増産を示す鉱工業生産指数(IIP)と小売販売が減少する商業販売統計!!!
本日は月末日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から+8.0%の増産を示した一方で、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲2.8%減の12兆4360億円、季節調整済み指数でも前月から▲3.3%減を記録しています。7~8月は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染再拡大が見られましたが、生産は大きな落ち込みから徐々に回復を示す一方で、消費はCOVID-19の感染再拡大で伸び悩むという相反した結果が出ています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
7月の鉱工業生産8.0%上昇 経済再開で2カ月連続プラス
経済産業省が31日発表した7月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比8%上昇の86.6となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で停滞していた経済再開の動きが国内外で広がり、2カ月連続でプラスとなった。経産省は基調判断を「生産は持ち直しの動きがみられる」とした。
比較可能な13年1月以来では最大の上げ幅となった。緊急事態宣言が解除された後の6月は前月比1.9%上昇の80.2だった。大幅な生産調整からの回復が進むが、新型コロナの感染が拡大し始めた20年2月(99.5)や同3月(95.8)の生産水準にはなお届いていない。
業種別では15業種中12業種が上昇した。自動車は前月比38.5%上昇した。国内外で需要が回復し、乗用車などの生産を増やした。ゴム製品を含む「その他工業」は9%の上昇で、鉄鋼・非鉄金属は9.7%上昇した。経産省はタイヤなど自動車部品の生産増が幅広い業種の生産回復に貢献したとみている。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、8月は前月比4%、9月は1.9%の上昇を見込む。経産省は「5月に底を打ち、当面は持ち直しの動きが続くと期待される」との見方を示した。
出荷指数も6%上昇で85.3となり、2カ月連続で13年1月以降では最大の上昇幅を更新した。その結果、鉄鋼・非鉄金属や化学工業などで在庫減が進み、在庫率はマイナス8.8%となった。
7月の小売販売額2.8%減 感染再拡大で回復足踏み
経済産業省が31日発表した7月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比2.8%減の12兆4360億円となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で5カ月連続で前年を下回った。4月の13.9%減を底に、6月には1.3%減まで持ち直していたが、再び減少幅が大きくなった。百貨店やコンビニエンスストアの減少率が6月より拡大した。
業態別では、百貨店が19.8%減、コンビニが7.9%減と大きく減った。6月は百貨店が18.5%、コンビニが5.1%の減少だった。
品目別では、織物・衣服・身の回り品が18.9%減った。6月の6.3%減から悪化した。自動車は15.3%の減少だが、6月より減少幅が縮小している。
7月に入り新型コロナの感染が再び拡大したことや、キャッシュレス決済のポイント還元が6月末に終わったことが響き、消費の回復は足踏みしている。
いくつかの統計を取り上げていますのでとても長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は+5.8%の上昇との見込みで、レンジでも+3.1%~+7.2%でしたので、上限をやや超える増産となっています。また、製造工業生産予測指数についても、8月+4.0%増、9月+1.9%増と見込まれていますが、バイアスを補正すると8月▲1.7%減と試算されており、このまま一直線に回復するとは必ずしも考えられません。もちろん、COVID-19感染拡大前の今年2020年1月の生産指数の水準が99.8であったのに対して、7月の実績が86.6ですので、生産や出荷の水準がまだまだ低い上に、方向性としても必ずしもプラスではないわけで、COVID-19後の景気拡大の足取りはかなり緩やかにならざるを得ない、と覚悟すべきです。ただ、明るいトピックとしては、7月統計を産業別で見て大きく上昇した寄与度最大の業種が自動車産業であるという点です。何といっても、我が国のリーディング・インダストリーであり、ウェイトも決して小さくない業種ですので、我が国景気を牽引する期待が持てます。
続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定している点については、鉱工業生産指数(IIP)のグラフを同じです。生産が今年2020年5月を底に何とか上昇に転じたのとは対象的に、消費の代理変数である小売販売は一進一退の動きとなっています。統計作成官庁である経済産業省では、先月6月統計の小売販売の基調判断を先々月の「下げ止まりがみられる」から「持ち直している」に上方修正したばかりなんですが、本日公表の7月統計では「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」と落ち着きなく小幅に修正しています。もっとも、足元の8月はかなりの猛暑でしたので、季節商品の売上の増加につながったと考えるのが素直な予想なんですが、あるいは、ひょっとして、猛暑で外出を手控えたことがマイナスの結果をもたらすことも否定できません。いずれにせよ、小売販売についてもCOVID-19の影響から脱するにはそれ相応の時間がかかり、回復は緩やかなものとなる点は覚悟したほうがよさそうです。
そかに、本日は内閣府から8月の消費者態度指数が公表されています。本年2020年5月の底を暫定的に認定した景気を少しリードして、マインド指標らしく4月に21.6で底を打った後、5月にやや回復を示して24.0、6月28.4から、7月29.5、8月29.3と、COVID-19の感染に再拡大に歩調を合わせるように変動を示しています。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を先月の「依然として厳しいものの、持ち直しの動きが続いている」から、今月統計を見て「持ち直しのテンポが緩やかになっている」に下方修正しています。グラフは上の通りです。
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