OECD Employment Outlook 2020 に見る新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の雇用への影響やいかに?
やや旧聞に属する話題ですが、7月7日に経済協力開発機構(OECD)から OECD Employment Outlook 2020 が公表されています。OECD Library のサイトではpdfの全文リポートも利用可能です。まず、リポートp.18のInfographicを引用すると以下のとおりです。
6つのパネルから成っています。左上のパネルでは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に伴う最近の失業率の上昇、右上は雇用維持政策による効果、左の真ん中は2007-08年のリーマン・ブラザーズ破綻時と比較した今回のCOVID-19による喪失マンアワーの比較、右の真ん中はロックダウン時の在宅勤務の割合、左下が上位4分位と下位4分位で労働市場から退出した格差、右下が2つのシナリオに従った雇用の喪失となっています。6月11日付けのブログで「OECD経済見通し」を取り上げた際にも紹介しましたが、COVID-19がこのまま終息していく「単発シナリオ」single-hit-scenario と今年2020年中に第2波の感染拡大が襲来する「双発シナリオ」double-hit-scenario の両方を分析の対象としています。
300ページを大きく超える英文のリポートですので、とても全部は目を通し切れていませんが、Infographicのほかに、ひとつだけグラフに注目しておきたいと思います。上の通りです。Infographicの真ん中左側のマンアワー喪失を主要国別に見ています。リポートp.37から Figure 1.9. The cumulated impact of the COVID-19 crisis on employment and hours of work is ten times greater than during the global financial crisis を引用しています。データのアベイラビリティに国ごとに少し差がありますが、3か月間の累積マンアワー喪失をCOVID-19パンデミックとリーマン・ブラザーズ破綻後の金融危機と比較して、約10倍のマンアワー喪失があったと結論しています。そもそも、累積マンアワー喪失が他国と比較して小さい日本でも、3か月後の比較ではCOVID-19が金融危機のショックを大きく上回っているように見えます。
また、Infographicの右上のグラフでは、雇用維持策の重要性が強調されていて、このInfographicの基となるグラフはリポートp.36 Figure 1.8. Participation in job retention schemes has been massive in some countries となります。しかし、なぜか、日本はグラフに現れません。ほかに、引用はしませんが、リポートp.60の Table 1.1. Countries have adjusted existing job retention schemes or adopted new ones やp.72の Table 1.3. Countries across the OECD have taken measures to improve support for workers and households not covered by unemployment benefits or job retention schemes では、OECD加盟各国における雇用維持策と家計への所得支持策をテーブルに取りまとめています。日本の政策としては、workers in non-standard jobs への雇用維持策や家計への New universal transfers が目立っています。特に、後者の給付金は我が国のほかは米韓しか実施していない政策です。
今回のリポートでは、特に、低賃金労働者や女性や若者などがCOVID-19deより大きなダメージを受けいる点が強調されています。近く取り上げたいと思っていますが、IMF Blog でも "Teleworking is Not Working for the Poor, the Young, and the Women" という記事が7月に入ってからアップされています。かつて、悪名高きワシントン・コンセンサスを推し進めた国際機関も、もはや、不平等から目を背けることが出来ないほどに格差は拡大しています。
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