先月と同じ横ばい続く消費者物価(CPI)上昇率の先行きやいかに?
本日、総務省統計局から7月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIは前年同月と比べて横ばいを示した一方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も前月6月統計と同じ+0.4%でした。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により国際商品市況で石油価格が低迷しているのが、物価上昇率を低く抑えている一因となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の消費者物価横ばい 在宅勤務需要で家電は上昇
総務省が21日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、変動の激しい生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月から横ばいだった。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動に制約が残り、足踏みが続いた。在宅勤務の普及でプリンターが28.9%、デスクトップ型パソコンが19.9%上昇するなど家電は値上がりが目立つ。
多くの品目の価格は7月15~17日に調査した。19年10月の消費増税の影響などで外食が2.5%上昇した。生鮮以外の食品は前年水準を1.0%上回った。19年6月の大手の値下げから1年あまりたった携帯電話の通信料も3.2%高くなっている。
ガソリンは前年比9.2%下落した。足元の店頭価格は上がっているが、年初からの原油安が響いて前年比ではまだ低い水準にとどまる。旅行の減少を受け、宿泊料は4.5%下がった。
一方、生鮮食品を含めた総合指数は101.9と0.3%上昇した。産地の天候不順が響いた生鮮野菜は13.4%上がった。上昇幅は18年10月以来の大きさとなった。上昇率はジャガイモが52.5%、ニンジンは49.1%だった。総務省の担当者は「政府の緊急事態宣言の解除後に給食や外食向けの需要が戻ってきたのも値上がりの要因だ」と話した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。
コアCPIの前年同月比上昇率は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+0.1%でしたので、実績は横ばいだったものの、まずまずジャストミートしたといえます。4~5月統計ではコアCPI上昇率がマイナスに落ち込んだ要因としてエネルギー価格の下落が上げられていましたが、6~7月統計で横ばいを続けているのは、そのエネルギー価格の影響が徐々に和らいでいることが大きな要因です。前年同月比への寄与度で見て、6月統計ではエネルギーの寄与度が▲0.42%ありましたが、7月統計では▲0.35%にやや縮小しています。その縮小のほとんどはガソリン価格です。また、生鮮食品及びエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率もプラスを維持していますが、ともに、昨年2020年10月からの消費税率引上げの影響を含んでいますので、いわゆる「実力」としてはまだマイナス圏内にあると受け止めています。引き続き、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による石油をはじめとするエネルギー価格からの影響が大きいとはいえ、消費者物価上昇率も最悪期は脱した可能性があります。ただし、先行きが楽観できるわけでもなく、9月統計までは消費税率引上げの影響が残りますが、単純に考えると、この物価押上げ効果が剥落するため、10月統計からコアCPI上昇率はマイナスの可能性が高い、と私は考えています。加えて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響から景気は上向きつつあるとはいえ、その回復ペースは緩やかなものにとどまり、需給ギャップの観点からも決して物価への上昇圧力は大きくないと考えるべきです。ということで、9月調査の日銀短観を見た後の日銀の次の一手やいかに?
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