで見て労働分配率は60%前後で底這い状態から脱することなく低空飛行を続けています。他方、設備投資のキャッシュフロー比率はじわじわと上昇して60%台半ばに達しています。もちろん、一番元気よく右肩上がりの上昇を続けているのは利益剰余金です。ストックですから、積み上がる傾向にあるとはいえ、これを賃金や設備投資にもっと回すような政策はないものでしょうか?

本日の法人企業統計を受けて、来週月曜日の3月9日に10~12月期GDP統計2次QEが公表される予定となっています。基本的に、小規模な修正ながら下方改定されるものと私は考えていますが、いずれにせよ、日を改めて2次QE予想として取り上げたいと思います。

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