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2020年5月21日 (木)

新型コロナウィルスの影響で大きく輸出が減少した4月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から4月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲21.9%減の5兆2023億円、輸入額も▲7.2%減の6兆1327億円、差引き貿易収支は▲9304億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短かに引用すると以下の通りです。

4月の輸出額21.9%減、コロナ響く 減少率は09年10月来の大きさ
財務省が21日発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額は前年同月比21.9%減の5兆2023億円だった。17カ月連続の減少で、2009年10月(23.2%減)以来の大きな減少率だった。新型コロナウイルス感染症の影響で米国向けの自動車や航空機用のエンジンなどが落ち込んだ。
輸入額は7.2%減の6兆1327億円だった。12カ月連続の減少で、4月は原油先物価格が一時マイナス圏に落ち込むなど、資源価格の下落が全体を押し下げた。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は9304億円の赤字だった。赤字は3カ月ぶり。
対中国の輸出額は4.1%減の1兆1822億円だった。化学製品や自動車部品などが減った。輸入額は11.7%増の1兆7348億円で衣服・マスクなどに使う織物用糸・繊維製品の輸入が大幅に伸びた。貿易収支は5526億円の赤字。
対米国の輸出額は37.8%減の8798億円だった。減少率は09年7月以来の大きさで、自動車や自動車関連用品の落ち込みが影響した。米国からの輸入額は1.6%増の6986億円で、貿易収支は1812億円の黒字だった。
対欧州連合(EU)の貿易収支は1912億円の赤字だった。赤字は10カ月連続。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見れば明らかなんですが、特に下のパネルの季節調整済みの系列で見て、4月の輸入はそれほど低下していない一方で、輸出が大きな落ち込みを見せています。他の要因があろうハズもなく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響であり、諸外国、特に欧米各国と我が国のCOVID-19への対応策、もしくは、拡大のフェーズが月単位で見るとビミョーに異なる、ということが貿易動向に反映されているんだろうと私は考えています。要するに、いち早くCOVID-19の影響を脱したと見られている中国は別としても、欧米先進国においては我が国よりも強烈なロックダウンを実施し、その結果として、経済活動の停滞から輸入が、すなわち、我が国からの輸出が落ち込んだ、と考えるべきです。加えて、輸入に関してはアジアからの輸入が増加しています。引用した記事の3パラ目にあるように、アジアから輸入の原料別製品のうちの織物用糸・繊維製品が前年同月比で+141.9%増と大きく増加を示しています。マスクとか、医療向けも含めた衣類生産なんだろうと考えられます。中国からの輸入は前年同月比で見て、2月はほぼ半減したんですが、3月統計ではわずかなマイナスまで回復を示し、今日公表の4月統計では2ケタ増となっています。このあたりもCOVID-19感染拡大のフェーズと、その対応策の違いであろうと考えるべきです。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、一番下の中国のパネルのOECD先行指数について、2月は前年同月比で▲15%近い落ち込みなんですが、それにスケールを合わせると別の部分で歪みを生じるような気がして、意図的に下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。今のところ、為替レートがCOVID-19の影響で大きく動いているようには見えませんので、主として所得要因から我が国の輸出数量≈輸出が変動している、と私は考えています。

貿易とも関連して、5月19日に世銀から Purchasing Power Parities and the Size of World Economies: Results from the 2017 International Comparison Program が出版されています。英文で200ページを超えるボリュームですし、いろいろと予定も立て込んでいますので、そのうちに日を改めて取り上げたいと思います。

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