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2020年5月18日 (月)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で2四半期連続のマイナス成長を記録した1-3月期GDP統計1次QEをどう見るか?

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲1.6%、年率では▲6.3%と、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で大きなマイナス、2四半期連続のマイナス成長でした。まず、日経新聞のサイトから長い記事を引用すると以下の通りです。

1-3月実質GDP、年率3.4%減 2期連続マイナス
内閣府が18日発表した2020年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.9%減、年率換算で3.4%減だった。マイナス成長は2四半期連続。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2月ごろから輸出や消費、設備投資などが軒並み急減した。19年度の実質GDPは前年度比0.1%減と5年ぶりのマイナス成長となった。
消費税率を10%に上げた直後の19年10~12月期の実質GDPは前期比年率で7.3%減だった。今年1~3月期のマイナス幅はQUICKがまとめた民間エコノミスト予測の中心値(年率4.8%減)より小さいものの2四半期連続のマイナス成長は国際的にはテクニカルリセッション(景気後退)とみなされる。
4~6月期は緊急事態宣言に伴う外出自粛や飲食店などの幅広い休業で一段と大きく落ち込むことが予想される。
1~3月期はGDPの半分以上を占める個人消費が前期比0.7%減り、2四半期連続のマイナスとなった。増税前の駆け込み消費からの反動減で大幅マイナスを記録した19年10~12月期(2.9%減)から一段と落ち込んだ。外出自粛やイベント中止の影響で、外食や旅行、レジャー関連の消費が急減した。
消費とともに内需の柱である設備投資も0.5%減と2四半期連続で減少した。世界経済の先行きの悪化懸念から企業に設備投資を先送りする動きが広がった。特に増産につながる生産用機械への投資が減ったという。
住宅投資は4.5%減。19年10~12月期の2.5%減からマイナス幅は拡大した。消費税率引き上げによる影響で弱い動きが続いた。これまで底堅かった公共投資も0.4%減り、5四半期ぶりのマイナスとなった。内需全体でGDPを0.7%分押し下げた。
輸出は6.0%減と2四半期ぶりのマイナスだった。マイナス幅は東日本大震災直後の11年4~6月期(7.5%減)以来の大きさだった。モノの輸出は感染拡大が先行していた中国向けを中心に低迷し、2.3%減った。サービスの輸出は19.1%減。GDP上はサービスの輸出に区分されるインバウンド(訪日客)消費が急減した。
輸入は4.9%減で2四半期連続のマイナスに沈んだ。原油や天然ガスの輸入減に加え、日本人の出国が減り海外での支出も減った。新型コロナでサプライチェーン(供給網)が寸断されたことも響いた。
外需全体のGDPへの寄与度はマイナス0.2%だった。GDPの外需は輸出から輸入を差し引いて算出する。1~3月期は輸入の落ち込みも大きかったため、GDPへのマイナス寄与度は小幅にとどまった。
生活実感に近い名目でみた1~3月期のGDPは前期比で0.8%減、年率換算では3.1%減だった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前期比プラス0.1%だった。
4~6月期のGDPマイナス幅は年率で20%を超え、戦後最大に達するとの見方が多い。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2019/1-32019/4-62019/7-92019/10-122020/1-3
国内総生産GDP+0.6+0.5+0.0▲1.9▲0.9
民間消費+0.1+0.6+0.1▲3.3▲0.9
民間住宅+1.5▲0.3+1.2▲2.5▲4.5
民間設備▲0.5+0.9+0.2▲4.8▲0.5
民間在庫 *(+0.1)(+0.0)(▲0.3)(+0.0)(▲0.0)
公的需要+0.3+1.6+0.8+0.3▲0.0
内需寄与度 *(+0.1)(+0.8)(+0.3)(▲2.4)(▲0.7)
外需寄与度 *(+0.5)(▲0.3)(▲0.2)(+0.5)(▲0.2)
輸出▲1.8+0.2▲0.6+0.4▲6.0
輸入▲4.5+1.8+0.7▲2.4▲4.9
国内総所得 (GDI)+1.1+0.5+0.2▲1.9▲0.9
国民総所得 (GNI)+0.8+0.5+0.1▲1.9▲0.8
名目GDP+1.1+0.6+0.4▲1.5▲0.8
雇用者報酬 (実質)+0.4+0.7▲0.3▲0.2+0.7
GDPデフレータ+0.2+0.4+0.6+1.2+0.9
国内需要デフレータ+0.3+0.4+0.2+0.7+0.7

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率が前期に続いてマイナスを示し、GDPの各コンポーネントは軒並みマイナス寄与を示し、中でも、赤の消費が大きなマイナスを記録しています。

photo

まず、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルなシグナルを別にしても、日本経済が景気後退にある現状は明らかになりました。景気転換点がいつになるかはともかく、足元の1~3月期も4~6月期も、満場一致でエコノミストは景気後退を認定することと思います。たぶん、昨年2019年10~12月期もそうだという気がします。ただ、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、季節調整済みの系列による前期比年率で▲4.8%であり、まずまず、「こんなもん」というのが多くのエコノミストの感想ではなかろうか、と私は勝手に想像しています。この景気落ち込みの大きな要因は、これまた、満場一致で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響であり、国内では拡大防止のための外出や一部ながら経済活動に対して自粛要請が出されましたし、海外、特に1▲3月期については中国の経済も大きな停滞を示したことから、外需もマイナス寄与を示しています。消費は外出自粛などが直接的な要因でしょうし、設備投資については輸出の落ち込みと先行き不透明感の影響などから減少を続けています。外需もマイナス寄与を示しています。COVID-19については、感染拡大が明らかに日本よりも中国が先行し、1~3月期については季節調整済みの前期比で見て輸出入ともに減少しているわけですが、輸入の▲4.9%減を上回って、輸出が▲6.0%の減少を記録しています。加えて、先行きについて考えると、本格的なCOVID-19の経済的影響が現れるのは4~6月期であり、直感的ながら、前期比で数パーセント、前期比年率なら20~30パーセントのマイナス成長となる可能性すらあります。先週の段階で、8都道府県に絞り込まれた特別警戒地域以外の39県については非常事態宣言が解除されましたし、私のようなシロートの目から見れば、もちろん、第2波、第3波などの何度かの揺り戻しはあるとはいえ、COVID-19の影響がもっとも大きいのは現在の4~6月期ではなかろうかと考えられます。ただ、7~9月期以降のV字回復というのはもはや望み薄であり、厚生労働省ご推奨の「新しい生活様式」の下で、本格的な景気回復には相当な時間を要する可能性が高いと考えるべきです。例えば、あくまでご参考ながら、日経新聞のサイトでは「1~3月GDP3.4%減、コロナで『回復に3年半』の声も」と題する記事が掲載されていたりします。

ホンの10年余り前の2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻後の景気後退を「50年に1度」とか、「100年に1度」とか表現していたのを記憶しています。その2008年9月の直前の人事異動で私は東京を離れて長崎大学経済学部に出向したんですが、今回も、この4月から再就職で大学教員に転じたわけで、どちらも、それほど頻度高くないと考えられる大きなショックを大学の研究者として目の当たりにしてしまいました。

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