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2020年4月30日 (木)

いずれも大きく低下した鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計と消費者態度指数!

本日は月末ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から3月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、内閣府から4月の消費者態度指数が、それぞれ公表されています。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲3.7%の減産を示し、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲4.6%減の12兆8440億円、季節調整済み指数でも前月から▲4.5%減を記録しています。消費者態度指数は▲9.3ポイント低下して21.6となり、4か月連続で前月を下回って過去最低を記録しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

3月鉱工業生産3.7%低下の95.8、7年2カ月ぶり低水準
経済産業省が30日発表した3月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比3.7%低下し95.8だった。2013年1月(94.8)以来7年2カ月ぶりの低い水準となった。新型コロナウイルスの感染拡大による工場の停止が影響し、2カ月連続で減産となった。経産省は基調判断を「一進一退ながら弱含み」から「低下している」に下方修正した。
下げ幅はマイナス4%を記録した19年10月以来の大きさとなった。新型コロナの影響が幅広い業種に表れ、15業種中13業種が低下した。
自動車が前月比5.1%減、半導体製造装置や産業用ロボットなど生産用機械工業が10.2%減だった。世界的な需要の縮小で輸出が減った。2月に引き続き中国などから部品の調達が滞り、生産が鈍った面もある。
一方、紙おむつなどのパルプ・紙・紙加工品工業は前月比1.0%増だった。2月に生産が落ち込んだ航空機部品などの輸送機械工業も11.1%増加した。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、4月は前月比1.4%の上昇、5月は1.4%の低下を見込む。経産省の担当者は「4月上旬の調査のため最新の情勢変化が反映されていない。4月も低下の可能性が高く、今後も低水準が続くと考えられる」と分析する。
出荷指数はマイナス5.0%と4カ月ぶりに低下した。在庫は1.9%上昇した。
3月の小売販売額、4.6%減 基調判断「低下している」に下げ
経済産業省が30日発表した3月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比4.6%減の12兆8440億円となった。減少率は、消費税率引き上げ後に駆け込み需要の反動減が出た2019年10月以来5カ月ぶりの大きさとなる。新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛や店舗の営業時間の短縮・臨時休業などで、百貨店を中心に販売額が落ち込んだ。
経産省は小売業の基調判断を前回の「増加している」から「低下している」に引き下げた。
3月分の小売販売額を業種別にみると、9業種のうち8業種が前年同月比でマイナスだった。「織物・衣服・身の回り品」(22.3%減)や百貨店などの「各種商品」(21.0%減)で落ち込みが目立った。一方、マスクなどの衛生用品を含む「医薬品・化粧品」は1.5%増だった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計が前年同月比8.8%減の1兆6204億円だった。既存店ベースでは10.1%減だった。コンビニエンスストアの販売額は5.4%減の9577億円だった。ファストフードや日配食品を中心に減った。
4月の消費者態度指数、大幅に低下 判断「急速に悪化」に引き下げ
内閣府が30日発表した4月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は前月9.3ポイント低下の21.6となった。現在の調査方法となった2013年4月以降では最低で、調査手法が異なるため単純比較はできないが、毎月調査となった04年4月以降でも最低の水準となった。
新型コロナウイルスの感染拡大が消費者心理を急激に冷え込ませており、下げ幅も過去最大となった。内閣府はここ数カ月の指数の動きを踏まえて、消費者心理の判断を「急速に悪化している」に下方修正した。下方修正は3カ月連続で、内閣府によると、今まででもっとも低い判断だった3月の「悪化している」から、さらに下回る表現に引き下げた。
指数を構成する4指標はすべて前月から低下し、過去最低を更新した。いずれの指標も過去最大の下げ幅を記録した。「雇用環境」が前月比12.9ポイント低下の15.0と大きく落ち込んだほか、「暮らし向き」は同8.1ポイント低下の21.9、「収入の増え方」は同8.5ポイント低下の26.3、「耐久消費財の買い時判断」は同7.7ポイント低下の23.3だった。
2人以上の世帯で、日ごろよく購入する物の1年後の物価見通しでは「上昇する」と答えた割合が70.7%(原数値)と前の月を0.4ポイント上回った。「低下する」「変わらない」と答えた割合はいずれも前の月より小幅に低下した。内閣府は「上昇すると見込む割合が高水準である」と、前の月の「上昇すると見込む割合は高水準であるものの、このところ低下がみられる」から表現を変更した。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。調査基準日は4月15日で、調査期間は7~20日だった。調査は全国8400世帯が対象。有効回答数は6580世帯、回答率は78.3%だった。

いくつかの統計を取り上げていますので長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計については、まだ、非常事態宣言が出る前の3月段階の統計ですから、まあ、こんなもんかという気はします。世間では経済活動は軽く2ケタのダウンという見立てなんでしょうが、それはさらに4月に入ってからの統計に現れる可能性があります。例えば、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲5%ほどの減産でしたから、緊急事態宣言下でも人出は8割減を目指すのかもしれませんが、当然ながら、生産がそこまで減少するわけではありません。それでも、経済産業省は基調判断を「一進一退ながら弱含み」から「低下している」に下方修正しています。特に、3月統計では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響は、国内経済よりも海外経済の停滞の方により強く現れており、生産を業種別に見ると、輸出ウェイトの高い自動車工業や生産用機械工業が低下しており、逆に、上昇したのは輸送機械工業(除.自動車工業)やパルプ・紙・紙加工品工業だったりします。まあ、上昇のうちパルプ・紙・紙加工品工業は、次の商業販売統計でも触れるように、国内向けの公衆衛生関連なんではなかろうかという気がします。ただし、前月比▲3.7%の低下を示した生産指数よりも出荷はさらにマイナス幅の大きい▲5.0%減で、その分、在庫は積み上がっていますので、先行き、さらに生産減少の圧力が強まるのは当然で、その意味で、引用した記事にもある通り、補正値でも4月の製造工業生産予測指数の▲1.3%減は、非常事態宣言前とはいえ、とてもミスリーディングといわねばなりません。4月の生産はこの数字よりもっと落ちることは確実です。ただ、報じられている範囲での私の理解からすると、海外経済は4月を底に下げ止まる可能性があり、その点からは我が国の生産も外需のサポートがあれば、それほど大きい落ち込みにはならない可能性も十分あります。もちろん、ここまで楽観的な先行き見通しを明らかにするエコノミストは私くらいであり、COVID-19の拡大次第では、もっと大きく落ちる可能性も否定できません。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期であり、このブログのローカルルールは上の鉱工業生産指数と同じです。消費の代理変数となる小売販売額を見ると、消費税率引上げの当月だった10月の前年同月比▲7.0%減から、11月は▲2.1%減、12月▲2.6%減から、今年2020年1月は▲0.4%減まで、着実にマイナス幅が縮小した後、2月はうるう年効果もあって、+1.6%増に転じたものの、3月には▲4.6%減を記録しています。これまた、経済産業省では小売業の基調判断を「増加」から「低下」に引き下げています。業種別の前年同月比で見て、織物・衣服・身の回り品小売業が前年同月比▲22.3%減、また、百貨店などの各種商品小売業が▲21.0%減となった一方で、唯一、医薬品・化粧品小売業だけが+1.5%の増加を示しました。生産統計と整合的であり、COVID-19の影響とも整合的な結果といえます。今後の方向としても、次の消費者態度指数に現れた消費者マインドに加えて、所得が伸びるとはとても思えませんから、先行き回復のメドは立ちません。というか、私には判りかねます。

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ということで、敬愛産業省の2つの重要指標を終えて、1~3月期の四半期データが利用可能となりましたので、上のグラフはいわゆる在庫循環図です。ピンクの矢印の2013年1~3月期から始まって、黄緑色の矢印で示された直近の2020年1~3月期まで、大雑把に、第15循環における2012年の短い景気後退期の後からプロットしていますので、グルッと1周して、ここ1年間、すなわち、4四半期の間、出荷が前年比マイナスで、在庫は前年比プラスという第4象限にあります。まさに、景気後退まっただ中という結果なんですが、COVID-19の影響は右下方向へのシフト、すなわち、出荷のさらなる減少と在庫のさらなる積み上がり、という形で現れることと私は想像しています。四半期データに基づく分析ですので速報性には欠けますが、それなりに注目しています。

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調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影を付けた期間は景気後退期であり、このブログのローカルルールは上の鉱工業生産指数や商業販売統計と同じです。4月統計の消費者態度指数を4つのコンポーネントで前月3月との差を少し詳しく見てると、「雇用環境」が▲12.9ポイント低下し、「収入の増え方」が▲8.5ポイント低下、「暮らし向き」が▲8.1ポイント低下、「耐久消費財の買い時判断」が▲7.7ポイント低下、と軒並み大幅低下だったりするわけですが、一昨日の雇用統計でも強調したように、この結果の背景として、雇用が急速に悪化しているんではないかと私は推測しています。おそらく、人手不足が景気を牽引する、なんて見方は吹っ飛んだんではないでしょうか。調査方法が2013年から変更されていて、どこまで連続性が担保されているのか不明ながら、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻後には、2009年1月につけた27.5がもっとも低い指数水準で、2008年1月の38.5から1年かかって▲11.0ポイントの低下だったんですが、4月の指数水準が過去最低の21.6と低いだけでなく、今回のCOVID-19の影響によるマインド悪化のスピードははるかにリーマン・ショック時を上回っています。すなわち、今年2020年1月の38.8から4月の21.6までの3か月で▲17.2ポイントの低下を記録しています。従って、というか、何というか、統計作成官庁である内閣府の基調判断は、先月の「悪化」から「急速に悪化」に下方修正されています。これら消費者マインドの先行きも、私には見通せません。

まあ、軽く想像されていましたが、4月最後の経済指標はCOVID-19の影響により、とても暗いものになってしまいました。加えて、先行きの不透明さは従来にないほどで、何とも重苦しい雰囲気を感じているのは私だけではないと思います。

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2020年4月29日 (水)

在宅勤務が続く4月29日本日の雑感!

広く報じられている通り、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、私の勤務する大学でも授業はゴールデンウィーク明けまで休講となり、私自身も大学の研究室に出勤することなく在宅勤務が続いています。
4月もほぼほぼ終了するこのタイミングで、教授会が2度ほどあって私も出席したのですが、どちらもオンライン会議でした。主催する学部長は「オンライン会議は疲れる」と毎度のようにいっていますが、10年前の長崎大学のころの経験からしても、オンラインであってもリアルであっても、私には教授会というのはとても疲れる場であると感じています。でも、そうといいつつ、適当にオンラインでも茶々を入れたりしています。MicrosoftのSkypeを使った会議ですが、狭い我が家で私の近くを通らざるを得ないカミさんには不思議な会議と映っているかもしれません。
いくつかの報道で見た通り、というか、何というか、在宅勤務ですから、私の場合もやっぱり平日と休日の区別が曖昧になってきつつあるような気がします。ですから、どこかのテレビでやっていたんですが、取材を受けた女性の場合、外出しないのでスッピンでろくな着替えもせずに部屋着で勤務している、ということでしたが、私も同じようなものです。私の場合は男ですので髭を剃る頻度が大きく減ることになっています。服装については、もともと役所でも研究や調査の分野の勤務が長くて、その上に、まったく出世しなかったもので、大臣や事務次官などのエラいさんに会う機会もめっきり少なく、服装はかなりラフだったとお見ます。すなわち、オックスフォードのボタンダウンシャツはノーネクタイでチノパンをあわせる、というオフィス着だったんですが、在宅勤務では、ジーンズにネルシャツということになります。平日感が薄くなるのは、毎朝ちゃんと早起きしてNHKの朝ドラを見ることにより、勤務日であるという意識を高めています。その意味で、今の朝ドラ「エール」から土曜日がその週の総集編になったのは、平日感と休日感の差をつけるに寄与している気がします。
ただ、通勤しませんから、運動量と読書量の低下を来している気はします。もう15年近く前の経験で、いわゆる官邸スタッフに出向していたころ、松戸から南青山の公務員住宅に引越して、その引越し直後にやたらと読書量が減ったことがあり、やっぱり、電車通勤の間の読書は決して無視できない量であると実感しましたが、同じことが生じているようです。今現在は大学教員の職にあって、そもそも本を読むことそれ自体がもっとも重要な業務のひとつといえ、緊急事態宣言が出る前に大学の図書館から何冊か借り出してせっせと読んでいます。関西一円でももっとも充実した蔵書を誇る図書館のひとつである京都市図書館が閉館してしまったのは、私の業務の遂行の面からは誠に残念です。でも、まあ、仕方ないんでしょう。加えて、私の場合は、週末にプールで泳いでいたんですが、3月の引越しが忙しくなったあたりから、まったくプールに行けないようになった上、緊急事態宣言後には近場の室内プールはすべて閉鎖されてしまいました。休日には自転車に乗るようにしていますが、これはまた別途の機会に取り上げることにして、我が家の近く、あるいは、大学の近くでは、まるで、すべての自転車は歩道を走らねばならない法律があるかのようで、私が真新しいクロスバイクで車道を走ると自動車から迷惑がられているような気がしてなりません。繰り返しになりますが、自転車については別途の生活編で日を改めて取り上げます。

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2020年4月28日 (火)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で悪化した3月の雇用統計について考える!

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも3月の統計です。失業率は前月から+0.1%ポイント上昇して2.5%、有効求人倍率は前月から▲0.06ポイント低下して1.39倍と、いずれも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により悪化しました。まず、やや長くなりますが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

求人1.39倍、3年半ぶり低水準 解雇・雇い止め2000人増
3月の有効求人倍率発表

新型コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響が鮮明になってきた。厚生労働省が28日発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.39倍で前月から0.06ポイント下がった。2016年9月以来、3年半ぶりの低い水準となった。総務省が同日発表した3月の完全失業率(季節調整値)は2.5%で前月から0.1ポイント悪化した。
新型コロナウイルスの感染拡大による雇用への影響が鮮明になってきた。厚生労働省が28日発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.39倍で前月から0.06ポイント下がった。2016年9月以来、3年半ぶりの低い水準となった。総務省が同日発表した3月の完全失業率(季節調整値)は2.5%で前月から0.1ポイント悪化した。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。1月から急低下し、19年12月と比べると0.2ポイント近く減少した。
加藤勝信厚労相は同日の記者会見で「求人が減少しており、新型コロナが雇用にあたえる影響に十分注意する必要がある」と述べた。
都道府県別では最も高い岡山県が1.90倍、次いで東京都が1.87倍だった。最も低いのは沖縄県の1.06倍で、神奈川県が1.07倍だった。
雇用の先行指標となる新規求人は前年同月比で12.1%減った。減少幅は製造業が22.8%、宿泊・飲食サービス業は19.9%、職業紹介・労働者派遣業は34.3%と特に大きかった。
厚労省は新型コロナに関連した解雇や雇い止めにあった人数(見込みを含む)は、4月27日時点で3391人だったことも明らかにした。3月30日時点では1021人で、ほぼ1カ月で約2000人増えた。厚労省が全国の労働局やハローワークを通じて集計した。
厚労省は新型コロナの感染拡大の影響に加え、1月から求人票の記載項目が増えて募集を控える企業があることも有効求人倍率が低下した要因と考えている。求人票の見直しの影響を除いた倍率は、2月が1.52~1.53倍、3月は1.51倍と試算する。
総務省が28日発表した3月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.5%で前月から0.1ポイント悪化した。完全失業者数(同)は172万人で6万人増加した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は4万人増、「自発的な離職」は2万人減だった。就業者数(同)は6732万人で11万人減少した。
非正規の職員・従業員数は2150万人で、前年同月に比べて26万人減った。比較可能な14年1月以降で、最大の下落幅になる。主な産業別の就業者数は製造業が24万人、宿泊・飲食サービス業で14万人減った。医療・福祉が40万人、運輸・郵便業は12万人増えた。

長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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ということで、2%台前半まで低下していた失業率は2.5%ですし、1.6倍を超えていた有効求人倍率も▲0.25ポイントほど低下しました。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も1.15倍から1.03倍まで低下を示しています。現時点では、失業率は2%台半ばで有効求人倍率も1倍を超えているわけですから、雇用指標はまだ水準としては完全雇用に近いとはいえ、方向性については、失業率も有効求人倍率も、そして、特に先行指標である新規求人数を見れば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより急速に雇用が悪化する方向にあることは確かです。すでに本格的な景気後退局面に入っていることは明らかで、この先、雇用は急速に悪化するおそれが高いと覚悟せねばなりません。何度もこのブログで繰り返して表明してきましたが、人口減少で人手不足、まではいいんでしょうが、まるで人で不足が雇用機会を提供し、景気を下支えしているかの本末転倒した見方は、ほぼほぼ完全に吹っ飛ぶ可能性があります。雇用は生産の派生需要であって、生産の牽引役ではないことは忘れるべきではありません。
そして、量的な雇用の悪化とともに考慮せねばならないのは質的な点で、どのような雇用が失われるのか、という点です。すなわち、2008年のリーマン証券破たん後の労働市場の調整過程で、派遣スタッフなどの非正規雇用が調整弁として、いわゆる「派遣切り」などが社会現象になりましたが、すでに、最近の雇用統計からも非正規雇用の厳しい状況がうかがえます。例えば、正規職員の有効求人倍率は、本ブログによる暫定認定の景気後退初期の2019年1月の1.14倍から1年余りを経過した直近統計の2020年3月の1.03倍まで、約▲0.1ポイントの低下にとどまっていますが、パートの有効求人倍率は1.80倍から1.51倍まで▲0.3ポイント近い低下を示しています。もちろん、有効求人倍率の水準そのものは正社員よりもパート職員の方が高いわけですが、方向性としては、雇用悪化のしわ寄せがパートなどの非正規に向かっている可能性があると考えるべきです。

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2020年4月27日 (月)

東京商工リサーチによる「新型コロナウイルス」関連倒産状況やいかに?

先週4月20日の月曜日から24日の金曜日まで、毎日17時現在で「新型コロナウイルス」関連倒産状況が東京商工リサーチから明らかにされています。今日はまだその時刻になっていませんが、17時過ぎに本日分までアップデートした調査結果がアップされるのかもしれません。ということで、東京商工リサーチのサイトから現時点で最新情報としで利用可能な「新型コロナウイルス」関連倒産状況【4月24日17:00 現在】の都道府県別の破たん状況の画像を引用すると下の通りです。

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当然のように、東京都がもっとも多くて21件、ついで北海道11件、静岡県7件、兵庫県6件、大阪府と愛知県がともに5件、などとなっています。上の画像からだけでは判りようがないんですが、先週の日々の各日17時現在の破たん件数は、4月20日(月)68件、21日(火)78件、22日(水)81件、23日(木)84件、24日(金)93件、となっています。東京都の破たん件数は20日(月)時点では11件でしたが、24日(金)時点では上の画像の通り21県とほぼ2倍に増加しています。
なお、金曜日時点の破たん93件とは、倒産66件と弁護士一任・準備中27件の和となっています。東京商工リサーチによれば、「新型コロナ」関連の経営破たんは、2月2件、3月23件だったそうですから、4月24日までに68件の破たんが生じていることになります。この破たん件数を業種別に詳しく、同じく4月24日金曜日時点で見ると、インバウンド消費の「蒸発」と外出自粛の影響を受けた宿泊業が18件で最多となり、次いで、同じく外出自粛で来店客の売上げが落ち込んだ飲食業が15件、さらに、アパレル関連が10件となっているほか、イベント自粛や休校の影響で学校給食用食材を扱っていた食品製造業が9件、結婚式場やパチンコホールなどの生活関連サービス・娯楽業も8件、などとなっています。

メディアで広く報じられている新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による経済的影響を私が見聞きしている範囲と、かなりの程度に実感が一致している気がします。先の見通せない長いトンネルに入ったような気分です。

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2020年4月26日 (日)

本日4月26日は「よい風呂の日」!

本日4月26日は「よい風呂の日」です。私の知る限り、2012年に封切られて、私も見に行った映画「テルマエ・ロマエ」の製作委員会が勝手に制定したと記憶しています。まあ、軽く想像されるように、単なる語呂合わせが基になっているんでしょうが、私が映画「テルマエ・ロマエ』を見に行ったのも5月の連休明けだったですから、映画封切りの時期にもピッタリだったのかもしれません。この「よい風呂の日」に関して、まず、prtimesのサイトからTMIXの実施したアンケート結果の認知割合「よい風呂の日を知っていましたか?」のグラフを引用すると以下の通りです。まあ、大雑把に、3人に1人が知っているようです。

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私は入浴が大好きで、1990年代前半に赴任したチリでは、現地のチリ人の大部分がシャワーだけで済ませている一方で、私は少なくとも週に3~4日はバスタブに湯を張って、ゆったりとお湯に浸かっていたりしました。今でも、いい年した60過ぎのオッサンにもかかわらず、毎日1時間超の入浴時間を費やしていたりします。ということで、ウェザーニュースも「4月26日は『よい風呂の日』。お風呂の3つの健康効果とは?」と題して、入浴が体によい3つの理由を以下の通り上げています。

入浴が体によい3つの理由
  1. 疲れをとることができる
  2. 免疫力を高めることができる
  3. 体の汚れを洗い落とすことができる

私のような専門外のシロートが考える入浴の利点の第1は、上の3点の中の最後の汚れ落としで、続いて最初の疲労回復なんですが、免疫力に関しては想像がつきませんでした。体温が下がると免疫力が下がるそうで、当然に体温を上げる入浴は免疫力を高めるのに効果的だそうです。知りませんでした。ただ、入浴に関する注意点として、入浴前後の水分補給に気をつけるとともに、酔った状態ではお風呂に入らない、また、湯船で居眠りしない、などを心がけるべき、と締めくくっています。内風呂のないご家庭には申し訳ないながら、外出自粛が広まっている中で、充実した入浴タイムを私は楽しみたいと思います。

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2020年4月25日 (土)

MMD研究所による「在宅勤務におけるツール利用動向調査」の結果やいかに?

一昨日の4月23日付けで、MMD研究所から「在宅勤務におけるツール利用動向調査」の結果が明らかにされています。私もこの4月から大学の教員に転職して、ゴールデンウィーク明けからはwebを活用したリモート授業が始まるんですが、多少なりとも参考になる部分があるかもしれないと考えて取り上げてみます。まず、MMD研究所のサイトから【調査結果サマリー】を4点引用すると以下の通りです。

【調査結果サマリー】
  • 新型コロナウイルスの影響で変化があった勤務体系のうち、「在宅勤務」と「時差出勤」は12.9%
    約7割は変わらず出社している
  • 在宅勤務の制度は「2020年より前」と「2020年3月」から始まったが最多
    在宅勤務をしていて良かった点のトップは「新型コロナウイルスにかかるリスクが軽減された」、
    困った点のトップは「仕事とプライベートの切り替えが難しい」
  • 在宅勤務時に導入を開始したツールは「ビデオ通話/WEB通話」が最多
    導入ツールは在宅勤務時、在宅勤務前ともに「Skype」がトップ
  • 在宅勤務時に個人的にしたことは「部屋を片付けた」「保存がきく食料を買った」
    半数以上が何かしら行動や利用、契約をしたと回答

MMD研究所のサイトに明記されているように、7都府県に緊急事態宣言が出される前の4月2~3日の段階の調査ですので、全国に緊急事態宣言が広がって、営業自粛なども拡大している現時点では、どこまで信頼性を保っているかは疑問がありますので、ひとつだけ、私が着目したのは上の【調査結果サマリー】第3点目のツールです。MMD研究所のサイトからグラフを引用すると下の通りです。

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見れば明らかなんですが、在宅勤務時に導入を開始したツールはSkypeが48.0%ともっとも多く、次に、ZOOMが20.0%、slackが12.0%となり、在宅勤務をする前から導入していたツールはSkypeが50.0%ともっとも多く、在宅勤務前後のどちらもSkypeの導入が最多という結果が示されています。Microsoftの強さを見せつけられた気がしますが、私の研究室でも、我が家のパソコンでも、やっぱり、SkypeとZOOMを入れていますし、実際に、私自身でもZOOMでリモート授業をやったり、Skypeで会議に参加したりといった経験もあります。何分、大学という教育機関ですので、片側が学生になるリモート授業もありますし、大企業などと違ってセキュリティに配慮するよりは、高価な有料サービスの導入を回避する方に重点が置かれがちなのは理解できるところです。いずれにせよ、この調査の実施から3週間近くを経過しているわけで、おそらく、こういった在宅勤務に必要なツールの利用割合は、確実に上昇していることと想像しますが、Skype一番、ZOOMが二番、というのは、大きな変化ないような気もします。

我が家でも、離れて暮らす2人の倅にゴールデンウィークにはオンライン帰省を提案してみようかどうか、考慮中です。

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2020年4月24日 (金)

消費者物価指数(CPI)と企業向けサービス価格指数(SPPI)はともに3月統計で上昇幅を縮小!!!

本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) が、また、日銀からも企業向けサービス価格指数 (SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも3月の統計です。これまた、いずれも季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し縮小して+0.4%を示し、また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+0.6%でした。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率についても+1.6%と、先月統計の+2.1%から大きく縮小しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じく前月の+2.1%から+1.6%に縮小しました。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の全国消費者物価0.4%上昇 上昇率は縮小
総務省が24日発表した3月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合指数が101.9と前年同月比0.4%上昇した。QUICKがまとめた市場予想の中央値も0.4%上昇だった。39カ月連続の上昇だが、新型コロナウイルス感染症の影響で上昇率は2月(0.6%)より小さかった。
アイスクリームやポテトチップスといった菓子類など食料関連の価格上昇が全体を押し上げた。大手保険会社による火災・地震保険料や自動車保険料の引き上げも寄与した。インターネット接続料も2019年10月の消費税率引き上げ以降、上昇が続いている。
一方、新型コロナの流行は物価を押し下げている。訪日外国人数の減少により宿泊料が減少したほか、国産牛肉の需要も落ち込んだ。原油価格の下落が電気代や都市ガス代を押し下げた。今後の原油市場について総務省の担当者は「ガソリンなどの需要低迷が続いている」として先行きを注視すると述べた。
生鮮食品を除く総合では385品目が上昇した。下落は116品目、横ばいは22品目だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.9と前年同月比0.6%上昇した。生鮮食品を含む総合は101.9と0.4%上昇した。
同時に発表した19年度のCPIは、生鮮食品を除く総合が101.8となり、18年度に比べ0.6%上昇した。3年連続の上昇で外食や家庭用耐久財の上昇が寄与した。
同統計はこれまで、調査員が店舗に出向いて調査をしていた。ただ新型コロナウイルス感染症の影響で接触機会を減らす必要があるとして「電話調査など簡素な方法での調査も導入し始めている」(総務省)という。
3月の企業向けサービス価格、増税除き0.2%下落 6年10カ月ぶりマイナス
日銀が24日発表した3月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.8と、前年同月比で1.6%上昇した。伸び率は2月(2.1%)から縮小した。消費税率引き上げの影響を除くと0.2%の下落と、2013年5月以来6年10カ月ぶりに前年同月を下回った。
新型コロナウイルスの感染拡大による訪日客需要の落ち込みなどで、宿泊サービス価格の下落が続いた。テレビ広告の下げも響いた。
2019年度の企業向けサービス価格指数は103.8と、前年比1.4%上昇だった。増税の影響を除くと、前年に比べ0.5%の上昇にとどまった。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。

やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+0.4%でしたので、ジャストミートしたといえます。ヘッドラインCPIの上昇率が+0.6%であったのに対して、生鮮食品を除くコアCPI上昇率が+0.4%、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率が+0.6%ですから、広く報じられているように、石油価格の下落の寄与が大きいと考えるべきです。石油価格の下落は、一般に、我が国のような非産油国かつ大量消費国においては交易条件の改善から所得移転がプラスとなりますが、今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う大幅な石油価格低下には別の面がいくつかあり、特に注意すべきは物価面を通じたデフレ効果と資産価格の低下を通じた金融不安低化です。後者の方は、石油先物が資産であるという点が重要で、その資産価格が低下するわけですので、石油先物などを資産として保有している金融機関が欠損を出して自己資本不足に陥ったりする可能性があります。ただ、本日公表の物価統計との関連では、石油価格の大幅下落によるデフレ効果の方に注目すると、日経新聞の「先進国にデフレの影 消費者物価上昇、5年ぶり低水準」と題する記事では、「総じてみれば『蒸発』ともいえる需要の急速な縮小が物価を押し下げている」と報じています。もっとも、今回のCOVID-19ショックでは、目先の短期には需要サイドから価格が下落する可能性が高い一方で、中長期的には生産活動が大きく低下すると仮定すれば、供給サイドから物価押上げ圧力が強まる可能性も否定できません。

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次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは上の通りです。ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。ということで、引用した記事にもある通り、消費税を除く企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、今年2020年に入ってから1月+0.6%と決して小さくはなかったんですが、2月+0.3%、3月▲0.2%と大きく落ち込みました。サービス物価はSPPIはもちろん、CPIのコンポーネントでも、人手不足に起因して堅調と考えられていましたが、雇用がかなり怪しくなり始めた印象もありますし、宿泊サービスのように需要が「蒸発」すれば、需給ギャップに従って価格は弱含むのが当然です。3月統計のSPPIのコンポーネントについて前年比寄与度前月差で見て、宿泊サービスをはじめとする諸サービス、あるいは、広告といった景気に敏感な大分類が、石油価格の下落の影響を受けた運輸・郵便などとともに、大きなマイナス寄与を示しています。

繰り返しになりますが、取りあえずの目先の短期では、火曜日4月21日付けで食料危機が日本で起こる可能性は決して高くないと、このブログでも書きましたし、私はCOVID-19ショックは短期的にデフレ要因だと考えている一方で、ワクチン開発などが進まず、生産や流通が停滞したままの現在の状況が長引けば、供給サイドから経済的な欠乏や価格の上昇が生じる可能性は否定できません。否定できないながら、私は慎重な楽観主義 cautious optimism に立っていたりします。

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2020年4月23日 (木)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大により派遣スタッフ時給が大きく低下!!!

来週火曜日4月28日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる3月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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アルバイト・パートの時給の方は従来のトレンドから外れているわけではないんですが、派遣スタッフの方は大きく低下に転じています。すなわち、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は+3%超の伸びで引き続き堅調に推移しています。詳細に見ると、三大都市圏の3月度平均時給は前年同月より+3.6%、+38円増加の1,082円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+44円、増減率+4.1%)、「製造・物流・清掃系」(+42円、+4.0%)、「専門職系」(+34円、+2.9%)、「フード系」(+29円、+2.9%)など全職種で前年同月比プラスとなり、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2019年7月統計以降マイナスを続けており、今年に入ってから前年同月比で2月▲3.8%減、3月▲3.0%減と、下げ足を速めています。職種別では、「クリエイティブ系」(前年同月比増減額+55円、増減率+3.2%)、「医療介護・教育系」(+40円、+2.8%)、「オフィスワーク系」(+18円、+1.2%)の3職種がプラスとなった一方で、「営業・販売・サービス系」(▲43円、▲3.0%)と「IT・技術系」(▲18円、▲0.9%)がマイナスとなっています。また、地域別でも、関東・東海・関西ともすべてマイナスを記録しています。アルバイト・パートと派遣スタッフで時給の動向が大きな違いが生じたのですが、2008~09年のリーマン・ショック後の雇用動向を見た経験からも、非正規雇用の労働市場はかなり悪化が進む可能性があると覚悟すべきです。

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2020年4月22日 (水)

3月の生産予測調査ではアニマルスピリッツ指標が大幅低下!!!

一昨日の4月20日に、経済産業省の経済解析室ニュースにてアニマルスピリッツ指標が取り上げられています。3月初旬に調査した3月と4月の生産計画の状況と3月初旬段階での企業のマインドについてリポートしています。軽く予想されることながら、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大により、かなり弱気な結果となっています。

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上のグラフは、経済産業省のサイトからアニマルスピリッツ指標(DI)のグラフと強気と弱気の比率の変化のグラフを引用して結合させています。アニマルスピリッツ指標は鉱工業生産指数(IIP)のコンポーネントのひとつである製造工業生産予測調査の生産計画について、各社品目ごとに生産計画を上方修正した数と下方修正した数を比較して、その比率の差分を計算した結果をDIで示しています。上のグラフのうちの上のパネルの吹出しに見られるように、経験的に▲5を下回ると景気後退の確率が高くなるとされています。私のこのブログでは景気動向指数などから2018年10月を景気の山と仮置していますが、ほぼ似通った結果が示されているような気がします。3月の試算結果は▲18.2となっています。加えて、強気と弱気の比率も3月から大きく弱気に振れているのが下のパネルから見て取れます。ただし、今年2020年3月の結果はリーマン証券が破綻した2008年9月の結果にはまだ達していませんが、先行き、4月や5月については現在のコロナウィルス・ショックはリーマン・ショックを上回る負のインパクトを持っている可能性が十分あると考えるべきです。現在の段階はまだ中間報告に過ぎないと考えるエコノミストは私だけではないと思います。

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2020年4月21日 (火)

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で経済的な欠乏は生じるか?

かなり旧聞に属するトピックですが、今月4月7日付けで国連食糧農業機関(FAO)から Coronavirus disease 2019 (COVID-19) - Addressing the impacts of COVID-19 in food crises と題して、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により食料危機が生じる可能性を指摘していたところ、私は先進国では影響少ないと考えていましたが、我が国でも先週4月16日にキャノングローバル戦略研究所から「新型コロナウイルスで食料危機が起きるのか?」と題するコラムが明らかにされています。このコラムをよく読めば、内容としては私も大いに合意するところなんですが、タイトルだけを見れば、やや驚く向きがあるかもしれません。といったような観点も含めて、簡単に取り上げておきたいと思います。なお、FAOのリポートはpdfでもアップされています。

COVID-19による何らかの経済的欠乏の可能性については、かなり早くから議論されており、我が国でも典型的にはマスクの売切れ続出などを国民が幅広く経験しているところかと思います。例えば、ガルブレイス教授のコラム "What the Government Needs to Do Next" なんかでも、"A shortage economy may arrive anyway" などと、経済的欠乏が論じられていますが、それは生産ではなくむしろ、流通や需要サイドの買いだめに起因して、財が欠乏する可能性です。また、キャノングローバル戦略研究所のコラムでは、食料安全保障として「①食料を買う資力があるかどうかと、②食料を現実に入手できるかどうか」の要素を論じていて、「日本で生じる可能性が高い食料危機とは、東日本大震災で起こったように、お金があっても、物流が途絶して食料が手に入らないという事態である。」と結論しています。私もこの結論には大いに賛成ですが、他方で、食料については安全保障からの観点かどうかはともかく、①生産、②流通ないしサプライチェーン、の供給サイドとともに、③買いだめ、というか、過剰消費、という需要サイドの問題もあるんだろうと考えます。FAOのリポートでは、2014年の西アフリカでのエボラ出血熱の事例が引き合いに出されていますが、私は違和感を覚えます。ただし、今回のCOVID-19の場合、格差の問題への留意が必要であり、international な国の間の格差、すなわち、先進国には食料危機が起こらない一方で、低所得の途上国には食料が不足するという事態はあり得ますし、intranational な国の中の格差、すなわち、日本のように平均的な所得が高い先進国の中でも、貧困層へ食料が行き渡らない、という可能性も否定できません。その意味で、ガルブレイス教授のコラムが指摘しているように "The solution is to limit sales per customer" という選択肢はあるかもしれません。また、食料に関しては、世界各国で食料輸出を制限する動きがあることは確かですが、マスク供給の中国依存と同じで、コメの減反をここまで進めたんですから、食料の国内生産キャパシティに大きな問題があるとは思えません。国際的に価格競争力がないだけで、量的な問題ではないと考えるべきです。ですから、短期的に、まさに、マスクで観察されたとおり、価格が急上昇して低所得層が購入できないリスクの方が大きいような気がします。結論として、繰り返しになりますが、私は日本で食料危機が起こる可能性は決して高くない、と考えています。

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2020年4月20日 (月)

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により輸出入が落ち込む3月の貿易統計!!!

本日、財務省から3月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲11.7%減の6兆3579億円、輸入額も▲5.0%減の6兆3529億円、差引き貿易収支は+49億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短かに引用すると以下の通りです。

3月の貿易統計、輸出は11.7%減 米向け輸出は震災直後以来の減少率
財務省が20日発表した3月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額は前年同月比11.7%減の6兆3579億円だった。16カ月連続の減少で、米国向け自動車や中国向け自動車部品の輸出などが低調だった。輸入額は5.0%減の6兆3529億円だった。11カ月連続の減少で、オーストラリアからの石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入などが減った。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は49億円の黒字だった。黒字は2カ月連続。
対米国の輸出額は16.5%減の1兆1821億円だった。減少率は東日本大震災直後にあたる2011年4月以来の大きさ。新型コロナウイルス感染症の世界的なまん延の影響で、自動車や航空機向けエンジンの輸出が落ち込んだ。一方、米国からの輸入額は1.3%増の7453億円で、貿易収支は4368億円の黒字だった。黒字幅の縮小は3カ月ぶり。
対中国の輸出額は8.7%減の1兆1906億円だった。半導体製造装置などが振るわなかった。輸入額は4.5%減の1兆4318億円で、コンピュータ関連部品や衣類などが不調だった。貿易収支は2412億円の赤字となった。
対欧州連合(EU)の貿易収支は373億円の赤字だった。赤字は9カ月連続。
同時に発表した2019年度の貿易収支は1兆2912億円の赤字で、2年連続の赤字となった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、先週4月14日に国際通貨基金(IMF)から公表された「世界経済見通し」 World Economic Outlook, April 2020 においては、財貨サービスの世界貿易数量 World Trade Volume (goods and services) は今年2020年には前年比▲11%の大きな落ち込みを見せると予想されています。石油価格や一次産品価格などは明らかに前年比マイナスでしょうから数量だけでなく価格も落ちると考えるべきで、数量に価格をかけ合わせた金額ベースでは、さらに大きな減少を記録することが軽く予想されます。ですから、我が国貿易も今日発表の3月統計あたりから大きく落ち込むと予想されていましたが、まずは予想の範囲内であったと私は受け止めています。例えば、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は小幅の黒字+4024億円、ということでしたから、まあ、実績の+49億円は予想レンジ下限の+452億円を下回っているとはいえ、大きなサプライズではなかったと考えるべきです。冒頭に書いたように、季節調整していない原系列の統計による前年同月比ながら輸出が▲11.7%減に対して輸入は▲5.0%減ですから、極めて大雑把に考えると、為替などの価格要因を無視すれば、所得要因では我が国経済の落ち込みは相対的に見ると世界全体ほど大きくはなかった、ということになります。我が国の輸入をやや詳しく品目別に見ると、鉱物性燃料こそ価格の下落で▲11.6%減を記録したものの、食料品+0.5%増、原料品+1.9%増などと増加を示している一方で、一般機械が▲9.6%減、輸送用機器が▲8.3%減となっています。国内需要に支えられた食料品などが増加した一方で、輸出の元になるカテゴリーが減少を示していると理解すべきです。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。OECD/CLIはCOVID-19というイレギュラーな要因発生のために、3月時点で1月統計の公表が見送られ、逆に、というか、何というか、4月公表時には3月統計まで明らかにされています。OECD/CLIは1か月のリードを取っていますので、直近の3月データは上のグラフでは4月にプロットされており、真ん中のパネルのOECD加盟国全体が典型なんですが、直近データで大きく落ち込んでいるのが見て取れます。明らかに、COVID-19の影響であると私は受け止めています。そして、我が国輸出から見て、世界全体では季節調整していない原系列の輸出の前年同月比は▲11.%減なんですが、地域別にビミョーな差が出ています。すなわち、アジア向け輸出が▲9.4%減と平均以下にとどまっているのに対して、北米向けは▲16.5%減と、米国が世界最大のCOVID-19の感染国であるという事実を裏付けている気もします。また、西欧は▲13.2%減と、これも平均をやや上回る減少を記録しています。このあたりの我が国輸出統計とCOVID-19の感染拡大の影響は、かなり整合性あると私は考えています。

少なくとも、足元の4~6月期の四半期で見て、世界経済が劇的なV字回復を見せると考えているエコノミストは少数派ではなかろうかと私は考えています。他方で、現在のような外出自粛を続けるのは、私自身は自信がなく、実際に解決されるとすれば、東大病院の前田恵理子医師がFacebookに投稿したように、「収束に必要な条件は、ワクチンができて集団接種が進む、の1択」なのかもしれないと思い始めています。

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2020年4月19日 (日)

東京から京都に引っ越しても新型コロナウィルス(COVID-19)からは逃れられず!!!

東京から京都に引越してきて、3週間近くが経過しました。先週末の時点では、東京に緊急事態洗顔が出て、京都はまだだったものですから、東京から京都に脱出したと思っていたんですが、京都もやっぱり、というか、日本全国に非常事態宣言が出て、結局、新型コロナウィルス(COVID-19)からは逃れられなかったのかもしれません。でも、東京から京都に引越して3週間近くが経過して発症していないということは、少なくとも、東京から京都にコロナウィルスの感染症を持ち込んだわけではない、ということが証明されたような気もします。まあ、だから何だという気も同時にします。

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2020年4月18日 (土)

京都に引越して最初の読書感想文はわずかに2冊!!!

久し振りの読書感想文ですが、新刊に近い読書はわずかに2冊です。今までの私の読書はほぼほぼ東京都という財政基盤が盤石な地方公共団体に支えられていたのだということを実感しました。先週今週と購読している朝日新聞の書評欄を参考に、お近くの京都市図書館に予約を入れようと試みましたが、まだ所蔵されていなかったりして、やや驚きでした。どうでもいいことながら、私がよく活用していた城北地区の図書館であれば、練馬区立図書館は予約でいっぱい、板橋区立図書館と来た区立図書館はかなり借りやすく、足立区立図書館は、おそらく、都内の公立図書館の中でももっとも借りやすい図書館のひとつではないか、という気がしていました。

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まず、加藤政洋『酒場の京都学』(ミネルヴァ書房) です。著者は、立命館大学の研究者であり、専門は人文地理学と聞き及んでいます。大雑把に、タイトル通りの内容で、私が年に何冊か読む京都本といえます。でも、現在の21世紀の京都の酒場の案内ではなく、むしろ、明治末期から対象・昭和初期を中心とする時代背景を持っています。そして、酒場で酒を飲むのは現在のようなサラリーマンではなく、三高の学生はんが想定されています。その中心人物は織田作之助だったりします。実は、私も40年ほど前はその三高の後身である京都大学の学生だったりしたんですが、本書が主たる対象としている時代背景と比較すると、よくも悪くも格差是正が進んでおり、私の学生時代には考えられないような「豪遊」を学生がしているような気がします。父親が労働者階級だったせいもあって、私の学生時代の酒場での活動はもっと慎ましやかでした。また、京都南部出身であり、現在も東京から引越して出身地とよく似たところに住まいしている私の興味を引いたのは、京都の酒場では灘の生一本がよく飲まれていて、決して伏見の地場のお酒ではなかった、という点です。あくまで一般的な理解ですが、関西で酒作りが盛んな本場は灘と伏見であり、灘は剣菱などに代表されるように辛口、他方、伏見はやや甘口の酒を特徴としています。本書で「豪遊」が伝えられている三高の学生はんは東京に帰省していたりしますので、やや京都の地場の学生とは嗜好が異なっているのかもしれません。

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次に、そして、最後に、柿埜真吾『ミルトン・フリードマンの日本経済論』(PHP新書) です。著者は、学習院大学大学院博士後期課程に所属する大学院生であり、新書ながら、かなり忠実に学術書の書き方に則った図書となっています。本書では、冒頭部分でごく簡単にフリードマン教授の人となりや業績をかいつまんで紹介した後、日本経済に対するフリードマン教授の分析や日本国内における行政や日銀の対応などをなかなか克明に跡付けています。フリードマン教授はいうまでもなく市場重視のマネタリストであり、ハイエクなどとの類似性を持って、やや日本では重視されていない気もしますが、特に、現在の黒田総裁に交代してからの日銀ではマネタリスト理論を背景とする金融政策が実行されており、現在でも在野のエコノミストでリフレ派とされる人達はマネタリスト的な政策への理解が深いといえます。私は左派リベラルですので、それほどフリードマン教授に対する評価は高くありませんが、本書でも適確に指摘されている通り、1980年代後半から90年代にかけて、我が国の通商政策に米国が介入を試みた際に、リビジョニストと呼ばれる人々が「日本特所論」を声高に叫んだ折には、フリードマン教授が強く反論した点は記憶していたりします。加えて、フリードマン教授の大きな業績は、分析対象となる経済モデルに関してキチンと定量的な把握を試みた点です。何となくの印象論で議論を進めるのではなく、今風の用語を用いれば、evidence based policy making の観点を重視していました。この定量分析重視は今でも学界に強く受け継がれているといえます。

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2020年4月17日 (金)

マクロミルによる「新型コロナウイルスが消費者心理に及ぼす影響」に関する調査結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、3日前の4月14日、マクロミルから「新型コロナウイルスが消費者心理に及ぼす影響」に関して定点観測調査した結果が明らかにされています。まず、マクロミルのサイトからトピックスを4点引用すると以下の通りです。

トピックス
  1. 注目の話題やニュースは「新型コロナ」に集中
    3月4週目に「オリンピック延期決定」、4月1週目に「志村けんさん死亡」も
  2. 休校要請で高まった「不安」と「憂鬱」、志村けんさん死去では「悲しかった」が急上昇
  3. 景況感の低下、過去2度の消費増税時よりもさらに低下
  4. 1カ月先の消費予想は、2020年2月3週以降、連続して低下

かなり適確に取りまとめられている気もします。わずかに1000人と少ないサンプルですが、国勢調査の人口動態の比率に基づき割付けを行っているということで、それなりの信頼性はあると考えてよさそうです。マクロミルのサイトから、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、マクロミルのサイトから、生活者の気分の変化を昨年2019年12月から時系列でプロットしたグラフを引用しています。見れば判ると思いますが、ポジな気分を暖色系で、ネガな気分を寒色系で、それぞれ表しています。年末からお正月にかけて、ポジな感情を代表する項目が上昇した後、3月いっぱいにかけてジワジワと下降しているのが見て取れます。逆に、2020年の年頭からジワジワと上昇していたネガな感情の項目が4月第1週になって急上昇しています。ほぼほぼ新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大の影響ではなかろうかと考えてよさそうです。

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続いて、上のグラフは、マクロミルのサイトから、現況と先行きのそれぞれの景況感DIをプロットしたグラフを引用しています。コチラは2013年からデータを追っており、昨年2019年10月はもとより、その前の2014年4月の消費税率引上げもスコープに入っていますが、今回のCOVID-19によるマインド低下がはるかに大きいことが読み取れます。いつも、私が主張しているところですが、消費はマインドと所得に依存します。COVID-19はマインドと所得の両方に大きなダメージを及ぼしています。

もちろん、COVID-19の影響は我が国にとどまるものではなく、例えば、米国の世論調査機関であるピューリサーチ・センターが実施した調査結果でも、伝染性の疾病の拡散が国際的な脅威としてテロや核兵器、あるいは、サイバー攻撃を上回るとの結果が示されています。Americans See Spread of Disease as Top International Threat, Along With Terrorism, Nuclear Weapons, Cyberattacks との調査結果を取りまとめたピューリサーチ・センターのサイトから Americans see many threats, but fears about the spread of infectious diseases top the list と題するグラフを引用すると以下の通りです。

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2020年4月16日 (木)

今夏のボーナスは新型コロナウィルスの影響で大幅減か?

例年のシンクタンク4社の足並みがそろわず、みずほ総研が脱落したんですが、日本総研と第一生命経済研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの3社からは2020年夏季ボーナスの予想が明らかにされています。昨日のブログで、国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」World Economic Outlook, April 2020 で今年2020年の成長率が大きくダウンし、世界経済は1930年代の大不況以来の落ち込みと見込まれているリポートを取り上げましたが、今夏のボーナスも大きく減少しそうです。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。可能な範囲で、消費との関係を中心に取り上げています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想、と聞き及んでおり、ベースが違っている可能性があります。注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
国家公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研35.7万円
(▲6.4%)
68.5万円
(+0.7%)
今夏の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比▲6.4%と、リーマンショック以来の大幅なマイナスとなる見込み。
第一生命経済研(▲4.0%)n.a.今夏のボーナスは大企業と中小企業で差が生じる可能性が高く、中小ではより厳しい結果が予想される。大企業においても夏のボーナスは減少が予想されるが、これは主に、新型コロナウイルス問題が発生する前に既に生じていた 19年の企業業績の悪化を反映したものである。輸出が低迷していたところに消費増税による悪影響が加わったことで、年後半にかけて企業業績は悪化したが、こうした業績低迷が大企業のボーナス減に繋がるだろう。な
三菱UFJリサーチ&コンサルティング35.2万円
(▲7.6%)
68.8万円
(+1.3%)
2020年夏の民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)のボーナスは、前年比▲7.6%と新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きく減少すると予測する。大企業と比較して財務体質が脆弱な中小企業や、自粛要請や緊急事態宣言により需要が消失する一部の非製造業においてボーナスの減額や、支給を取りやめる動きが出てくるとみられる。

ということで、上のテーブルを見ても明らかな通り、夏季ボーナスは新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で大きく減少すると見込まれています。1人当たり支給額が減少するとともに、支給対象労働者数も減少し、両者のかけ算で得られる支給総額も大きく減少します。もはや、何も私からコメントする必要もないと思います。下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。

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2020年4月15日 (水)

現下のコロナウィルス不況は1930年代の大恐慌に匹敵するのか?

今週末に予定されているIMF世銀の春季総会を前に、昨日4月14日に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」 World Economic Outlook, April 2020 が公表されています。2008年秋のリーマン証券破綻に端を発するサブプライム・バブル崩壊後の景気後退には、Great Recession と名付けたIMFですが、今回の新型コロナウィルス(COVID-19)の影響に起因する景気後退は Great Lockdown と呼んでいます。「大封鎖」とでも邦訳するんでしょうか。見通しのヘッドラインとなる世界経済の成長率は、昨年2019年の実績が+2.9%と、そもそもやや物足りなかったんですが、今年2020年は大きく落ち込んで▲3.0%とマイナス成長が見込まれている一方で、来年2021年はそのリバウンドもあって+5.8%成長が予測されています。IMFのブログサイトに基づきつつ、いくつかグラフやテーブルなどを引用して簡単に見ておきたいと思います。

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まず、IMFのブログサイトから成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。ご覧の通りで、先進国は軒並み2020年はないマス成長と見込まれており、日本の▲5.2%というのは、昨年10月から消費税率を引き上げたにしては、先進国の中でもっともマイナス幅が小さく、その意味で、日本は経済パフォーマンスがいい、とすら表現できそうな気がします。もっとも、その分、2021年のリバウンドの成長率は低くなっています。新興国・途上国もマイナス成長の国が並んでいますが、インドや中国で何とか+1%成長を維持しているといったところです。アジアではASEAN5か国ですらマイナス成長です。来年2021年は部分的にリバウンドが始まって、世界経済はプラス成長に回帰しますが、新興国と途上国が回復の中心で、先進国では2020年▲6.1%のマイナス成長の後、2021年のリバウンドも+4.5%にとどまります。そして、IMFのブログサイトのタイトルが The Great Lockdown: Worst Economic Downturn Since the Great Depression となっているように、今回の景気後退は1930年代の大不況以来の落ち込みであり、リーマン証券破綻後の2009年の景気後退を上回る、と指摘しています。例えば、IMFのブログサイトから2つのグラフ、すなわち、2020年から2021年にかけ世界のGDPの損失は合計約9兆ドルに達するとするグラフと先進国と新興国・途上国に分け、さらに、米日欧と中国・インドの国別で2009年の成長率及び2020年の成長率見通しとしてプロットしたグラフを引用して結合すると下の通りです。

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加えて、「次に何が起こるかの不確実性が極めて大きい」 "tremendous uncertainty around what comes next" との指摘は当然で、今年2020年後半には現在のパンデミックが収束して、徐々に経済活動の正常化が始まるというベースラインに対して、「今年後半もパンデミックが後退せず、感染拡大を防止するための封じ込め期間が長期化し、金融環境が悪化し、グローバル・サプライチェーンがさらに途絶する可能性もある」"The pandemic may not recede in the second half of this year, leading to longer durations of containment, worsening financial conditions, and further breakdowns of global supply chains." との懸念を表明し、そのようなケースでは、今年2020年が▲3%ポイント、来年2021年は▲8%ポイントの成長率下振れすら生じる可能性があるとの試算結果を明らかにしています。このため、政府としても「例外的な政策行動」"exceptional policy actions" を取る必要があるとし、経済政策に注目すると、「多くの政策当局者が大規模、タイムリーかつ対象を明確にした財政、通貨、金融政策をすでに実行しており、それらには債務保証、流動性対策、債務の支払猶予、失業保険の拡充、社会給付の拡充、減税などが含まれており、これらは家計や企業の命綱である」"The large, timely, and targeted, fiscal, monetary, and financial policies already taken by many policymakers-including credit guarantees, liquidity facilities, loan forbearance, expanded unemployment insurance, enhanced benefits, and tax relief-have been lifelines to households and businesses." と指摘しています。

この週末に何が話し合われて、どのような結論を得るんでしょうか。また、それらが日本にどのように応用されるんでしょうか。私は今回ばかりは何とも理解がはかどりません。

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2020年4月14日 (火)

日本経済研究センター(JCER)による金融ストレス指数の動向やいかに?

新型コロナウィルスの感染拡大防止のために緊急事態宣言が出てから1周間が経過しましたが、日本経済研究センターでは4月8日からJCER金融ストレス指数を公表しています。この指標は、金融のシステミックリスクを捉えるための指標として開発されているそうですが、最近時点の昨日4月13日には以下のグラフのようになっています。

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この指数は、(1)株式市場(2)マネー・マーケット(3)債券市場(4)金融仲介(銀行セクター)(5)外国為替市場、の5つのサブ・マーケットから、それぞれ3つの個別指標を選択し構築しているということで、4月8日の初回公表時の日本経済研究センターのサイトに指数の推計に用いられている基礎データの一覧が明らかにされています。基本的に、日次で取れるデータですから毎日計算されているわけで、時折、サイトで明らかにされています。一種の early warning index なんだろうと思います。でも、我が国で本格的なシステミックリスクが顕在化したことは近年ありませんから、まあ、参考程度のお話なのかもしれません。
昨日取り上げたように、現在の新型コロナウィルス(COVID-19)による経済への影響は、成長率へのショックとしては2008年9月のリーマン証券の破綻のころに匹敵するマグニチュードではないかと多くのエコノミストは考えていますが、金融市場のシステミックリスクに関しては、誰も考えたくもない、といったところでしょうが、現時点ではまだリーマン証券破綻の時の危険度までは上昇していないようです。しかし、この先については何ともいえません。

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2020年4月13日 (月)

緊急事態宣言後の日本経済見通しやいかに?

先週火曜日の4月7日に7都府県に対して緊急事態宣言が出ましたが、ほぼほぼ1周間が経過し、いくつかのシンクタンクから緊急事態宣言後の経済見通し改訂版が明らかにされています。以下のテーブルに、ごくごく簡単に取りまとめておきたいと思います。なお、成長率予想は、当然、今年度2020年度の年率成長率で示してあり、ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。

機関名成長率予想ヘッドライン
大和総研▲4.5%緊急事態が宣言された地域の「外食・宿泊」への支出は9割減少し、「交通」と「娯楽・レジャー・文化」への支出は半減すると想定した。「交通」と「娯楽・レジャー・文化」には自転車やテレビ、パソコン、書籍類、玩具・ゲームといった外出自粛の影響を受けにくい(支出が増加する可能性もある)品目が含まれるため、「外食・宿泊」よりも緩やかな減少を見込んでいる。こうして得られた消費抑制額から、すでに行われている外出自粛等の影響分を控除した。
その結果、緊急事態宣言による追加的な消費抑制額は1カ月間で1.4兆円程度(東京都では0.4兆円程度)と試算される。
ニッセイ基礎研▲4.1%実質GDPの急速な落ち込みを受けて、失業率は2019年10-12月期の2.4%から2020年10-12月期には3.9%まで上昇し、失業者数は2019年10-12月期の159万人(季節調整値)から2020年10-12月期には272万人へと100万人以上増加すると予想する。
第一生命経済研▲4.5%20年7-9月期に景気は底打ちし、成長率もプラスに転じるとみている(新型コロナウイルスの問題が6-7月頃に概ね落ち着くとの前提)。もっとも、感染の再拡大リスクを考慮すれば、自粛解除等の経済の正常化はある程度の時間をかけて段階的に行わざるをえないため、景気のV字回復は難しい。7-9月期以降の成長率は比較的高いものとなるが、それでも20年前半の大幅な落ち込みと比べると戻りは緩やかなものにとどまるだろう。
三菱総研▲3.9%20年度の実質GDP成長率は、新型コロナウイルスによる経済活動抑制が20年6月末にピークアウトする場合には前年度比▲1.6%(前回は同▲0.5%)、20年12月末にピークアウトする場合には同▲3.9%(前回は同▲1.7%)と、いずれも2年度連続でのマイナス成長を予想する。特に20年12月末にピークアウトする場合は、08年度(世界金融危機時)の同▲3.4%を上回るマイナス幅となる。また、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大(オーバーシュート)や緊急事態宣言の対象地域が拡大した場合、内外経済が一段と下振れ、経済の停滞が長期化するリスクも想定しておく必要がある。

私はこういった方面にはまったく専門性なく、何ともいえませんが、2020年度の成長率に大きな下押し圧力が加わるのは当然で、おおむね▲4%前後のマイナス成長が見込まれています。特に、興味深かったのはニッセイ基礎研のリポートで、成長率以外にも雇用の悪化などが数量的に示されており、ヘッドライン欄にも引用した通り、失業者数が100万人超増加して失業率が4%近くまで上昇し、2020年度の雇用者報酬は前年比▲1.6%と8年振りの減少となり、加えて、物価についても、原油価格急落の影響などから、コア消費者物価の上昇率が2020年度には前年度比▲0.2%とマイナスに落ち込むと指摘しています。
下のグラフもニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2020年4月12日 (日)

新型コロナウィルスと発達した低気圧を避けて家にこもる!!!

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今日は、関西方面では朝から雨になり、特に、紀伊半島などの太平洋岸では1時間に50ミリを超えるような非常に激しい雨の降るおそれが指摘されています。要するに、新型コロナウィルスと低気圧を避けて在宅しています。買い物で外に出たいとは考えていますが、人との接触はほとんどなさそうな気もします。なお、上の画像は、ウェザーニュースのサイトから引用しています。
その昔10年ほど前に長崎にいたころ、本州の西の端の長崎から1日から1日半くらいの遅れで東京のお天気が変わると感じたことがありますが、関西からは半日くらいなのか、という気がしています。

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2020年4月11日 (土)

プールで泳ぎたし、新型コロナウィルスは怖し、という本日4月11日の雑感!!!

今日の土曜日はほとんど外出しませんでした。
私の新しい住まいのある京都では緊急事態宣言は出ていませんが、まあ、府知事や京都市長は緊急事態に準ずるような事態であることを記者会見で何度も繰り返していますので、そういった方面の専門外である私は権威筋の要請を受け入れているわけです。ただ、3月後半の引越し準備から今にに至るまで、かなりの運動不足を感じていることも確かで、そろそろ、プールで泳ぎたいと考えないでもありません。実際に、やや体重も増えていたりします。
しかし、教員たる私は、まあ、公務員のころもそうだったんですが、社会の模範たるにふさわしくないと自覚しているとはいえ、緊張感ない行動を取ると学生や院生に対して示しがつかない、というのもあります。例えば、もう四半世紀、25以上も昔のお話ですが、私が1990年代のバブル経済崩壊直後に在チリ大使館の経済アタッシェをしていた時、隣国のペルーではフジモリ政権下でセンデロ・ルミノッソという反政府ゲリラが横行し、ペルーには渡航自粛だか、何だかが出ていたりしました。有名なマチュ・ピチュなどの遺跡を見に、私はペルーに行きたくてしょうがなかったんですが、渡航自粛だか、何だかを出している本家本元の外務省の大使館、それも隣国の大使館勤務の書記官が、ノコノコペルーに出かけて何かあれば、まったく示しがつかない、といわれた記憶があります。
学生・院生に新型コロナウィルスに感染しないように、とか、外国人院生などには "Stay healthy!" なんぞと声をかけている教員としては、気をつけたいと思います。しかも、60歳を過ぎた分別盛りで、年齢にしては新任教員だったりしますので、いっそう気をつけたいと思います。でも、今日も、ネットを通じた遠隔授業のためにヘッドセットを買いに行っても売り切れだらけで、どうもなりません。もちろん、花粉症の後期に入ってマスクも欲しいんですが、我が家のような高齢夫婦だけの一家では、まったく入手の手立てすら考えつきません。個人としての立場と教員としての立場と、見苦しくも悩んでいます。

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2020年4月10日 (金)

新型コロナウィルスの影響による原油価格低下で企業物価指数(PPI)上昇率はマイナスに落ち込む!!!

本日、日銀から3月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.4%の下落と、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響による原油価格の大幅下落などから、とうとう、ヘッドラインでもマイナスに転じてしまいました。また、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲2.0%の下落と試算されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の企業物価指数、前年比0.4%下落 新型コロナが下押しに
日銀が10日発表した3月の企業物価指数(2015年平均=100)は101.1と、前年同月比で0.4%下落した。下落は5カ月ぶり。新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済活動の停滞や産油国の増産で3月の原油価格が大きく下落し、石油・石炭製品や化学製品で価格が下落した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年同月比で5.1%下落した。下落は11カ月連続で、前月比も2.3%下落した。輸入物価は前年同月比7.7%下落し、前月比でも4.7%下落した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。19年10月の消費税増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は前年同月比で2.0%、前月比で0.9%下落し、99.5だった。増税の影響を除いた企業物価指数が100を下回るのは17年11月(99.8)以来だ。水準としては17年10月(99.4)以来2年5カ月ぶりの低さだった。
品目別に見ると3月の原油価格下落を背景に石油・石炭製品や化学製品で下落が目立ったほか、新型コロナの拡大による市況の悪化で非鉄金属やスクラップ類でも価格の下落が大きかった。新型コロナの感染拡大は4月に入っても収束が見通せない状況で、企業が設定する価格には今後も下押し圧力がかかりそうだ。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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引用した記事にもあるように、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響に加えて、産油国の足並みがそろわずに、国際商品市況で石油価格が大きく下げており、例えば、国内物価のコンポーネントのうち、石油・石炭製品が前年同月比で▲10.3%の下落を示しており、加えて、中国経済の落ち込みを反映して、非鉄金属も▲7.6%の下落を記録しています。輸入物価のコンポーネントである石油・石炭・天然ガスに至っては、円建てで▲14.9%のダウンとなり、輸入物価の平均でも▲7.7%の下落を記録しています。これも、COVID-19の影響が大きいんですが、世界的な経済停滞の影響で輸出物価も▲5.1%下落とマイナス幅を拡大しています。従来からこのブログで私が主張している通り、我が国の物価は日銀の金融政策よりも、石油価格によって大きく振れますので、COVID-19の影響により、ここまで石油やエネルギー価格が低下したんですから、我が国の国内物価も総崩れの観があります。

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2020年4月 9日 (木)

日銀「さくらリポート」から新型コロナウィルスの影響について考える!!!

日銀では支店長会議が開催され、本日午後、「さくらリポート」が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。各地域の景気の総括判断と前回との比較は下のテーブルの通りで、すべての地域で新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大の影響などにより景気判断が引き下げられており、「弱い動き」または「下押し圧力が強い状態」といった表現が取られています。

 【2020年1月判断】前回との比較【2020年4月判断】
北海道緩やかに拡大している新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、下押し圧力の強い状態にある
東北弱めの動きが広がっているものの、緩やかな回復を続けている新型コロナウイルス感染症の影響などから、このところ弱い動きとなっている
北陸引き続き拡大基調にあるが、その速度は一段と緩やかになっている新型コロナウイルス感染症の影響などから、弱めの動きとなっている
関東甲信越海外経済の減速や自然災害などの影響がみられるものの、基調としては緩やかに拡大している新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響により、このところ弱い動きとなっている
東海緩やかに拡大している新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、下押し圧力の強い状態にある
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、弱い動きとなっている
中国幾分ペースを鈍化させつつも、基調としては緩やかに拡大している新型コロナウイルス感染症などの影響から、このところ弱い動きとなっている
四国一部に弱めの動きがみられるものの、回復している新型コロナウイルス感染症の影響から、このところ弱めの動きとなっている
九州・沖縄緩やかに拡大している新型コロナウイルス感染症などの影響から個人消費や輸出・生産を中心にこのところ弱い動きとなっている

繰り返しになりますが、すべての地域で景気判断が前回1月時点から下方修正されています。リーマン証券が破綻したサブプライムバブル崩壊直後の2009年1月から約11年振りだと日経新聞のサイトで報じられています。今回のCOVID-19の感染拡大による経済への影響は、私には何とも測り難いところで、早期に終息すれば、逆に、V字回復の可能性もあるとすら考えていましたが、そういった楽観論はまったく影を潜めた気がします。現在では、非常事態宣言に基づいて、主として需要面の落ち込みが議論されていますが、長期化すれば供給サイドにも不安が出るのは避けられません。もちろん、14世紀に欧州で起きたペストの被害とは、医療技術の水準がまったく異なりますので、比較できませんが、それなりの経済社会の構造の変化をもたらす可能性は否定できません。
私の勤務する大学でも、ゴールデンウィーク明けまでは授業が休講になりましたから、唯一ガイダンスで新入学生に話をしたくらいで、ほとんど、学生や院生と対面して議論する機会はないんですが、やはり、経済学的には交易の利益が失われるとこのようになる、という見本のような気がします。そして、学生が懸念していたのは、マスクなんかが念頭にあるのか、供給を中国に頼り過ぎるリスクだったんですが、それではどのように対処すべきかといえば、国内生産に回帰するか、あるいは、より供給元を多様化するのか、という選択です。こういったマクロの問題に加えて、例えば、マイクロな個人間の格差の観点からは、高所得であれば感染リスクが小さい働き方ができて、感染しても高度医療が受けられるので救命の可能性も高くなるんではないか、と直感的に考えられるんですが、それでは各個人が高所得目指してより競争を激化させるのが正しいのか、それとも、低所得であっても感染リスク小さい働き方が選択できて、感染しても所得による差別が生じない医療を構築するのか、といった見方も必要です。長ったらしい名称ですが、新型インフルエンザ等対策特別措置法に関する事務を担当する国務大臣、という政府の責任者は経済財政担当大臣だったりしますし、経済へのネガティブな影響の最小化がCOVID-19の感染拡大防止の最大の目的のひとつであることはいうまでもありません。それだけに、大学の新入生にしても、経済学を学ぶ基本的な姿勢が問われるところです。

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2020年4月 8日 (水)

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響前の機械受注と影響後の景気ウォッチャーを見比べる!!!

本日、内閣府から2月の機械受注が、また、同じく内閣府から3月の景気ウォッチャーが、さらに、財務省から2月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+2.3%増の8,585億円と2か月連続の増加を示し、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲13.2ポイント低下の14.2を、先行き判断DIも▲5.8ポイント低下の18.8を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+3兆1688億円の黒字を計上しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

 

2月の機械受注、前月比2.3%増 市場予想2.7%減
内閣府が8日発表した2月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.3%増の8585億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は2.7%減だった。
うち製造業は1.7%減、非製造業は5.0%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は2.4%減だった。
内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いた。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
3月の街角景気、現状判断指数は2カ月連続悪化
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は14.2で、前の月に比べて13.2ポイント低下(悪化)した。悪化は2カ月連続。家計・企業・雇用の全項目で悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は18.8で、5.8ポイント低下した。低下は4カ月連続。家計・企業・雇用が悪化した。
内閣府は現状の基調判断を「新型コロナウイルス感染症の影響により、急速に厳しい状況となっている」から「新型コロナウイルス感染症の影響により、極めて厳しい状況にある」に変更した
2月の経常収支、3兆1688億円の黒字 68カ月連続黒字
財務省が8日発表した2月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は3兆1688億円の黒字だった。黒字は68カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3兆645億円の黒字だった。
貿易収支は1兆3666億円の黒字、第1次所得収支は2兆798億円の黒字だった。

 

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

 

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比▲2.6%減であり、予測レンジ上限は+1.5%増でしたから、実績の+2.9%は増はレンジ上限を突き抜けています。でも、ある意味では当然ながら、世間一般のエコノミストは新型コロナウィルス(COVID-19)の影響をとても早くに織り込みましたが、政府がイベント開催などへの自粛要請を出したのは2月26日でしたし、海外でのロックダウンなどにより経済が大きな停滞に入ったとみられるのは3月以降であることから、2月時点ではCOVID-19による影響はまだ出ていないのであろうと私は受け止めています。昨日内閣府から公表された景気動向指数と同じで、1月に続いて2月も2か月連続で上向いたとはいえ、この2月の機械受注統計は「過去の数字」でしかありません。3月統計を見ない限り、2月統計にコメントしても仕方ない気がします。

 

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続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。機械受注と同じで、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。もう、グラフの通りであり、2月から3月の供給サイドのマインドはCOVID-19の影響により大きく低下しました。今年2020年1月の現状判断DIは季節調整済の系列で41.9だったんですが、2月は▲14.5ポイント低下の27.4、さらに、3月は13.2ポイント低下の14.2を記録しています。特に落ち込みが大きいのは家計動向関連のうちの飲食であり、3月はとうとう0.7まで低下しています。ほぼほぼゼロとすらいえます。4月に入って昨日7日には東京をはじめとする7都府県に緊急事態宣言が出されましたし、5月のゴールデンウィークで終結するかどうかも定かではなく、少なくとも、4月のマインドはさらに落ちる可能性が高いと考えるべきです。私が常々主張しているように、消費などの需要はマインドと所得あるいは収入で決まるわけで、どちらもかなり大きな落ち込みを見せているのは、エコノミストでなくても理解できます。どのあたりでマインドが底を打つか、現時点では、私にはまったく見通せません。

 

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最後、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、2月単月で見ると、貿易黒字が大きく増加して、その分、経常収支黒字も膨らみました。今年の中華圏の春節は、もともと1月で収まる予定でしたが、COVID-19の影響で2月に入っても中国の生産体制が整わず、それだけ中国からの我が国の輸入が減少した結果です。まあ、何と申しましょうかで、マスクの輸入が減った分も入っていそうな気がします。いずれにせよ、機械受注と同じで、2月の統計は「過去の数字」です。

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2020年4月 7日 (火)

2か月連続で改善を示した2月の景気動向指数は激落ちの前の過去の統計!!!

本日、内閣府から2月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から+1.6ポイント上昇して92.1を、CI一致指数も前月から+0.6ポイント上昇して95.8を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、7か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の景気一致指数、0.6ポイント上昇 買いだめで小売販売額など増加
内閣府が7日発表した2月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.6ポイント上昇の95.8と、2カ月連続で上昇した。小売販売額の増加などが寄与した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を7カ月連続で「悪化」に据え置いた。08年6月から11カ月連続で「悪化」となって以来の長さ。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5項目が指数のプラスに寄与した。新型コロナウイルス感染症の影響によるマスクや除菌製品などの買いだめを反映して「商業販売額(小売業)」が伸びた。海外向けの電子部品・デバイスなどの出荷が堅調で「鉱工業用生産財出荷指数」も伸びた。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比1.6ポイント上昇の92.1で2カ月ぶりに上昇した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比2.7ポイント低下の101.0と、4カ月ぶりに低下した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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CI一致指数をもう少し詳しく見ると、消費税率の引上げが実施された昨年2019年10月のドンと下がった後も、11~12月まで3か月連続で下降を示した後、今年に入って1~2月と2か月連続で上昇しています。本日公表の2月統計では、鉱工業用生産財出荷指数や商業販売額(小売業)(前年同月比)などのプラス寄与が大きかった一方で、有効求人倍率(除学卒)は大きなマイナス寄与となっています。鉱工業用生産財出荷は海外からの需要の増加ですし、商業販売額(小売業)のプラスはマスクは品薄としても、除菌製品やほかの日用品の買いだめ行動を反映している部分が少なくないものと考えています。むしろ、まだ1倍を越えているとはいえ、有効求人倍率の悪化が雇用の悪化を象徴しており、リーマン・ショックときと同じように、派遣などの不安定な非正規雇用から雇用が悪化する可能性が高いと考えるべきです。いずれにせよ、2月の景気動向指数が1月に続いて2か月連続で改善を示したのは、もはや参考値にもならず、まるで「遠い昔の過去の数字」のような気すらします。4月下旬から3月の経済活動を示す統計が出始めますが、この3月統計から4月統計にかけては、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、昨年2019年10月の消費税率引上げを上回るような大きな経済的なショックが記録されているものと覚悟すべきです。

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2020年4月 6日 (月)

明日からブログ再開の予定

諸事情ありまして、明日からブログを再開する予定です。明日は内閣府から公表される景気動向指数を取り上げます。
さて、非常事態宣言の行方やいかに?

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2020年4月 5日 (日)

明日から大学の授業、異例のネット越しの授業が始まる!!!

先週から大学に通い始めましたが、一応、明日から大学での授業が始まります。でも、昨日も書いたように、対面授業はゴールデンウィーク明けまでナシで、教員の方は授業に代替する資料作成に追われています。多分、学生や院生の方もリポートの作成などで忙しくなるような気がします。まだ、授業を何曜日のどのコマでやるか、決まっていない大学院の授業もあったりします。いよいよ、明日から大学教員としての活動が本格化しますので、不安は残しつつも、がんばりたいと思います。

なお、昨日、「京都では外出自粛要請は出ていない」と書いてしまいましたが、私の認識間違いでした。京都府知事と京都市長から週末の外出自粛要請が明らかにされています。お詫びして訂正します。ひょっとしたら、京都産業大学の影響力の大きさを改めて認識し直した人もいるかもしれません。

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2020年4月 4日 (土)

大学の研究室に通い始めた1週間を振り返る!!!

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今週月曜日から通い始めた大学の研究室の写真です。まだ、何もなかったりします。やや北西を向いており、日当たりはよくないんですが、洗濯物を干すわけではありませんので関係ありません。むしろ、外の景色が悪くなく、意図的に室内が暗くて外がよく見える写真を選んだんですが、琵琶湖と比叡山が望めます。
私が勤務するのは、関西ではトップクラスの私学と自負している関関同立と呼ばれる大学の一角です。もちろん、経済学部です。しかし、今年はご案内の新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大防止のため、ゴールデンウィーク明けまで対面授業はなしで、学内サイトに教員から資料や動画をアップしたり、それに対して学生や院生からリポートの提出があったりと、異例の対応となっています。月曜日から大学に通い始め、木曜日午後にようやくパソコンが届いてセットを終えた新任教員としては、学内サイトにアップする資料の作成だけでも、とても重荷となっています。長年大学教員をしている同僚も経験のない事態ということのようですし、ましてや、10年ほど前に長崎大学で教員の経験あるとはいえ、私のような新任教員には何がなんだかよく理解できていなかったりします。
でも、ご近所の京都産業大学ではかなりの感染者が出ましたし、私ももう60歳を超えていますから、ウィルスに感染して重い肺炎になったりしたら生命の危機がありそうな気もしますので、私の住んでいる京都では外出自粛要請は出ていないとはいえ、重々気をつけたいと思います。

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2020年4月 3日 (金)

引っ越しを終えて、まずは京都での生活が始まる!!!

先週のうちに引越しを終えて京都の生活に入りました。35年余りを経て生まれ故郷に帰ってまいりました。
新しい職場である私大の研究室には今週月曜日の3月30日から出勤し始めましたが、まずは新しい自転車を買い求め、近場を走っております。東京にいたころは Giant のマウンテンバイクでしたが、京都では Calamita Ciao のクロスバイクを買い求めました。生意気にもホリゾンタルに渡したフレームはクロモリだったりします。黄色いヘルメットをかぶって、黄色いクロスバイクで走っています。

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