2ケタ減が続く商業販売統計はホントに下げ止まりつつあるのか?
本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲13.7%減の10兆9290億円、季節調整済み指数でも前月から▲9.6%減を記録しています。大きな落ち込みは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものと考えるべきです。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。
5月の小売販売額は12.3%減 基調判断は「下げ止まり」に上方修正
経済産業省が29日発表した5月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比12.3%減の11兆650億円となった。減少は3カ月連続で、5月としては比較可能な1980年以降で最大の減少率だった。新型コロナウイルスの感染防止を目的とした外出や営業の自粛が続き、自動車や衣料品などの販売が振るわなかった。ただ、経産省は単月でみると4月が底だったとして、小売業の基調判断を「下げ止まりがみられる」に上方修正した。
小売販売額を業種別で見ると、9業種のうち7業種がマイナスだった。外出自粛により客数が伸びず、普通自動車や軽乗用車が不振だった自動車は35.2%減だった。百貨店やスーパーなどの各種商品は34.9%減、織物・衣服・身の回り品は34.3%減だった。一方、野菜の相場高などを背景に飲食料品は2.2%増と2カ月連続で増加した。
大型小売店の販売額では、百貨店とスーパーの合計が13.4%減の1兆4555億円だった。百貨店は臨時休業や営業時間の短縮、インバウンド需要の落ち込みなどが響き、64.1%減の1744億円となった。減少率は過去最大だった前月に次ぐ大きさだった。一方、スーパーは内食需要などを背景に主力の飲食料品が好調で、6.9%増の1兆2811億円となった。
コンビニエンスストアの販売額は9.6%減の9271億円だった。おにぎりや調理パン、カウンターコーヒーのほか、たばこや日用品なども不調だった。オフィス街や繁華街を中心に客数が減ったことが響いた。
続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期であり、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。
消費の代理変数となる小売販売額を見ると、繰り返しになりますが、季節調整していない原系列の前年同月比は4月▲13.9%に対して、5月は▲12.3%であり、確かにマイナス幅は縮小していますし、同じ小売販売額の季節調整済の系列の前月比を見ても、4月▲9.9%から、5月は+2.1%に小幅なリバウンドを見せていますが、少なくとも、卸売販売額は前年比でマイナス幅を拡大しており、季節調整済みの前月比でもまだマイナスを続けています。もちろん、外出自粛が続く中で、ほとんど唯一といってもいいくらいの外出と支出の機会が、スーパーでの食料品や日用品をはじめとする買い物だったのは事実で、小売販売額の中でも飲食料品小売業では4月の前年同月比+0.3%増から、5月は+2.2%増に上向いていることは確かです。しかし、自動車小売業や燃料小売業などはマイナス幅を拡大していますし、業種別のバラツキが大きいことも忘れるわけにはいきません。加えて、いわゆるその昔のエンゲル係数の議論ではないのですが、先進国である日本では食料品の売上が消費を牽引するというのも考えにくいところです。いずれにせよ、日本に限らず、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)で大きなダメージを受けた世界経済の底は4~6月期である可能性が高いとはいえ、第2波や第3波の可能性も排除できませんし、何よりも、回復ペースは決してV字ではなく、かなりなスローペースを覚悟する必要がある、というのは多くのエコノミストの緩やかなコンセンサスではないかと私は受け止めています。
特に、ここ何日かの東京都におけるCOVID-19新規感染者数の推移を見ていると、第2波の可能性は私には不明ながら、繰り返しになりますが、経済の回復は長期戦になりそうだという予感があります。また、私が東京都民でなくなってから3か月あまりが経過して、すでに都知事選挙の投票権は持っていないものの、ダイヤモンド誌の記事にあるような都立病院の独法化を進めようとする小池都政に待ったをかける必要も感じます。強く感じます。
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