消費者物価(CPI)上昇率は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響による原油価格の下落によりマイナス続く!!!
本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月と同じ▲0.2%を示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.4%でした。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により国際商品市況で石油価格が下落しているのが背景となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
5月の全国消費者物価、0.2%下落 2カ月連続下落、コロナによる原油安で
総務省が19日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比0.2%下落した。2カ月連続の下落で、QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.1%下落)より下げ幅は大きかった。新型コロナウイルスの感染拡大を背景に原油安が進行し、ガソリンや灯油のほか、電気代などエネルギー関連価格の落ち込みが顕著だった。総務省は「エネルギー価格の下落は6月以降もしばらくは続く」と説明した。
外出自粛の影響で宿泊費が落ち込んだほか、家庭用耐久財の価格も下がった。4月からの高等教育無償化や19年10月からの幼児教育無償化の影響で幼稚園や保育所、大学授業料も下落した。
需給が逼迫していたマスクは、4月は5.4%上昇となっていたが、5月は供給が徐々に拡大したことから2.4%上昇と上げ幅を縮小した。
生鮮食品を除く総合では401品目が上昇した。下落は109品目、横ばいは13品目だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は102.0と前年同月比0.4%上昇した。生鮮食品を含む総合は101.8と0.1%上昇した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.1%の下落でしたので、実績の方がやや下落幅が大きいものの、まずまずジャストミートしたといえます。CPI上昇率がマイナスに落ち込んだ先月4月統計ではエネルギーは▲4.7%の下落で、ヘッドラインCPIの前年同月比上昇率に対する寄与度が▲0.37だったんですが、5月はさらに下げ足を速めて▲6.7%の下落で、寄与度も▲0.54とマイナス幅が拡大しています。石油をはじめとするエネルギー価格からの影響が大きい物価下落といえます。ですから、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は4~5月ともに▲0.2%だったんですが、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIで見ると4月の+0.2%から5月統計では+0.4%とむしろ上昇率が拡大しています。ただし、先行きの物価について考えると、石油価格下落の影響は一定のラグを伴って経済全体に価格下押し圧力となるのは明らかですし、少なくとも前年同月比で見る限り、秋口の9月までは昨年から需要が減退しているのも明白ですから。需給ギャップの観点からも夏から秋にかけてCPI上昇率は下落幅を拡大するものと私は考えています。物価上昇率の底は夏であり、おそらく、コアCPI上昇率は▲1%前後の下落までマイナス幅を拡大する、とかなり多くのエコノミストが考えているようです。ただ、本日の「月例経済報告」でも、ひょっとしたら希望的観測を含めつつ、経済が最悪期を脱して「下げ止まりつつある」可能性を示唆しています。ただし、ほかの経済指標と同じで、石油価格次第、そして、何よりもCOVID-19次第とはいえ、夏にCPI上昇率が底を打つ可能性は十分あるものの、その後の回復はかなり緩やかなものにとどまることは覚悟すべきです。
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