5か月ぶりの貿易黒字を計上した貿易統計と基調判断が下方修正された機械受注!!!
本日、財務省から7月の貿易統計が、また、内閣府から6月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計を季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比▲19.2%減の5兆3689億円、輸入額も▲22.3%減の5兆3572億円、差引き貿易収支は+116億円の黒字を計上しています。また、機械受注のうち、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲7.6%減の7066億円と減少を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
7月の輸出額19.2%減 米国向け自動車で減少続く 対中国は7カ月ぶり増
財務省が19日発表した7月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額は前年同月比19.2%減の5兆3689億円だった。減少が続いたものの、減少率は2カ月連続で縮小した。新型コロナウイルス感染症の影響による需要減などで米国向け自動車の落ち込みが続いた。一方、中国向けの輸出は半導体製造装置などがけん引して7カ月ぶりに増加し、全体を下支えした。
輸入額は22.3%減の5兆3572億円だった。減少は15カ月連続。中東産などの原粗油の輸入が減った。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は116億円の黒字だった。黒字は4カ月ぶりとなる。
対中国の輸出額は8.2%増の1兆3290億円だった。半導体製造装置のほか、精製銅や自動車が増えた。輸入額は衣類や自動車のホイールなどが減り、9.8%減の1兆4564億円だった。貿易収支は1274億円の赤字だった。赤字は5カ月連続となったが、赤字幅は3カ月連続で縮小した。
対米国の輸出額は19.5%減の1兆914億円と、12カ月連続で減少した。自動車や航空機向け原動機などが落ち込んだ。輸入額は25.5%減の5789億円で、貿易収支は5125億円の黒字だった。前年同月と比べた黒字幅は5カ月連続で縮小した。
対欧州連合(EU)の貿易収支は2124億円の赤字だった。赤字は13カ月連続だった。
6月の機械受注、前月比7.6%減 市場予想は2.0%増
内閣府が19日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比7.6%減の7066億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は2.0%増だった。
うち製造業は5.6%増、非製造業は10.4%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は22.5%減だった。内閣府は基調判断を「足元は弱含んでいる」から「減少している」へと変更した。
同時に発表した4~6月期の四半期ベースでは前期比12.9%減だった。7~9月期は前期比1.9%減の見通し。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。
まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲950億円の貿易赤字が予想されていて、レンジがかなり広いものですから、小幅な黒字というのは十分予想の範囲内と私は受け止めています。ただ、上のグラフを見ても理解できるように、トレンドを把握できる季節調整済みの系列で見れば、まだ貿易収支は赤字が続いており、2018年年央から基調として赤字ということも出来ます。例外となる黒字は、今年2020年2月の中華圏の春節というイレギュラーな要因によるケースを別にすれば、極めて小幅な黒字にとどまっているのもひとつの特徴です。もっとも、7月統計では季節調整済みの貿易赤字は▲300億円余りに縮小しています。世界的に輸出入とも貿易が減少を続けており、当然ながら、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものです。詳しく見ると、輸出は季節調整していない原系列の7月統計の地域別の額ベースで、前年同月比でプラスとなったのは中国と台湾くらいのもので、大雑把に、北米向けは▲20%減、EU向けは▲30%減などとなっています。何となく、いち早くCOVID-19の影響から脱したように見える中国と台湾向け以外はほぼほぼマイナスです。品目別でも、化学製品、一般機械、電気機器、輸送用機器などすべてマイナスを示しています。輸入についても、国別・品目別ともほぼほぼすべてマイナスを付けているのは輸出と同じです。特に、引用した記事にもある通り、鉱物性燃料の輸入額が前年同月からほぼ半減しており、輸入額合計の減少▲22.3%減のうちの▲10%超の寄与を示しています。鉱物性燃料の輸入額の減少は、あるいは、貿易収支の黒字化に寄与しているのかもしれませんが、日本経済にとって必ずしもポジティブとは解釈されないような気がします。
続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています。まず、コア機械受注に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で前月比+2.3%の増加、レンジ下限は2ケタ減ということでしたので、前月比マイナスとはいえ、まあ、こんなものかという気もします。単月での振れの大きい統計です。それにしても、かなり長きに渡って減少が続いており、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「減少」に下方修正したのも妥当なところかという気がします。先行き見通しとともに四半期データが利用可能となりましたが、昨年2019年7~9月期から直近の2020年4~6月期まで、実績ベースでコア機械受注は4四半期連続の前期比マイナスが続いており、先行きの7~9月期の見通しも▲1.9%減と見込まれていますから、5四半期連続の減少はかなり確度高いものと考えるべきです。設備投資需要を背景とする機械受注の先行きについては、人手不足に起因する合理化ないし省力化投資の増加要因と、COVID-19などに起因する世界的な景気低迷や先行き不透明感のどちらが大きいか、ということなんですが、年内くらいの期間を考えれば、緩やかな減少を示すんではないかと私は考えています。日銀短観なんかも注目したいと思います。
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