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2020年4月21日 (火)

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で経済的な欠乏は生じるか?

かなり旧聞に属するトピックですが、今月4月7日付けで国連食糧農業機関(FAO)から Coronavirus disease 2019 (COVID-19) - Addressing the impacts of COVID-19 in food crises と題して、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により食料危機が生じる可能性を指摘していたところ、私は先進国では影響少ないと考えていましたが、我が国でも先週4月16日にキャノングローバル戦略研究所から「新型コロナウイルスで食料危機が起きるのか?」と題するコラムが明らかにされています。このコラムをよく読めば、内容としては私も大いに合意するところなんですが、タイトルだけを見れば、やや驚く向きがあるかもしれません。といったような観点も含めて、簡単に取り上げておきたいと思います。なお、FAOのリポートはpdfでもアップされています。

COVID-19による何らかの経済的欠乏の可能性については、かなり早くから議論されており、我が国でも典型的にはマスクの売切れ続出などを国民が幅広く経験しているところかと思います。例えば、ガルブレイス教授のコラム "What the Government Needs to Do Next" なんかでも、"A shortage economy may arrive anyway" などと、経済的欠乏が論じられていますが、それは生産ではなくむしろ、流通や需要サイドの買いだめに起因して、財が欠乏する可能性です。また、キャノングローバル戦略研究所のコラムでは、食料安全保障として「①食料を買う資力があるかどうかと、②食料を現実に入手できるかどうか」の要素を論じていて、「日本で生じる可能性が高い食料危機とは、東日本大震災で起こったように、お金があっても、物流が途絶して食料が手に入らないという事態である。」と結論しています。私もこの結論には大いに賛成ですが、他方で、食料については安全保障からの観点かどうかはともかく、①生産、②流通ないしサプライチェーン、の供給サイドとともに、③買いだめ、というか、過剰消費、という需要サイドの問題もあるんだろうと考えます。FAOのリポートでは、2014年の西アフリカでのエボラ出血熱の事例が引き合いに出されていますが、私は違和感を覚えます。ただし、今回のCOVID-19の場合、格差の問題への留意が必要であり、international な国の間の格差、すなわち、先進国には食料危機が起こらない一方で、低所得の途上国には食料が不足するという事態はあり得ますし、intranational な国の中の格差、すなわち、日本のように平均的な所得が高い先進国の中でも、貧困層へ食料が行き渡らない、という可能性も否定できません。その意味で、ガルブレイス教授のコラムが指摘しているように "The solution is to limit sales per customer" という選択肢はあるかもしれません。また、食料に関しては、世界各国で食料輸出を制限する動きがあることは確かですが、マスク供給の中国依存と同じで、コメの減反をここまで進めたんですから、食料の国内生産キャパシティに大きな問題があるとは思えません。国際的に価格競争力がないだけで、量的な問題ではないと考えるべきです。ですから、短期的に、まさに、マスクで観察されたとおり、価格が急上昇して低所得層が購入できないリスクの方が大きいような気がします。結論として、繰り返しになりますが、私は日本で食料危機が起こる可能性は決して高くない、と考えています。

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