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2020年7月25日 (土)

今週の読書は経済書や教養書とともに計5冊!!!

今週の読書は、いまさらながらの米国サブプライム・バブル崩壊をかなり幅広いリンケージの中で捉え直した『暴落』をはじめとして、欧州トップクラスの知識人であるアタリの食に関する教養書、新書や文庫本まで含めて計5冊です。

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まず、アダム・トゥーズ『暴落』上下(みすず書房) です。著者は、英国出身で米国コロンビア大学の歴史研究者であり、エコノミストではありません。本書の英語の原題は Crashed であり、2018年の出版です。ということで、タイトルから想像される通り、2007-08年の米国のサブプライム・バブル崩壊をテーマとしています。2020年半ばの現時点から考えれば、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が万円して大きな経済への下押し圧力が加わっているわけですから、10年余り前のリーマン・ショックかよ、という意見にも私は理解しないでもありませんが、最初に書いたように著者はエコノミストではなく、ジャーナリストでもなく、歴史研究者ですから、ヒストリアンがイベントを検証するには10年やそこらの時間が必要なのかもしれません。ただ、上下2巻で本文だけでも通しの700ページ余りが振られているように、しかも活字もかなり小さく、それなりのボリュームで、単に米国のサブプライム・バブル崩壊だけではなく、時間的、というか、歴史的なタイムスパンも長く、地理的なスコープも米国に限られず、かなり広く取っています。という意味で、私もそれほど幅広いものではありませんが、米国サブプライム・バブル崩壊に関しては、ジャーナリストやエコノミストの手になるものを何冊か読みましたし、エコノミストの観点からはそれなりに考えもしましたが、本書のようにこのイベントを世界的な広がりを持ったグローバル・ヒストリーの観点から、また、ギリシャに端を発した欧州債務危機などの経済的影響だけでなく、その後の2016年の米国大統領選挙や英国のBREXIT国民投票などまで、政治経済全体に渡ってのスコープを示している例は少なかったような気がします。もちろん、かなりのボリュームとはいえ、我が日本はほとんど登場しません。大西洋を挟んだ欧米中心史観であるものの、東欧やロシアまではカバーしています。特に、経済学的に新しい視点が提供されているわけではありませんが、いろいろな事実を歴史家の観点から、すなわち、ジャーナリストとはまた違った意味で、事実の間にそれなりの連続性、あるいは、場合によっては因果関係を示唆する形でいろいろな事実を整理したのは、それなりに意味のある作業であったろうと思います。

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次に、ジャック・アタリ『食の歴史』(プレジデント社) です。著者は、もはや紹介するまでもなく、フランスを代表する知識人であり、マクロン仏大統領を政界に押し上げた、ともいわれています。私の限りある読書の範囲の最近に限っても、2017年12月に『2030年ジャック・アタリの未来予測』、2018年8月に『新世界秩序』、2019年1月に『海の歴史』と毎年のように読んでいたりします。本書のフランス語の原題は Histoires de l'alimentation であり、2019年の出版です。食や農業というか、食料生産の歴史を解き明かすところから始まり、従って、それがタイトルになっていますが、それだけではなく、後半では、肥満をはじめとする健康のほか、工業生産された食品の安全性や遺伝子組換え作物(GMO)の問題点、などなど、幅広い観点から食について議論しています。特に、前半の歴史編で欧州の食の中心だったフランスから、すべての世界の中心に成り上がった米国に食文化の中心が移ったため、食事が家族団欒や宴会のバンケットから個食になって、しかも短時間で済ませるようになり、最後に行き着いたその典型はファストフードである、と結論しています。そうかもしれません。しかし、その前に、本書でも指摘されているように、食事がカロリー単位で測られるようになったあたりから、そういった兆候は出ていたような気もします。もちろん、フランス人である著者の目から見た記述ですから、フランスに甘く、米国に厳しい、といったバイアスはあるかもしれません。不満が残ったのは2点で、第1に、農業の始まりと人口増加の因果関係が逆ではないか、という点です。すなわち、本書では、増加した人口を養うために定住して農業を始める、という歴史観が示されていますが、これは逆のような気がします。第2に、米国に入る前に、もう少し欧州でフランスだけが農業大国になって、英独などが食料輸入国になったあたりの歴史をていねいに展開してほしかった気がします。ただ、おそらく、米国化された食料生産システムや食文化、特に、遺伝子組換え作物(GMO)については、私は本書の見方が正しいと受け止めていますが、逆の党派的な観点を持つ人も少なくないものと想像します。最後の最後に、私は経済学的な観点から交易の利益を重視していて、いわゆる「地産地消」的な農作物の狭い地域的な流通や消費については否定的な見方を示してきたんですが、本書のようなトレーサビリティや人工的な保存の問題点を指摘されると、確かに「地産地消」も一理ある、と考えるようになってきました。そのあたりの境目はビミョーかもしれません。

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次に、瀬名秀明ほか『ウイルスVS人類』(文春新書) です。NHKのBS1スペシャルで放送された「ウイルスVS人類」の第1回第2回の対談集に少しだけコラムを加えるとともに、第3部として司会進行の瀬名秀明の書き下ろしを加えた、まあ、記録集です。第1部の第1回放送は、そもそもの歴史から説き起こし、その昔のペスト、21世紀に入ってからのSARSやMARSと今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)との関連も含めて、政府の専門家会議メンバーをはじめとしていろいろな感染症分野の専門家とのお話が収録されています。第2部はカギはワクチンと治療薬の開発に焦点が当てられています。私はこのブログでも何度か表明しているように、COVID-19の終息の絶対条件はワクチンないし特効薬の開発だと考えています。ですから、本書に注目して、ということもあります。なお、これも書いたような気がしますが、私の奉職する大学の事務方は「ウィズ・コロナ」という表現がどうも好きなようで、いろんな文書で現れます。しかし、コロナとの共存なんて、少なくとも個人的には私はご免こうむりたいと考えています。本書でも大昔のペストが取り上げられていますが、ここ何十年もペストのことなんか考えずに我々は仕事を、そして、生活しているわけで、「ウィズ・ペスト」なんて誰も考えてもいません。それと同じことで、罹患したとしても致命的な影響はこうむらず、手軽に、とまではいいませんが、特効薬的なものがあって治療が十分可能である、という状態まで自体を改善する必要があります。今はシリーズがかなり進んで、私は4回目を少しだけ見た記憶があります。司会進行の瀬名秀明は、あえてカテゴライズすればSF作家であり、私も『パラサイト・イヴ』は読んだことがあります。薬学博士でもあり適任かもしれません。

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最後に、小松左京・吉高寿男『日本沈没2020』(文春文庫)です。Netflixで配信された同名のアニメのノベライズ版です。もちろん、その昔の小松左京『日本沈没』が元になっています。舞台は主として現在2020年の東京です。駒沢オリンピック公園近くに住む武藤一家が主人公です。父の航一郎は舞台制作会社で照明技師、母のマリはフィリピン人で、若いころは競泳選手、今はリゾートホテル勤務で世界を飛び回っており、姉弟の子供2人の姉の歩が中学生で日本代表にも選ばれようかという長距離走のアスリート、弟の剛は小学生でeスポーツでオリンピック出場を夢見ています。この一家に加えて、ご近所さんや途中からユーチューバーのカイトなどとともに、日本沈没とともに移動するストーリーですが、多くの死人が出ます。まあ、仕方ないのかもしれませんが、私は人がいっぱい死ぬストーリーにはそれほどの感動は覚えません。ですから、NHKの大河ドラマなんかでも、戦国時代モノは避けていたりします。ということで、まあ、荒唐無稽といえばそれまでなんですが、SFですからそれもアリです。どちらにせよ、現代はもはやインターネット接続なしには何もできなくなったのだろう、と感じたのが私の一番の感想です。やっぱり、オリジナルの小松左京作品の方の出来が素晴らしかっただけに、それと比較するのはムリがあるかもしれません。なお、私はオリジナルの『日本沈没』とともに『日本沈没第2部』も読んだ記憶があります。この機会に、こういったオリジナル作品を読み返すのも一興だという気がします。

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