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2020年3月 5日 (木)

昨年2019年10-12月期のGDP統計2次QE予想と我が国景気の現局面やいかに?

今週月曜日3月2日の法人企業統計の公表を受けて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、来週月曜日3月9日に昨年2019年10~12月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定で、すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしていて、今回は、新型コロナウィルス(COVID-19)に注目が集まっていますが、いつものように、法人企業統計のオマケで明らかにされているリポートも少なくなく、正面から先行きを取り上げているのはみずほ総研と第一生命経済研だけでした。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲1.6%
(▲6.3%)
n.a.
日本総研▲1.8%
(▲7.0%)
10~12月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲7.0%(前期比▲1.8%)と、1次QE(前期比年率▲6.3%、前期比▲1.6%)から下方修正される見込み。
大和総研▲1.6%
(▲6.1%)
2019年10-12月期GDP二次速報(3月9日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲6.1%と、一次速報(同▲6.3%)から僅かに上方修正されると予想する。
みずほ総研▲1.9%
(▲7.4%)
コロナウイルスの日本経済への影響は、①個人消費の下押し、②財・インバウンド輸出の減少、③サプライチェーン寸断による国内生産停止、などが想定される。
既に①個人消費については、感染防止等の観点から活動自粛の動きが足元で進んでいる。過去で近しい動きがみられた、東日本大震災や昭和天皇崩御の際は、特にサービス活動の低下が顕著であり、今回も同様の動きが発生するだろう。②輸出については、グローバルに感染が拡大するなかで、中国以外の他地域向けについても輸出が今後減少する可能性が高い。インバウンドについても、国内感染者数の拡大から、外国人客が日本を避ける動きが強まるとみている。③サプライチェーン寸断による生産活動の停止については、現時点では局所的・一時的な動きに留まっているが、長期化すればリスクが 顕在化する可能性が高まるだろう。
現時点で感染者数の今後の拡大ペースや終息時期は不透明だ。前回SARSの際は、発生から半年程度で終息していることから、現時点では年央頃にコロナウイルス影響が終息することをメインシナリオとしている。その場合、①個人消費や②輸出減が年前半の景気を下押しするものの、③サプライチェーン寸断までには至らず、年後半から持ち直すシナリオを想定している。日本経済は既に景気後退にあるとみており、その中での消費減・輸出減のインパクトは大きい。ただし、現時点ではコロナウイルスの影響はあくまで一時的であるとみており、本格的な雇用調整までには至らないと考えている。
ニッセイ基礎研▲1.6%
(▲6.4%)
19年10-12月期の法人企業統計の設備投資は弱い結果となったが、GDP統計の設備投資は1次速報値の段階ですでに弱い結果(名目・前年比▲3.2%)となっており、本日の法人企業統計の結果を反映した下方修正は小幅にとどまるだろう。
第一生命経済研▲1.7%
(▲6.6%)
新型コロナウイルスの悪影響が顕在化する以前から、既に景気が明確に悪化していたことが改めて確認されると思われる。
1次速報からの修正幅自体はそれほど大きいものではなく、10-12月期までの景気認識について変更を迫られるような内容にはならないと思われるが、問題なのは1-3月期以降の動向だ。筆者は2月17日の段階で1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率▲1.3%と、2四半期連続のマイナス成長になると予想していた。中国経済の悪化に伴う輸出の悪化が予想されることを踏まえたものだったが、その後さらに、日本国内でもイベントの中止やレジャー施設の休止、外出の手控え等、想定以上の影響の拡がりがみられており、サービスを中心とした個人消費の下振れが避けられない状況になっている。1-3月期のマイナス幅は、筆者が従来想定していたよりも大きくなりそうだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲1.8%
(▲7.1%)
落ち込み幅が拡大することで、消費増税のマイナスの影響が思いのほか大きかったとして、先行きの景気に対して慎重な見方が強まる可能性がある。
三菱総研▲1.9%
(▲7.3%)
2019年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲1.9%(年率▲7.3%)と、1次速報値(同▲1.6%(年率▲6.3%))から下方修正を予測する。

ということで、昨年2019年10~12月期のGDP統計2次QEは1次QEからの修正幅はわずかと見られており、大和総研を別にすれば、ほぼ下方修正で足並みがそろっています。大和総研だけは、原材料在庫の上方修正を主因に、在庫変動の前期比寄与度が上方修正されるため、2次QEは1次QEから上方修正と予想しています。いずれにせよ、改定幅はわずかと見込まれています。
2次QE予想とともに、注目されるのは景気の現局面です。というのも、先週水曜日の2月26日にシンクタンクの短期経済見通しを取り上げた際には、私自身の景気局面の見方として、「足元の2020年1~3月期もマイナス成長を記録し、テクニカルな景気後退シグナルが発せられるとともに、景気動向指数などの指標を見るにつけ、2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか、というものです。」と明記していて、現在の日本経済がすでに景気後退局面に入っていると指摘していたのは、ニッセイ基礎件のリポート「景気は 2018年秋頃をピークに後退局面入りしていたと事後的に認定される公算が大きい。」のほか、第一生命経済圏のリポート「18年10月を山として、景気は後退局面が続いている可能性が高い。」さらに、東レ経営研のリポート「景気は2018年10月を山として後退局面入りしていた可能性高まる」がある一方で、日本総研のリポートでは「景気は回復軌道に復帰する見込み」、あるいは、大和総研のリポートでも「2020年は日本の回復期入りが期待される」などと指摘されていて、直感的に、三菱総研のリポートの「日本経済は景気後退の瀬戸際で踏みとどまるだろう。」あるいは、みずほ総研のリポートの「日本経済は弱含んでいると評価」くらいが予測の中央値である可能性が高い、と私は受け止めていたんですが、今回の2次QE予想では、みずほ総研のリポートが明確に「日本経済は既に景気後退にある」と景気サイクルが進んだことを認めつつ、COVID-19次第で景気後退が深刻化したり、長期化したりすると論じています。この先、時間の流れとともに、景気後退局面入りしているとの「リセッション派」のエコノミストが増えそうな気がします。なお、内閣府から明日公表予定の景気動向指数の基調判断をおさらいしておきますと、2018年いっぱいの12月までは「足踏み」が続き、2019年1~2月は「下方への局面変化」に修正された後、2019年3月には「悪化」となり、メディアを大いに賑わせ、この「悪化」が4月も続いた後、2019年5~7月は一時「下げ止まり」になったものの、再び8月以降は「悪化」が続いていますから、ヒストリカルDIを計算するまでもなく、かなり、この景気動向指数の基調判断が正確だった、ということがいえます。繰り返しになりますが、私の景気の現局面の判断は、ピンポイントの景気転換月の指摘はしませんが、2018年10~12月期を景気の山として日本経済はすでに景気後退局面に入っている可能性が高い、ということになります。そして、来週公表予定の2019年10~12月期や足元の2020年1~3月期のGDP統計は、この私の景気判断を裏付けるものになるんではないか、という気がしないでもありません。
最後に、下のグラフは、私が名付けた「リセッション派」に転じたみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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