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2020年5月31日 (日)

いよいよ九州南部が梅雨入りし近畿地方の梅雨入りも近づく!!!

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昨日の5月30日に、九州南部が梅雨入りしました。昨年より1日早く、ほぼ平年と同時期の時期だそうです。いよいよ、近畿地方の梅雨入りも近づいてきました。昨年は異例の年で、関西よりも関東の方が早くに梅雨入りしてしまいましたが、例年であれば、九州南部の梅雨入りからほぼ1週間後に近畿や関東も梅雨入りします。なお、上の画像は昨日のウェザーニュースのサイトから引用しています。
気象庁の1か月予報は毎週木曜日の午後に更新されるんですが、5月28日に明らかにされた最新予報では、この先1か月の平均気温は関東以南で平年より高くて、近畿以西は降水量も多いとの結果が示されていました。気温が高くて降水量が多いということは、要するに、蒸し暑い、ということなのでしょう。その先は本格的な夏になります。大学教員にはそれなりの夏休みがあるとはいえ、すでに還暦を超えた年齢的な条件もありますし、久し振りの京都の夏を耐えるべくがんばりたいと思います。

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2020年5月30日 (土)

今週の読書は経済書をはじめとして計3冊!!!

図書館が活動を再開し始め、私も読書が進むようになっています。今週の読書は、以下の通り、経済書を始めとして、京都本まで含めて計3冊です。

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まず、トマ・ピケティ『不平等と再分配の経済学』(明石書店) です。著者はご存じ、『21世紀の資本』で世界的に著名になったフランスのエコノミストであり、不平等や格差にまつわる経済学を展開しています。本書のフランス語の原題は L'Économie des Inégalités であり、最後の訳者解題にもあるように、邦訳タイトルの「再分配」は原題には含まれていません。この邦訳書は今年2020年に入ってからの出版ですが、原書は1997年から何度か改版を重ねています。本書は原書2015年版だそうです。従って、著者の端書きでは、本書ではなく、とまでかいてはありませんが、『21世紀の資本』を参照されたい旨が明らかにされています。ということで、第1章なんかは私のやっている計測に関する分析で、不平等の変化の計測を試みています。ただ、本書の中心は第2章の労働と資本の分配における不平等、第3章の労働の中における不平等であろうと考えられます。第4章最終章の再分配は、まあ、付け足し的な印象です。著者も明記しているように、単純に資本所得と労働所得=賃金の間の不平等であれば、資本家と労働者の階級の間のマルクス主義的な階級闘争にもつながりかねないわけですが、労働者間での不平等も決して無視できるわけではありません。私も当然そうですが、著者も現在の不平等は社会的に許容されるレベルを超えていると考えていて、それを解決するための財政による所得の再分配が置かれています。特に、第3章の労働所得の不平等に関する現状把握やそれに基づく分析は読み応えがあります。

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次に、諸富徹『資本主義の新しい形』(岩波書店) です。著者は、私の母校である京都大学経済学部の研究者です。本書では、私はよく理解できなかったネーミングなんですが、資本主義の「非物質主義的転回」という言葉を設定して、サービス化の進展や無形資産の活用などをそこに位置づけています。そして、なぜか、サービス経済化のための産業政策が必要であると指摘してみたり、最後はそのラインに低炭素化経済の流れを位置づけて、穴だらけ、とはいなないものの、やや強引な理論展開をしていたりします。私は環境経済学的に、環境グズネッツ曲線を推計した紀要論文を書いた経験もありますが、先進国でエネルギー集約的な産業からサービス化が進んでいる背景で、例えば、鉄鋼業が典型的なところで、新興国や途上国にそういった炭素消費型の産業が移転しているという点は忘れ去られています。まあ、本来の経済発展が進めば不平等の度合いは最初は不平等化が進む一方で、転換点があって後に不平等化が後退する、というのがオリジナルな「発見」だったわけで、それ自体はかなりの程度に自律的な方向性を持っていた可能性があると考えられます。しかし、少なくとも産業構成の変化とそれを背景にした低炭素化は、先進国から新興国や途上国に炭素多消費型産業を移転した結果であることは、本書でもそうですが、都合よく忘れられています。先の例でいえば、もちろん、技術革新などによって、鉄鋼業で低炭素化が図られていることも確かながら、それだけではないと私は考えています。すなわち、日経新聞の記事「19年世界粗鋼生産、3年連続過去最高に」などで指摘されているように、世界全体で鉄鋼の生産は増加している一方で、先進国の生産が減少していて、その分、先進国で低炭素化が進んでいる面を忘れるべきではありません。それを「産業政策」的にバックアップすることは意味ないとはいいませんが、Appleのようなファブレス化が進んで、実体的に中国で生産されて、中国で二酸化炭素排出が増加しているのをもって、Apple本国である米国の二酸化炭素排出が減るのが望ましいことなのかどうか、もう一度考えるべき段階に達しているような気がしてなりません。

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最後に、西川照子『京都異界紀行』(講談社現代新書) です。著者は、民俗学を専門とするジャーナリスト、編集者のようで、本書は、私が年に何冊か読む京都本です。タイトル通り、我が国の古典古代である平安時代を中心に、怨霊にまつわる場所の紀行本です。私なんぞの中途半端な京都人は知らない場所が満載です。本書では、京都の3大怨霊として、菅原道真、平将門、崇徳天皇を上げ、多くは神社仏閣なんですが、京都の異界を紹介しまくっています。多くは観光名所でもあったりするんでしょうが、別の顔を持つ観光名所も少なくないような気がします。ひとつは、私が東京で暮らしていた城北地区に「縁切榎」というのがあって、和宮が中山道を通って降嫁された際には、晒で巻いて隠した、といわれるくらいに、まあ、「由緒」あるものです。ただ、私が知る限り、「縁切り」とはいえ、例えば、喫煙や飲酒も含めて、悪癖と縁を切るとか、に効用あると宣伝されていて、DV夫との「縁切り」などはあるんでしょうが、決して表に出てきません。京都では、私の大学への通学路にあった安井金比羅宮が縁切りのご利益あると昔からいわれていますが、モロに「あの人を殺してほしい」といった願文があるそうで、さすがは京都らしく極めてダイレクトだと感じてしまいました。恨み、つらみを基にした怨霊が発信源なわけですから、それなりに、おどろおどろしい内容が含まれていrたりして、それはそれで読み応えがありました。

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2020年5月29日 (金)

新型コロナウィルスの影響で急速に悪化する経済指標のうち、大きな懸念は休業者急増の雇用統計!!!

本日は月末最終の閣議日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ公表されています。消費者態度指数が5月の統計である以外はすべて4月統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲9.1%の減産を示し、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲13.7%減の10兆9290億円、季節調整済み指数でも前月から▲9.6%減を記録しています。失業率は前月から+0.1%ポイント上昇して2.6%、有効求人倍率は前月から▲0.07ポイント低下して1.32倍と、雇用も悪化しています。いずれも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものと考えられます。ただ、5月の消費者態度指数は4月から+2.4ポイント上昇して22.4となり、5か月振りで前月を上回りました。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

コロナ、生産・雇用直撃 鉱工業過去最大の9.1%低下
新型コロナウイルスの感染拡大による影響で生産や雇用、消費指標が大きく落ち込んだ。経済産業省が29日発表した4月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比9.1%低下し87.1だった。比較可能な13年1月以降で最低の水準を記録した。有効求人倍率は約4年ぶりの低水準で、小売業販売額は前年同月比13.7%減の10兆9290億円だった。
4月の鉱工業生産は過去最大の下げ幅だった。経産省は基調判断を「生産は急速に低下している」に下方修正した。
15業種中14業種が低下した。自動車は前月比33.3%低下した。国内外で需要が低迷し、部品調達の停滞や工場の稼働停止も影響した。自動車メーカーの減産などが波及し、鉄鋼・非鉄金属工業も14.3%低下した。航空機部品を含む輸送機械工業は25%低下した。
一方、半導体製造装置などの生産用機械工業は2.5%上昇した。大きく低下した3月から戻った要素が大きい。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、5月は前月比4.1%の低下、6月は同3.9%の上昇を見込む。輸送機械工業などを中心に増産が予想されている。経産省は「先行きを見通すのは難しく、少なくとも6月までは低い生産水準で推移するだろう」と分析している。
雇用指標も悪化した。厚生労働省が29日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍で前月から0.07ポイント低下した。16年3月以来、4年1カ月ぶりの低水準となった。景気の先行指標となる新規求人は前年同月比で31.9%減と09年5月以来、10年11カ月ぶりの下げ幅となった。
総務省が29日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は2.6%で前月から0.1ポイント悪化した。就業者数(同)は前月に比べ107万人減少し、1963年1月以来の下げ幅となった。完全失業者数(同)は178万人で6万人増えた。
新型コロナウイルスの感染拡大で求職活動をしておらず、失業者と統計上みなされていない人は多い。失業率は今後、跳ね上がる可能性がある。
4月の休業者数は597万人と過去最大になった。前年同月比で420万人増えた。リーマン・ショック直後の休業者数は100万人程度で、異例の伸び幅になっている。景気悪化が長引けば、企業は休業者を雇い続けるのは難しくなる。
5月の消費者態度指数、前月比2.4ポイント上昇の24.0
内閣府が29日発表した5月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比2.4ポイント上昇の24.0だった。内閣府は消費者心理の判断を「急速に悪化している」から「依然として極めて厳しいものの、下げ止まりの動きがみられる」に上方修正した。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。

いくつかの統計を取り上げていますのでとても長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産はわずかに▲5.4%の低下にとどまるとの見込みながら、レンジでは▲10.5%~▲1.8%でしたので、まあ、何とかギリギリ2ケタ減産には達しなかった、という受け止めをすればいいんでしょうか。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を先月の「生産は低下している」から「生産は急速に低下している」に下方修正しています。4月実績の2ケタ近い減産に続く5~6月の製造工業生産予測指数を見ると、5月はまだ前月比で▲4.1%の減産が続くとはいえ、マイナス幅はやや縮小し、6月は+3.9%の増産に転じるという見込みが示されていますが、もともとが大きな信頼性を寄せられる統計ではない上に、現在の経済社会の状況からして、少なくとも6月から増産に転じるという先行き見通しは、やや怪しいといわざるを得ません。ただ、私の住む関西圏に続いて、東京都をはじめとする首都圏においても、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止を主眼とする非常事態宣言が解除されましたし、徐々に経済社会が正常に戻るとすれば、確かに、生産については足元の5月が底という可能性も十分あります。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期であり、このブログのローカルルールは上の鉱工業生産指数と同じです。消費の代理変数となる小売販売額を見ると、繰り返しになりますが、季節調整していない原系列の前年同月比は▲13.7%減の10兆9290億円、季節調整済みの系列で見て前月比▲9.6%減を記録しています。広く報じられている通り、私の実感としても、食料品をはじめとしてスーパーは人出あったように感じられましたが、百貨店は食料品売場などの一部を除いて閉店を余儀なくされたケースもあり、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、スーパーは3月+2.6%増に続いて、4月も+3.6%の増加を示した一方で、百貨店は3月▲32.6%減のあと、4月はとうとう▲71.5%減となっています。ただ、全体として増加したスーパーの4月統計でも、食料品は+12.3%の増加を示した一方、衣料品は半減の▲52.6%減となっています。こういった業態別、あるいは、商品別の統計は、COVID-19の影響を強く示唆している、と私は考えています。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、ほかと同じように、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、失業率は3月の2.5%から4月は2.7%に上昇するという見込みだったところ、2.6%で踏みとどまった、といったところかもしれません。ただ、引用した記事にもあるように、懸念されるのは休業者の急増です。すなわち、総務省統計局から「就業者及び休業者の内訳」なる追加参考表が明らかにされていて、休業者が今年2020年に入ってから急増し、1月194万人、2月196万人だった後、3月には249万人、4月はとうとう597万人に達しています。4月の休業者は1~2月の水準からほぼ+200万人の増加となっており、4月統計における完全失業者はまだ200万人を下回っているとはいえ、急増した休業者がもしも失業者に転じれば、失業率は一気に上昇しかねない、と考えるべきです。企業が雇用保蔵をしていたり、あるいは、COVID-19のために求職活動に乗り出せない人などが多いと見られますが、統計上の実績値としての失業率はまだ2%台半ばとしても、休業者の今後の動向によっては失業率が5%を上回る水準に達する可能性も十分あります。加えて、何度か書いたことがありますが、上のグラフに取り上げた雇用統計の指標について景気とのシンクロは、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人は倍率にせよ求人数にせよ先行指標、と多くのエコノミストに見なされています。ですから、休業者の急増と失業率の遅行性を考慮すると、先行きさらに失業率が上昇する可能性は大きいと考えられます。

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続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影を付けた期間は景気後退期であり、このブログのローカルルールは上の鉱工業生産指数や商業販売統計や雇用統計と同じです。5月統計の消費者態度指数を4つのコンポーネントで前月4月との差を少し詳しく見てると、すべてのコンポーネントが改善を示し、「暮らし向き」が3.1ポイント上昇し25.0、「耐久消費財の買い時判断」が3.0ポイント上昇し26.3、「雇用環境」が1.8ポイント上昇し16.8、「収入の増え方」が1.5ポイント上昇し27.8となりました。消費に直結する「雇用環境」と「収入の増え方」の上昇幅が小さくて少し気がかりながら、引用した記事にあるように、統計作成官庁の内閣府が基調判断を「急速に悪化している」から「依然として極めて厳しいものの、下げ止まりの動きがみられる」に上方修正した気持はよく判ります。消費者態度指数のようなマインド指標のソフトデータは明らかにハードデータに先行しますから、生産動向と合わせて見て、この4~6月期がCOVID-19の影響を脱して、景気が底を打った可能性はあると私は考えています。ただ、もしそうであっても、V字回復ではなくL字に近い可能性の方が大きいと覚悟すべきかもしれません。

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2020年5月28日 (木)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大により派遣スタッフの時給が低下!!!

明日の金曜日5月29日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる4月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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アルバイト・パートの時給の方は従来のトレンドから外れているわけではないんですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、派遣スタッフの方は大きく低下に転じています。すなわち、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は+3%近い伸びで引き続き堅調に推移しています。詳細に見ると、三大都市圏の4月度平均時給は前年同月より+2.7%、+28円増加の1,075円を記録しています。職種別では「営業系」(前年同月比増減額+84円、増減率+6.7%)、「事務系」(+33円、+3.0%)、「専門職系」(+31円、+2.6%)、「製造・物流・清掃系」(+26円、+2.5%)、「フード系」(+1円、+0.1%)など5職種で前年同月比プラスとなり、唯一マイナスは「販売・サービス系」(▲2円、▲0.2%)だけでした。地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。他方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2019年7月統計から10か月連続でマイナスを続けており、三大都市圏の4月度平均時給は前年同月より▲1.6%、▲26円減少の1,607円を記録しています。職種別では、「営業・販売・サービス系」(前年同月比増減額▲14円、増減率▲1.0%)、「オフィスワーク系」(▲6円、▲0.4%)、「IT・技術系」(▲4円、▲0.2%)の3職種がマイナスとなり、プラスは「クリエイティブ系」(+41円、+2.3%)、「医療介護・教育系」(+21円、+1.5%)、の2職種にとどまっています。また、地域別でも、関東はプラスだったものの、東海・関西はマイナスを記録しています。アルバイト・パートと派遣スタッフで時給の動向が大きな違いが生じたのですが、2008~09年のリーマン・ショック後の雇用動向を見た経験からも、先行き、非正規雇用の労働市場は悪化が進む可能性があると覚悟すべきです。

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2020年5月27日 (水)

世銀による購買力平価の調査結果と世界経済の規模やいかに?

先週5月21日に貿易統計を取り上げた際にチラリと触れましたが、5月19日に世銀から Purchasing Power Parities and the Size of World Economies: Results from the 2017 International Comparison Program と題するリポートが明らかにされています。2017年の調査に基づく購買力平価とそれにより評価した世界経済の規模に関するリポートです。その前は2011年調査に基づいた同様のリポートが2015年に出版されていますから、購買力平価に関するリポートは6年ぶりといえます。
リポートでは、2017年の世界経済の規模は120兆ドル近くに達し、半分超が低所得国と中所得国で生み出されていル事実を明らかにしています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。世の中のニュースが新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関係するものが多くを占める中、国際機関のこういったリポートに着目するのは、私のこのブログの特色のひとつでもあり、いくつか典型的なグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートp.4からFigure 1.3 Share of PPP-based global actual individual consumption for the six economies with the largest shares, 2017を引用しています。2017年購買力平価で評価した国別GDPを上位6国まで示してあります。もちろん、世界トップは米国でありシェアは18.6%、ついで中国の12.2%、インドの7.0%のトップスリーの後に我が日本が4位で4.4%を占めています。ただ、ドイツやロシアよりはまだ経済規模で上回っているようです。まあ、こんなもんだろうという気はしますが、こういった巨大経済圏はCOVID-19でかなり深い景気後退に陥っているように見えますので、この先についてはまだ何ともいえません。

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次に、上のグラフはリポートp.7からFigure 1.9 PPP-based actual individual consumption per capita and share of global population, by economy, 2017を引用しています。横軸に2017年購買力平価で評価した1人当たりGDPを取り、縦軸には人口を取ってプロットしています・横軸の1万ドル強のところに破線が縦に引かれており、世界の平均1人あたりGDPである$10,858が示されています。国単位の購買力平価GDPでは中国やインドの後塵を拝した日本ですが、1人当たりGDPという「豊かさ」の指標ではまだまだアジア各国を上回るポジションにあります。ただ、ドイツや欧州の小さな経済規模の国の中には我が国を上回る1人当たりGDPを示す国も少なくないのは事実です。

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次に、上のグラフはリポートp.9からFigure 1.12 Lorenz curves for the distributions of 2017, revised 2011, and original 2011 PPP-based GDP per capitaを引用しています。なかなか興味を引くグラフであり、1人当たりの購買力平価GDPでローレンツ曲線を描いています。45度線からローレンツ曲線が離れている面積が不平等指標であるジニ係数ですから、わずかとはいえ、赤い実線でプロットされている2017年調査結果は青い破線の2011年結果より不平等の度合いが改善していることが明らかにされています。グラフ右下に見えるように、2011年0.487から2017年には0.474となっています。また、リポートp.87には"the share of the global population living in economies where the mean GDP per capita is below the global average increased from 72.1 percent to 75.9 percent"と明記されていて、同じ期間に1人当たり購買力平価GDPが世界平均を下回る国の人口が減少しています。国連ミレニアム開発目標(MDGs)などの成果ではないかと私は受け止めています。

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最後に、上のグラフはリポートp.10からFigure 1.14 GDP price level index versus PPP-based GDP per capita (and PPP-based GDP), by economy, 2017 and 2011を引用しています。横軸が1人当たりGDP、縦軸が物価水準で各国経済規模のバブルチャートでプロットしています。大雑把に正の相関があり、右上がりの相関曲線が引けそうです。1人当たり購買力平価GDPで見た「豊かな国」ほど物価が高い、という当然の結果が示されています。2011年時点では、我が国は欧米主要国よりもかなり物価水準が高かったのですが、2017年調査結果では、まだドイツなどよりは物価が高いものの、米国を下回るレベルまで落ちているのが見て取れます。相対的に物価が下がっているわけで、デフレ傾向が続いていると考えるべきです。

英文で200ページを超えるボリュームですので、第1章を中心にした部分を取り上げています。このリポートを担当したのは、世銀で開発政策・パートナーシップ担当のマリ・パンゲストゥ専務理事です。今年2020年3月に就任したばかりですが、20年近く前に私が政府開発援助(ODA)のお仕事で家族とともにジャカルタにいたころ、インドネシア政府の大臣を務めていた記憶があります。

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2020年5月26日 (火)

4月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)はコロナ禍で上昇率が一気に縮小!!!

本日、日銀から4月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.0%と、先々月2月統計の+2.1%、先月3月統計の+1.6%から大きく縮小しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じく縮小し、+0.9%を記録しています。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業向けサービス価格、増税除き前年比0.8%下落 8年9カ月ぶり下落率
日銀が26日発表した4月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.1と、前年同月比で1.0%上昇した。上昇率は3月(1.6%)から縮小した。消費税率引き上げの影響を除くと同0.8%の下落で、下落率の大きさは11年7月以来8年9カ月ぶりの大きさだった。
新型コロナウイルスの感染拡大で訪日外国人客数が急減したり、国内で緊急事態宣言が発令されたりしたことで「宿泊サービス」の価格が大きく落ち込んだ。「テレビ広告」の下落率も大きかった。一方、航空機の減便で貨物輸送の需給が逼迫し「国際航空貨物輸送」や「国内航空貨物輸送」の価格は大きく上昇した。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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引用した記事にもある通り、消費税を含んだベースの企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、昨年2019年10月の消費税率引上げに伴って+2%に達した後、今年2020年に入って1月+2.1%まで+2%台を続けた後、先々月2月+1.6%、先月3月+1.0%、さらに、今月の4月統計では+1.0%まで上昇率が落ちました。引用した記事にもある通り、先月の3月統計では消費税の影響を除くベースの前年同月比上昇率が▲0.1%と下落に転じた後、4月統計では▲0.8%と下落幅を拡大しています。いうまでもなく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による影響と考えるべきです。サービス物価はSPPIはもちろん、CPIのコンポーネントでも、人手不足に起因して堅調と考えられていましたが、雇用がかなり怪しくなり始めた印象もありますし、宿泊サービスのように需要が「蒸発」すれば、需給ギャップに従って価格が弱含むのは当然です。4月統計のSPPIのコンポーネントである大類別について、消費税の影響を除くベースの前年同月比▲0.8%に対する寄与度を見ると、景気に敏感な広告が▲0.63%、繰り返しになりますが、需要が「蒸発」した宿泊サービスをはじめとする諸サービスが▲0.14%と、ほぼほぼ、この2つの大類別で消費税を除くベースの前年同月比の下落幅の大部分を説明できてしまいます。大類別のコンポーネントでとてもなのは、同じく消費税の影響を除くベースで、運輸・郵便が+0.18%のプラス寄与を示している点です。引用した記事の2パラめで「航空機の減便で貨物輸送の需給が逼迫」との説明が日銀からあったような印象を受けますが、輸送に使う石油の国際商品市況における価格が、COVID-19の影響で大きく下落しているんですから、4月から何かの価格改定があったのか、ここまで上昇しているのは私には理解できません。もっとも、運輸サービスの価格動向は、4月統計の消費者物価指数(CPI)とは整合的です。すなわち、総務省統計局の冊子資料で見る限り、p.12で財の前年同月比上昇率+0.7&%に対して、運輸・通信関連サービスは+2.3%の上昇と、ヘッドライン上昇率を上回る上昇率が報告されています。SPPIの企業ベースの運輸サービスとCPIの消費者の支出先である運輸サービスは、どこまで重なっているか不明ながら、どちらも連動して価格上昇が観察されるわけですから、航空機の減便だけで説明できるとは思えません。従って、石油価格の下落は運輸サービス価格の引下げをもたらしていると考える根拠がある一方で、人手不足や他の要因から4月に何らかの価格改定があったのではないかと、私は想像しています。
最後に、上のグラフのうちの下のパネルを見ても明らかな通り、財貨の価格である企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価指数は、すでに、消費税率引上げ前の水準まで下げている一方で、サービス価格指数のSPPIは、まだ、消費税率引上げ前の水準までは戻っておらず、その点だけを見れば、PPIよりもSPPIの方が下げ幅が小さいともいえます。

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2020年5月25日 (月)

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により二酸化炭素の排出は減少したか?

さて、およそ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的な影響は、供給側で生産を減少させ、需要も全体としてはもちろん停滞し、石油価格などを通じて物価も下げる、という形で、日本経済には好ましくないものばかりなんですが、ひとつだけ考えると、ここまで経済活動が停滞し、人々が家に閉じこもると、二酸化炭素の排出は減っているんではないか、という気がします。強くします。ということで、4月冒頭までのデータを用いた分析結果が、5月19日付けの Nature Climate Change 誌"Temporary reduction in daily global CO2 emissions during the COVID-19 forced confinement" と題して掲載されています。もちろん、pdfの全文ファイルもアップされています。

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まず、上のグラフは論文から Table 2 Change in activity as a function of the confinement level と題するテーブルを引用しています。注目は、一番右下の列でいえばResults、行でいえばTotalのところであり、▲17%、レンジでは▲11 to ▲25のCO2削減という結果になっています。外出自粛で在宅が続きましたので、唯一家庭だけがプラスを記録していますが、これを別にすれば、上から電力、地上輸送、公的部門、航空はすべてマイナスです。

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次に、上のグラフは論文から Fig. 3: Global daily fossil CO2 emissions と題するグラフを引用しています。左のパネルはここ50年間の推移であり、右は1月以降のパートアップです。左の長期時系列は、まさに、いろんな経済指標と同じで、直近時点で大きな落ち込みを見せています。1月から4月7日までのグラフは世界的な外出自粛や経済活動の停滞に歩調を合わせているんだろうと私は受け止めています。

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最後に、上のグラフは論文から Fig. 4: Change in global daily fossil CO2 emissions by sector と題するグラフを引用しています。セクター別の1月から4月までのCO2排出の推移なんですが、上3つのパネルと下3つのパネルの縦軸のスケールが異なる点は注意が必要です。家庭が減少していないのを別にして、もっともCO2排出を減少させたのが地上輸送部門である点は、先ほどの Table 2 Change in activity as a function of the confinement level からも明らかなんですが、1~4月の時系列で見て、世界的には4月月初がCO2排出削減のボトムだったようです。私の実感では日本は5月ではないかという気がしています。この論文では5月データはまだ利用可能ではなかったようですが、その後のデータ更新とともに、我が国のCOVID-19封込め施策の遅れが明らかになる可能性がありそうな気もします。

これだけ世界経済が深い景気後退に陥っているのですから、CO2排出も減少しているのは当たり前なんでしょうが、改めてデータで確認することの重要性を実感しました。

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2020年5月24日 (日)

インテージのデータを基にした東洋経済の記事「コロナで『売れた』『売れなくなった』商品TOP30」やいかに?

かなり旧聞に属する話題ですが、ネット調査大手のインテージのデータを基にした東洋経済の記事「コロナで『売れた』『売れなくなった』商品TOP30」から、テーブル画像を引用すると下の通りです。ただし、連結して少し縮小をかけてあります。日曜日ですので、それだけです。

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2020年5月23日 (土)

今週の読書は話題のハラリ教授の新刊書をはじめとして計3冊!!!

ようやく、今週に入って、新刊読書がはかどり始めました。もちろん、世間から遅れていることは明らかなんですが、もともとの私の人生がそうである上に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために、非常事態宣言の上にも特定警戒都道府県に住んでいるもので、図書館サービスが順調でなかったのも響いた気がします。在宅勤務はそれなりに多忙を極め、読書ペースを維持するのがどこまで可能かは未知数です。取りあえず、今週の読書は以下の3冊です。

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まず、ユヴァル・ノア・ハラリ『21 Lessons』(河出書房新社) です。英語の原題は 21 Lessons for the 21st Century であり、2018年の出版です。なお、著者はイスラエルの歴史研究者ですが、もう私なんぞが紹介するまでもなく世界的ベストセラーを次々に上梓しています。私も、『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』は読みました。本書は5部21章構成で400ページ余りのボリュームながら、それなりにスラスラと読めた気がします。冒頭に著者自身が書いているように、『サピエンス全史』が過去の歴史を振り返り、『ホモ・デウス』が先行きの見通しを語っているのに対して、本書は今現在を対象にしています。ただ、2016年のトランプ米国大統領の当選などに象徴されるように、ポピュリズム的なイベントに対して批判的な見方を展開していることも事実です。これも自由主義のセットメニューと題して、国家レベルでも国際レベルでも、自由は経済と政治と個人の3分野でセットであって、ひとつだけを欠けさせるわけには行かない、という主張にも現れています。サンデル教授のように正義の分野まで哲学的に解明しようと試みているかのようですが、少なくとも歴史学の観点からは私は難しそうな気がします。実は、正義や倫理については経済学が早々に放棄しているのも事実です。では、歴史学者としてはどの観点かというと、私はこの著者の進歩史観に信頼感を感じています。ほぼほぼ私と同じ理解で、保守派は歴史の流れを押し止めようとし、保守派に対する進歩派は歴史を前に進めようとする。あるいは、歴史を逆転させようとするのは反動的である、などなどです。もっとも、米国の例を引きつつも、地球温暖化が進む歴史を押し止めようとするのが進歩派で、もっと温暖化の歴史を進めようとするのが保守派だとか(p.284)、テクノロジーの過度な進み過ぎには悲観的な味方をする場合とかはありそうです。私もAIを含めて、テクノロジーの過度な進展には悲観的だった時期があるのですが、今ではそれが人類の幸福に寄与する可能性のほうが大きいと考えています。最後に、p.61にある「最低所得保障」というのは、かなりベーシックインカムに近い制度のように私の目に映るんですが、そうなんでしょうか?

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次に、友原章典『移民の経済学』(中公新書) です。著者は、世銀などの国際機関で開発に関するコンサルをした後、今は国内の大学で研究者をしています。基本は、タイトル通りの経済学ですので、労働経済学の観点からの雇用に対する移民の影響とか、経済成長や財政に移民はどのような影響を及ぼすのかが定量的な研究成果をサーベイして示されています。ただし、本書でもやや批判的に示されていますが、研究者によって少なからぬ研究成果のバイアスが見られます。移民に関する経済学研究で著名であるとともに、自身もキューバから米国への移民であるボージャス教授(私は、スペイン語読みで「ボルハス」の方が馴染みがあったりします)は移民に関しては否定的な研究成果を示しがちである、などです。私は移民の経済学を展開するに当たって、2つの問題点があると考えています。ただ、この2点は基本的に同じコインの裏表であって、おそらく同じ問題だろうという気がします。すなわち、ひとつには経済学がまだ未熟な科学である、という点で、もうひとつは、経済学的な表現ですが、すべてを部分均衡により分析していて、移民のような広範な影響を及ぼしかねない重要な分析であるにもかかわらず、一般均衡的な分析ができない、もしくは、していないことです。「群盲象を撫でる」結果に終わっているわけです。幅広く十分な範囲から視覚を活用した観察が、現在の経済学の到達水準ではできない、ということだろうと思います。従って、本書のように、得する人と損する人という分析も、どこまで信頼性あるかはやや疑問です。部分均衡分析では得するように見えても、回り回って損する場合もあるからで、それは経済学的にはモデルの構築次第、すなわち、言葉を変えれば分析者の「思惑次第」ということにもなりかねません。結論がある程度決まっていてモデルを構築しデータを集める、ということも可能なわけです。最後に、私自身の移民に対する直感的で決して定量的でない意見は、ややネガティブというものです。おそらく、移民は経済学的には生産要素の多様性に大きく寄与し、従って、サプライサイドからは成長にも貢献します。ただ、日本は、韓国とともに、先進国の中で、文句なしの「人口大国」である中国に隣接しているという地理的条件から、どこまで移民を受け入れるかには覚悟が必要です。現状の数百万人を超えて、1000万人単位で中国からの移民を受け入れれば、もはや国家としてのアイデンティティをなくす可能性も視野に入れるべきです。でも、そこまでして企業は安い労働力を欲しがるんだろうな、という気はします。強くします。

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最後に、斉藤賢爾『2049年「お金」消滅』(中公新書ラクレ) です。著者は、専門分野はそれほど意味ないとしても、デジタルマネーやコンピュータエンジニアリングの研究者であり、何となくタイトルにひかれて読んでみましたが、とても興味深い論考でした。ひとつだけ注意すべきは、タイトルの「お金」とは、あくまでマネーであり、紙幣やコインという実態ある貨幣がなくなって、デジタルマネーに置き換わる、という主張ではありません。デジタルマネーまで含めてマネーが不要となる経済社会が実現する、というのが著者の主張の肝です。ということで、著者は、基本、エンジニアのようですから、経済学的な「希少性」という言葉はまったく出現しませんが、要するに、供給面では社会的な生産力が大きく拡大され、需要面では財やサービスに希少性がなくなり、別の表現をすれば、限界費用がゼロとなることから市場での価格付けが最適配分に失敗し、従って、市場における交換が社会的な欲求を満たすために行われなくなり、結果として、贈与経済に近い経済社会が出現する、それも、今世紀半ばにはそうなる、という近未来の将来社会の姿を描き出そうと試みています。一言で表現するつもりが、ついつい長くなりましたが、そういうことです。そして、19世紀的には多くのマルクス主義者がこれを「社会主義」と読んでいたような気がします。私は20世紀ないし21世紀のエコノミストですが、同じように、この本書で描写されている経済社会は現代的な意味でのマルクスのいう社会主義だと思います。ただし、著者が否定しているように、社会主義的な経済計画や中央政府からの司令に基づく資源配分が実行される経済システムである必要はサラサラありません。そして、本書のような社会主義経済ではマネーは確かに必要なくなりますし、著者はご自身で気づいていないかもしれませんが、まったく同じ意味で所得も必要ありません。ですから、本書で著者が強調しているように、ベーシック・インカムの議論はまったく意味をなしません。私は進歩派のエコノミストとして、著者の主張するような経済社会が、今世紀半ばに誕生するかどうかはともかく、そう遅くない未来に現れるものと期待しています。ただ1点だけ、本書のスコープのはるか外ながら、その際に金融資産、あるいは、実物資産、例えば土地や不動産がどのように評価されるのかは興味あります。生産されない資産は希少性が残る気がします。おそらく、生産される財とサービスに希少性がなくなるので、その生産要素たる資産には希少性が認められないと思うのですが、生産要素ではない資産はどうなるのでしょうか。

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2020年5月22日 (金)

新型コロナウィルスの影響で石油価格が下落してとうとうマイナスを記録した4月の消費者物価をどう見るか?

本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は昨年10月の消費税率引上げの影響がまだ残っているにもかかわらず▲0.2%を示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.2%でした。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により石油価格下落が背景です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の全国消費者物価、0.2%下落 下落は3年4カ月ぶり、コロナ禍で
総務省が22日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比0.2%下落した。下落は16年12月以来、3年4カ月ぶりとなる。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.1%下落)より下げ幅は大きかった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が顕在化し、原油安を背景としたガソリン価格の下落などが押し下げた。
他にも、新型コロナの影響で宿泊料や外国パック旅行費などレジャー関連の消費が引き続き低調だった。式典の自粛で切り花などの価格も下がった。4月から始まった高等教育無償化で私立大授業料が下落した。19年10月からスタートした幼児教育無償化の影響で幼稚園や保育所の保育料も下落した。
生鮮食品を除く総合では379品目が上昇した。下落は128品目、横ばいは16品目だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.8と前年同月比0.2%上昇した。生鮮食品を含む総合は101.9と0.1%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.1%の下落でしたので、やや下落幅が大きいとはいえ、まずまずジャストミートしたといえます。ヘッドラインCPIの上昇率が+0.1%であったのに対して、生鮮食品を除くコアCPI上昇率が▲0.2%の下落、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率が+0.2%ですから、広く報じられているように、石油価格の下落の寄与が大きいと考えるべきです。総務省統計局のリポートでもエネルギーのヘッドラインCPI上昇率に対する寄与は▲0.37%に上っています。なお、私の計算ではコアCPIに対するエネルギーの寄与度は▲0.39%です。もちろん、COVID-19に起因する経済的影響が宿泊料や外国パック旅行を下落させて、コアCPI全体の下落幅を大きくしていることは事実ですが、石油価格によるサプライサイドからの、まあ、経済学的には奇異な言葉かもしれませんが、私なんぞが学生のころに習った「コストプッシュ・インフレ」の反対で、コストプル・デフレと考えることが出来ます。加えて、4月から高等教育無償化が実施されており、ニッセイ基礎研のリポート大和総研のリポートなどを見る限り、▲1%近いの寄与があったと試算されています。こういった特殊要因を数え上げればキリがないんですが、いかにして物価目標を達成する道筋に戻るのか、日銀は今日の金融政策決定会合の臨時会合において、中小企業等の資金繰り支援のための「新たな資金供給手段」の導入を決めましたが、どこまで効果あるんでしょうか。誠に申し訳ないながら、私はそれほど見識ないエコノミストですので、少なくとも、COVID-19の影響については、ケインズの表現を借りて "when the storm is long past, the ocean is flat again." という感じでしょうか。

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2020年5月21日 (木)

新型コロナウィルスの影響で大きく輸出が減少した4月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から4月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲21.9%減の5兆2023億円、輸入額も▲7.2%減の6兆1327億円、差引き貿易収支は▲9304億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短かに引用すると以下の通りです。

4月の輸出額21.9%減、コロナ響く 減少率は09年10月来の大きさ
財務省が21日発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額は前年同月比21.9%減の5兆2023億円だった。17カ月連続の減少で、2009年10月(23.2%減)以来の大きな減少率だった。新型コロナウイルス感染症の影響で米国向けの自動車や航空機用のエンジンなどが落ち込んだ。
輸入額は7.2%減の6兆1327億円だった。12カ月連続の減少で、4月は原油先物価格が一時マイナス圏に落ち込むなど、資源価格の下落が全体を押し下げた。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は9304億円の赤字だった。赤字は3カ月ぶり。
対中国の輸出額は4.1%減の1兆1822億円だった。化学製品や自動車部品などが減った。輸入額は11.7%増の1兆7348億円で衣服・マスクなどに使う織物用糸・繊維製品の輸入が大幅に伸びた。貿易収支は5526億円の赤字。
対米国の輸出額は37.8%減の8798億円だった。減少率は09年7月以来の大きさで、自動車や自動車関連用品の落ち込みが影響した。米国からの輸入額は1.6%増の6986億円で、貿易収支は1812億円の黒字だった。
対欧州連合(EU)の貿易収支は1912億円の赤字だった。赤字は10カ月連続。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見れば明らかなんですが、特に下のパネルの季節調整済みの系列で見て、4月の輸入はそれほど低下していない一方で、輸出が大きな落ち込みを見せています。他の要因があろうハズもなく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響であり、諸外国、特に欧米各国と我が国のCOVID-19への対応策、もしくは、拡大のフェーズが月単位で見るとビミョーに異なる、ということが貿易動向に反映されているんだろうと私は考えています。要するに、いち早くCOVID-19の影響を脱したと見られている中国は別としても、欧米先進国においては我が国よりも強烈なロックダウンを実施し、その結果として、経済活動の停滞から輸入が、すなわち、我が国からの輸出が落ち込んだ、と考えるべきです。加えて、輸入に関してはアジアからの輸入が増加しています。引用した記事の3パラ目にあるように、アジアから輸入の原料別製品のうちの織物用糸・繊維製品が前年同月比で+141.9%増と大きく増加を示しています。マスクとか、医療向けも含めた衣類生産なんだろうと考えられます。中国からの輸入は前年同月比で見て、2月はほぼ半減したんですが、3月統計ではわずかなマイナスまで回復を示し、今日公表の4月統計では2ケタ増となっています。このあたりもCOVID-19感染拡大のフェーズと、その対応策の違いであろうと考えるべきです。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、一番下の中国のパネルのOECD先行指数について、2月は前年同月比で▲15%近い落ち込みなんですが、それにスケールを合わせると別の部分で歪みを生じるような気がして、意図的に下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。今のところ、為替レートがCOVID-19の影響で大きく動いているようには見えませんので、主として所得要因から我が国の輸出数量≈輸出が変動している、と私は考えています。

貿易とも関連して、5月19日に世銀から Purchasing Power Parities and the Size of World Economies: Results from the 2017 International Comparison Program が出版されています。英文で200ページを超えるボリュームですし、いろいろと予定も立て込んでいますので、そのうちに日を改めて取り上げたいと思います。

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2020年5月20日 (水)

わずかな減少にとどまった3月統計の機械受注は過去の数字か?

本日、内閣府から3月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲0.4%減の8547億円と2月の増加の後、3月は減少を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の機械受注、前月比0.4%減 市場予想は7.0%減
内閣府が20日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比0.4%減の8547億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は7.0%減だった。
うち製造業は8.2%減、非製造業は5.3%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は0.7%減だった。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
1~3月期の四半期ベースでは前期比0.7%減だった。4~6月期は前期比0.9%減の見通し。
同時に発表した2019年度の受注額は前年度比0.3%減の10兆4036億円だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比▲7.0%減であり、予測レンジ上限は▲4.0%減でしたから、予想の上限を突き抜けたサプライズ、ともいえますが、予測したエコノミストの方で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響の織り込みが早すぎたんではないか、という気がします。四半期でならしてみると、1~3月期は製造業が増加した一方で、船舶と電力を除く非製造業がマイナスとなり、コア機械受注合計ではわずかにマイナスの前期比0.7%減を記録しています。そして、4~6月期の見通しはコア機械受注でわずかに▲0.9%減の2兆5,288億円を見込んでいます。在宅勤務のための投資があるかもしれないとは思うものの、これはにわかには信じ難い数字であり、コア機械受注に対する先行指標と見なされている外需が4~6月期に▲13.7%減と予想されている結果に比べて、あまりにも楽観的な数字であはなかろうか、と私は受け止めています。いずれにせよ、本日公表の機械受注統計は実績である3月統計にせよ、部分的ながら、4~6月期の見通しにせよ、早くも「過去の数字」になったように私は受け止めています。

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2020年5月19日 (火)

リクルートワークス研によるシニアの就業と仕事満足の分析やいかに?

昨日5月18日に、リクルートワークス研究所から「全国就業実態パネル調査(JPSED)」のデータなどを用いた「シニアの就業」「シニアの仕事内容」に関するリポートが明らかにされています。労働や雇用については、というか、経済全般に関して、今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、従来からの連続性ない状態になってしまいましたが、この分析では60代の就業や仕事満足などについての調査結果を示しています。私も役所を定年退職して大学に再就職しこの年齢層に入ったこともあり、興味を持っているのも確かです。いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、「シニアの就業」から引用していて、ここ20年ほどの60歳代シニアの就業率を60代前半と後半の2つの年齢層で見ています。21世紀に入って明らかな人口減少社会、少子高齢化が進んだ我が国で、供給サイドから労働力人口の不足を補うために、女性と高齢者の労働市場参入が促されて来ましたが、まさに、その通りの就業率の上昇という結果が出ています。私の属する60代前半の年齢層は最近20年ほどで就業率が50%ほどから70%近くに+20%ポイント近く上昇しています。グラフは引用していませんが、60代前半のうちの男性に限定すれば、すでに80%を超える就業率まで上昇を見せています。もちろん、バックグラウンドには生活が苦しいというのと健康年齢の上昇があるわけで、全面的に好ましいかどうかは保留するとしても、結果としてなのかもしれないながら、就業によって社会とのつながりを保持し続けるのは決して悪くない結果なのではなかろうかと私は受け止めています。なお、このグラフのバックデータは総務省統計局「労働力調査」であり、リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査(JPSED)」ではないようです。念のため。

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次に、上のグラフは、「シニアの就業」から引用していて、2015年と2017年のそれぞれにおける60歳代就業者の労働時間の分布を見ています。これはさすがに、「全国就業実態パネル調査(JPSED)」のデータを用いています。私自身も定年退職してから大学に再就職するまで、空いた1年間がそうだったんですが、60歳代では週30時間以下のパートタイムの就業の比率がかなり高い、との結果が示されています。現在の日本の雇用システムからすれば、まさに私がそうだったように、60歳で一度定年退職してから非正規での雇用継続という形が多いような気がします。すなわち、場合によっては同じ職場で嘱託のような形で再雇用されることもあるでしょうし、あるいは、別の職場で働くとしても任期付きかパートタイムという場合は少なくないものと考えるべきです。もっとも、国家公務員で定年が延長され始めましたので、65歳定年が定着すればフルタイムで65歳まで働く人の割合が増加するのは明らかです。

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最後に、上のグラフは、「シニアの仕事内容」から引用していて、2018年における60歳代就業者の職種別による仕事満足を見ています。も、「全国就業実態パネル調査(JPSED)」のデータを用いています。質問はマインドに関するもので、「成長の実感」と「生き生きと働く」という2点です。60歳代就業者の職種というよりも、その前からの職種の継続性の方が関係しそうな気もします。リクルートワークス研の分析でも、「専門職・技術職は自分が長年やってきた仕事のため、自分の強みを職場で活かせている可能性がある。」と結論しています。同時に、営業販売職の満足度の高さは人との接触が刺激をもたらす可能性を指摘しています。そうかもしれません。

最後に、私自身が研究者としてデータに基づいて実証したわけではなく、構築するモデルに大きく依存するとしても、高齢者の雇用の促進はより若い年齢層の雇用に対して一定のマイナスの影響をもたらすと私は考えています。年齢別の雇用に関してはどのようなモデルで考えるかによって、すなわち、高齢者の雇用がより若い世代の雇用と補完的であるか、あるいは、代替的であるかに依存します。いくつかの分析結果では補完的であるとして、決して高齢者の雇用促進がより若い年齢層の雇用を減少さる影響を否定する結論を導いていますが、私自身はやや疑問を持っています。おそらく、平たく表現すれば、景気のいい会社が若い年齢層の雇用も高齢者の雇用もどちらも増やしていて、逆に、景気の悪い会社はどちらも減らしている可能性が高く、年齢で分割して推計すれば、どちらも増えていたり、あるいは逆に、どちらも減っていたりして、結果的に若い年齢層の雇用と高齢層の雇用の間に正の相関があるように見える、ということなんだろうと想像しています。ですから、私自身が60歳を過ぎてすでに高齢者の仲間入りをしている一方で、より若い世代の雇用促進のためにはそれほど高齢者の雇用を促進するというのもやや気が引けている、というのも事実で悩ましいところです。

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2020年5月18日 (月)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で2四半期連続のマイナス成長を記録した1-3月期GDP統計1次QEをどう見るか?

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲1.6%、年率では▲6.3%と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で大きなマイナス、2四半期連続のマイナス成長でした。まず、日経新聞のサイトから長い記事を引用すると以下の通りです。

1-3月実質GDP、年率3.4%減 2期連続マイナス
内閣府が18日発表した2020年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.9%減、年率換算で3.4%減だった。マイナス成長は2四半期連続。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2月ごろから輸出や消費、設備投資などが軒並み急減した。19年度の実質GDPは前年度比0.1%減と5年ぶりのマイナス成長となった。
消費税率を10%に上げた直後の19年10~12月期の実質GDPは前期比年率で7.3%減だった。今年1~3月期のマイナス幅はQUICKがまとめた民間エコノミスト予測の中心値(年率4.8%減)より小さいものの2四半期連続のマイナス成長は国際的にはテクニカルリセッション(景気後退)とみなされる。
4~6月期は緊急事態宣言に伴う外出自粛や飲食店などの幅広い休業で一段と大きく落ち込むことが予想される。
1~3月期はGDPの半分以上を占める個人消費が前期比0.7%減り、2四半期連続のマイナスとなった。増税前の駆け込み消費からの反動減で大幅マイナスを記録した19年10~12月期(2.9%減)から一段と落ち込んだ。外出自粛やイベント中止の影響で、外食や旅行、レジャー関連の消費が急減した。
消費とともに内需の柱である設備投資も0.5%減と2四半期連続で減少した。世界経済の先行きの悪化懸念から企業に設備投資を先送りする動きが広がった。特に増産につながる生産用機械への投資が減ったという。
住宅投資は4.5%減。19年10~12月期の2.5%減からマイナス幅は拡大した。消費税率引き上げによる影響で弱い動きが続いた。これまで底堅かった公共投資も0.4%減り、5四半期ぶりのマイナスとなった。内需全体でGDPを0.7%分押し下げた。
輸出は6.0%減と2四半期ぶりのマイナスだった。マイナス幅は東日本大震災直後の11年4~6月期(7.5%減)以来の大きさだった。モノの輸出は感染拡大が先行していた中国向けを中心に低迷し、2.3%減った。サービスの輸出は19.1%減。GDP上はサービスの輸出に区分されるインバウンド(訪日客)消費が急減した。
輸入は4.9%減で2四半期連続のマイナスに沈んだ。原油や天然ガスの輸入減に加え、日本人の出国が減り海外での支出も減った。新型コロナでサプライチェーン(供給網)が寸断されたことも響いた。
外需全体のGDPへの寄与度はマイナス0.2%だった。GDPの外需は輸出から輸入を差し引いて算出する。1~3月期は輸入の落ち込みも大きかったため、GDPへのマイナス寄与度は小幅にとどまった。
生活実感に近い名目でみた1~3月期のGDPは前期比で0.8%減、年率換算では3.1%減だった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前期比プラス0.1%だった。
4~6月期のGDPマイナス幅は年率で20%を超え、戦後最大に達するとの見方が多い。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2019/1-32019/4-62019/7-92019/10-122020/1-3
国内総生産GDP+0.6+0.5+0.0▲1.9▲0.9
民間消費+0.1+0.6+0.1▲3.3▲0.9
民間住宅+1.5▲0.3+1.2▲2.5▲4.5
民間設備▲0.5+0.9+0.2▲4.8▲0.5
民間在庫 *(+0.1)(+0.0)(▲0.3)(+0.0)(▲0.0)
公的需要+0.3+1.6+0.8+0.3▲0.0
内需寄与度 *(+0.1)(+0.8)(+0.3)(▲2.4)(▲0.7)
外需寄与度 *(+0.5)(▲0.3)(▲0.2)(+0.5)(▲0.2)
輸出▲1.8+0.2▲0.6+0.4▲6.0
輸入▲4.5+1.8+0.7▲2.4▲4.9
国内総所得 (GDI)+1.1+0.5+0.2▲1.9▲0.9
国民総所得 (GNI)+0.8+0.5+0.1▲1.9▲0.8
名目GDP+1.1+0.6+0.4▲1.5▲0.8
雇用者報酬 (実質)+0.4+0.7▲0.3▲0.2+0.7
GDPデフレータ+0.2+0.4+0.6+1.2+0.9
国内需要デフレータ+0.3+0.4+0.2+0.7+0.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率が前期に続いてマイナスを示し、GDPの各コンポーネントは軒並みマイナス寄与を示し、中でも、赤の消費が大きなマイナスを記録しています。

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まず、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルなシグナルを別にしても、日本経済が景気後退にある現状は明らかになりました。景気転換点がいつになるかはともかく、足元の1~3月期も4~6月期も、満場一致でエコノミストは景気後退を認定することと思います。たぶん、昨年2019年10~12月期もそうだという気がします。ただ、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、季節調整済みの系列による前期比年率で▲4.8%であり、まずまず、「こんなもん」というのが多くのエコノミストの感想ではなかろうか、と私は勝手に想像しています。この景気落ち込みの大きな要因は、これまた、満場一致で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響であり、国内では拡大防止のための外出や一部ながら経済活動に対して自粛要請が出されましたし、海外、特に1▲3月期については中国の経済も大きな停滞を示したことから、外需もマイナス寄与を示しています。消費は外出自粛などが直接的な要因でしょうし、設備投資については輸出の落ち込みと先行き不透明感の影響などから減少を続けています。外需もマイナス寄与を示しています。COVID-19については、感染拡大が明らかに日本よりも中国が先行し、1~3月期については季節調整済みの前期比で見て輸出入ともに減少しているわけですが、輸入の▲4.9%減を上回って、輸出が▲6.0%の減少を記録しています。加えて、先行きについて考えると、本格的なCOVID-19の経済的影響が現れるのは4~6月期であり、直感的ながら、前期比で数パーセント、前期比年率なら20~30パーセントのマイナス成長となる可能性すらあります。先週の段階で、8都道府県に絞り込まれた特別警戒地域以外の39県については非常事態宣言が解除されましたし、私のようなシロートの目から見れば、もちろん、第2波、第3波などの何度かの揺り戻しはあるとはいえ、COVID-19の影響がもっとも大きいのは現在の4~6月期ではなかろうかと考えられます。ただ、7~9月期以降のV字回復というのはもはや望み薄であり、厚生労働省ご推奨の「新しい生活様式」の下で、本格的な景気回復には相当な時間を要する可能性が高いと考えるべきです。例えば、あくまでご参考ながら、日経新聞のサイトでは「1~3月GDP3.4%減、コロナで『回復に3年半』の声も」と題する記事が掲載されていたりします。

ホンの10年余り前の2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻後の景気後退を「50年に1度」とか、「100年に1度」とか表現していたのを記憶しています。その2008年9月の直前の人事異動で私は東京を離れて長崎大学経済学部に出向したんですが、今回も、この4月から再就職で大学教員に転じたわけで、どちらも、それほど頻度高くないと考えられる大きなショックを大学の研究者として目の当たりにしてしまいました。

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2020年5月17日 (日)

オススメのオンライン会議システムやいかに?

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どうでもいいことながら、ここ数日前からGMailに接続すると、左ペインの下の方にMeetというのが現れます。newのマークも麗々しく、「会議を開始」と「会議に参加」が並びます。新たなオンライン会議システムなんでしょうか?
我が母校である京都大学はGmailを使った生涯メールのサービスを提供していたりするんですが、私がお勤めしている大学は、かなりの程度にMicrosoftの利用が進んでいて、Skypeを使ったオンライン会議が少なくありません。また、独立系(?)かどうか知りませんが、Zoomを使ったオンライン授業のやり方に関するFD(=Faculty Development、すなわち、大学教員のお勉強会のようなもの)を開催したりしたこともあります。私もzoomでオンライン授業をしたりしています。
Googleは基本的にHangoutsのサービスを提供していて、Slackを通じた接続もできる、と聞いたことがありますが、私はHangoutsもSlackも使ったことがありません。Meetというのは、Gooleが提供する新しいオンライン会議システムなんだろうとは理解しますが、まだ、私には新し過ぎて理解がはかどっていません。

今日も少し自転車に乗って京都の街に出て、家電量販店を見て回ったりしたんですが、オンライン会議に必要なヘッドセットやマイクなどは売り切れ、もしくは、品薄状態が続いているようです。マスクはぼちぼち売られているんですが、それほどのハイテク製品とは思えないものの、ヘッドセットやマイクなどは家庭で手作り、というわけには行かなさそうな気がします。

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2020年5月16日 (土)

新刊読書はないものの読み逃していた本の読書感想文!!!

定例の土曜日の読書感想文ながら、今週については新刊書はありません。ただ、住まいは特別警戒地域でまだ非常事態宣言は解除されておらず、関西圏内でも屈指の蔵書を誇る京都市立図書館は閉館していますが、大学の図書館は利用可能になりましたので、何冊か新刊書も借りてみました。昨日からユヴァル・ノア・ハラリ最新刊『21 Lessons』を読んでいます。来週の読書感想文では、他の何冊かとともに取り上げることができると思います。なお、現役の大学生ででもなければ、大学の図書館を利用する人はそれほど多くないと思いますが、実は、大学の図書館はかなり幅広い図書を収集しています。当然です。私は10年前まで長崎大学の在籍していましたが、そのころ、少し遅れて直木賞受賞作の山本兼一『利休にたずねよ』を読んだ記憶があります。つまらない思い出話しでした。

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まず、W.H. マクニール『疫病と世界史』(新潮社) です。私が読んだのは上の表紙に見られる1980年代半ばに新潮社から出版された邦訳なんですが、今では上下に分けて中公文庫から出版されています。著者はカナダ出身で、長らくシカゴ大学において歴史学の研究者をしていました。20世紀後半を代表する米国の歴史家の1人です。英語の原題は Plagues and Peoples であり、1976年の出版です。本書は、翻訳家の山形浩生さんなどによれば、ダイヤモンド教授の『銃・病原菌・鉄』のネタ本のひとつといわれていたりします。他方、王朝の一代記を中心とする歴史学から疫病などの世界的なリンケージを重視した現代的な歴史学、いまのグローバル・ヒストリーへの系譜を作ったのはウランすのアナール学派であって、その代表者は『地中海』のブローデルなどですが、米国の歴史学でもマクニールなどは本書で新たな視点を切り開いていたりしているわけです。ただ、本書の場合、疫病が世界史で果たした役割は、あくまで、人口増加の抑制や人口減少にとどまっており、本書原題の後半の人々の数的な把握にとどまっています。すなわち、生産や生活様式とかの質的な部分には踏み込み不足となっている恨みはあります。私のような経済誌を学んだエコノミストから見て、典型的には、産業革命との関わりについては物足りない気がします。もっとも、逆に、というか、何というか、アナール学派で大きく批判された質的な面の「集合心性」といったわけのわからない概念を作り出すようなマネはしていないのはいい点かもしれません。世界を揺るがす新型コロナウィルス感染症(COVID-19)について考えるに当たっても、ジェニファー・ライト『世界史を変えた13の病』(原書房)ダイヤモンド教授の『銃・病原菌・鉄』上下(草思社文庫) などとともに読み返すにもいいような気がします。

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そのまま一気に最後で、ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』上下(岩波書店) です。著者は、おそらく、多くの読者から北米でももっとも左派・リベラル派と見なされているであろうジャーナリストです。英語の原題は The Shock Doctrine となっていて、邦訳はそのまんまです。副題も英語の原題の The Rise of Disaster Capitalism が『惨事便乗型資本主義の正体を暴く』と訳されています。本書では、ハリケーン「カトリーナ」の被害によるニュー・オーリンズの低所得者向け住宅や公立学校の一掃に関する取材から始まって、自然災害や政変など、経済学的には不連続と見なされる微分不可能点で政策が一変され、副題にあるように、惨事に便乗して市場原理主義的な政策に変更される手法について論じています。特に、シカゴ学派のフリードマン教授が槍玉に上がっていて、私が3年余りを過ごしたチリのアジェンデ大統領に対するクーデタにより政権を掌握したピノチェト独裁制に対する批判にもつながっています。もちろん、現在のCOVID-19の拡大による経済的なマイナスの影響ついても、考えようによっては、ものすごい惨事ですので、便乗した何らかの悪巧みめいた政策が展開される恐れがあるかもしれず警戒すべきです。そして、私は、このCOVID-19という惨事に便乗して政策変更する際に、注意すべきは2つの方向かと考えていました。すなわち、第1に、生産や国民生活などを国家的な統制下に置くというファシズム的な方向です。マスクが足りないから企業に生産を命じたり、要請したり、今も続いているように、国民生活にかなり直接の規制や統制を加える方向です。そして、もうひとつ、第2に、幅広く免疫ができるのを待つなどを口実にして逆に放置するに任せて、富裕層と貧困層の格差をさらに拡大することを許容する政策です。今のところ、日本は第1の方向に近いんですが、第2に方向の要素もあります。しかし、少なくとも、国民の支持は得ているように見えます。他方で、「自粛警察」と称されるような行き過ぎた方向も容認されているようにも見えます。COVID-19終息後の企業活動や国民生活のあり方も見据えて、いま現時点で、何を必要とするのか、何を警戒すべきなのか、本書を読んでじっくりと考えたいと思います。

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2020年5月15日 (金)

石油価格に連動して大きく下落した4月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から4月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲2.3%の下落と、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響による原油価格の大幅下落などから、とうとう、先月公表の3月統計からヘッドラインでもマイナスに転じ、4月統計ではマイナス幅を拡大しています。また、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲3.7%の下落と試算されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業物価指数、前年比2.3%下落 原油安響き2年半ぶり低水準
日銀が15日発表した4月の企業物価指数(2015年平均=100)は99.6と、前年同月比で2.3%下落した。下落は2カ月連続で、下落率は16年11月以来の大きさだった。新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な経済活動の停滞で原油価格が大きく下落し、影響を受けやすい石油・石炭製品や化学製品の価格に下押し圧力が大きかった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。指数が100を下回るのは17年11月(99.8)以来だ。水準としては17年10月(99.4)以来2年6カ月ぶりの低さだった。円ベースでの輸出物価は前年同月比で6.6%下落した。下落は12カ月連続。前月比では1.1%下落した。輸入物価は前年同月比13.1%下落し、前月比でも5.6%下落した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。19年10月の消費税率引き上げの影響を除いたベースでの企業物価指数は98.1と前年同月比で3.7%、前月比で1.4%下落した。前年同月比の下落率は16年8月以来の大きさだった。
4月は原油の国際指標油種のひとつであるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物で当時の期近物が史上初めてマイナスとなるなど、原油価格が大きく下落した。品目別では原油価格の影響を受けやすい石油・石炭製品や化学製品の価格に下押し圧力が大きかった。新型コロナ拡大による需要減少で鉄鋼や飲食料品の価格も下落した。
外出自粛による家庭での食料品需要の高まりから農林水産物の価格は上昇した。もっとも5月に入っても本格的な経済活動の再開には至っていない。今後も新型コロナによる価格下落圧力は続くとみられ、日銀は今後も物価動向を注視していく姿勢だ。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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ということで、繰り返しになりますが、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率が▲2.3%の下落で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲1.5%の下落ながら、予想レンジの下限は▲2.4%でしたから、ギリギリでレンジの範囲内ということです。別の観点では、引用した記事にもある通り、季節調整していない原系列の前月比で見て4月は▲1.5%の下落ですから、前年同月比▲2.3%下落のうち、かなり大きな部分が4月単月で生じていて、決して、1年間12か月かけてジワジワと下げたわけではない、と考えて差し支えありません。しかも、その単月の下げの大きな部分が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、ロックダウンとまでいわないとしても、日本に限らず世界規模で外出などの自粛や営業の規制が実施され、移動をはじめとする石油需要が激減し、石油価格が大きく低下した結果であると考えるべきです。もちろん、石油価格以外にも経済活動の停滞ないし需要の減退に伴う幅広い価格下落も含めてCOVID-19の影響が見られます。
例えば、最大の物価下落要因のひとつである石油価格について、Bloomberg などをはじめとして広く報じられているように、WTIの5月先物は4月20日の終値でバレル▲37.63ドルのマイナス値をつけています。ただし、このマイナス値は、あくまで、米国で在庫が積み上がり、保管スペースが確保できなくなるとの見方から、差金決済のための投げ売りが加速した一時的な結果であり、当然ながら、石油のマイナス値にサステイナビリティはなく、その後はプラス値に回帰しています。そして、通常時でも私は石油価格などの相場モノには見識ないんですが、COVID-19禍の現状ではますますわけも判らず、ひとさまのリポートを引用すると、大和アセットマネジメントのリポートのように、「原油は7月から需要超過になるか」とのタイトルの下、「今年半ばから原油在庫が順調に減少していけば」との仮定付きながら、「原油価格が堅調に推移する展開が期待できる」とする分析もあり、加えて、いつものみずほ証券のリポート「マーケット・フォーカス 商品:原油 (4月21日付け)」を引用すると、「20年後半~21年に世界経済が回復に向かえば原油価格も戻りを試しそう」であるとし、「4-6月期の原油価格の予想レンジは1バレル=15~30ドルと予想」しています。まあ、今年後半に石油需要が回復する可能性をともに示唆している一方で、価格についてはそれほど上昇するとも思えず、石油価格に連動する我が国の物価は引き続き低空飛行が続きそうな予感がします。強くします。

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2020年5月14日 (木)

大きなマイナス成長を見込む1-3月期1次QE予想!!!

先月末4月28日の雇用統計や4月30日の鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計など、ほぼ必要な指標が利用可能となり、来週月曜日5月18日に1~3月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定で、すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしていて、今回は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための緊急事態宣言などに基づく外出自粛の経済的影響などに注目が集まっています。COVID-19の本格的な影響は、むしろ、4~6月期にこそ現れるとのみ方もあり、テーブルの下3機関以外はほぼ正面から先行きを取り上げています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲1.2%
(▲4.8%)
4~6月期の成長率は、リーマン・ショック後の2009年1~3月期(前期比年率▲17.8%)並みの落ち込みとなる見込み。緊急事態宣言の発令で国内の消費・投資活動が一段と縮小するほか、海外での活動制限の広がりを受けて輸出の減少幅もさらに拡大。もっとも、米欧ほど厳しい活動制限を講じていないため、米欧ほどの落ち込み(前期比年率▲30%程度)にはならない見通し。
大和総研▲1.5%
(▲5.8%)
先行きの日本経済は新型コロナウイルス感染拡大の影響6を受け、急速な悪化が見込まれる。
個人消費は新型コロナウイルスによる活動自粛の影響を受け、旅行・レジャー関連の消費を中心に当面は厳しい状況が続くだろう。感染収束後は、経済対策による消費の下支えが期待されるものの、可処分所得の減少や雇用環境の悪化が下押し要因となり、消費がコロナショック前の水準に戻るまでには時間を要するだろう。
住宅投資は、緊急事態宣言を受けて一部の住宅メーカーの工事が中断されていることが下押し要因となろう。こうした供給制約が剥落した後も、新型コロナウイルス感染拡大に伴う雇用・所得環境の不確実性の高まりが投資を下押しし、弱い動きが続くと考えられる。
設備投資は内外経済の先行き不透明感が高まる中、低迷するだろう。人手不足に対応した合理化・省人化投資や研究開発投資など、一部の費目では増勢を維持する可能性があるものの、それ以外の投資は先送りされるとみられる。
公共投資については、緊急事態宣言を受けてゼネコン各社が一部工事を中断していることが下押し要因となろう。こうした供給制約が剥落した後は、前述した「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」や「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(2019年12月閣議決定)に下支えされ、高水準での推移が続くとみている。
輸出は、世界経済の急速な悪化に伴い落ち込むことが見込まれる。4-6月期は特に欧米向けを中心に大幅に減少するだろう。一部地域ではロックダウンを緩和する動きが出始めているものの、世界経済の本格的な回復はいまだ見通せず、輸出も弱い動きが続くだろう。
みずほ総研▲1.1%
(▲4.3%)
1~3月期の日本経済は、3月末にかけて新型コロナウイルスの影響が強まり、大幅なマイナス成長になった模様である。さらに、消費活動や生産活動に対する新型コロナウイルスの影響が本格化する4~6月期の実質GDPは、年率2桁のマイナス成長となりそうだ。
国内では4月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言が出され、外出自粛の要請に加え、娯楽施設などを対象に休業要請がなされた。4月16日には緊急事態宣言の対象が全国に拡大されており、4~6月期の個人消費が1~3月期以上に落ち込むことは避けられそうもない
3月調査時点の日銀短観では企業が設備投資計画を大きく修正する動きはみられなかったが、足元の内外需要の急減を受けて資金繰りに懸念が生じている企業も多く、投資行動は急速に慎重化しているとみられる。4~6月期は設備投資のマイナス幅も大きく拡大するであろう。
新型コロナウイルス感染防止のためのロックダウンは、先進国だけでなく、アジア・南米・中東・アフリカなどの新興国にも拡大している。そのため、4~6月期の輸出は1~3月期を上回るマイナスになる可能性が高い。
ニッセイ基礎研▲0.9%
(▲3.6%)
4月以降は、緊急事態宣言の発令とそれに伴う休業要請を受けて、民間消費、住宅投資、設備投資の大幅減少が不可避とみられることから、経済活動の縮小ペースは一段と加速する可能性が高い。現時点では4-6月期の実質GDPは前期比年率▲30%台のマイナス成長になると予想している。
第一生命経済研▲1.2%
(▲4.6%)
新型コロナウイルスの感染拡大による悪影響が大きくなり始めたのは2月末以降であり、1-3月期の結果には悪影響の一部しか反映しきれていない。4-6月期は悪影響がフルに効いてくる上、4月に発令された緊急事態宣言後、経済活動の抑制度合いが一層強まったことから、景気は急激な悪化となる可能性が高い。4-6月期は前期比年率で2割を超えるマイナス成長になると予想している。
なお、足元における悪化はサービス業を中心とした非製造業に集中しているが、今後は製造業でも悪化が加速する可能性が高い。感染拡大抑制のためのロックダウンの影響により海外経済が急激に悪化していることから、日本からの輸出も今後大幅な悪化となることは確実な情勢である。輸出減を受けて国内でも工場の操業停止等の動きが広がっており、生産は今後急速に悪化するだろう。内外需ともに状況は非常に厳しく、下支え役不在のなか、日本経済は全面的な落ち込みとなる可能性が高い。
伊藤忠総研▲0.2%
(▲1.0%)
今回実施された推計方法の修正でも3月の落ち込みは十分に織り込まれていないとみられ、2次速報では下方修正される可能性が高い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲1.7%
(▲6.5%)
2020年1~3月期の実質GDP成長率は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて内外需要が急速に冷え込んでおり、前期比-1.7%(年率換算-6.5%)と2四半期連続で大幅なマイナス成長に陥ったと予測される。新型コロナウイルスの感染による経済への打撃の大きさを、改めて確認することになりそうだ。
三菱総研▲1.3%
(▲5.1%)
2020年1-3月期の実質GDPは、季節調整済前期比▲1.3%(年率▲5.1%)と、2四半期連続の大幅なマイナス成長を予測する。国内外での新型コロナウイルスの感染拡大により、内需や輸出入が総じて減少したとみられる。

ということで、各シンクタンクとも2四半期連続のマイナス成長は確定というカンジです。当然ながら、主因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的な影響であり、足元の4~6月期にはさらにマイナス幅が拡大して、3四半期連続のマイナス成長がほぼほぼ確定です。焦点はどこまで4~6月期のマイナス幅が拡大するか、というような気すらします。ただ、5月末までの緊急事態宣言の延長とはいいつつも、13の特別警戒都道府県はともかく、徐々に経済活動再開の動きも見え始めていることも事実です。その昔に、COVID-19拡大防止が達成されたら、あるいは、ひょっとして、V字回復の可能性もなくはなかったような議論もあったんですが、そういった楽観的な見方は吹き飛びました。ワクチン開発が進まなければ、私の直観ながら、「自粛と感染拡大沈静化」のセットと「自粛解除と感染拡大再発」のセットという循環が徐々に減衰しつつ繰り返されるんではないかという気がします。繰り返しになりますが、ワクチン開発が進まなければ長期戦なのかもしれません。いずれにせよ、私には先行きは見通せません。
下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2020年5月13日 (水)

大きく悪化した4月の景気ウォッチャーと貿易収支が赤字に転じた経常収支!!!

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲6.3ポイント低下して7.9まで落ち込み、先行き判断DIも▲2.2ポイント低下して16.6を記録しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆9710億円の黒字を計上しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の街角景気、現状・先行きとも指数は過去最悪 新型コロナで
内閣府が13日発表した4月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、3カ月前と比べた足元の街角の景気実感を示す現状判断指数(DI、季節調整済み)は7.9と前月から6.3ポイント低下(悪化)した。2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数(DI、季節調整済み)も16.6と前月から2.2ポイント低下した。いずれも比較可能な02年以降では最低水準を更新した。
現状、先行きともに指数を構成する家計、企業、雇用のいずれもが大幅に悪化した。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言の発出や対象地域の拡大、それに伴う店舗の休業や外出自粛の広がりなどが響いた。内閣府は現状の基調判断を前の月の「新型コロナの影響により、極めて厳しい状況にある」から、「新型コロナの影響により、極めて厳しい状況にある中で、さらに悪化している」へ下方修正した。先行きについても「厳しさが増す」との見方を示した。調査期間は4月25~30日だった。
足元の状況を巡っては「完成車メーカーの製造ラインがストップしている関係で、製造現場の3割程度は休業している状態だ」(東海の輸送用機械器具製造業)、「感染対策をしても売り上げにはつながらないため、収益率の悪化が懸念される」(近畿の建設業)といった声が出ていた。緊急事態宣言を受けた営業自粛などで「ほぼ商売はできていない」(東北の百貨店)、感染拡大防止のため「営業時間の短縮、一部店舗の休業を余儀なくされている。宣言後、さらに来客数が減少した」(東海の高級レストラン)といった声もあった。
先行きに懸念は広がっている。「緊急事態宣言が解除されても、当面は旅行やレジャー控えが想定され、従来のような来園者数は期待できない」(北関東のテーマパーク)など、持ち直しをすぐには期待しにくいとの見方が出ている。「利益率の高い製造業の荷物量が前年を大きく下回っている一方、利益率の低い通販の荷物が前年よりも多い。この状況は今後も続きそうだ」(近畿の輸送業)との声もあった。
3月の経常収支、1兆9710億円の黒字 69カ月連続黒字
財務省が13日発表した3月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆9710億円の黒字だった。黒字は69カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は2兆1610億円の黒字だった。
貿易収支は1031億円の黒字、第1次所得収支は2兆609億円の黒字だった。
同時に発表した2019年度の経常収支は19兆7615億円の黒字だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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景気ウォッチャーはマインド指標ですから、現在の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大といった大きなショックあった場合、ソフトデータは生産や所得などのハードデータよりも先行して大きく変化する、という特性があるとはいうものの、みごとなくらい、大きく落ちました。現状判断DIも、先行き判断DIも、それぞれのコンポーネントである家計動向関連DIも、企業動向関連DIも、雇用関連DIも、すべて落ち込んでいます。なお、どうでもいいことながら、DIの算出は0.25刻みの5段階でもっとも「悪い」、ないし、「悪くなる」がゼロにハズなんですが、何と、COVID-19感染拡大防止のための外出自粛などでもっともダメージが大きい業種のひとつと見なされている飲食関連DIが4月はマイナスをつけています。もちろん、季節調整に起因する統計の技術的な特異現象なんですが、飲食関連DIだけに特徴的な現象のような気もします。ただし、小売関連DIについては、もちろん、大きく低下しているものの、相対的に飲食関連ほどは悪化していないのも事実です。また、何度かこのブログでも書いているように、製造業と非製造業の業種別に見て、COVID-19感染拡大防止のための緊急事態宣言に基づく外出自粛などは、当然に、飲食関連をはじめとする非製造業におけるダメージが製造業よりも大きい、との結果が示されています。現状判断DIで見て、今年1月時点では製造業40.1に対して、非製造業はまだ43.2でしたが、2月でもまだ製造業31.0に対して非製造業29.9と大きな差はなかった一方で、3月は製造業21.7、非製造業17.5、そして、4月は製造業12.1に対して非製造業は8.3まで落ちました。基本的に、緊急事態宣言に基づく外出自粛などの一時的な結果と私は受け止めていますし、緊急事態宣言が解除されると徐々に差は小さくなる可能性が高いとはいうものの、個別の企業にとってはそれを乗り切れるかどうかが、都道府県別の支援体制の手厚さの違いもあって、重要となる可能性もあります。ただ、ハードデータの生産や売上げや所得と違って、ソフトデータのマインドは急速に回復する可能性も捨てきれませんが、今回ばかりはV字回復は望み薄な気がします。もっとも、先行き判断DIが現状判断DIほど悪化していないのは、私には先行きに対する国民の意識の高さを示しているように見えます。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。ということで、2月統計では、中国における春節休暇の延長があって大きな経常黒字を計上しましたが、3月にはいくぶんなりともその効果は剥落しつつ、黒字は黒字ながらも大きく経常収支の黒字幅は縮小しました。経常黒字縮小の大きな要因は所得要因から貿易収支が赤字に転じたことです。すなわち、季節調整しきれていない中華圏の春節効果に加えて、まだCOVID-19の感染拡大ペースが海外に比較して日本では緩やかであったため、季節調整済の前月比で見て、輸入が前月比で増加した一方で、輸出が減少を示しています。もっとも、COVID-19の感染拡大は、やっぱり、海外で早期に終息に向かっているように見えますし、その分、経済活動も日本より早くに再開の動きが出始めていますので、この先、景気局面のビミョーなズレにより貿易収支は所得効果から黒字に復するものと私は考えています。ただ、為替による価格効果については方向性が見えません。

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2020年5月12日 (火)

大きな低下を示した3月の景気動向指数から景気後退局面入りは明らか!!!

本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲8.1ポイント下降して83.8を、CI一致指数も前月から▲4.9ポイント下降して90.5を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、8か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の景気一致指数、下げ幅9年ぶり 新型コロナ響く
内閣府が12日発表した3月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比4.9ポイント低下の90.5だった。新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で2カ月連続の低下となり、指数は11年6月(89.3)以来8年9カ月ぶりの低い水準となった。下落幅は東日本大震災が発生した11年3月(6.3ポイント低下)以来、9年ぶりの大きさだった。
内閣府が一致指数の動きから機械的に求める景気動向指数の基調判断は、8カ月連続で「悪化」となった。8カ月連続の「悪化」は、08年6月からの11カ月連続以来の長さ。一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のすべてがマイナスに寄与した。新型コロナによる企業活動や消費への影響は深刻化しており、なかでも「投資財出荷指数(除輸送機械)」や「有効求人倍率(除学卒)」、「耐久消費財出荷指数」のマイナス寄与度が大きかった。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比8.1ポイント低下の83.8と09年6月(83.3)以来の低水準となった。先行指数の下げ幅は1985年1月の統計開始以降で最大となる。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比0.8ポイント上昇の101.7だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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CI一致指数をもう少し詳しく見ると、消費税率の引上げが実施された昨年2019年10月にドンと▲3.7ポイント下がった後、今年に入って1月にわずかに上昇した以外は下がり続けています。本日公表の3月統計では、消費税率引上げのあった昨年2019年10月を上回る▲4.9ポイントの下降となっています。CI一致指数のコンポーネントは9項目ありますが、月次データ公表時には利用可能でなくトレンド成分を通じた寄与のみとなる営業利益(全産業)を別にすれば、8項目すべてがマイナスを記録しています。特に大きなマイナス寄与を示したのは、投資財出荷指数(除輸送機械)、有効求人倍率(除学卒)、耐久消費財出荷指数、商業販売額(小売業)(前年同月比)の順となっており、企業部門も家計部門もともに全滅、といったカンジです。ただ、そうはいいつつも、3月データですので、まず、海外需要の減退が先行し、輸出が反映される製造業や企業部門が目立って落ちていることも確かです。そして、何度か、このブログでも指摘したように、4月からは緊急事態宣言に伴って外出自粛も始まっており、宿泊や飲食などの非製造業が大きなマイナスとなることは当然であり、景気動向指数に限らず多くの経済統計で3月よりも4月の落ち込みの方が大幅なものになると考えるべきです。引用した記事には、最初のパラで、「下落幅は東日本大震災が発生した11年3月(6.3ポイント低下)以来、9年ぶりの大きさ」とありますが、ひょっとしたら、2011年3月の下落幅を上回る可能性もあります。内閣府の基調判断を示されなくても、景気が後退局面に入っていることは明らかです。

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2020年5月11日 (月)

日本経済研究センターによる3月月次GDPは内外需とも減少したマイナス成長!!!

本日、日本経済研究センター(JCER)から3月の月次GDPが明らかにされています。新型コロナウィルス(COVID-19)の経済的な影響が出始めたタイミングで、内外需とも減少しての前月比前月比▲3.5%成長を記録しています。下のグラフは、日本経済研究センターのサイトから引用しています。

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昨年2019年10月の消費税率引上げの際は▲3.7%でしたし、その前の2014年4月の際は▲4%減でしたので、改めて、消費税率引上げのインパクトの大きさを実感しています。ただ、先日の米国雇用統計から見ても、COVID-19の経済的な影響は4月にさらに大きく現れることは明らかです。3月の月次GDPを見ても、3月時点では海外経済に起因する製造業への影響、特に輸出の減少が外需の寄与度▲2.3%ポイントと大きくなっています。他方で、直感的ながら、いくぶんなりとも輸出の影響を受ける製造業に加えて、4月から緊急事態宣言に伴って飲食業をはじめとする非製造業への下押し圧力が本格化しましたから、非製造業も4月から大きく減少している可能性が高い、と私は考えています。4月の月次統計、鉱工業生産指数や有効求人倍率などは非製造業を中心に3月よりさらに悪化を示すことは確実です。

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2020年5月10日 (日)

昨日5月の第2土曜日は「盆栽の日」World Bonsai Day!!!

昨日、5月9日、すなわち、5月の第2土曜日は「盆栽の日」World Bonsai Day だそうです。専門外ながら、あくまで一般教養として時折見ている National Geographic のサイトに5月号からの記事として、See the tiny tools required for the ancient art of bonsai が掲載されています。タイトルからほのかに想像される通り、盆栽そのものよりも、盆栽に使う道具類に着目した記事です。
今年は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために、国内外ともにイベントなどは中止や延期されているようでしたが、国内webサイトではほとんど注目されていない一方で、なぜか、米国の首都ワシントンDCに本部を置く National Bonsai Foundation なる団体が、World Bonsai Day に関する記事を掲載して、"a global celebration of the art of bonsai" として紹介していたりしました。不勉強にして私はまったく知りませんでしたが、とても国際的な盆栽のイベントのようです。

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2020年5月 9日 (土)

左派・リベラル派ではない政権交代必要論を読む!

今週の読書は1冊だけで、以下の通りです。緊急事態宣言のため、図書館が軒並み閉館していて、来週以降は読書感想文で取り上げるような読書はないものと覚悟しています。

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田中信一郎『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』(現代書館) です。著者は、千葉商科大学の研究者であり、専門分野は政治学です。現在の政治の仕組みをかなり判り易く解説した上で、政権交代の必要性を解き明かしています。政治の転換は現在の与党には出来ないと断言し、野党への政権交代の必要性を解説しています。その際の現在の政治の最大最悪なポイントは、まさに「省あって国なし」のようなタコツボ的な部分最適化であると指摘しています。ですから、左派・リベラル派のような「反緊縮」とは違いますし、かなり独特の観点だという気がします。私はエコノミストながら、その昔のアダム・スミス的に、各個人が最適化を目指せば神の見えざる手の予定調和により経済全体が最適化される、という厚生経済の命題が今も成り立つとは決して考えませんが、著者の主張する全体最適化の理論は、とてもよく理解できる一方で、ホントにちゃんと運用するとなれば、コストが高そうな直観を拭えませんでした。加えて、人口減少をやや過大に悲観しているような印象もある一方で、人口減少を食い止めるのか、それとも、人口減少に適応したしシステム構築を目指すべきなのか、やや腰が定まらない気もしました。ただ、経済成熟に関しては、成長率の極大化ならともかく、今さら昔の高成長を目指すというのは、どうも政策目標にならないような気がしますから、人口減少や経済成熟に対しては適応するしかないんだろうと私は考えています。なお、最後にどうでもいいことながら、上の表紙画像の帯に見えるお写真は、推薦者の金子教授であって著者ではないような気がします。もっとも、私は著者とは面識がなくて、お顔も存じませんので、あくまで推測です。

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2020年5月 8日 (金)

新型コロナウィルス(COVID-19)の破壊的な経済への影響を4月の米国雇用統計に見る!!!

日本時間の今夜、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から▲2000万人超の減少と新型コロナウィルス(COVID-19)の影響が現れています。失業率も先月から10%ポイント超の上昇で14.7%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初から6パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy loses 20.5M jobs and unemployment soars to 14.7% in April as coronavirus pandemic spreads
The U.S. economy lost 20.5 million jobs in April and the unemployment rate soared to 14.7% -- both record highs -- laying bare the starkest picture yet of the crippling gut punch delivered by the coronavirus pandemic.
In just a month, the historically dismal performance abruptly wipes out all of the nation's job gains since the Great Recession of 2007-09.
Economists surveyed by Bloomberg forecast 22 million job losses and a 16% unemployment rate.
The reversal has been head-spinning: The jobless rate had touched a 50-year low of 3.5% in February before rising to 4.4% the following month amid the early effects of the crisis.
The share of Americans working or looking for jobs -- which together make up the labor force -- tumbled from 62.7% to 60.2%, lowest since 1973. Many people who lost jobs didn't look for work because of fears of catching the virus while job hunting, caring for sick relatives or watching kids who were home now that schools are closed. Also, with much of the economy shuttered, there were few jobs available.
The decline kept the unemployment rate from rising even further.

まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期だったんですが、米国経済が長らく景気回復・拡大を続けているために、このグラフの範囲外になってしまっているものの、現在の足元で米国経済が景気後退に入っていることは明らかです。ともかく、4月統計の大きな変動で縦軸のスケールを変更したため、その前の動向が見えにくくなっています。

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上のグラフを見て明らかな通り、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的な影響はすさまじいものがあります。別に、エコノミストでなくても軽く想像できた範囲ですし、すでに4月20日の時点で Chicago Fed National Activity Index (CFNAI) の3月データが公表されていて、上の雇用統計のグラフほどではないにしても、3月の時点で米国経済が大きく落ち込んでいたことを示していましたから、その意味では大きなサプライズではないのかもしれません。引用した記事の3パラめにもある通り、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは、雇用者の減少が▲2200万人、失業率は16%に跳ね上がる、ということでしたので、「こんなもん」という見方もできるかもしれません。ただ、もちろん、▲2000万人の雇用が失われたというインパクトには絶大なものがあります。米国の雇用者は昨年2019年当初から1億5000万人を超えていて、その13%強に当たり、従って、失業率も10%ポイント強の上昇を見せたわけです。しかも、これも引用した記事の最後のパラにあるように、先行きさらなる雇用の悪化が待ち構えている可能性が高いと考えるべきです。これまた、いうまでもないことですが、これは他人事ではありません。今月5月末には我が国でも4月の経済指標が公表される運びとなりますが、軒並み、上の米国雇用統計のグラフのように、我が国の経済指標もとてつもない悪化を示すデータが明らかになると覚悟すべきです。加えて、これまた、先行きはさらなる落ち込みが続く可能性についてもまったく米国とご同様と考えるべきです。

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2020年5月 7日 (木)

厚生労働省ご推奨の「新しい生活様式の実践例」やいかに?

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本日からゴールデンウィークが明けて、大学でもオンライン授業が始まりましたが、5月4日に開催された新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言を踏まえて、厚生労働省のサイトに「新しい生活様式」の実践例が上の画像の通り公表されています。何で見たのかすっかり忘れたんですが、どこかの誰かがいっていたように、「新しい生活様式」とは自粛を言い換えただけではないのか、という気がしないでもありません。ただ、マスクについては位置づけは変わらないながら、明確に、「感染防止の3つの基本」に入っています。位置づけが変わらない、というのは、自分が保菌者であったとしても周囲の人に感染させるリスクを軽減するためにマスクをする、という点です。私自身は授業も会議もオンラインで実施していて基本的に在宅勤務ながら、この先の非常事態宣言解除も見据えつつ、もしも大学に通勤するとすれば県境をまたいで、現在の特定警戒都道府県からそうでない県へ移動することになりますので、特に、「周囲の人に感染させるリスクを軽減する」という点は肝に銘じたいと思います。

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2020年5月 6日 (水)

いろいろ回って京都生活40年近いブランクは埋められるか?

緊急事態宣言が5月いっぱいに延長され、引き続き、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために、平日は在宅勤務が続き、今日までのゴールデンウィークは外出自粛が要請されていましたが、まあ、三密にはまったく当たらない自転車でのツーリングについては許容範囲ではないか、ということで、アチコチ自転車で走るとともに、ガイドブックや地図も買い込んで補強して、京都生活の40年近いブランクを埋めようと努めています。
まず、公共交通機関、というか、鉄道について、私の京都大学入学当初は京都駅から市電で通っていました。すなわち、路面電車です。ギリギリまだ市電が走っていて、北大路、西大路、九条大路と東大路=東山通と、東山七条から京都駅前にも伸びていました。京都大学のキャンパスは東山通沿いに展開していますので、まったく不便はなかったです。今は市営地下鉄になっています。私が大学を卒業した後に、まず、南北に走る烏丸線が開通し、その後、御池通りなどを走る東西線ができました。私の新しい住まいは現在この市営地下鉄が最寄駅となっていたりします。加えて、京阪電車についても出町柳まで延伸された鴨東線はありませんでした。当時、京阪は三条駅が北の終点で、その先は山科まで東に路面電車が通っていました。京阪電車については、さらに、三条から南の駅はそっけなく四条、五条、七条だったんんですが、いまでは祇園四条、東山五条となっています。
街中のお店については、まず京都駅周辺について、駅ビルのJR伊勢丹も、八条口のアバンティも、烏丸口のポルタも、私が大学を卒業してから出来たものです。もちろん、いくつかあるイオンモールもそうです。四条河原町の阪急百貨店はマルイに代わっていました。それから、あくまでご参考なんですが、梶井基次郎の「檸檬」に登場するお店について、レモンを買った方の八百卯は閉店したようですし、置いた方の丸善はまだありますが、私の大学在学中にはすでに「檸檬」オリジナルの場所ではなかった記憶があり、さらに、私の大学在学中の場所からさらに移っていた気がします。神社仏閣などの観光スポットでは別にして、相変わらず、河原町通り沿いの三条から四条あたりにかけてと京都駅前が、おそらく、地元民にとってのショッピングや外食などのお出かけスポットである点はおおむね変わりないと思いますが、私の大学在学中から北山通り沿いが脚光を浴び始めたように記憶していますが、その昔と同じく京都南部に新しい住まいを構えたため、まだ足が伸びていません。伏見に関しては、丹波橋から中書島にかけての酒どころは、大学在学中どころか、私の小さいころからも大きな変化内容で懐かしい気がします。

 

最後に、京都のミニ知識を2つほど披露してゴールデンウィークで回った京都の印象についての雑感を締めくくりたいと思います。まず、京都でもっとも有名なお寺のひとつである清水寺の宗派について知っている人は極めて少ないと思います。もちろん、wikipediaなどで調べればすぐに出てくるんでしょうが、実は、北法相宗という宗派です。「北」のつかない法相宗は阿修羅像などでも有名な奈良の興福寺を大本山とする宗派で、清水寺ももともとはそうだったんですが、戦後になって「北」をつけた北法相宗を開宗したと記憶しています。そしてもうひとつは、四条通りや五条通りで鴨川にかかる橋は四条大橋や五条大橋と呼ばれる理由です。その理由は、小橋があるからです。鴨川にかかるのは大橋で、その西側にある高瀬川にかかるのは小橋です。このため、高瀬川が流れ始めるのは丸太町通りと二条通りの間ですから、丸太町橋は大橋と小橋の区別はありませんが、二条から五条くらいまでは大橋と小橋の区別があります。なお、どうでもいいことながら、四条と五条の間にある団栗橋は鴨川にだけかかっていて、高瀬川にはかかっていませんから、大橋と小橋の区別はありません。ただし、今出川通りの加茂大橋だけは小橋がないにもかかわらず、大橋という名称になっています。昔は小橋があったのかもしれません。謎です。

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2020年5月 5日 (火)

zoomを使ったオンライン帰省をやってみる!!!

いろいろとあった末に、zoomを使ったオンライン帰省を試してみました。我が家は上の倅が社会人ながら、下はまだ大学生で、どちらも私と古女房の京都の住まいからは離れて住んでいます。両方に声をかけておいたんですが、上の倅の方はデスクトップで、スピーカーはイヤホンでなんとかなるとしても、カメラもマイクもないというので諦め、代わりに、というわけでもないんですが、下の倅が世話になっている叔母夫婦に入ってもらいました。叔母夫婦の長男、というのは私から見れば従兄弟になるわけですが、彼はどこかの携帯電話会社勤めですので、このあたりは体験済みということのようでした。
私は今までオンライン授業や大学の会議で、Skypeやzoomは使ったことがあるものの、クライアント側でしか使ったことがなく、ホスト側で使ってみたく、すなわち、ゴールデンウィーク明けのオンライン授業の練習を兼ねての試みでした。実際にやってみたところ、画質も音質もまずまずで、接続も安定していました。まあ、細かな顕微鏡写真を解析するというのでもなく、コンサートホールから中継するわけでもありませんから、ゼミなどの小集団授業なら十分使えるというカンジがします。下の倅の顔を見ながら夫婦でおしゃべりできるのは、古い言い回しながら、技術の進歩を実感しました。
私はこれから先、ゼミの説明会や相談会などで、ユニラテラルな動画配信を使用を予定していたんですが、この方面は詳しくないものの、動画よりもSkypeやzoomといったオンラインツールの方がサーバに対する負荷が小さいと聞きました。ゼミ説明会は一方的に私から話すとしても、相談会の方はインタラクティブに双方向で質疑できる方がいいのではないか、という気もします、強くします。
昨日夕刻には今月いっぱいの緊急事態宣言延長が決まりましたし、まあ、現在のような新型コロナウィルス感染症(COVID-19)対応は、長年大学教員をしてきた先輩方も初めてでしょうから、私のような新米教員が出来ることは限られているような気もします。精一杯、出来ることをやりたいと思います。

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2020年5月 4日 (月)

マスクと新型コロナウィルス感染症(COVID-19)終息後のニューノーマルについて考える!

天気がよくて自転車でアチコチ走っていると、フツーのドラッグストアではないお店、まあ、まったく違うというわけでもないんでしょうが、ディスカウントショップなんかでマスクの販売が再開されているのを見かけて、今日も、別のものを探してドン・キホーテに行くとマスクが売っていたので買ってみたりしました。よく知らないところのものだという気はしましたが、箱入り50枚で税抜き2500円を下回っていて、価格競争力はあるようでした。ただ、少し前のように、お客さんがマスクに群がって奪い合いになるようなことはまったくなく、手にとって眺めてはヤメにするという人も多かったように見受けました。
昨日からだと思うんですが、シャープがマスク販売の抽選を受け付けています。私はまったく期待はしないながらも運試しのつもりで応募してみました。広く報じられている通り、マスク50枚入り1箱2980円です。私自身は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大前は、不織布部分のフィルタリング能力とかはまったく判然としないながらも、単に、顔の造作によくフィットするという観点からマツキヨのマスクを愛用していたんですが、65枚入りで数百円ほどで売っていて、1000円を大きく下回っていました。
首尾よく早期に終息を迎えるとして、ポストCOVID-19の経済社会にはいろんな変化が現れて、ニューノーマルとなるんだろうと思いますが、少なくともマスクの価格が従来の水準に戻ることはないのだろうと覚悟しています。

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2020年5月 3日 (日)

我が家と大学周辺の自転車事情を考える!!!

今から思えば、はるか昔のような気がする緊急事態宣言前の4月3日付けのブログで、京都に引越してから Calamita Ciao のクロスバイクを買った旨を紹介していますが、さすがに季節なりに天気もよくなって気温も上がるようになったゴールデンウィークに入って、ボチボチ乗りこなし始めています。引越し前の東京と引越し後の京都や関西を比べるのは、私自身はかなり慎重にならざるを得ないと考えていて、すなわち、東京と京都・関西を比べているのではなく、むしろ、非常事態宣言前後を比較することになってしまいかねません。でもまあ、自転車に関しては非常事態宣言前後でなにか特段の事情の変化があったとも思われませんので、許容範囲かと考えている次第です。
まず、東京でも同じことなんですが、「原則、自転車は車道」というのはまったく無視されています。我が家や大学の周辺で特徴的なのは、ママチャリではなく、かなりカッコいいスポーツバイクも歩道を走っていることです。これは東京では少数派だったような気がします。京都への引越し後に再開した4月3日付けのブログで紹介した黄色いクロスバイクに乗って、北向きに走っていると逆走してくるロードバイクがありました。近づくと、決して逆走ではなく、かなり高齢のおじいさんが歩道をコチラ向きに走っているのでした。立派なロードバイクにまたがって、もちろん、上はヘルメットからサングラス、ボディコンシャスなウェアにグローブ、シューズまで決めに決めまくった格好ながら、歩道を走ってママチャリに追い抜かれそうなスピードでゆったりと走っていたりします。形から入っているというか、志の高さは素晴らしいんですが、ロードバイクとは違う選択肢はなかったのか、という気がしました。もう1人、我が家の近くで歩道を走っているロードバイクを見かけましたが、これはかなり若いライダーでした。大学の近くでも、私の乗っているクロスバイクよりもかなりお値段の高そうなクロスバイクが歩道を走っています。でももちろん、国道1号線を京都から名古屋にそこらへんの自動車に十分対抗できるスピードで走っているロードバイクも少なくありません。
自転車が歩道を走っているひとつの理由は、道路に自転車ナビマークがないことです。東京では至るところにありましたが、京都で自転車に乗り始めて1か月ほどしか経過しておらず、それほどの走行距離もないとはいえ、私は自転車ナビマークを見たことがありません。国道、府道、市道と走ったハズなんですが、まったく自転車ナビマークは見かけません。というか、正確にいうと、その昔に、我が母校の京大周辺で見たことはあります。東京の警視庁の自転車ナビマークと違うので、少し驚いた記憶があります。でも、ここ1か月で自転車に乗っている時に自転車ナビマークはまったく見ていません。加えて、東京なら警察や地域の交通安全協会などから、「原則、自転車は車道」という旗指し物のたぐいをいっぱい見かけるんですが、我が家や大学の近くでは見たことがありません。おそらく、私の想像ながら、多くの人が、特に、自転車に乗っているひとは「原則、自転車は歩道」と考えていて、「原則、自転車は車道」と聞いたら、とてもびっくりするんではないかという気がします。
最後に、自転車保険についてです。私はそれなりに自転車に乗りますので、東京では今年2020年4月から自転車保険への加入が義務付けられるということは知っていました。でも、4月になる前に京都に引越すわけですから、まあ、無視していたわけで、この新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の問題で、まったく関心が払われていないんでしょうが、どちらにせよ、東京で今年からなんですから京都なら2~3年遅れだろうと勝手に想像していたんですが、何と、京都は東京に先立って自転車保険加入義務付けが行われていることを知りました。でも、私が自転車を買ったお店では、そんなことはまったく知らされませんでしたし、街中を走っている自転車がどこまで保険加入しているかは、とても疑問です。実は、役所の同僚だった知り合いとzoomを使ってオンラインでおしゃべりしたんですが、さすがに、東大自転車部OBだけあって自転車に関するリテラシーはとても高く、保険にも家族全員で加入したといっていました。

いずれにせよ、我が家や大学周辺における自転車に関するリテラシーは低い、といういい方が出来るような気もしますが、逆から見れば、それほど気張って自転車に乗るんではなく、気軽な庶民の足になっているというのも事実だろうと思います。それはそれでいいんではないでしょうか。

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2020年5月 2日 (土)

読み逃していた何冊かの本の読書感想文!!!

大学の図書館も、地域の公立図書館も、すべて非常事態宣言で閉館されてしまい、その直前に大学の図書館で借りた本を中心に読み終えたものを取り上げてみました。

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まず、C.P. キンドルバーガー & R.Z.アリバー『熱狂、恐慌、崩壊』(日本経済新聞出版) です。ノーベル賞受賞者であるキンドルバーガー教授の代表作のひとつであり、キンドルバーガー教授はすでに2003年に亡くなっていますので、その後はアリバー教授が引き継いでおり、2人とも米国の研究者です。私が読んだのは原書第6版で、上の画像に見られるように、英語の原題は Manias, Panics, and Crashes です。近代に入ってからのバブルの歴史をひも解き、第9章では和楽のに1980年代後半のバブル経済も取り上げています。最後は第13章のリーマン・ショックであり、キンドルバーガー教授はその時点ですでになくなっていますので、アリバー教授の分析に従えば、「避けられた」と結論されています。古典とまではいえないとしても、おそらく、歴史に残るであろう、そして、50年先には古典となっている可能性も十分ある大著です。なかなか重厚な味わい深い読書でした。

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次に、トーマス・フリードマン『レクサスとオリーブの木』上下(草思社) です。著者は米国のジャーナリストであり、本書はグローバル化を称賛する書として有名なところです。私は同じ著者のこの次の著書である『フラット化する世界』を読んだ記憶はあるんですが、この最初の有名になった著書はまだ読んでいませんでした。大きな理由は、本書は2000年の3月か4月ころに邦訳が出版されたと記憶しているんですが、その夏には幼稚園児を連れての海外赴任でジャカルタに出発する予定で多忙を極めており、ジャカルタにつくとベストセラーとなっていた本書の入手が困難となっていたからです。マクドナルドが店舗展開している国同士は戦争をしないなど、読んでいなくても聞いたことのある本書の主張はいくつかあると思います。でも、さすがに、20年前の主張ですので何ともいえない違和感はあります。何年待っても古典にはならないような気がします。

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最後に、ナシーム・ニコラス・タレブ『ブラック・スワン』上下(ダイヤモンド社) です。著者は基本的に投資家だろうと思うんですが、実務家として大学の口座を持っていたりもするようです。本書では、リーマン・ショックの直前に確率分布から、「ファットテール」とか、必ずしも正規分布に従わない分布の場合に何が起こるかを論じていて、その上で、金融資産の価格については、正規分布に従わず、平たくいえば、とんでもないことが起こりがち、という結論を導いています。本書は2007年か2008年に邦訳が出版され、ちょうど長崎大学に出向しているときに全国的に注目が集まったと記憶していて、よく覚えていませんが、長崎で入手できなかったんだろうと思います。というのも、長崎大学では研究費はかなりPC回りにつぎ込んでしまい、ハードとソフトにかなり使ってしまい、その分、粗製乱造ながら論文はいっぱい書いたんですが、図書まで研究費が回りませんでした。東京に戻って、統計局勤務になった際には、統計局が依拠している正規分布に対する「冒涜的な記載」があるとかで、周囲の同僚などからよくない評判が聞かれたりして、結局、読む機会を失った気がします。

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2020年5月 1日 (金)

ふたたび、在宅勤務について、そして、9月入学について考える!

昨日から気温が高くなり、今日はさらに上り、明日はもっと暑いくらいになるだろうとの天気予報で、明日からは本格的にゴールデンウィークが始まるのだろうという気がしていますが、例年の華やいだ気分の盛り上がりがないのは、私の年齢のせいだけではありません。
何だかんだといっても、今日はカレンダーの上では平日であり、来週から始まるオンライン授業への対応も含めて在宅勤務を続けています。学術誌から依頼されている書評を書き上げてメールで送付したところですし、オンライン授業のツールを学部で一括契約したそうで、そのユーザ登録をしたりしています。
さて、一昨日に続いて在宅勤務について考えます。まず、フィジカルな体調については、運動不足に起因する体重増の方は何とかコントロールしていて、私はもともとBMIは標準の22を下回っているんですが、それほど大きく増加してはいない気がします。ただ、これも元来の体質なのか、便通がそれほど頻繁ではないので、やや便秘気味で苦しんでいます。メンタルな面については、一部のメディアで、在宅勤務を休日とカン違いする家族から仕事に対する理解を得られない、というのが報じられましたが、我が家は私とカミさんだけですので、遊んでくれとせがむ小さい子供もなく、それなりに順調に仕事をしていたりします。それにつけても、私の死んだ父親から我が家の年回りという話を聞いたことがあり、運がいい方なのかもしれないと感じています。すなわち、私の死んだ父親は1930年生まれですから、終戦時にまだ15歳で徴兵されることはありませんでした。私の父親の父親、すなわち、私から見た祖父は40歳前後で、これまた徴兵される年回りではありませんでした。今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が世界に拡大しているタイミングでも、我が家は離れて暮らす倅2人を含めても20歳をわずかに超えた倅2人から、私でも60歳を過ぎたばかりです。この年回りをどう評価するかはビミョーなところながら、大学入試で一浪した下の倅の就活は今年ではなく来年となっている、というのも事実です。
さて、在宅勤務をどこまでモデルケースとするかについて考えたいと思います。すなわち、医療機関勤務のみなさんが典型ですが、在宅勤務がスタンダードではない職業もいっぱいあるわけで、まあ一例ながら、家で寛いで犬と遊んでいても仕事になる人は決して多数ではないと考えるべきです。これは、高度成長期からの伝統的な夫婦に子供2人をモデルケースとして、社会保障や何やの政策を構築するのとは違います。従来から主張されているように、夫婦に子供2人のモデル家族というのは高度成長期からして決して多数派ではありませんでしたが、このモデル家族を基本に医療や教育や社会保障政策などを組み立てるのは、現在まで続く家族の多様性を考慮しても、決して間違いではなかったと判断していますが、働き方については家族とは違ったバリエーションがあるわけで、COVID-19の終息も見据えて、いろんな政策展開を考える上で、在宅勤務をモデルケースとするかどうかは、かなり慎重な議論が必要ではないかと私は考えています。
最後に、10年振りに教職に復帰し、現在のCOVID-19の拡大防止のために、ほぼほぼすべての学校の授業が、少なくとも、対面での授業が行われていない現状で、9月入学への移行が議論され始めています。国際標準であるという点を含めても、私自身は諸手を上げて、というわけではないにしても、どちらかといえば9月入学には賛成です。ただし、ホントに9月入学を実施するとすれば、ものすごい準備作業が必要とされ、私の長い経験からして、その準備作業を回避したいグループは、文部科学省内に一定存在しそうな気がします。ひょっとしたら、政治的な発言力が強いグループかもしれません。それと、ひとつだけ気がかりなのは、9月にCOVID-19が終息しているかどうか、という点です。誰にも判らないというつもりはありませんが、少なくとも私には判りません。

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