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2020年6月30日 (火)

いずれも市場の事前コンセンサスから下振れした鉱工業生産指数(IIP)と雇用統計をどう見るか?

本日は月末最終の閣議日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲8.4%の減産を示し、失業率は前月から+0.3%ポイント上昇して2.9%、有効求人倍率は前月から▲0.12ポイント低下して1.20倍と、雇用も悪化しています。いずれも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものと考えるべきです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月鉱工業生産、8.4%低下 6月予測は5.7%上昇
経済産業省が30日発表した5月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比8.4%低下の79.1だった。低下は4カ月連続。生産の基調判断は「急速に低下している」に据え置いた。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比5.8%低下だった。
出荷指数は8.4%低下の77.2で、在庫指数は2.5%低下の103.4。在庫率指数は6.9%上昇の148.1だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では、6月が5.7%上昇、7月は9.2%上昇を見込んでいる。
5月の完全失業率2.9% 前月比0.3ポイント上昇
総務省が30日発表した5月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.9%で前月比0.3ポイント上昇した。QUICKがまとめた市場予想の中央値は2.8%だった。
完全失業者数(同)は197万人で、19万人増加した。うち勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は7万人増、「自発的な離職」は4万人増だった。就業者数(同)は6629万人で4万人増加した。
5月の有効求人倍率、1.20倍 下げ幅は46年ぶりの大きさ
厚生労働省が30日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.12ポイント低下の1.20倍だった。下げ幅は第1次石油危機後にあたる1974年1月(0.20ポイント低下)以来、46年ぶりの大きさだった。倍率は2015年7月以来4年10カ月ぶりの低水準で、QUICKがまとめた市場予想の平均の中心値である1.22倍を下回った。新型コロナウイルス感染症の影響で飲食業や宿泊業のほか、娯楽業や製造業など幅広い業種で求人数が減少した。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率は1.88倍と、前月比で0.03ポイント上昇した。正社員の有効求人倍率は前月比0.08ポイント低下の0.90倍だった。厚労省の担当者は今後の求人動向について「5月後半の経済活動再開にあわせて一部業種で求人を再開する動きがあり、持ち直しの兆しもみられている」と説明している。

いくつかの統計を取り上げていますのでとても長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は▲5.8%の低下との見込みながら、レンジでは▲7.5%~▲3.8%でしたので、下限を下回る大きな減産となっています。昨日の商業販売統計では「下げ止まり」に小売業販売額の基調判断を上方修正した経済産業省ですが、さすがに、今日の鉱工業生産指数(IIP)は「急速に低下」で据え置いています。季節調整済の系列の前月比で見て、▲8.4%減のうち、我が国のリーディング・インダストリーである自動車工業が寄与度で▲2.52%、生産用機械工業が▲0.95%など、我が国を代表する産業が大きな減産を記録しています。なお、引用した鉱工業生産指数の記事の最後のパラにもあるように、製造工業生産予測調査では今月6月が+5.7%、7月も+9.2%といずれも増産が見込まれています。しかし、この指標は過大推計のバイアスがあり、6月の補正値試算の結果は+0.2%の増産と示されています。レンジでも、▲0.8%~+1.2%と試算されていますので、増産の可能性がやや大きいくらいで、減産の可能性も十分あります。加えて、先月の統計公表の際、5月の補正値は▲5.7%と示されていましたが、実績は▲8.4%だったわけですから、わざわざ、日経新聞が記事のタイトルに加えるほどの信頼性があるのかどうか疑問です。ただ、さらにその先の7月については、下振れバイアスがあるとはいえ、前月比で+9.2%の増産と見込まれていますので、さすがに、このころになれば増産に転じているような気もします。いずれにせよ、上のグラフのうちの上のパネルを見ても明らかな通り、生産が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で大きな減産が続いており、下のパネルを見ても判るように、その減産の要因は、いくぶんなりとも輸出の寄与がある企業部門ではなく消費者向けの耐久財などで生じています。しかも、この先、回復はかなり緩やかと考えられます。企業向けに雇用維持を目的とする施策ももちろん必要ですが、家計や消費者に対する支援策をもっと手厚くする必要があります。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、ほかと同じように、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。いずれも記事にある通りですが、失業率に関して日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは4月の2.6%から5月は2.8%に上昇するという見込みだったところ、実績はコンセンサスを上回る2.9%でしたし、有効求人倍率も日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは4月の1.32倍から5月には1.22倍に低下する予想が示されていたものの、実績はコンセンサスを下回る1.20倍でした。すなわち、マーケットの予想を上回るペースで雇用の悪化が進んでいる、と考えるべきです。正社員向けの有効求人倍率についても長らく1倍を上回っていましたが、先月の4月統計から1倍を下回るようになり、本日発表の5月統計でもさらに下げています。ただ、引用した記事の最後のパラにあるように、雇用の先行指標と見なされている新規求人については、求人数も求人倍率もいずれも5月統計では反転して改善を見せています。これは、記事にあるように、5月後半からの経済活動再開に合わせた求人増なのかもしれません。また、先月の雇用統計公表時に注目した休業者についても、総務省統計局による「就業者及び休業者の内訳」によれば、激増した4月の597万人から5月は423万人と減少しました。もちろん、1~2月の200万人弱の水準から見ればまだ多くなっています。ただ、我が国も含めて先進国経済の底は4~6月期であったことは緩やかなコンセンサスがありますから、COVID-19の第2波や第3波のパンデミックの有無や規模次第ではありますが、こういった我が国の雇用指標を見るにつけても、最悪期を脱した可能性も十分あります。しかし、日本経済も世界経済も回復過程はかなり緩やかなものとなり、COVID-19パンデミック前の水準に戻るまで長い期間がかかることは覚悟せねばなりません。

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