7月統計で上昇幅が拡大した企業向けサービス物価(SPPI)の先行きやいかに?
本日、日銀から7月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+0.8%でした。2月統計の+2.1%まで+2%台をキープした後、3月統計の+1.5%や4月統計の+0.9%から5月統計は+0.5%まで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で一気に上昇率が縮小しましたが、6月統計では+0.8%、そして、本日公表の7月統計では+1.2%の上昇とやや上昇幅を拡大しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じように縮小していましたが、前年同月比上昇率としては5月統計を底に、6月統計から上昇幅が拡大し、7月統計でもさらに拡大して+1.3%を記録しています。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の企業向けサービス価格、増税除き前年比0.6%下落 前月から下げ率縮める
日銀が26日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.0と、前年同月比で1.2%上昇した。19年10月の消費税率引き上げの影響を除くと前年同月比で0.6%下落した。下落率は6月から縮小した。経済活動の再開が続き、広告や不動産を中心にサービス価格には持ち直しの動きが出ている。
新型コロナウイルスの拡大に伴い企業の間では広告出稿を手控える動きが広がっていたものの、足元ではテレビやインターネットの広告で需要回復の兆しが出ている。不動産では賃料が売り上げや業績に連動する物件を中心に、経済活動再開が賃料の支えになっているという。
もっとも、依然として広告や不動産のサービス価格が前年比で大幅なマイナスになっている状況は変わらない。感染拡大による訪日外国人(インバウンド)需要の蒸発で、宿泊サービスでは価格に持ち直しの動きは出ていない。日銀は「サービス価格への下落圧力が弱まるどうか、不透明感が強い」(調査統計局)としており、引き続き新型コロナによる影響を注視する姿勢だ。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。財の企業物価指数(PPI)の国内物価よりも企業向けサービス物価指数(SPPI)の方が下がり方の勾配が小さいと見るのは私だけではないような気がします。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に認定しています。

企業向けサービス物価指数(SPPI)の前年同月比上昇率で見て、6月統計の+0.9%から7月には+1.2%に0.3%ポイントの上昇幅の拡大を見せているわけですが、そのほとんどはテレビ広告やインターネット広告などの広告の寄与度差+0.22%で説明できます。景気に敏感な広告なんですが、もっとも、大類別の広告全体としては7月統計でもまだ▲5.9%の下落を示している点も注意が必要です。ほかの大類別の項目としては、不動産が前年同月比も6月のマイナスから7月にはプラスの上昇に転じ、寄与度差も広告に次いで大きくなっており、加えて、金融・保険、情報通信、リース・レンタルについても上昇幅を拡大しています。他方、運輸・郵便と諸サービスについては上昇幅を縮小させています。特に、後者の諸サービスに含まれる宿泊サービスについては6月統計の▲35.0%から、7月統計でも▲35.6%と大きな下落を示してます。GoToトラベルが7月下旬には始まったとはいえ、まだまだ需要の戻りが十分ではない結果と受け止めています。また、運輸・郵便については石油価格次第という要素があるのかもしれません。いずれにせよ、引用した記事にもある通り、プラスのSPPI上昇率は昨年2019年10月の消費税率引上げの影響を含んでおり、9月統計まではこの影響が残りますが、SPPI上昇率の先行きを考えると、10月統計からはこの消費税による押上げ効果が剥落しますので、大きく上昇幅を縮小、ないし、石油価格次第ではマイナスに転じることになりそうです。
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